かめはめ×ハンター   作:波動待ち

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三年後

 

 

 ビスケに師事するようになって三年が経ち、俺は十一歳になっていた。

 

 灰脈石を見つけたあとも、ビスケと行動を共にしながら修行していたが、三年間ずっと一緒にいたわけではない。依頼によってはビスケが一人で出かけることもあり、そういうときの俺は、その町で取っていた宿に残された。

 

 そういう時は、基本的に普段やってる修行をそのままやり、その後は自主トレだ。最初の頃は、少しくらい基礎を減らしても分からないんじゃないかと思ったこともあったが、分からなかった試しはなかった。

 

「今日の基礎修行、最後の方で手を抜いたでしょ」

 

「見てないのに何で分かるんだよ」

 

「見れば分かるわよ」

 

「いやだから見てないじゃん!?」

 

 毎回そんな感じだったので、途中から諦めて全部やるようになった。

 

 ビスケの仕事は山や森だけに限らず、何日も歩いて岩肌を調べ、魔獣の痕跡を避けながら谷の奥へ入ることもあれば、山へ近づくことすらなく、一つの町から動かない依頼もあった。

 

 珍しい石が、いつも地面に埋まっているとは限らない。ずっと昔に掘り出され、宝石商の倉庫で眠っているものもあれば、持ち主が価値を知らないまま飾っていることもあり、収集家から収集家へ渡った末に、今どこにあるのか分からなくなった石を追うこともあった。

 

 大きな町では、オークションについていった。入るために特別な資格が必要なわけではなく、金さえあれば参加できる。

 

 ただ、その金額が普通ではなかった。

 

 最初に連れていかれた会場では、入場のために預ける金だけで、俺がそれまで見たこともないような額になった。会場内には高そうな服を着た人間が並び、出品される石一つに、家を何軒も建てられそうな値段がついていく中、ビスケは平然と札を上げていた。

 

「今ので、合計いくら?」

 

「聞かない方がいいわよ」

 

「聞いたら怖くなる?」

 

「多分ね」

 

 聞くまでもなく怖かったんだけど……

 

 競りが始まる前には下見があり、ビスケは出品された石を明かりの下で確かめ、傷や色だけでなく、どこで採れ、どういう人間の手を渡ってきたのかまで調べていた。目当ての石が本物でも、来歴のどこかがおかしければ買わないこともある。

 

 俺にできるのは、出品目録と番号を照らし合わせたり、過去に似た石が出品されていないか記録を探したりする程度だった。それでも、一度聞いた店の名前や地名が別の町で出てくると、以前より話が繋がるようになった。

 

 宝石商や古物商を訪ね、収集家の屋敷へ呼ばれることもあった。自慢話を延々と聞かされた末、見せられた石が目当てのものとは別物だったこともあり、その帰り道で文句を言うと、ビスケは「見せてもらう前に帰るわけにいかないでしょ」と呆れていた。

 

 山での調査では、依頼人から話を聞き、古い記録と地図を照らし合わせてから現地へ向かう。道が残っていなければ別の入り口を探し、泥に残った足跡や折れた枝から、近くにいる魔獣を判断する必要もある。

 

 最初の頃はビスケの後ろを歩いているだけだったが、少しずつ、沢の上流を見てきて、町で噂の出どころを確かめてきてと、一人で任されることが増えていった。俺が見つけた痕跡を理由にビスケが調べる場所を変えることもあれば、判断を間違えて普通にやり直しになることもあった。

 

 特にひどかったのは、酒場で聞いた話をそのまま信じて半日歩いたときだ。珍しい宝石が見つかったという話は酔っ払いの冗談で、帰り道ではビスケから聞き込みのやり方を散々直されたため、それからは酔っ払いの話を最低でも五人には確認している。

 

 仕事の区切りが合えば何度か実家にも帰り、長く戻れないときは、町へ着くたびに手紙を出した。

 

 母さんからは毎回、手紙が短いと言われた。何を書けばいいのか分からず、その日に食べたものまで書くようにしたら、今度は食事の話しかないじゃない、と怒られたりもした。

 

