僕は探す!   作:T氏@pixiv

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4 居場所を探す

別の図書館で本を読んでいた。

 

なぜ赤髪の彼が僕に尾行してきたのか検討はつかないが、彼が近くにいるあの図書館には

もう通わないほうが良いだろう。

 

「あのぉ...もう閉館の時間です。」

 

「あ...すいません!」

 

読んでいた本を閉じて急いで元の棚へ戻す。

 

「本の貸しだしを受け付けましょうか?」

 

「いや、大丈夫ですよ。」

 

公立図書館は発行したカードを使って本を借りられるようだが、居場所どころか戸籍のない僕に本を借りることなどできない。

 

追い出された僕は当てもなく街をふらつく。

 

「2名様、いらっしゃいませ!」

 

「ありがとうございました!」

 

飲食店に入っていく飢えた客と満腹で出ていく客。

 

帝都とは比べ物にならないほど飲食店は多いが、この国の金がない僕にとっては何もない砂漠に等しい。

 

「こんな状況、アカメには耐えられないだろうな....」

 

いや目の前に食べられるものがあるからこそ、砂漠より厳しいかもしれない。

 

背後から気配を感じるな...

 

「君、ちょっといいかな?」

 

「はい」

 

振り向くと制服らしき姿に帽子を被った男二人。

 

恐らく警察と呼ばれる治安組織の警備隊のようなものだろうか。

 

「えっと...僕は何か違反でもしたんですか?」

 

「違反?とんでもない...職質だよ。」

 

ショクシツ?

 

「君は...見たところ中学生?」

 

「...はい。」

 

適当に答えてしまったが、職質が分かった。

 

どうやら身元を確認するようだ。

 

「この時間帯は未成年を私たちが保護しないといけなくてね...」

 

「親御さんの連絡先を教え」

 

「待て!」

 

僕は全力で走り出す。

 

ナイトレイドでの長距離移動で走るのは苦ではないが、この人混みを掻き分けるのは面倒だ。

 

「待ちなさ...はぁ、はぁ...」

 

「ゴホッ!速い...」

 

彼らも体力はあるのだが、着ている鎧?や装備の重さで息切れしている。

 

「こちら山本、未成年者が逃走中。相手は速いので至急応援を!」

 

『了解、こちら橋本が向かう。』

 

応援を呼ばれたか!?

 

ここはインクルシオの透明化...駄目だ、効果時間が短い。

 

「待ちなさい!」

 

やはり人混みの中を移動するのに慣れているのか、振り切るのが難しい。

 

人混み?...わざわざ逃げる必要はないかもしれない。

 

「きゃ!?」

 

「押すなよ!」

 

あえてより密集した人混みの中を潜る。

 

「ガイアファンデーション...」

 

すぐさま帝具で姿を変える。

 

「警察です!通して...」

 

「ニァーン!」

 

「あら!」

 

猫に変身した僕は警察に掻き分けられた女の人に抱えられる。

 

「あれ?ここに飛び込んだ青年は...て君は学生か?」

 

「げ!?...補導されちゃうじゃん!」

 

どうやら女の人も学生のようだ。

 

「とりあえずこの娘を保護しようか...」

 

「はい、先輩。」

 

「ちょっと!私は逸れて...て猫ちゃーん!?」

 

僕は彼女の手元から離れ、路地裏へ入っていった。

 

 

 

この国の社会を見ていくと思うことがある。

 

帝都より活気があって表立った犯罪が見られないが、僕にはどうも窮屈に感じて仕方がない。

 

今回はちょっと危なかったな...

 

そう溜息をつきながら、気がつくと人通りが少なく閑散とした場所に変わっていた。

 

気配は感じないな...

 

「ンー...疲れたぁ。」

 

変身を解き、人間の姿に戻る。

 

こう緊張した後だと何か甘いものでも咥えたい気分になる。

 

(『そうでしょ、ナギ?』)

 

チェルシーは極限状態でも落ち着くために飴をずっと舐めていたのかもしれない...

 

「なぁ、俺らと一緒に遊ばね?」

 

「いい店知ってるからさぁ〜。」

 

ナンパ...なのだろうか?

 

僕の周りには4人の男たちが囲っている。

 

「なぁ、聞いてるぅ?」

 

「一緒に酔いつぶれようぜ。」

 

僕は男なはずなんだけどなぁ...

 

「お兄さん達、ごめんねぇ〜...僕男だからさ?」

 

あ、つい彼女の口調になってしまった...

 

「「「「え?」」」」

 

「ん?」

 

何かおかしいのだろうか?

 

「いやいや、その胸で何言ってるの!?」

 

胸?

