僕は探す!―暗殺教室×アカメが斬る!― 作:T氏@pixiv
学業の方が現在非常におろそかになってしまっているので投稿頻度が下がってしまうと思いますが、できるだけ月に二回を目指せるように頑張ります。
お気に入りに入れてくださった方や栞を挟んでくださった方、本当にありがとうございます。
「「ありがとうございました!!」」
(「その...これからも私のそばにいてくれないか?」)
昨晩の出来事が思い浮かぶ。
...あれを容易に頷いてよかったのだろうか。
「...君!乾君!」
「どうしたの、沢木さん?」
今は昼休み。
どうやら話しかけていた沢木さんを無視してしまったらしい。
「どうしたも何も最近ボーっとしているじゃん。何かあったの?」
「特に何もないよ。」
「ホントかなぁ?乾君、色々隠しちゃうからね。」
彼も結構、突いてくる。
隠しているのはその通りだが、さすがに彼を巻き込むわけにはいかない。
厳密に言うと沢木君にはあまりこういう暗い話は合わないからだと思う。
「本当にないんだけどね。」
「ふーん...あ、それよりも今日は一緒に食べない?」
ご飯のお誘いだったみたいだ。
「俺が今回作ったレンコンと人参のきんぴらを食べてほしいからさ。」
「それはありがたいけど...ごめん、先約があるんだ。」
約束した以上、僕は彼女の傍にいてあげたい。
「ふーん、了解……って!?」
バタン!と突如教室の扉が開かれる。
「あの...乾先輩はいらっしゃいますか?」
「ここにいるよ坂上さん。」
「先輩。」
僕の机の方へ近づいてくる坂上さん。
「結構、かわいい子だな。」
「二年生か?」
教室内の空気がざわざわと騒ぎ始める。
沢木さんが楽しそうに笑顔を向けてくる。
...嫌な予感が。
「...ここで一緒に食べないか?」
「別にいいけど...いつものところじゃなくていいの?」
「あぁ...たまには先輩のクラスで食べたいと思ってな。」
恐らく…あの中庭に行きづらくなってしまったのだろうか?
「君はもしかして乾君の彼女?」
「「え?」」
いきなり沢木君がこの場で爆弾を投げてきた。
「せ、先輩は...」
「坂上さんはよく校内でボランティアをしていてね。それを見て僕も手伝ったことから仲
良くなった感じかな。」
「俺が聞いているのは乾君じゃないよ!で、坂上さんは乾君とはどんな感じなの?」
沢木さんに迫られ、顔を赤くする坂上さん。
「わ、私は...」
「駄目だよ、涼君!あまり人をおちょくるといつかひっぺ返しが来るよ!」
ここで小沢さんが沢木さんのブレーキに入ってくれた。
彼女がいないとホントに彼のペースに持って行かれてしまうところだった。
「いや、だって...友人に恋人ができればちょっと嬉しくならない?」
「それは涼君だけの話!私たちは食堂に行きましょ?」
「ちょ、ちょっと!?」
沢木君は無事、小沢さんに連行されていった。
「ごめんね、坂上さん。彼はちょっとお調子者で...」
「恋人か...」
「坂上さん?」
「す、すまない...」
沢木さんのペースに飲まれちゃってる...
「とりあえず、食べる?」
「...あぁ、そうだな。」
僕は教材を今すぐ片付けて机の上を綺麗にした。
そして、僕と坂上さんはその上に弁当を広げる。
「「いただきます。」」
お互いに向き合って弁当を食べ始める。
「...たしかに...なら......食べるのかもな。」
「どうしたの坂上さん?」
「いや、なんでもないんだ。」
ちょっと途切れ途切れで聞こえなかったな...
今の彼女は俯いて弁当の米を口にしている。
...僕の見えないところで何かあったのかもしれない。
「...坂上さん?」
「え?」
「何か辛いこととかあったら言ってほしいな。」
「辛いことはない...それより先輩は今日何を作ったんだ?」
...彼女に対して無理に聞き出しても仕方がない。
今は彼女が楽しいと思える時間にするべきだ。
「コロッケ丼だ!」
試しにアカメの真似をしてみる。
彼女なら朝食でペロリと食べてしまうため、昼食だとマグロ丼になる感じかな?
「んっ!?」
...え?
