資料を閉じる。
僕と三枝はしばらく黙っていた。
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文化祭実行委員長だったと思われる女子生徒。
抜き取られた議事録。
不自然な会計資料。
文化祭担当教師、五十嵐修司。
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全部が一つの方向を指している。
けれど。
まだ決定的なものは見つかっていない。
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「どうします?」
三枝が言った。
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僕は机の上の資料を見る。
写真。
議事録。
学校要覧。
藤堂史也のノート。
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その時だった。
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『まだある』
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先生が言った。
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僕は小さく息を吐く。
「何が?」
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『藤堂君が見たものだ』
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僕はノートへ視線を落とす。
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藤堂は文化祭を調べていた。
その途中で異常に気付いた。
そして。
消された人物へ辿り着いた。
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ならば。
途中の記録が残っているはずだった。
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「取材資料か」
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僕は呟く。
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三枝が顔を上げた。
「何かあります?」
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「藤堂さんの取材資料」
「新聞を書くなら絶対に集めてる」
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三枝が頷く。
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確かにそうだった。
記事を書くなら。
元になった資料がある。
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新聞部の取材メモ。
インタビュー記録。
参考資料。
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何かが残っている可能性は高い。
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僕たちは再び棚を調べ始めた。
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古い新聞部資料。
取材ファイル。
行事記録。
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そして。
一冊の薄いファイルが出てきた。
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文化祭特集
取材資料
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そう書かれている。
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「これだ」
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僕はすぐに開いた。
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中にはコピー資料が挟まれている。
会計表。
文化祭実施計画書。
参加団体一覧。
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そして。
数枚目で手が止まった。
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新聞記事のコピーだった。
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地方紙の記事。
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記事の日付を見る。
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二〇一一年十月六日。
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文化祭の直後だ。
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「新聞?」
三枝が言う。
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僕はページをめくる。
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最初の記事は文化祭についてだった。
成功裏に終了したこと。
来場者数。
表彰。
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特に変わった内容ではない。
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だが。
その後ろに挟まれていた記事で。
僕の手が止まった。
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白峰市内高校生死亡
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見出しが目に入る。
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僕は黙った。
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三枝も同じ記事を見る。
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資料倉庫の空気が変わる。
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『読むんだ』
先生が言った。
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僕は記事へ視線を落とす。
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市内在住の高校三年女子生徒が死亡――
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そこから先を読む。
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自宅で発見。
事件性なし。
自殺とみられる。
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ごく短い記事だった。
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けれど。
一番下。
名前の欄で。
僕は息を止めた。
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資料倉庫が静まり返る。
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僕はその名前を見る。
もう一度見る。
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朝倉由紀。
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初めて出てきた名前だった。
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三枝も記事を見つめている。
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「この人……」
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僕は写真を見る。
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文化祭実行委員長だった女子生徒。
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記事の日付を見る。
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文化祭終了後。
わずか数週間後。
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偶然とは思えなかった。
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『ようやく名前が出たな』
先生が言った。
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僕は記事を机へ置く。
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朝倉由紀。
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その名前を頭の中で反芻する。
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十五年前。
文化祭実行委員長だった女子生徒。
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そして。
学校の記録から消された人物。
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「同一人物だと思いますか?」
三枝が聞いた。
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僕は少し考える。
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『可能性ではない』
先生が言った。
『状況証拠としては十分だ』
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僕は頷く。
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「たぶん」
「同じ人だと思う」
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三枝は黙った。
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僕も記事を見る。
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事件性なし。
自殺とみられる。
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その一文が妙に重く感じた。
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『湊君』
先生が言う。
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僕は静かに返す。
「何?」
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『学校が消したかったのは』
『不正会計ではない』
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僕は記事を見る。
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『朝倉由紀でもない』
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少し間を置く。
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『二つが繋がる事実だ』
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僕は黙った。
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不正会計。
朝倉由紀。
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どちらか一方なら。
学校はここまでしない。
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問題なのは。
その二つが繋がった時だ。
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「朝倉由紀が」
僕は呟く。
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「何かを知った」
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三枝も頷いた。
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「だから消された」
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僕は首を振る。
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「違う」
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三枝が顔を上げる。
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僕は記事を見る。
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「消されたんじゃない」
