帰山湊は先生を見送る   作:宵闇 行方

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第十六話 消えない記録

朝倉由紀の写真を見つめていた。

 

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文化祭実行委員長。

 

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平成三年。

白峰高校に確かに存在した一人の生徒。

 

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長い間。

その記録だけが消されていた。

 

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けれど。

今は違う。

 

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僕たちは。

彼女の名前を知っている。

 

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「これを」

三枝が言った。

 

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「残すべきだと思います」

 

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僕は顔を上げる。

「残す?」

 

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三枝は資料を見る。

 

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「学校新聞です」

 

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僕は少し驚いた。

 

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「朝倉さんのことを?」

 

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「はい」

 

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「消されたままにしていいことじゃないと思います」

 

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僕は机の上を見る。

 

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写真。

資料。

藤堂史也のノート。

 

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確かに。

僕たちは知った。

 

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でも。

知っただけでは。

何も変わらない。

 

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『記録として残す』

先生が言った。

 

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『それで初めて、消されたものは戻る』

 

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僕は頷いた。

 

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数日後。

僕たちは新聞部の部室へ向かった。

 

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二、三年生の新聞部員たちに。

これまで調べた資料を見せるためだった。

 

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机の上に並べる。

 

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文化祭写真。

会計資料。

学校発表。

藤堂史也のノート。

それとは別に

文化祭の展示案内資料という資料を見つけた。

 

そこに、

 

作成担当

図書委員 神谷一樹

 

という名前があった。

 

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『この人物も』

『当時の文化祭資料に関わっていた可能性がある』

先生は言った。

 

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先輩たちは黙って資料を見る。

 

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「……これ」

三年生の部員が言った。

「本当に?」

 

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僕は頷く。

「はい」

 

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「朝倉由紀という生徒が」

「記録から消されていました」

 

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部室が静かになる。

 

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二年生の部員が写真を見る。

 

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「文化祭実行委員長……」

 

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「こんな中心人物が?」

 

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誰もが同じ疑問を抱いていた。

 

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なぜ。

この人だけなのか。

 

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しばらく資料を確認した後。

三年生の部員が口を開いた。

 

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「この件」

「神谷先輩にも見てもらった方がいいかもしれない」

 

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僕は顔を上げる。

 

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「神谷先輩?」

 

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「藤堂さんが追っていた件をずっと調べていた人だろ」

 

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その言葉に。

僕は頷いた。

 

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すぐに電話がかけられた。

 

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数分後。

部室の扉が開く。

 

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「急に呼び出して何だ?」

 

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神谷先輩だった。

 

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「すみません」

三年生の部員が言う。

「見てもらいたいものがあります」

 

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神谷先輩は机を見る。

 

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そして。

 

藤堂史也のノートに目を止めた。

 

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表情が変わる。

 

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「……これ」

 

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神谷先輩はノートを手に取った。

 

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「これが藤堂さんのノートなのか」

 

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しばらく。

何も言わなかった。

 

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ページをめくる。

 

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文化祭。

会計。

消された人物。

 

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「そうか……」

 

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小さな声だった。

 

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「藤堂さんが追っていたのは」

「これだったのか」

 

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三枝が、

「藤堂さんだけじゃなくて、当時記録を残そうとしていた人がいたんですよね」

「文化祭の展示案内資料に名前がありました」

 

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僕は頷く。

 

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「僕たちは」

「朝倉由紀さんに辿り着きました」

 

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神谷先輩は写真を見る。

 

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「……」

 

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「俺は」

神谷先輩が言った。

「ずっと途中で止まっていた」

 

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藤堂史也のノートを見る。

 

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「何を調べていたのか」

「分からないままだった」

 

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僕は黙って聞いていた。

 

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神谷先輩は顔を上げる。

 

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「でも」

「これなら分かる」

 

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「藤堂さんは」

「消えたものを探していたんだ」

 

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その言葉で。

僕は少しだけ安心した。

 

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藤堂史也の調査は。

無駄ではなかった。

 

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そして。

新聞作成が始まった。

 

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記事の中心は。

不正を暴くことではない。

 

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朝倉由紀という生徒がいたこと。

 

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文化祭を作り上げようとしていたこと。

 

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そして。

その記録が消されていたこと。

 

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それを書く。

 

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ただし。

五十嵐修司については。

断定しない。

 

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資料に残された事実。

確認できる情報。

そこだけを書く。

 

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数日後。

完成した原稿は。

学校側へ提出された。

 

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しかし。

すぐに返事は来なかった。

 

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そして。

呼び出された。

 

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会議室。

 

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教師たちが資料を見る。

 

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「内容は確認しました」

教師が言った。

 

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「ですが」

 

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「十五年前の出来事を」

「今の生徒が扱う必要があるのでしょうか」

 

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「記事の内容には問題があります」

「過去の資料だけで、当時の学校の対応を判断することはできません」

 

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僕は黙って聞く。

 

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「君たちの気持ちは分かります」

「しかし、亡くなった生徒について扱う以上、慎重にならざるを得ません」

「当時の関係者やご遺族への配慮も必要です

 

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『当然の反応だな』

先生が言った。

 

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『学校にとって過去とは』

『終わった出来事である方が都合がいい』

 

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僕は資料を見る。

 

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でも。

終わったことにされたから。

朝倉由紀は消えた。

 

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「僕たちは」

僕は言った。

 

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教師を見る。

 

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「学校を責めたいわけじゃありません」

 

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「断定している訳でありません」

「分かっている事実だけを書いています」

 

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「ただ」

 

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「いなかったことにされた人を」

「もう一度、記録に戻したいんです」

「だからこそ、事実だけを書くんです」

 

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沈黙。

 

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神谷先輩が続ける。

 

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「藤堂さんも」

「たぶん、それをしたかったんだと思います」

 

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教師が顔を見る。

 

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「記事を書きたかったんじゃない」

 

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「残したかったんです」

 

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その後。

記事はいくつか修正された。

 

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表現の変更。

事実確認。

学校側の見解。

 

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それでも。

掲載自体は認められた。

 

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そして。

学校新聞は発行された。

 

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見出し。

 

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『消えない記録』

 

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平成三年の文化祭資料から見つかった空白。

 

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新聞は。

校内だけでなく。

卒業生にも広がった。

 

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当時を知る人から連絡が届く。

 

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新しい証言が集まり始める。

 

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学校は。

もう無視できなかった。

 

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消したはずの記録が。

今度は多くの人の目に触れている。

 

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放課後。

僕は新聞を見る。

 

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朝倉由紀。

 

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その名前がある。

 

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もう。

消えていない。

 

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『湊君』

先生が言った。

 

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「何?」

 

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『記録とは不思議なものだ』

 

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『消そうとしても』

『誰かが残せば、消えない』

 

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僕は新聞を見る。

 

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「うん」

 

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「朝倉さんの名前は」

「もう消えないね」

 

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少し離れた場所で。

神谷先輩が藤堂史也のノートを閉じた。

 

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「藤堂さん」

 

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小さな声。

 

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「藤堂さん」

「あなたが追っていたものは」

「ちゃんと残りましたよ」

 

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平成三年。

途切れた調査。

 

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残されたノート。

 

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消された記録。

 

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それらは。

今。

新しい記録になった。

 

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消えない記録。

 

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それが。

僕たちが最後に残したものだった。

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