賢者の石と緑の目の少女編での、注意事項を
10話の前書きに、のせております。
そちらの注意事項を、よくお読み頂いてから
先へとお進みください。
厳しめ、原作改変、独自設定、独自解釈、独自展開など
多数です。
その為、何でもあり、大丈夫な方のみ
お進みください。
それではどうぞ!
▷視点、リリローゼ
(なんてことなの……!)
原作通りなら、ハリーはグリンゴッツのあとすぐに『マダム・マルキンの洋装店』に行っていたはずだ。だからこそ、わざわざ先に教科書や授業に使う道具を揃えて、時間をずらしたつもりだったのに。
(やっぱり、正確な時間が分からないのに行動したのがダメだったのかな……?)
そんな風に私が内心で困惑している間にも、約6年ぶりに再会したドラコ・マルフォイと教授は、何やら会話を交わしている。
そんな時、私が教授と会わせたくなかった原作主人公のハリー・ポッターが、耐えかねたように口を開いた。
「あの……僕、外で人を待たせてるので、失礼します」
そう言って、ハリーは逃げるように店を出ていってしまった。
(教授とハリーの会っちゃったけれど、言葉は交わしてないから大丈夫……大丈夫だよね!?)
そして、マダム・マルキンが私の対応をしてくれた。
まだ近くで教授と話をしていたドラコは、私に向けて一瞬だけ皮肉げな笑顔を見せて、そのまま店を出て行った。
(……なにあの上品で生意気な笑顔! お坊ちゃん全開なんだから。でも、元気そうでよかったわ)
5歳の時のぷにぷにだったミニドラコが、すっかり原作通りの「ツンとした白金髪の美少年」に成長している姿を見届けて、私はホッと胸をなでおろした。
「では、お嬢様。こちらへどうぞ」
マダム・マルキンに促され、私はハリーがさっきまで立っていた踏み台へと上った。
黒い生地が私の身体に合わせて魔法でスルスルと裁断され、ピンで留められていく。
その様子を、教授は腕を組んだまま、大真面目で険しい顔をしてじっと見つめていた。
(教授、ただの制服の採寸だからそんなに睨まないで……。マダム・マルキンの手が緊張で震えちゃってるから!)
心の中でツッコミを入れつつ、私はマダムの手元に視線を落とした。
ついに手に入る、ホグワーツの制服。
ハリーとは言葉を交わさずに済んだ。ドラコとも無駄な接触は避けた。今のところ、原作の改変は最小限に抑えられているはずだ。
採寸を終え、教授がガリオン金貨を支払ってお店を出る。次は、1年生にとって最も重要となる「杖」の選定だ。
私は教授と一緒に『オリバンダーの店』へと向かった。
お店の前まで送ってくれた教授は、杖を決めるのには時間がかかること、そして店内なら一人でも安全だろうと判断したらしい。
これまでに買い揃えた荷物を一度置きに行くため、私を店の前に残して『姿現わし』で自宅へと帰っていった。
(ついに私の杖か……! 楽しみ〜!)
と私がウキウキしながら扉に近づくと、お店の中からパリン、ガタンと何かが壊れる派手な音が鳴り響いた。
(まさか……)
嫌な予感がして私がオリバンダーの店の窓から中を覗き込むと、そこには、先ほど洋装店ですれ違いで済んだと安心したはずのハリー・ポッターがいた。どうやら原作通り、自分に合う杖の選定に苦労しているようだ。
けれど、オリバンダーと思われる老人が店の奥から別の箱を持ってきて、それをハリーが手にした瞬間、彼の周りが温かい光に包まれた。
(映画で観た通り、なんて綺麗なんだろう……!)
思わず見惚れていると、お支払いを終えて出口へ向かってきたハリーと、ばっちりと目が合ってしまった。
ハリーはどこか気まずそうにしながらも、小さく軽く頭を下げて店を出て行った。
それに続こうとしたハグリッドは、私(正確には、教授にそっくりな私の顔立ちだろう)を見て驚きながら、慌ててハリーのあとを追って行った。
そして私は『オリバンダーの店』に入り、老店主にどちらが利き腕かを尋ねられて答えると、メジャーで細かく寸法を測られた。
最初に渡された杖も、2本目、3本目も続けて試してみたけれど、どれも机や棚を倒しそうになったりして、しっくりこない。
その時、お店の扉が静かに開き、荷物を置きに帰っていた教授が戻ってきた。
オリバンダーは教授の姿を見て少し驚いたようにその淡い色の眼を細めたが、すぐに別の棚から一本の杖の箱を大事そうに持ってきて、私に見せてくれた。
「これはヤナギの木に、一角獣のたてがみ。しなやかで、とても美しい魔法をかけるのに適している」
ヤナギ。そういえば、前世で見たハリポタのファンサイトで、教授の杖の素材もヤナギだったような気がする。
(教授と一緒の素材だったら嬉しいな……!)