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少し間を置く。
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「死んだ後で」
「消されたんだ」
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資料倉庫が静かになる。
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その違いは大きかった。
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朝倉由紀は存在していた。
文化祭実行委員長だった。
写真にも残っている。
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だが。
死んだ後。
学校はその痕跡を消し始めた。
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名簿。
議事録。
新聞。
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全部から。
少しずつ。
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『そして藤堂君は』
先生が言った。
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『その痕跡を見つけてしまった』
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僕はノートを見る。
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空白は人だ
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その言葉の意味が。
ようやく見え始めていた。
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消されたのは名前じゃない。
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人だった。
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朝倉由紀という一人の生徒だった。
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けれど。
まだ終わりじゃない。
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僕は記事を閉じる。
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名前は分かった。
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でも。
まだ一番大事なことが分からない。
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朝倉由紀は。
何を知ってしまったのか。
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そして。
なぜ学校は十五年間も隠し続けたのか。
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答えはまだ。
その先にあった。
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資料倉庫の中は静かだった。
机の上には文化祭写真集。
議事録。
会計資料。
そして新聞記事のコピー。
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朝倉由紀。
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ようやく名前が分かった。
けれど。
分かったのは、まだそこまでだった。
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「次は」
三枝が言う。
「朝倉さんが何を知ったのか、ですね」
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僕は頷く。
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その通りだった。
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朝倉由紀が消された理由。
学校が隠したかったもの。
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そこへ辿り着くには。
朝倉由紀が何をしていたのかを調べる必要がある。
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僕は文化祭実行委員会の資料を開いた。
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二〇一一年。
文化祭実行委員会。
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そこには当時の役職と名前が記録されていた。
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実行委員長。
朝倉由紀。
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副委員長。
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会計。
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文化祭協力担当(図書委員)。
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担当教員。
五十嵐修司。
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僕は一つずつ確認する。
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「他の人は残ってる」
僕は呟いた。
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三枝が資料を見る。
「え?」
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「副委員長も」
「会計も」
「図書委員も」
「担当の先生も」
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僕は資料をめくる。
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宮本翔太。
佐伯美咲。
神谷一樹。
五十嵐修司。
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それぞれの名前は別の資料にも残っていた。
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「あれ?神谷...」
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藤堂のノートの最後。
神谷なら辿り着くかもしれない。
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先生が言う。
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『藤堂君は、神谷一樹が当時の文化祭に関わっていたことを知っていた』
『そして、神谷一樹に話を聞こうとしていた』
『だが何らかの理由で辿り着けなかった』
『だから最後に名前だけを残した』
『少なくとも私はそう見る』
⸻
先生は少し間を置く。
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『神谷一樹が、この件を知る数少ない人物だと考えていたのかもしれん』
『少なくとも私はそう見る』
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「続きを託そうとした?」
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『その可能性はある』
『だから名前を残したのだろう』
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「でも届かなかった」
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『そういうことだ』
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卒業生名簿。
文化祭記録。
学校資料。
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普通に存在している。
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なのに。
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朝倉由紀だけが。
消されている。
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『重要なのはそこだ』
先生が言った。
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僕は黙って続きを聞く。
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『文化祭実行委員会そのものが消されたわけではない』
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僕は資料を見る。
⸻
確かにそうだった。
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文化祭の記録は残っている。
実行委員会の資料も残っている。
担当教師の名前もある。
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消えているのは。
一人だけ。
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「朝倉さんだけを消した」
僕は言った。
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三枝が静かに頷く。
「理由があるってことですよね」
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僕は写真を見る。
⸻
文化祭実行委員長として写る朝倉由紀。
⸻
周囲の生徒たち。
副委員長の宮本翔太。
会計の佐伯美咲。
図書委員の神谷一樹。
⸻
みんな笑っている。
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この時は。
まだ何も起きていなかったように見える。
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『湊君』
先生が言った。
⸻
僕は写真を見る。
⸻
『君は先ほど、不正会計と言ったな』
⸻
「うん」
⸻
『ならば確認すべきは』
『朝倉由紀が、その情報をどの段階で知ったのかだ』
⸻
僕は考える。
⸻
文化祭実行委員長。
⸻
会計資料を見る立場。
⸻
でも。
会計を担当していたのは佐伯美咲だ。
⸻
なら。
なぜ朝倉由紀だったのか。
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「会計担当じゃないのに」
僕は呟く。
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三枝が僕を見る。
⸻
「何か引っかかりますか?」
⸻
僕は資料を見る。
⸻
「うん」
⸻
実行委員長。
副委員長。
会計。
担当教員。
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役割は分かれている。
⸻
だからこそ。
疑問が生まれる。
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朝倉由紀は。
ただの発見者だったのか。
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それとも。
もっと深い場所にいたのか。
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『調べるべき場所が見えたな』
先生が言った。
⸻
僕は頷く。
⸻
「会計資料だけじゃない」
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僕は言った。
⸻
「文化祭実行委員会の動きそのものを調べる必要がある」
⸻
三枝が頷く。
「宮本さんと佐伯さんについても、ですね」
⸻
僕はもう一度、資料を見る。
文化祭協力担当(図書委員)。
神谷一樹。
それ以上の情報は、まだ見つかっていなかった。
『名前が残っているということは』
先生が言った。
『少なくとも、この人物は消される対象ではなかったということだ』
僕は資料を見る。
朝倉由紀だけが消えている。
その差には、まだ理由があるはずだった。
僕は少し考える。
⸻
「うん」
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ただ。
今はまだ分からない。
⸻
宮本翔太が何を知っていたのか。
佐伯美咲が何を見ていたのか。
神谷一樹が何を話したのか。
五十嵐修司が何を隠したのか。
⸻
そして。
朝倉由紀が。
何を知ってしまったのか。
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『一つずつ確認するしかない』
先生が言った。
⸻
僕は資料を閉じる。
⸻
朝倉由紀は。
文化祭実行委員長だった。
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その事実は分かった。
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しかし。
それだけではない。
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彼女だけが消された理由。
⸻
そこに。
十五年前の本当の出来事が隠れている。
⸻
僕はもう一度。
写真の中の朝倉由紀を見る。
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彼女が最後に見たものは。
何だったのだろう。
⸻
その答えを探すために。
僕たちは次の資料へ手を伸ばした。