 そんな風に過ごすうちに、俺も心からハンターになりたいと思うようになっていた。

 前にハンターになりたいと母に宣言したのは、念を知るためだった。それに、ハンターになればいい師に巡り会えるかもしれない。

 

 けど、それが達成された今、改めてハンターを志すのは、ビスケについて仕事を見ているうちに、思っていたより面白いと感じるようになったからだろう。

 

 山の中にあるかもしれない鉱脈を探し、昔の記録から、今は誰かの持ち物になっている石を追う。オークションで他の人間と競り合い、何日もかけて調べたものを買わずに帰ることもある。

 

 同じ石を探しているのに、毎回やることが違った。

 

 空振りが続けば嫌にもなるけど、残った手掛かりから次の場所を考えるのは楽しかった。二年目の半ばには、そのうち自分もハンターになりたいとビスケへ話していた。

 

 もちろん、かめはめ波を極めるという目標は変わっていないし、そっちは最初から一生かけてやるつもりだ。

 

     ◇

 

 その日、俺とビスケは町外れにある古い採石場へ来ていた。

 

 採掘が終わってから何年も使われていない場所で、ビスケが管理人に話を通してある。周囲を高い岩壁に囲まれているため、大きな音を出しても町までは届かず、地面には細かな砂と砕けた石が積もり、端の方には切り出されないまま残った大岩がいくつも立っている。

 

 組み手にも、かめはめ波の修行にも使える場所だった。

 

「今日の組み手で一本入れたら、明日の基礎修行さ、半分にしてくれない?」

 

 身体をほぐしながら頼んでみると、ビスケは少し考えるように首を傾けた。

 

「いいわよ」

 

「マジで?」

 

「その代わり、一本も入らなかったら3倍ね」

 

「半分か3倍は釣り合ってなくない?」

 

「だったら一本入れればいいじゃないの」

 

 一度口にした以上、なかったことにはしてくれないだろうから、これ以上条件を増やされる前に諦め、ビスケから距離を取った。

 

 全身をオーラで覆って《堅》を維持し、腰を落として両足の裏でしっかりと地面を捉える。

 

「さあ、いつでもきなさい!」

 

「じゃあ……行くぞ!」

 

 右足で地面を蹴り、正面から踏み込んだ。

 

 左の拳を顔へ伸ばし、ビスケの視線がそちらへ向いたところで途中から引く。本命の右拳を腹へ打ち込んだが、ビスケは身体を半歩ずらしただけでかわし、そのまま俺の腕に手を添えた。

 

 掴まれる前に肘を畳んで身体を回し、右の裏拳を振りながら左脚で足元を狙う。ビスケは裏拳を屈んで避け、そのまま半歩下がったため、俺の蹴りは空を切り、勢いのついた身体だけが横を向いた。

 

 背後に気配を感じたので、振り返らずに前へ跳ぶ。後ろから伸びてきた掌を避け、大きく離れすぎないよう、着地と同時に右足を止めた。

 

 追ってきたビスケの拳を右手で外へ流すと、その手を囮にしたもう一発が反対側から来る。左の前腕へオーラを寄せて頬を狙った掌を受け、弾いたあと、腕から腹へオーラを戻し、次に来るであろう膝に備えた。

 

 予想どおり、下から膝が上がってくる。

 

 腹に力を入れて受けながら左手でビスケの肩を掴もうとしたが、指先が届く直前に身体を沈められ、膝を受けた腹へ今度は拳が入った。

 

「ぐっ……!」

 

 息を吐き出しながら右足を後ろへ引く。もう一歩下がれば衝撃を逃がせるが、それでは距離が開くため、引いた足で踏ん張り、ビスケの腕が戻る前に右肘を脇腹へ打ち込んだ。

 

 肘が届く寸前、横から手首を叩かれて軌道がずれ、身体だけが前へ流れる。

 

「腕だけで打たない!」

 

「クソッ!」

 

