僕は探す!   作:T氏@pixiv

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6 裁きを探す

『おい有希子!この成績はなんなんだ!』

 

私の家は父が厳しかった。

 

良い肩書生活から離れたくて、椚木ヶ丘の制服を脱ぎたくて、知っている人がいない場所で恰好を変えて遊んでいた。

 

『お前、E組に堕ちたのか!親不幸め!』

 

『うっ!?』

 

E組に堕ちた私に頬を叩く父。

 

どんどん自分の首を絞めることになった。

 

「...はぁ。」

 

また、首を絞める結果になるはずなのに私はシューティングに浸っていた。

 

「そこのお姉さん。」

 

「!?」

 

ゲーム画面から目を話した私は振り返ると男二人が立って話しかけてきた。

 

「シューティングめっちゃ上手いじゃん!」

 

「下手な俺等にも教えてよ。」

 

ここで彼らに捕まってしまったらまた父に怒られる。

 

「え?あ、あの...」

 

だけど、焦る私は何を言えばいいのか咄嗟に出てこない。

 

「ねぇ、立ってるのも何だから店に入って話しようぜ?」

 

「私...学生で...」

 

「いやいや大丈夫!この辺監視は薄いからさぁ〜。」

 

刺激しないような言葉を選ぶも私に執着し続ける彼ら。

 

私、このままじゃ...そうだ!

 

「ごめんなさい!友達が待っているので。」

 

「うぉ!?」

 

多少強引になってしまったけど、ここは早く離れるしかない。

 

通っていたゲームセンターを出て、無我夢中で走り続ける。

 

「!?」

 

「おいおい...せっかく化粧してきたんだろ?」

 

腕を捕まえられた私は振り向くと二人がすぐに追いついてきたようだ。

 

回りを見渡すも誰も通らない裏路地では助けも呼べない。

 

「ちょうどいい場所に逃げ込んでくれたじゃないか...懐柔する手間も省ける。」

 

「ほら!脱げよ!!」

 

「きゃ!?」

 

私の衣服を掴み、はぎ取ろうとする一人。

 

「いい加減、諦めろ!」

 

「や、やめ...!?」

 

抵抗するも男性の力に勝てるはずもなく、衣服は破ける。

 

...もう駄目なのかもしれない。

 

曝け出された上体を腕で隠し、膝から崩れ落ちる。

 

「うぉ、白い肌!」

 

「随分と大切に育てられたみたいだな...前の女より実にいい。」

 

肩に触れられた私は声を出すこともできず、震えることしかできない。

 

「どうせ戻れないんだ...快楽に溺れようぜ。」

 

肩に触れる手が下の方へと向かう。

 

恐怖で抵抗も声も出ない。

 

...嫌だ。

 

 

目を瞑った私はただ破滅を待っていた。

 

いつまで経っても侵食してこない彼らに私はゆっくりと目を開く。

 

「うぅ...」

 

「...」

 

伸びた二人の側には路地の出入り口から差し込む光を背にして逆光で顔の見えない誰かが

立っていた。

 

「え?」

 

助けてくれたのだろうか?

 

それにしてはあまりにもいきなりだった。

 

「あぁ...助けるのが遅くてごめん。」

 

その影が私に近づいてしゃがみ込む。声だけは妙に静かでどこか、知っている誰かを思い出させた。

 

「大丈夫...じゃないよね。」

 

 

 

手を出してしまった...調査は基本、観測に徹しなければいけない。

 

目標の鬼沢とその友人の様子を見るとただ気絶しているだけのようではある。

 

「え?」

 

隙間から漏れる街の光が被害者である彼女の姿を僕の目に映す。

 

下着は無事のようだが...このまま外に出歩くのは無理そうだ。

 

助かったような顔を見せる彼女だが、僕は君を見放して傍観するつもりだった悪人...胸が苦しくなる。

 

「あぁ...助けるのが遅くてごめん。」

 

僕は彼女の元へ近づき、目線を合わせるためにしゃがみ込む。

 

どっちにしてもそのままにしておくわけにはいけない。

 

「大丈夫...」

 

僕をぼーっと見つめている...トラウマなのだろうか。

 

「じゃないよね。」

 

「...うん。」

 

「そうだよね...あ」

 

代わりの服を彼女に着せないと...仕方がない。

 

「あまりいい服じゃないけど、これを。」

 

着ていた白いジャケットを彼女に羽織る

 

「ありがとう...」

 

...さすがにいきなり現れた僕に警戒をするのは当然か。

 

今後の方針としては一旦彼女を避難させた後で依頼人に報告しようか。

 

「立てる?」

 

「ごめんなさい...足がすくんで...」

 

それもそうだろう...運んでいこうか。

 

「抱っこ...は恥ずかしいかな?肩を貸すね。」

 

「...」

 

彼女は僕に肩を担がれるまま立ち上がる。

 

本当は抱えるほうが早く移動できるが、年頃の子でそれはきついだろう。

 

「よし...ここまで来れば奴らも追えないだろう。」

 

人が比較的多い駅前のベンチに彼女を下ろす。

 

「...」

 

彼女の暗い影を落とす表情を見せる。

 

だが、僕は依頼を受けている最中だ。

 

標的の監視を怠るわけにはいかない。

 

「送ってあげたいけど...用事があるから、これで。」

 

彼女に背を向けて鬼沢の下へ歩む。

 

「...待って!」

 

呼び止められて振り返る。

 

...何かやらかしているのだろうか?