喉を詰まらせたのか胸を叩く坂上さん。
まさか沢木さんのように寒いギャグをやってしまったのかも...
「ぶはは!!」
突如、彼女は腹を抱えて笑い出す。
「え、えーっと...なんか変なこと言っちゃった?」
「はぁ...いや、変と言うわけではないが、先輩がこんな自信満々に言うとは思わなくて
な...」
大うけしているようで何よりかな。
アカメには感謝かな。
「昨日の時と随分変わっているな。」
教室内のある男子生徒の集団から聞こえてきた。
「え?あの子知ってるの?」
「下校の時、上から水を掛けられていたのを見てさ。」
クラスメイトの噂話が耳に入ってきた途端、坂上さんの表情に影が入る。
「...坂上さん、屋上に移ろうか。」
「え?...あぁ。」
僕と彼女は昼食を一時中断して一緒に教室を出ていった。
「昨日のあいつの顔、面白かったわぁ~」
「え?坂上すぐにどっか行っちゃったから分かんなかったけど...どうだったの?」
「まるでこの世の終わりみたいな顔をしてたのよ。」
学校の屋上からさらに上へ続く梯子を登った先で、女子中学生たちは昼ごはんを楽しんで
いた。
「へぇ~...じゃあ、こんだけへし折ってやればあの真面目は立ち上がらないんじゃな
い?」
「いやそれがさぁ...誰か分かんないけど上級生があいつをなんとかしちゃったのよ!」
「えぇ!?あんなまじめな奴に誰が手を差し伸べんのよ...」
一人の女子が懐からスマホを取り出していじり始める。
「これよこれ!」
「これ、女の子...でもズボンだから男か。」
「めっちゃ美人じゃん!...なんであいつじゃなくて私とかに来ないのよ。」
他のメンバーに見せつけた画面には坂上と白髪の青年が映りこんでいる。
「それはさぁ、男子はかわいい子にくるわけよ。」
「おい、それは私があいつより可愛くないって言っているようなもんじゃん...ひどい事
言うよ」
「それはまじで同意だわ...て、誰か来そうだわ。」
コツコツと屋上の出入口から階段を登る音が耳に届く。
「うわ...当人来たじゃん。」
「え、ホントだ。」
体を屈んで見られないようにしていると扉から話題に出ていた坂上と男子がやってくる。
「大丈夫そうだね...ここでまた食べ始めようか。」
「そうだな。」
自分たちが登ってきた梯子の傍に座り込み、食べ始める二人。
「うわぁ...これ降りれないじゃん。」
「しっ!...聞こえるわよ。」
上から二人の様子を静かに伺う。
「それで坂上さん...ポスターってどうする予定?」
「あぁ...濡れてしまったものを見ながら再度作り直す予定だが。」
「そのポスター作り、手伝わせてほしいんだ。」
「乾先輩...お願いしていいのか?」
ふとももに乗せた弁当を食べる二人に気づかれない程度で睨みつける女子達。
(これじゃあ、私たち引き立て役じゃない!!)
(うわぁ...不快な奴が幸せそうにやってんの余計にムカつくわぁ。)
「勿論だよ...それより時間も近いし、早く食べきってしまおうか。」
「そうだな...授業に遅れてしまうのは本末転倒だ。」
それからものの数分で食べきった二人は屋上から出ていった。
「...はぁ、あいつを孤立させた意味ないじゃん!」
「落ち着いてよ、藤ちゃん。」
「いや、だってせっかくクラスメイトを仲違いにさせて、落書きの冤罪を彼女たちに掛け
ようとしたらそれ跳ねのけちゃったのよ!」
出ていった後、彼女たちはふたたび声に出して話始める。
「だから、水掛けたりしてやったじゃん...まぁ、あれは今後またやると先生にバレかね
ないから無理だけど。」
「でも、今回だって実質失敗じゃん!」
藤たちが盛り上がる中、一人何か考え込む女子。
「あのさ...掃除の押し付けの件だけどさ。裏切るように仕組んだ宮沢が体調崩したって
坂上に伝えたやつって誰だっけ?」
「たしか...」
(「一緒に手伝ってくれた先輩から宮沢さんが体調を崩したと聞いている...」)
藤は落書きでの魔女裁判の時を思い出す。
「坂上のやつ、先輩って言ってたけど...」
「おそらくその先輩が先ほどの奴だろう...ここ最近、教室で食べてないと思えば、言伝
で誰かと中庭で食べてると聞いていたが...これは困ったものだな。」
「うーん...」
女子達は考え込む。
「でも、宮沢に前聞いたけどさ...伝言とか頼んでないとか言ってたけど坂上の言ってた
事ってどうなの?」
「坂上はおそらくあまり嘘をつかない...そして宮沢の奴も自分の生活を脅かされてわざわざ裏切るのも愚かとしか言いようがない...」
「もしかして伝言の嘘ってその乾が付いたんじゃない?」
突如、ある一人の女子のひらめきにより彼女たちの突破口が見え始める。
「良い事思いついた。」
「何か思いついたの?フジ。」
「うん...まぁ、あいつの本性がいまいち分からないからなんとも言えないんだけどさ...