 言い返す暇もなく足が飛んできたので、脛へオーラを動かし、右脚で受ける。足同士がぶつかった瞬間、鈍い痛みが響いたが、ビスケは片脚を上げたまま、まったく体勢を崩していない。

 

 その脚を押し返そうと力を入れたところで、軸足を払われた。

 

 倒れ切る前に左手を地面へつき、腕の力で身体を浮かせる。横から来た蹴りが服をかすめたため、そのまま両脚を振り回してビスケの足元を狙った。

 

 今度は跳んで避けられたが、着地場所へ右拳を置くように打つ。

 

 ビスケは空中で身体をひねり、俺の拳へ掌を重ねた。それを支えにして方向を変え、少し離れた場所へ音もなく降りる。

 

「今のは惜しかったわね」

 

「今ので一本にしない?」

 

「ダメに決まってるじゃない」

 

「あと少しだったのに」

 

「その少しを詰めないといけないのが実戦よ!」

 

 ビスケは笑っていて、呼吸もほとんど変わっていない。こっちはもう腹と右脚が痛いのに、まだ一度もまともに触れられていなかった。

 

 焦って突っ込めば余計に当たらないので、一度息を吐いて《堅》の乱れを整え、構えを解かないまま、今度はこちらから動かなかった。

 

「来ないの? なら、こっちから行くわよ!」

 

 その言葉と同時に、ビスケの体が沈んだと思った次の瞬間には、目の前まで来ていた。

 

 顔に向かって伸びてきた右手を左腕で内側から弾く。いつもなら続けて腹を狙ってくるところで、ビスケの肩がわずかに上がったため、頭を下げると曲げられた肘が髪の上を通り過ぎた。

 

 そのまま懐へ入り、肩をビスケの胸へぶつける。身体が少しだけ後ろへ動いたものの、押し切る前に腰へ手を回され、身体を持ち上げられた。

 

「うわっ!」

 

 空中で身体を丸め、地面へ叩きつけられる直前に腰をひねって手足から着地する。腕と膝に衝撃を逃がしてすぐに顔を上げると、ビスケの足が目の前にあった。

 

 左腕へオーラを集めながら、両足にも必要な分を残す。

 

 振り下ろされた踵を左の前腕で受け止めると、靴底が砂を削り、身体は深く沈み込んだが膝は地面につかず、受けた腕を外へ回してビスケの脚を押し退け、開いた胴へ右拳を返した。

 

 拳が服へ触れそうになったところで、ビスケは軸足だけで身体を回す。俺の拳が腹の前を抜け、回転した勢いのまま足が脇腹へ入った。

 

「がっ……!」

 

 今度は踏ん張れず、横へ飛ばされて地面を二度転がった。止まってすぐに片膝を立てたが、ビスケは追ってこなかった。

 

「受け方はそれでいいわ。反撃へ移るときに、足元がお留守になったけど」

 

「今のは当たると思ったんだよ」

 

「まだまだ甘いわね」

 

 まだ笑っている。

 

 脇腹を押さえたいのを我慢して立ち上がると、ビスケとの間には少し距離が開いていた。近づけばまた同じように捌かれるし、離れたまま考えている時間もない。

 

 両手を腰の横へ引き、掌の間へ少量のオーラを集めると、ビスケの視線が手元へ動いた。

 

「かめはめ波!」

 

 集めたオーラを前へ押し出す。

 

 普段なら掌との間に細い繋がりを残すが、今回は押し出した瞬間に完全に切り離し、小さな塊のまま飛ばした。

 

 狙ったのはビスケの身体ではなく、足元だ。砂埃で視界を遮り、一瞬でも隙を作る。

 

 ビスケが左へ跳び、切り離したオーラがビスケのいたところにぶつかる。砂と細かな石が巻き上がって向こう側の姿を隠したところで、全身へ意識を集中する。

 

「界王拳――!!」

 

 全身を覆っていたオーラが一気に膨れ上がり、右足を踏み込んで砂埃の横へ回り込む。さっきまでなら何歩も必要だった距離を一息で詰めると、砂埃から抜けたビスケは、まだ左へ動いていた。