 

「まだ...帰りたくない。」

 

帰りたくない...か。

 

「...僕は行かなきゃならない。」

 

「だったら、あなたの名前だけでも!」

 

助けてもらった恩でも感じているのだろう。

 

「僕は名前を覚えてもらうほどいい人ではないよ。」

 

何か叫んでいたようだが、走り出した僕にその言葉は届かなかった。

 

 

 

「...そうか。娘の次に被害が出そうになったのか...」

 

再び別日に依頼人である男に僕は報告していた。

 

「例外を除き、3人が被害にあった...父親の方も何人かの被害者を出している。」

 

「...アイツラに反省などやっぱりないか...」

 

男は懐から携帯を取り出す。

 

「クズハ...国も司法も奴らを裁いてくれない...お前と同じ被害者も出続けている...も

ういいよな。」

 

携帯に映された少女に話しかけるその姿はまさに父親そのものだった。

 

「...君にあいつらの殺害を依頼したい。」

 

「本当にいいんだね?」

 

「私は復讐のために依頼するのではない...これ以上娘と同じ被害者を未来に出さないた

めだ!」

 

...迷いはなさそうだ。

 

「その依頼、受けるよ。」

 

 

 

「ほぉ...やはり私の駒よりプロにやってもらう方が別格よ。」

 

鬼沢父は風俗施設で用を足すために厠に行こうとしていた。

 

「ごゆっくりお過ごしくださいませ。」

 

(ほうほう...後でこちらに来てもらおうか。)

 

すれ違う遊女に目を奪われ、鼻を伸ばす鬼沢父。

 

次々とすれ違う中、厠に近づくにつれて人とすれ違わなくなる。

 

「人ひとりいないのかぁ...ん?」

 

「...」

 

厠から出てくる紫髪の女性がこちらの方へ歩いていく。

 

自分と彼女以外誰もいないこの状況ににやつく。

 

(すこしからかうかの。)

 

徐々に二人の間の距離が狭くなっていく。

 

「ほぉれ...ん?」

 

彼女を触ったはずだが、特に反応もなく横切る様子に困惑する鬼沢父。

 

指先や手首の感覚がなくなるような気分である。

 

「な!?」

 

手はいつの間にか消失し、代わりに断面があらわになっていた。

 

「は...」

 

遅れて噴き出す血に叫ぶも声にならない。

 

突如、まるで高いところから落とされたかのように崩れる。

 

叫ぶことすらままならない彼は驚愕する。

 

「か、ら、だ?」

 

それは転倒したのではなく自分の首が体から落ちていた。

 

「...ごゆっくりお過ごしください。」

 

通り過ぎた彼女の手には巨大なハサミを手にしていた。

 

 

 

「はぁ~...今日のやつもなかなか悪くなかったなぁ。」

 

友人と別れた由良は街の中をほっつき歩いていた。

 

「ただ、前の女を逃がしちまったのが心残りだな...」

 

以前のゲームセンターにいた少女が脳裏によぎる。

 

(...さすがにいないと思うが、ちょっと見てみるか。)

 

例のゲームセンターを通り過ぎようとした由良だったが、特にやることもなかったので中へ入る。

 

(退屈しのぎにはなるが、そんなに没頭するほどかねぇ...)

 

液晶の前で釘付けになる客を冷めた目で見ながら、以前の彼女がいた場所へと歩む。

 

(やはりいねーか...ん?)

 

「へぇ、意外と面白いじゃん...」

 

メダルゲームの前で没頭するほどではないが楽しそうに遊ぶ金髪の女。

 

胸の大きさや身長から女子高校生のように見える。

 

(ほーん、こいつも上物だな...誘ってみるか。)

 

「なぁ、そこのお姉さんよ。」

 

「ん?僕かい?」

 

(女で僕っ子か...なかなか面白そうじゃん)

 

接近して声をかけた由良は相手の様子を伺う。

 

「ゲーセンは初めて?」

 

「あぁ、僕自身はあまりこういうのになじみがなくってね。」

 

(意外と反応は悪くなさそうだな...)

 

拒否反応を示すどころか会話に応じる彼女に意外性を感じる由良。

 

「でも、やってみたら面白かったわけでね。」

 

じゃりじゃりとメダルが溜まったカップを鳴らす女。

 

「それよりも僕に何か用?」

 

「そりゃ...君みたいなかわいい子をみたら誘いたくもなるだろう?」

 

肩に手を回してみる由良だが、女は拒絶する様子を見せない。

 

「...いいね。僕も君を誘ってみたかったのさ。」

 

(こりゃあ、持ち帰って遊べそうだな。)

 

「ほう、それは光栄なこった...」

 

試しに由良は唇でちょっかいを仕掛けようとする。

 

「おっと...いくらこんな恰好をする僕でも人前では恥ずかしいなぁ...」

 

「こっちはいろいろと盛り上がってきているんだが?」

 

女は出入口に目線を送る。

 

「人目の付かないところなら構わないよ。」

 

「なるほどな...俺としてもそれは好都合だ。」

 

二人は出ていき、路地裏の仲へと入って行く。

 

「さぁ、そろそろ始めようか!」

 

女の背中に飛び掛かる由良だが、いつの間にか姿が消える。

 

「?」

 

「君さ...相手くらい選んだ方がいいよ?」

 

いつの間にか背後に女が立っていた。

 

「そろそろ終わらせますか...ライオネル。」

 

「お前...何を言って」

 

女の体がムキムキになり、獣のような耳と尻尾が生えてくる。

 

だが、単なるコスプレのものでもなく、手から伸びた鋭い爪が由良を狙っていた。

 

「たかが女に力勝負」

 

腹部に激痛が走ったかと思った矢先、自身が吹っ飛ばされている。

 

(な、なんだよあいつ...バケモンかよ!?)

 

「...女を壊したその罪は、重いよ!」

 

「ゴホォッ!?」

 

再び猛獣の拳を喰らった男は絶命した。

 

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