そう願いながら、私がその杖をそっと振ると、パッと周りにまるでホタルが舞うような、幻想的で温かい光のダンスが湧き上がった。
「……あぁ、やはり。おめでとう、お嬢さん。その杖が、君を選んだようだね」
オリバンダーが、どこか満足げに、けれどその不思議な淡い色の目を細めて静かに微笑んだ。
手のひらから伝わってくる、じわりとした心地よい温かさと、私の魔力に共鳴する確かな感覚。
前世で見たファンサイトの知識が合っているなら、教授の杖も同じ素材だったはずだ。
(教授と同じ木材……! 偶然かもしれないけれど、オタクとしてはもう、それだけで気絶しそうなくらい嬉しい……!)
私が愛おしそうにヤナギの杖を見つめていると、戻ってきたばかりの教授が、黒いローブの裾を揺らして一歩前に進み出た。
教授は、私が振るった杖から溢れたホタルのような美しい光の残滓と、私の手の中の杖をじっと見つめている。
その底のない黒い目には、驚きと、そして言葉にできないほどの深い感慨が湛えられていた。
「……ヤナギに、ユニコーンのたてがみ、か」
教授が地を這うような美しいバリトンボイスで呟く。オリバンダーは恭しく頷き、箱に杖を収めながら答えた。
「左様です、スネイプ教授。ヤナギの杖は、内に秘めた大きな可能性や、深い感受性を持つ魔女に相応しい。そして純潔を象徴するユニコーンの芯材は、持ち主に対する忠誠心が最も強く、邪悪な魔術に染まりにくい……。実に、素晴らしい組み合わせですな」
邪悪に染まりにくい、忠誠心の強い杖。
その言葉を聞いた瞬間、教授の口元が、ほんの一瞬だけ優しく和らいだ。
教授が私のために、私のこの杖の特性をとても喜んでくれているのが分かって、胸がじんわりと温かくなる。
教授は無言でガリオン金貨を支払うと、箱に入った杖を私に手渡し、私の手をそっと握り締めた。
「……行くぞ、リリローゼ。これで、必要なものはすべて揃った」
「はい、お父さん!」
笑顔でしっかり答え、私は今日手に入れた、自分だけの杖の入った箱を胸にぎゅっと抱きしめた。
マダム・マルキンの洋装店での出来事。そしてこのオリバンダーの店で、ハリーと目が合ってしまったこと。
ハリーは気まずそうにしながらも軽く頭を下げて出て行ったし、彼に続こうとした大男のハグリッドは、私の顔を見てもの凄く驚きながらハリーの後を追っていったけれど……。
(ハリーともハグリッドとも、大きなトラブルにならずにすれ違いで済んだのは本当に良かった)
今のところ、原作の改変は最小限に抑えられているはずだ。
泣き崩れる教授の頭を撫でたあの日から、必死に駆け抜けた7年間。ついに、すべての運命が交錯するホグワーツへと向かうための、すべての準備が整ったのだ。
私は教授の大きくて温かい手を握り返し、ダイアゴン横丁の青空を見上げながら、これから始まる戦いに向けて――大好きな教授をあの哀しい死から絶対に救うという最終目標に向けて、心の中で静かに、けれど祈るような決意を新たにするのだった。
9月1日。
ホグワーツに行くため、ホグワーツ特急に乗る日がようやくやって来た。
7月31日のダイアゴン横丁での買い物の翌日――8月1日は、実は私の誕生日だ 。
毎年、教授は誕生日が近づくとプレゼントの希望を聞いてくれるので、私はいつもこう答えることにしていた。
「お父さんがくれるなら何でもいいよ。でもそれだとお父さんが困っちゃうよね? なら、お花がいいな」
そう言って、毎年教授から綺麗な花束を貰っている。
逆に、教授の誕生日には、ミリスに手伝ってもらいながら(前世の知識である程度料理はできるけど念のため)、手作りのお菓子やケーキを作ってホグワーツにいる教授へフクロウ便で贈っていた。
「リリローゼ、そろそろ時間だぞ。支度は出来たか?」
「大丈夫! いつでも出られるわ! あっ、あと前から思ってたんだけど……学校でお父さんって呼んだらよくないから、他人の前では『スネイプ教授』って呼ぶね? 2人の時は、今まで通りお父さんって呼ぶから!」
そう告げると、教授は少し残念そうに眉を下げた。けれどすぐに、それもそうだと納得したような顔をして居間へと向かった。
居間に用意していた荷物を持って、教授の『姿現わし』でキングズ・クロス駅近くの人気のない場所に出る。
さすがに教授がこれだけの生徒や保護者の前に出るのはなと思い、駅の近くまで送ってもらうことで、教授も渋々受け入れてくれたのだ。
「……リリローゼ。体調が悪くなったら、すぐに吾輩のところへ来なさい。それから、グリフィンドールのようなものどもとは、必要以上に関わるんじゃないぞ。いいな」