 

 両手を腰へ引きながら、その先へ狙いをつける。

 

 最大まで溜める時間はないため、瞬間的に集められるだけのオーラを掌へ集めた。それでも、界王拳を使う前の速射とは比べものにならない量が集まっている。

 

「波――っ!」

 

 両腕を突き出し、押し出したオーラと掌の間へ、今度は細い繋がりを残す。そこへオーラを送り込むと、勢いを増したかめはめ波がビスケの逃げた先へ走り、地面の砂と巻き上がっていた砂埃をまとめて前方へ吹き飛ばした。

 

 狙いは合っており、かめはめ波はビスケが着地する先を捉えていた。

 

「もらった!」

 

 さらにオーラを流し込む。

 

 ビスケは身体を低く沈め、進んできたかめはめ波の横をすり抜けた。端が服を揺らし、その後ろにあった岩へ命中すると、岩が砕けて、大きな破片が周囲へ飛び散る。

 

 掌との繋がりはまだ残っていたが、向きを変えるにはもう遅い。繋がりを切って腕を引き戻そうとしたところで、ビスケが飛び込んできた。

 

「っ!」

 

 腹へオーラを移そうとしたときには、もうビスケが懐まで入り込んでいた。

 

 拳が腹へ突き刺さり、身体がくの字に折れる。

 

 息を吐く間もなく地面から足が離れ、そのまま後ろへ飛ばされた。背中から落ちる寸前にどうにか身体をひねり、肩から着地して転がる。

 

 立ち上がろうと手をついたところで目の前にビスケの靴が見え、顔を上げると、喉元へ指先が向けられていた。

 

「はい、終わり」

 

「……くそ……まだ届かないか」

 

 界王拳を切ってその場へ座り込む。腹が痛いし、もう少し早くガードに入れれば、もしかしたら受け止められたかもしれない。

 

 ビスケは砕けた岩を一度見てから、俺に視線を戻した。

 

「二段目までは悪くなかったわ」

 

「三段目は考えてなかった」

 

「だから殴られたのよ」

 

「次は考えるよ」

 

「その前に、同じ手がもう一度通ると思わないことね」

 

「押忍!」

 

「さて、約束通り基礎は三倍ね」

 

「まだ一本入ってないだけで、組み手は終わってないでしょ」

 

「今ので終わりよ。私の拳がもう少し上だったら、あんた立てなくなってるわよ」

 

 立ち上がって腹を押さえながら少し離れた場所へ移動すると、ビスケはもう休憩に入るつもりらしく、岩の上へ腰を下ろした。

 

「何してるの?」

 

「切り替えの練習」

 

 足を肩幅に開き、呼吸を整える。

 

 さっきは最初の一発で砂埃を上げ、その間に界王拳を発動した。何かで時間を作らなければ間に合わない状態では、使える場面が限られる。

 

 右足を踏み込むのに合わせて界王拳を発動する。しかし、オーラが跳ね上がった頃には、すでに足が地面へ着いていた。

 

「かめはめ波の練習もするんだから、少しは休みなさいな。これ以上無理しても、何もならないわよ」

 

「……押忍」

 

     ◇

 

 しばらく休んでから採石場の端へ移動した。

 

 反対側の岩壁近くには、俺の身長よりずっと高く、横幅もある大岩が立っている。その周囲には、途中で形が崩れて広い範囲を浅く削った跡や、標的まで届かず手前の地面を砕いた跡、大岩の端に当たって表面だけを欠けさせた跡が残っていた。

 

 今日狙う場所には、ビスケが炭で丸を描いてあった。

 

「さっきみたいな速射じゃなくて、本気でね、ただし、界王拳はなし」

 

「うん、分かった」

 

 ビスケが少し離れた岩へ腰を下ろしたので、俺は大岩の正面に立ち、距離を確かめた。採石場の端から端までかなり離れているが、今なら届かせられる。

 

 両脚を開いて腰を落とし、左右の掌を腰の横で合わせる。

 

