【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜 作:ペンギンって可愛いですよね
その日の夕方、仕事を終えたアイは、自宅のリビングでソファに腰掛けていた。
先ほどまで映画デビューが決まったルビーが大喜びし、アクアも呆れながら付き合っていた。
そんな二人を見ているだけで、自然と笑みがこぼれる。
(先生にも報告しなきゃ)
アイはスマートフォンを手に取り、LINEを開いた。
送り先はもちろん悠真だった。
『先生!』
『アクアとルビーの映画デビューが決まりました! 』
『五反田監督の映画です!』
『二人とも子役として出演することになりました』
送信ボタンを押す。
「先生、びっくりするかな?」
アイは楽しそうに笑った。
数十分後…
外来診療を終えた悠真は、医局でカルテを整理していた。
ようやく一息つき、白衣のポケットからスマートフォンを取り出す。
画面にはアイからのLINE通知が表示されていた。
「アイさんからですか」
悠真は微笑みながらトーク画面を開く。
映画デビューの報告を読み終えると、小さく息を吐いた。
「なるほど…そう来ましたか」
驚きよりも、納得の方が大きかった。
(アクア君は想定内ですね)
幼い頃から、人の感情を細かく表現する演技力を持っていた。
五反田監督が再び声を掛けることは、十分に考えられる。
テレビでの受け答えを見ても、堂々としていた。
演技だけでなく、人前に立つ素質も兼ね備えている。
(ですが……)
悠真は画面を見つめながら考える。
(ルビーちゃんも映画デビューですか)
そこだけは少し意外だった。
(確か原作ではルビーちゃんは、高校生になるまでは芸能事務所へ所属しなかったはずですが……)
記憶していた未来とは違う展開だった。
しかし、その理由にはすぐ思い当たる。
(アイさんが生きていることで、未来が変わったのでしょうね)
以前とは違い、アイは家族と穏やかな時間を過ごしている。
親として相談に乗り、背中を押してあげられる存在がいる。
その小さな違いが、ルビーの決断を変えたのだろう。
(未来は、確実に変わっている)
そう思うと、不思議と嬉しくなった。
悠真は苦笑する。
(もっとも…一番変わったのは、あの二人の頭脳面ですが)
アクアは大学の文献を読み漁り、考古学について語る。
ルビーは高校数学を学び、微分方程式で悩む。
全国学力調査では二人揃って全国一位。
さらには海外の大学から特待生の誘いまで届いている。
(ここまで変わるとは、さすがに予想できませんでしたね)
思わず笑みがこぼれた。
「まあ、元気なら何よりです」
悠真はスマートフォンを持ち直し、返信を打ち始める。
『それはよかったですね。』
『映画デビュー、おめでとうございます。』
『アクア君もルビーちゃんも、きっと素晴らしい演技を見せてくれると思います。』
『ぜひ見に行かせていただきます。』
送信ボタンを押す。
数秒後には既読が付いた。
すると、すぐに返信が届く。
『ありがとうございます!』
『二人とも今からすごく張り切ってます(笑)』
『公開されたら絶対観に来てくださいね!』
そのメッセージを見た悠真は、優しく微笑んだ。
「もちろんですよ」
小さく呟き、スマートフォンを机へ置く。
アクアとルビー。
二人がスクリーンでどんな演技を見せるのか。
一人の医師として。
そして家族ぐるみで付き合う隣人として。
その成長を見届けられる日が、今から楽しみだった。