乾の救うタイミング、都合が良すぎない?」
「確かに」
「私だったらコロッといっちゃうわ。」
いたずらな笑みを浮かべる藤は続ける。
「そこで乾の嘘とも言える宮沢の伝言を使うのよ...あいつが一人になったところを狙っ
て宮沢と私が連れ出して乾が嘘をついていた真実を伝える。」
「なるほど...で、坂上に乾がお前を落とすためにあえて都合の良いタイミングで助けて
いたにすぎないことを言えば効果抜群じゃん!」
「さっすが、フジ。賢いじゃん!」
賞賛が巻き起こる女子達。
「じゃあ、次からはその先輩を坂上から引き離すってことで決定ね。」
「賛成!」
「てか、後時間5分ほどじゃん。」
スマホをいじっていた女子が昼休みの終わりを悟る。
「早く教室に戻らないと...」
「いやまじ、時間見てくれて助かったわ。」
梯子の下へと降りていく女子達。
「へぇ~...いじめってそんな風に決まるって初めて知ったなぁ。」
「「「!?」」」
屋上の出入口が開き、中から誰かが現れる。
「突然何の話よ?それにあんた誰?」
「僕は乾凪。君たちと話をしたかったんだ。」
「へぇ~...乾さんと私らは何の関係もありませんが?」
出てきた人物が話していた乾に驚きつつも、平然を装おう女子達。
「僕のことを話していたのに知らないフリをしているんだね。そんなことはどうでもいい
けど...」
『いや、だってせっかくクラスメイトを仲違いにさせて、落書きの冤罪を彼女たちに掛け
ようとしたらそれ跳ねのけちゃったのよ!』
『だから、水掛けたりしてやったじゃん...まぁ、あれは今後またやると先生にバレかね
ないから無理だけど。』
「こ、これは!?」
さっきまで会話していた内容が耳に入ってくる。
乾がポケットから機械のようなものを取り出す。
「ボイスレコーダー!?」
「無関係ではなさそうだね...君たちはこの国の言ういじめをしたってわけだ。」
「くっ!」
緊張感の走る女子達に対して、乾はどこか平然とした様子。
「そこで提案なんだけどさ...君たちには坂上さんからのいじめに手を引いてもらいたい
んだよ。」
「へぇ~...そんなにあいつのことが好きなんだ。」
「...他に要求は無いのかしら。」
ボイスレコーダーをしまった乾を睨みつける一同。
「それだけだよ...君たちがなんの危害も加えなければ、平和が続くだけ。僕は大事にな
らなければそれでいいんだ...」
「変わってる...」
穏やかな笑顔を見せてくる乾に女子の一部は気味の悪さを感じ取る。
凪の青い瞳が、藤たちを見つめる。
「……」
誰も、何も言えなかった。
「乾先輩、このあたりに標語を書いてほしい。」
「この辺ね。」
放課後、私と先輩はポスターの作り直しに励んでいた。
濡れてしまったポスターを参考にしながら、新しい紙へ文字を書き写していく。
先輩が文字を書き、私はその横で全体の配置を確認する。
先ほどまで話していたのが嘘のように、教室は静かだった。
......
マーカーが擦れる音のみが耳に入る。
濡れたポスターから目を離して、先輩を見ると集中して書いているようだ。
(「君はもしかして乾君の彼女?」)
彼の横顔をしばらく眺めているとふと、昼休みに言われた言葉がよぎった。
彼女。
その言葉を思い浮かべると、胸の奥が少しだけ落ち着かなくなる。
……これは、恋なのだろうか?