 息を吸いながら全身のオーラを動かし、腹から胸へ引き上げ、肩を通して両腕へ流す。掌の間へ集まったオーラは少しずつ密度を増し、さっき組み手で撃った二発目と同じくらいの量にはすぐに届いた。

 

 そこから先は、形を崩さないよう保ちながら、さらに送り込まなければならない。

 

 最初に大きくしすぎれば密度が足りなくなり、小さくまとめすぎても、あとから増やしたときに外側が揺れる。息を吐いて肩の力を抜き、掌の間にあるオーラを確かめた。

 

「かー……めー……」

 

 オーラの表面がわずかに揺れたため、送り込む量を落とす。形が落ち着いたところで、もう一度少しずつ増やしていく。

 

「はー……めー……」

 

 腕が重くなり、掌の間から漏れたオーラが足元の砂を押し退けた。

 

 大岩は動かず、こっちへ向かってくることもないため、狙いを合わせている間、いつまでも待っていてくれる。組み手で同じことをすれば、最初の二言を言い終える前に殴られているだろう。

 

 それでも今は目の前の一発へ集中し、十分な量が集まったところで、狙いを的に固定した。

 

 両足で地面を強く踏み締める。

 

「波――っ!」

 

 両腕を一気に突き出し、掌に集めたオーラを前方へ押し出しながら、細い繋がりを残す。先端が掌から離れた瞬間、その繋がりを通して新しいオーラを流し込んだ。

 

 かめはめ波は最初の数メートルを越えても形を崩さず、採石場の中央へ向かって進んでいく。

 

 掌との間に伸びた繋がりが細くなりすぎないよう、送り込む量を調整する。

 

 地面の砂が左右へ吹き飛び、かめはめ波が通ったあとに、長い跡が伸びていく。

 

 伸び続けるかめはめ波に、さらにオーラを送り、先端を押し出す。炭で描かれた丸へ近づく途中でわずかに右へ寄ったため、腕ごと動かして中央へ戻した。

 

 次の瞬間、かめはめ波が大岩へ命中し、轟音が採石場全体に響いた。

 

 炭で描かれていた丸が消え、その周囲に細かな亀裂が走る。そこで止めずに掌との繋がりを維持し、さらにオーラを送り込むと、大岩の表面が大きくへこみ、中心から砕け始めた。

 

 亀裂が一気に端まで伸び、上半分が割れて後ろに崩れる。飛び散った破片が岩壁へぶつかって重い音を立て、残った下半分にもかめはめ波が食い込んだ。

 

 そのまま押し続けると、大岩の根元が耐え切れずに弾け飛び、後ろにあった岩壁まで削れた。砕けた石と砂埃で向こう側が見えなくなったところで、ようやくオーラの供給を止める。

 

 掌から伸びていた繋がりが消え、腕を下ろしたときには指先が震えていた。息を吸っても胸の奥まで入ってこず、全身へ《堅》を張り直してみても、撃つ前よりかなり薄くなっている。

 

 今すぐ同じ威力でもう一発撃つのは無理だった。

 

 しばらくして砂埃が晴れると、大岩があった場所には砕けた下半分がわずかに残っているだけで、後ろの岩壁にも大きな穴が開き、その周囲から細かな石が落ちていた。

 

「ど、どう?」

 

 呼吸を整えながら聞く。

 

 ビスケは岩から下り、砕けた標的の方へ歩いていった。少し離れたところで足を止め、岩壁に開いた穴を眺める。

 

「狙いは少しだけ右へずれたけど、この距離なら悪くないわね。形も最後まで保ててた」

 

「威力は?」

 

「見れば分かるでしょ。申し分なしよ」

 

 大岩はほとんど残っておらず、思わず口元が緩んだ。

 

「でも、いつもの二つはそのままね」

 

 続く言葉も分かっている。

 

「本気で撃つと、まだ溜めるのが遅い」

 

「そう。実戦では、構えたところで終わってるわ」

 

「分かってる」

 

「それから、使ってるオーラの割に無駄が多いわね。まあ、威力はもう十分あるわ。あの距離まで形を保って、狙った場所を壊せる。それでも、撃つたびに今みたいになってたら使いづらいでしょ」

