【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第五十三話「最初のメッセージ」

 

「それでは、私はこの辺で失礼します」

 

悠真は玄関で改めて頭を下げた。

 

「今日は本当にありがとう先生!」

 

アイも笑顔で頭を下げる。

 

「こちらこそ!」

 

「先生が来てくれて、本当に楽しかった!」

 

ルビーは寂しそうな表情のまま、それでも笑顔で大きく手を振る。

 

「先生!」

 

「また絶対遊びに来てね!」

 

「はい」

 

「機会がありましたら、ぜひ」

 

アクアも静かに一礼した。

 

「今日はありがとうございました」

 

「またお会いしましょう」

 

「こちらこそ」

 

「勉強も教えていただき、ありがとうございました」

 

「私もアクア君の考古学の話、とても勉強になりました」

 

その言葉にアクアは少しだけ口元を緩める。

 

「先生にそう言ってもらえるなら良かったです」

 

「気を付けて帰ってね!」

 

アイが最後まで手を振る。

 

悠真も軽く手を振り返し、星野家を後にした。

 

夜風は昼間の暑さを忘れさせるほど心地良い。

 

住宅街には人影も少なく、静かな時間が流れていた。

 

悠真はゆっくりと夜道を歩く。

 

今日一日を思い返しながら。

 

(本当に賑やかなご家族でしたね)

 

病院では決して見られないアイの母親としての表情。

 

勉強好きで落ち着いたアクア。

 

天真爛漫で感情豊かなルビー。

 

そして四人で囲んだ温かい食卓。

 

どれも心に残る時間だった。

 

自然と口元に笑みが浮かぶ。

 

(たまには、こういう時間も悪くありませんね)

 

患者を救うことだけを考え続けてきた悠真にとって、それはどこか新鮮で、穏やかな時間だった。

 

それから十分ほど歩き、自宅へ到着する。

 

玄関の鍵を開け、部屋へ入ると静寂が迎えてくれた。

 

「ただいま」

 

もちろん返事はない。

 

それでも、先ほどまでの賑やかな時間との対比に思わず苦笑する。

 

上着を脱ぎ、洗面所へ向かう。

 

熱めのシャワーを浴びると、一日の疲れがゆっくりと流れていく。

 

髪を乾かえ、部屋着へ着替え、ベッドへ入る準備を済ませる。

 

時計を見ると、時刻は午後十一時近くになっていた。

 

「今日は久しぶりによく笑いましたね」

 

そう呟き、ベッド脇へ置いてあったスマートフォンへ手を伸ばす。

 

その瞬間――

 

ピロン。

 

静かな部屋に通知音が鳴り響いた。

 

「……?」

 

こんな時間に誰だろうと思い、画面を見る。

 

表示されていたのは新着LINE。

 

送り主の名前を見た瞬間、悠真は思わず笑みを浮かべた。

 

『星野アイ』

 

「もう送ってきたのですか」

 

トーク画面を開く。

 

そこには、交換したばかりとは思えないほど丁寧な文章が届いていた。

 

『星野アイです。』

 

『今日は本当にありがとうございました。』

 

『これからもよろしくお願いいたします。』

 

短い文章だった。

 

しかし、その文面にはアイらしい誠実さが感じられた。

 

悠真はしばらくそのメッセージを眺め、小さく笑う。

 

「律儀な方ですね」

 

そう呟くと、スマートフォンのキーボードを開く。

 

「こちらこそ、本日はありがとうございました。」

 

「私もとても楽しい時間を過ごさせていただきました。」

 

「今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。」

 

返信を打ち終え、送信ボタンを押す。

 

すぐに既読が付き、悠真は思わず苦笑した。

 

「まだ起きていたのですね」

 

医師と患者。

 

その関係は終わった。

 

今日交換したLINEには、新しい縁の始まりが静かに刻まれていた。

 

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