いざ先輩の友人に言われてみて、初めて考えてしまった。
私は乾先輩とどういう関係なのだろう。
困っているときに助けてもらって、一緒に昼食を食べて...
今はこうして、私の選挙のためのポスターまで一緒に作っている。
どれも、先輩にとってはただの親切なのかもしれない。
「...たしかに」
「ん?坂上さんどうしたの?」
「い、いや...特に何もない。」
顔を上げてこちらを見る先輩に思わず、視線をポスターのほうへ戻してしまった。
…たしかに恋人同士なら、こうやって向かい合って一緒に何かをするのかもしれない。
「できた!...どうかな?」
先輩が書き終わったため、私は濡れたポスターと見比べる。
「...うん、これで完成だ。」
「良かったぁ...後は先生にチェックしてもらう感じかな?」
「あぁ、そうだな。」
その後、ポスターを確認してもらった後に先生から無事に合意をもらえた。
完成したポスターを印刷機にかけてもらい、先輩と二人で校内のあらゆる場所に貼ってい
くうちに気づけば帰る頃になってしまった。
「本当に先輩には感謝しかないな。」
「ううん、感謝するほどでもないよ。僕はただ坂上さんが困っていたから手伝っただけだ
よ。」
下校中、先輩と話していた。
「...そうか。」
困っていたから手伝っただけ...別にこの言葉は先輩自身の思っていることに過ぎない
が...どこか複雑に思う。
...この複雑さをどう説明すればいいのか私にはできなかった。
丑三つ時。
昔から幽霊が出る時間などと言われ、人々が外出を避けていた時間帯だ。
当然、この時間に神社へ向かう人間などほとんどいない。
まして、外国人観光客ならなおさらだ。
だがこの初老の外国人、ロヴロは4日前に訪れていた神社に再び足を運んでいた。
(またどこかへ運ばれるとは思うが...以前のように見逃すようなヘマはしない。)
鳥居の前までたどり着いたロヴロは周囲を確認する。
(すでに待機しているな...では、そろそろくぐるとするか。)
前回と同様に眼で部下や弟子に視線を向けて瞬きを行う。
それを合図としたロヴロは鳥居をくぐる。
(そういえば鳥居をくぐって少し待つ必要があったな)
「うっ!?」
「ゴホッ!?」
「!?」
突如、鳥居周辺で待機していたもの達が次々と倒れる。
(弟子たちとはいえ、これだけの数をまとめて無力化しているとなると……)
『...じっとしてもらおうか?』
「私は依頼の可否を訊きに来ただけなのだが?」
何かに掴まれて首に当てられているのは分かるものの、目視できない。
『にしては随分とお仲間を連れてきているみたいだな?』
「一人でこちらに来なかったことは謝罪しよう...」
少しの沈黙が発生する。
『謝罪は受け取っておく...とりあえず、あんたの仲間を置いていくことになるがいい
か?』
「構わない...連れて行ってくれ。」
『あぁ。』
ロヴロは前回同様に抱えられてどこかへ連れられる。
「今度は路地裏か...」
『ここで調査報告をさせてもらう。』
いつの間にか積まれた段ボールの裏に影が現れる。
(前回同様に何かの裏に隠れていたが、透明化にもインターバルのようなものがあるとい
うのか?)
その影を睨みながらも、ロヴロは彼が口を開くのを待つ。
『まずは標的について話させてもらう。確かにあんたの出した書類のいう通り、闇金に勤
めているのは確認済みだ。』
(...杞憂だったようだな。)
「なるほど...ということは」
『まだ話はある...むしろここからが本題だ。』
(急に殺気を出してきたな...)
物陰越しでも分かる鋭い視線がロヴロを貫く。
『あんた、俺を試していただろ?』
「試す?どういう話か聞かせてもらおうか。」
...この様子だと回答できない限り答えてくれないようだな。
『まずあんたはさっきの周りの奴らを仲間と言ったな?』
「...そうだな。」
はっとした様子で目を見開く依頼人。
(『にしては随分とお仲間を連れてきているみたいだな?』)
(「一人でこちらに来なかったことは謝罪しよう...」)
このやり取りの際、俺はあえて「仲間」と言って鎌をかけたがどうやら当たっていたよう
だな。
『気づかれないように鳥居周囲に隠れて展開している様子はまるで俺を観測するためだと
言っているも同然...それを四日前と今回で同じことされて疑うわけにはいかない。』
「そこは私の失態だな...だが、それだけでは説明はつかないと思うが?」
『もう一度移動することになるがいいか?』
「構わない...」
インクルシオで再び透明化を施す。
そして、依頼人である彼をまた抱えて路地裏から出る。
なんども抱えてるけど、この人歳のわりには結構体格がしっかりしてるんだよな...