人気のないロンドンの路地裏で、教授は私のトランクを魔法で軽く浮かせながら、これでもかというほど過保護な注意事項を美しいバリトンボイスで並べ立てていた。
教授はグリフィンドールがよほど嫌いなんだなと、原作の偏見全開なスネイプ先生らしくてちょっと面白い。
「ふふ、分かってるわ、お父さん。体調が悪くなったら、すぐに医務室のマダム・ポンフリーか、お父さんのところへ行くね」
私が満面の笑顔で答えると、教授は憮然とした表情のままだったけれど、その底のない黒い瞳の奥に、狂おしいほどの愛おしさと寂しさを滲ませた。
そして、私の黒髪を大きな手で名残惜しそうに優しく撫でる。
「……ホグワーツの大広間で待っている。道中、気をつけて行きなさい」
「はーい! お父さんもホグワーツでの準備、頑張ってね」
私が手を振ると、教授は黒いローブを蝙蝠の羽のようになびかせ、音もなく姿現わしで家へと戻っていった。
そこから、教授は『煙突飛行・ネットワーク』でホグワーツへと向かうのだろう。
さあ、ここからは私の単独ミッションだ。
私はトランクを引きずりながら、賑やかなキングズ・クロス駅の構内へと歩みを進めた。ちなみにトランクには、教授が軽量化の呪文をかけておいてくれたので、子供の身体でも軽々持てる。本当に助かる。
荷物をカートに積み直し、目指すは9番線と10番線の間にある、あの魔法の柱。
赤レンガの柱の前に立つと、『ハリー・ポッター』ファンとしてのオタク心が、ドクドクともの凄い速さで鳴らし始めた。
『日刊予言者新聞』やダイアゴン横丁も凄かったけれど、これから本物の「9と4分の3番線」へ行くのだ。あまりの高揚感で、頭がホワイトアウトしそうになる。
(大丈夫、しっかりしなくちゃ。カートを引いて、あそこへ自然に通り抜けるだけ……!)
周りのマグルの目を盗み、私は覚悟を決めてレンガの柱へと真っ直ぐに歩き出し、だんだんと小走りになっていく。
次の瞬間――。
――パッと視界が開ける。
視界を埋め尽くしたのは、もうもうと白い蒸気を上げる、あの鮮やかな真紅のボディーの「ホグワーツ特急」だった。
「うわあ……っ!!」
駅のプラットホームは、トランクを抱えた生徒たちや、見送りに来た魔女や魔法使いの保護者たちのざわめきで溢れかえっている。
飛び交うフクロウの鳴き声。カートの軋む音。本物の、原作第1巻のあの始まりの光景が、1ミリの狂いもなく目の前に存在していた。
ファンとしての感情が爆発して泣きそうになったけれど、私はすぐにハリポタファンとしての警戒レーダーをマックスに切り替えた。
人混みを鋭い目で盗み見る。
(ハリー……ハリーとウィーズリー一家はどこ!?)
必死に探してはみたものの、あの目立つ赤毛の一家はどこにも見当たらない。
(もしかして、もっとずっとあとに来るのかな……?)
さすがにこの世界で目覚めて6、7年も経つと、原作知識の細かい部分はだいぶ薄れてしまっていた。
原作知識をこれからの道標にするためには、なるべく原作改変は抑える必要がある。できればハリーたち原作のメインキャラに関わるのは、避けなくてはならないのだ。
あの百合の日記帳に原作のことを書いたけれど、当時はどこまで詳細を書けばいいかも手探りだった。ファンとはいえ、原作の隅々まで一言一句覚えていた訳じゃないので、今思えば細かいところはいくつか抜けているはずだ。
そんなことを考えながら私は人影が少なそうな、列車の後方車両へと向かって歩き出した。
空いているらしいところを見つけて、コンパートメントの中へと入った。
座席に深く腰掛け、大きく一息ついてこれからを考える。
原作改変は最小限に。
私の最終目標は、あくまで今世の私の大切な父親であるセブルス・スネイプを、あの孤独で悲しい死という結末から救い出すことだ。
そのためには、ハリーたち「黄金の三人組」とは、極力関わらない静かなポジションをキープしなければならない。
私は列車の後方車両にいる。ここまでわざわざ、あのメインキャラたちが来ることはないはずだ。
だから、きっと大丈夫。
その考えが、見事なフラグになるなど考えもせず、私はホグワーツ特急の発車の時を待つのだった。
あからさまな、ひきですが
笑ってもらえたら嬉しいです。
前書きの注意事項は、
少なくとも賢者の石と緑の目の少女編が
終わるまでは、変えません。
お目通しをお願いします。
また別シリーズには、
それに合わせて前書きを変更すると思います。
よろしくお願いします。
それでは、次回をお待ち頂けますと嬉しいです。
失礼します。
修正しました。