 

「こんなかわいい男いないって!」

 

「それじゃあ俺らが確認するってのはどう?」

 

「お!いいねぇ!」

 

僕に手を伸ばそうとする4人。

 

「うぉ!?」

 

「痛!?」

 

僕はしゃがみ込んでがら空きの足元に蹴りを入れて4人を転倒させる。

 

うん、男でも触られるのは不快だからね。

 

「テメェ、面がいいから付き合ってやるのによぉ!」

 

「...ちょっとお仕置きが必要だよなぁ〜。」

 

4人と距離を取るものの、この帝具では彼らを気絶させる能力はない。

 

こうなったらライオネルを

 

「け、警察を呼ぶぞ!」

 

僕とナンパ四人の視線は乱入してきた声の主にいく。

 

「おいおい、サラリーマンさんよぉ~邪魔しねーでくれよ」

 

「あの娘が、嫌がってるだろ!」

 

見た目はヨレヨレのスーツ姿の男。

 

顔から見て体調がすぐれないのだろうか?

 

「き、君は逃げなさい!」

 

「え?」

 

あなたこそ逃げるべきではないだろうか?

 

「調子乗ってんじゃねーぞ!」

 

「うっ!?」

 

男を囲んだ4人は拳を振るい始める。

 

「に、げ」

 

「なっ!?」

 

ヘイトが男に集まったその瞬間を狙って4人の体制を崩す。

 

「逃げるわよ!」

 

「!?」

 

僕は殴られた男を引っ張って、その場から離れる。

 

「はぁ、はぁ...」

 

相変わらず人通りの少ない場所であるが、後方の気配からして4人のナンパはもう追って

きてない。

 

「もう大丈夫そうね...」

 

「はぁ、はぁ、はぁ...」

 

引っ張ってきた男は相変わらず荒い呼吸を続ける。

 

「...おじさんは大丈夫?」

 

「はぁ、ゴホッ!...大丈夫。」

 

腹部を殴られた影響か苦しそうに見えるが、深呼吸を整える。

 

「...結局、ミイラ取りがミイラになっちゃったな...」

 

肩を落としながらつぶやく男。

 

人数的に勝てるはずがないのは分かっているのに結構落ち込んでいるな。

 

「あ...」

 

人前でアカメのようにお腹を鳴らしてしまった...

 

「もしかして...ご飯食べれてないのか?」

 

「恥ずかしながらそうです...」

 

男の目線が遠くの看板に目がいく。

 

 

 

「お待たせしました!」

 

この国にはファミリーレストランという同じ系列の店がこの国のあちこちで展開されているらしい。

 

僕が選んだパフェをウェイターが机に置いて去っていく。

 

「さぁ、お腹が減ったでしょう?」

 

これは本来、僕が自分で払って食べるものだが、なぜか彼は奢りたがる。

 

何か裏があると思ってしまうが、この男に悪意など見られない。

 

「これは私の奢りだ...気にせず食べなさい。」

 

「...では、遠慮なく。」

 

スプーンで一口放り込む。

 

「おいしい...」

 

「まるで初めて食べたみたいな顔をするね...」

 

いや、別にパフェ自体はナイトレイドにいた時も食べたことはある。

 

帝都の店でも見ることはあるが、この国は本当に食や医療の発達がすごい。

 

これはマインやチェルシーも絶賛するだろうな。

 

「...こうしていると、娘と食事しに行った日を思い出すよ。」

 

「娘?」

 

あれ?僕は男なんだけどな。

 

「ちょうど君と同じ年頃の娘だったんだ...」

 

男は俯き、表情に陰りができる。

 

この顔、生きる気力を無くしている...

 

「...おじさんは何かあったの?」

 

駄目だ...口調が僕らしくなくなってるな。

 

「娘はね、自殺してしまったんだ...」

 

話を聞いていくうちに男の要点はこうだろうか?

 

この男は妻を無くして娘を一人で育ててきたが、娘がいじめられたことで自殺してしまった。

 

そのことに関して警察や裁判?で訴えようとした男だったが、いじめっ子の親は資産家で

財力でもみ消されてしまったといった...

 

「絶望した私は生きる気力もなくあてもなく放浪していたのだが...娘と同じ君を見てね。」

 

男は置かれた水をのどに流しこむ。

 

...どこにいても他人の営みには闇がある。

 

帝都では露骨な暴力や上層部の腐敗が見えていた。

 

ここは制度を厳格にし、賑わいつつも皆普通に生活している。

 

殺されることもなければ、飢えに苦しんでいるわけでもない。

 

まだ1か月もここに来てないから分からないけど...

 

でも、なんだろう...帝都より陰湿でもっと質が悪い。

 

「話聞いてもらってすまないね...ちょっと不味くなってしまったかな。」

 

口に運んでいた僕が黙って聞いているのを見て、不憫に感じているのだろう。

 

「...天や国が裁けないその悪の復讐、僕に依頼しない?」

 

 

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