 

「そこなんですよね」

 

「軽く撃つ分には戦いの中でも使えるようになったんだから、次は本気で撃つときの無駄を減らしなさい。溜める時間もね」

 

「明日は、最初に集める量を少し減らしてみるよ」

 

「組み手での工夫も悪くなかったわ」

 

「けど、まだ足りない」

 

 両手を開いたり閉じたりしてみると、指先の震えはまだ残っていた。

 

「何はともあれ、今日はここまでね」

 

 ビスケが放ってきた水筒を受け取り、水を飲む。

 

「明日は基礎修行が3倍だから、忘れないように」

 

「今のかめはめ波で一本ってことにしない?」

 

「それはそれよ」

 

「ですよねぇ……」

 

 水筒を閉じてもう一度砕けた大岩を見る。

 

 ビスケはしばらく岩壁の穴を眺めていたが、何かを思い出したようにこちらを向いた。

 

「そういえばアンタ、ハンターになりたいって言ってたわよね」

 

「うん」

 

「なら、そろそろハンター試験を受けてみたら? あたしもしばらく予定あるしちょうどいいでしょ」




界王拳
 DBにおいては界王様が開発した……というよりは描いた理想の技。界王様自身はこの技を再現できなかったものの、悟空に教え、その悟空が実際に再現可能な技とした。
 効果としては自身のあらゆる身体能力をn倍にする。例えばサイヤ人編で戦闘力8000だった悟空は、三倍界王拳を使うことにより、戦闘力を24000まで引き上げ、対等に渡り合った。さらにかめはめ波の際に、四倍まで跳ね上げて、威力を底上げしたことから、気の量も倍になると考えられる。
 本作においては、あらゆる身体能力と、顕在オーラが倍率に応じて強化される。ただ、この顕在オーラの強化は、あくまでも潜在オーラから借り受けてるに過ぎず、オーラ総量自体は変わらない。
 制約としては、潜在オーラの消費倍率が、界王拳の倍率の二乗になる。
 二倍界王拳ならば、潜在オーラの消費は四倍、三倍界王拳なら九倍とn^2の形で増えていく。ナメック星の悟空の二十倍を再現したい場合はオーラ消費が四百倍になるため、はっきり言って現実的ではない。

レイ
 三年間ビスケに師事し、結構成長した。ただ、界王拳を使う以上、潜在オーラ量の増加は必須事項と言える。さらに全力でかめはめ波を撃つことは実戦ではまだ不可能。ただ、かめはめ波自体は三年間も続けていれば、それなりに扱えるようになっており、フェイントに使ったり、界王拳とあわせ、それなりの威力のかめはめ波を速射したりもできる。ビスケにはまだまだ敵わない。
 幼少期に費やした数年間とは桁違いの成長を遂げた。やはり、師の存在は偉大なものであると言える。
 
ハンター
 HUNTER×HUNTER世界における花形職業。一般人にはなんかすごい人の集まり的な感じに認識されてるかもしれない。
 これまでレイにとってハンターという職業は、念を知るための手段という意味合いが強かった。幼い頃に母親にハンターになりたいと話したのも、念能力者へ近づくためである。
 しかし、ビスケについて三年間様々な仕事を見てきたことで、現在は純粋にハンターという仕事そのものを面白いと思うようになった。
 なお、ストーンハンターを目指しているわけではない。今のところ、何ハンターになるかは本人も多分何も考えていない。
 
ビスケット=クルーガー
 三年間レイを連れ回しながら、念、武術だけでなくハンターとしての仕事も色々と見せてきた。師匠としてもハンターとしても非常に優秀なひと。
 弟子側からすれば修行をサボったりすると、なぜか毎回バレるため、非常に厄介。というかサボるな。
 レイがハンターになりたいと言っていたのも聞いてるため、そろそろ試験を受けてもいい頃だと判断した。
 ちなみに「あたしもしばらく予定あるし」の予定については、今のところレイには教えていない。

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