また、数十分ほど爆速で走り、標的の住んでいたマンションの玄関前まで到着する。
「ここは標的のマンションの部屋の前だが...」
『まぁ、見てろって。』
懐から鍵を取り出して扉を解錠する。
見た感じ彼の表情に変化は見られなかったものの、その瞬間だけ少し雰囲気が崩れたよう
に感じる。
「もう標的を仕留めているのか?」
『いや...まだ生きてるさ。』
部屋の中まで侵入した俺と依頼人はある扉の前で止まる。
そこを開くと、依頼人の標的が横たわっている。
『ここに眠らせてるが...こいつ、あんたの協力者だろ?』
「...ほう、なぜそうだと言える?」
『それは今から話す。』
俺が確信したのは先日の標的の調査のことだった。
透明化では標的の家に侵入できないと悟った俺は別の手段をとった。
「ガイアファンデーション。」
鎧が消滅し、代わりに化粧具箱の帝具が出現する。
箱を開け、鏡を覗くと橙色の長髪の少女が映る。
チェルシー...いや、これが私。
何度か見て慣れてしまったが、私の帝具を使うと仲間の姿に寄っていく。
とりあえず、標的に侵入するには何とかして警戒を解いた上で開けてもらうしかない。
化粧道具を手に取り、自分の姿を変えていく。
今の私は幼女そのもの。
標的のいる部屋の前に来た私はインターホンを見上げる。
...これ、届くかしら。
手を伸ばしてみるもののギリギリボタンには届かない。
ジャンプするしかないわね。
ピンポーン
床を蹴って高さを稼ぎ、なんとか鳴らすことを成功する。
この背丈で相手に見えるだろうか...仕方がない。
「すいませーん!」
ジャンプによって廊下がバンバンと響き渡る。
早く出てくれないと近所迷惑で追い出されてしまう...早く出てほしい。
『...こんな時間にどうしたのかな?』
やっと出た!
「えーっと...おじさん、これ見覚えない?」
持っていた五百円玉を手にして掲げながらジャンプで見えるようにする。
『見覚えも何も...まったく見えないが。』
「えぇ!?おじさん、これを落としたでしょ!」
勿論、標的は落としていない。
もっとも、私の目的は標的に扉を開けてもらうこと...わざと見えにくくしている。
なかなか出る気配がしない...近所の人には申し訳ないけど、うるさくするしかないわ
ね。
着地時の衝撃を逃がすのを辞めることでより騒音が酷くなる。
『分かったから!ちょっとジャンプするのは止めてくれ!』
インターホンから返事が返ってきた途端、すぐに扉が開かれる。
「で、落とし物って何?」
「これだよ!これ!」
男にしっかりと五百円玉を見せつつ、観察する。
相変わらず、扉を最小限に開けていて警戒している様子だ。
「あのな...お嬢ちゃん、勘違いしていないか?」
「勘違い?」
純情な少女を演じるため、首を傾げてみる。
「あぁ...俺、基本はクレジットカードで払うから現金は持ってねぇんだよ。」
それにしても帰宅時の横暴と比べると全然違う...試しに仕掛けてみようか。
「違うんだ...」
顔を少し俯き、今にも泣きそうな顔を作る。
「だが、届けようとしてくれたのはありがとうな...拾った金は警察にでも届けてく
れ。」
「うん!」
...あれ?もっとひどい対応をしそうなものだけど。
「じゃあな。」
背中から視線を感じる...まだ警戒しているようね。
一応、いつでも変身できるように準備をしておこうか。
.....よし、今だ!
ガイアファンデーションで瞬時に虫へ変身し、標的の玄関前まで飛んで引き返す。
ぎ、ギリギリじゃん!?
閉まりかけの扉の隙間になんとか滑り込み、家の中の侵入に成功した。
あともう少しで扉に挟まれてお陀仏確定だったわ...
「...そうだ。」
標的は何かを思い出したかのようにある部屋の扉の前に移動して開ける。
そのまま標的とともに部屋に入ると、特に変わった様子が見られない。
「先生に送らないとな...」
先生...この男の上司のことかしら?
男は机に置かれたノートパソコンを立ち上げ、何らかのメールを打っている。
...暗号かしら?さっぱりわからない。
「ふぅ...」
メールを返信し終えたのか、パソコンを閉じた男はため息をつく。
「とりあえず、見えない例の暗殺者は報告できたな。」
!?...バレていたみたいね。
インクルシオを使う際は慎重にしなきゃ...
「あぁ、どうなるんだろか...」
男は椅子に寄りかかったままだが、返信を待っているのだろうか。
それから30分ほど時間が経った頃。
「...先生からか!」
パソコンの画面に飛びつきメールを開く男。
返信内容も暗号化されていて読めない...というか、ただの闇金の中間管理職にしては異
様に秘匿に徹底している。
まるで革命軍の連絡のように見えてくるわ。
「明日の報告次第で俺が殺されるわけかぁ...嫌だなぁ。」
報告...!?
依頼人に調査結果を伝えるのが、ちょうど4日後経った明日。
...私の裏どりが漏れている可能性があるね。
どこから漏れた?
...鳥居周辺にいたやつら?
彼らはまるで依頼人を待ち構えているように見えた。
もし、依頼人に対して敵対的な存在であれば、僕に干渉する前に依頼人に何かしらのアク
ションを起こしている。
...依頼後に彼らは情報を吐かせたのか?
その可能性は十分あるが、透明化という情報が渡ったとしても信じずらい。
依頼人を抱えて変えたあの緑地に誰かが見ていたのか?
...でも、周囲を確認した限り依頼人以外誰もいなかった。
となると、結局どこから?
「先生の背後をとったんなら俺が抵抗しても勝ち目ないよな...」
先生の背後...私はこの男の関係者に手を出した覚えがない。
メールを読んだこの男の言う先生。
私の調査を知っているかつ、透明化を知っていて僕に背後をとられていたという条件を考
えると...
やはり出所は依頼人。
仮に漏らしたのが彼だとして、捕まって情報を吐かされたのだろうか?
(『とりあえず、依頼は以上だ。前金として』)
そもそもあの依頼人が一般人には見えない。
暗殺者に似通った雰囲気に前金について考慮していた行動...
(『...ほう、裏どりか。』)
それに依頼前に調査をすると伝える時、早く殺してほしいと思っているはずがあんなに笑
みを見せるのだろうか?
あの表情に視線はまるで何かを観察して新たな発見をしたような感じ。
...仮に暗殺者だと仮定して僕にわざわざ依頼した理由。
......
よく考えると私、他の暗殺者とあまり関りがないのよね。
関りがないのは暗殺者も同じ......まさか!?
四日間で調査した出来事を一部伏せながらも目の前の依頼人に聞かせた。
『あの場でしか知りえない情報をこうもペラペラと話されればさすがにあんたに疑いがい
く...』
「なるほど...だが、私にそれをする動機がないと思うが?」
『あんたの目的...それは俺がどういう暗殺者か知っておきたかったからだと思ってい
る。』
依頼人の表情は未だに崩れていないが...もう一押しでいけそうだ。
『新参で、あまり周りの暗殺者と関わりのなかった俺がどういう人物なのか、あんたは知
りたかった。でも、俺と直接連絡を取るような繋がりがない。だから依頼人という立場を
使って、俺と接触した……そういうことだったんじゃないのか?』
「そうなると私が暗殺者、と言うことになるが...さすがに同業者には分かってしまうよ
うだな。」
『あんたの外見に似合わない肉体に警戒心、それに雰囲気で分かってくるさ。』
ロヴロは協力者に視線を向けてため息をついた後、俺に笑みを向ける。
「見事なものだ...そこまで言われてしまえば認めざるを得ないな。」
『...それであんたは俺をどうするつもりなんだ?』
軽い拍手をする依頼人を俺は睨む。
「それに関しては今から説明させてもらうが...よろしいかな?」
『...構わない。』
依頼人は自身について口を開き始めた。
ロヴロ・ブロフスキ...この世界の殺し屋として...