一番星は、最後にもう一度だけ空を駆ける。
小さな声を力に変えた競争鳥の、期待に応える勝利のお話
八羽が最後の直線へ入る。
残り三百ヤルム。
「マヤノアトルガン先頭! マヤノ先頭! マヤノ先頭だッ!!」
「ブライアンも迫ってくる! 迫ってくる!」
ブランの嘴がわずかに前へ出る。
「鋭い矢が翼を掠めたッ! ブランがかわしたか?! このまま自由を撃ち落とせるのか?!」
「いや、マヤノアトルガン! 一歩も引かないッ!」
マヤが押し返す。
黄金と黒の翼が触れそうな距離で並び、互いの風をぶつけ合う。
『マヤァァァッ!』『ブラン、差せぇぇぇ!』
『まだだ! まだ誰も決まってないぞ!』
「外から大きな足音、バストゥークグラスだ!! グラスもきたッ! 大外から跳んできたッ!!」
ズシッ。
ズシッ。
ズシッ。
筋肉が収縮するたび、グラスの胸板と腿が膨れ上がる。
赤銅色の巨体が大地から返される力を受け取り、一歩ごとに前の鳥を呑み込む。
「スターオーまだ伸びる!!」
紫の翼が再び光を返す。
メテオは苦しいはずだった。中盤、自ら先頭へ立った。逃げるビーナスを追い、捉え、前へ出た。
後ろから迫るサリアと競り合い、そのさらに後ろから押し寄せる巨大な圧力を受けながら、それでも前を追い続けている。
肺は熱い。
呼吸を重ねるたび、胸の奥へ焼けた空気が流れ込んでくる。
脚も軽くはない。
白砂を蹴る一歩ごとに、蓄積した疲労が確実に重さを増していく。
それでも。
首は上がらない。
脚の運びも乱れない。
紫の翼は、同じ間隔で風を刻み続ける。
一歩。
一歩。
もう一歩。
苦しさは、走りを崩す理由にはならない。
疲労も。
前を行く二羽も。
大外から迫る重い足音も。
すべてを認識しながら、メテオは己の走りを変えなかった。
『『『メテオ! がんばれぇぇ!!』』』
幾万もの歓声の中から、その呼び名が飛んできた。
ウィンダスターオーではない。
一番星でもない。
競争場を埋め尽くす大人たちが呼ぶ、正式な名でも異名でもない。
――メテオ。
ほんの短い名前。
けれど、その名だけは、轟音の中でも不思議なほどよく響いた。
メテオの紫の瞳が、ほんのわずかに細くなる。
観客席を見る余裕などない。
どこから聞こえたのかを探す必要もない。
分かっていた。
あの子たちだ。
今日も、自分をそう呼んでいる。
紫の翼が、もう一度風を切った。
「サンデーサンドリア負けじと食い下がる!!」
サリアの白い脚が砂を斬る。
漆黒の剣閃がメテオの外から走り、もう一度先頭へ届こうと伸びる。
「一瞬たりとも気が抜けない好勝負!!」
漆黒。
メテオの視界の端へ、鋭く研ぎ澄まされた輪郭が入る。
サンデーサンドリア。
中盤でも、一度迫ってきた。あのときよりもさらに鋭い。
黒翼の大彗星は、まだ何かを残していた。
そのさらに外。
白砂を震わせる足音が近づいてくる。
ズシッ。
ズシッ。
赤銅色の重戦車。
バストゥークグラス。
あの巨体も、まだ止まらない。
サンドリア。
バストゥーク。
そして、ウィンダス。
三国の代表が、同じゴールへ向かっている。
サリアは退かない。
グラスも止まらない。
ならば。
ウィンダスの一番星だけが、ここで落ちるわけにはいかない。
メテオは前を向く。
先頭のマヤとブラン。 追うビーナス。
横一線へ近づくメテオ、サリア、グラス。
その後ろのラオー。 さらに後方のティル。
八羽の差が急速に圧縮されていく。
「アルタユオペラオーはまだ後ろ! まだ後ろだ! 進路がない!」
ラオーの前には、三国の競争鳥が作る壁。
内にはビーナス。外にはグラス。前にはサリアとメテオ。
黄金の王者は首を振らない。無理に割り込もうともせず、前を走る翼の重なりだけを見ている。
「アルタユはこないのか!? アルタユはどうする?」
白い飾り羽が、風の中で一度だけ大きく流れた。
「もう残り三百ヤルムしかありません!!」
観客の絶叫が重なる。
『マヤ!』『ブラン!』『グラス、押し切れ!』『メテオ、落ちるな!』『サリア、貫け!』
『ビーナス、もう一度逃げろ!』
名前。名前。名前。
幾千、幾万の願いが、一斉に走路へ降り注ぐ。
そのすべてが大きな一つの音になり、石造りの競争場そのものを震わせている。
だがメテオは、その熱に呑まれない。
必要なものだけを拾う。
前の脚。
横の翼。
風。
砂。
残された距離。
自分の呼吸。
そして――。
「ティルナノーグもまだうし……いないッ、消えたッ! どこいったぁ!?」
『消えた!?』『どこだ!』『走路から出たのか!?』
観客の視線が外へ、後ろへと散る。
だが、足音も羽ばたきもない。
次の瞬間。
マヤのさらに内側。
走路の最も狭い場所へ、青い光が集まった。
水面へ空が映るような淡い青が、一枚の羽となり、翼となり、競争鳥の姿を結ぶ。
――ティルナノーグ。
激走する七羽の中で、その一羽の周囲だけが不自然なほど静かだった。
『あのチョコボ!? ……忍鳥上がりかッ!』
来賓席から驚愕の声が飛ぶ。
「内だ! 内側からティルナノーグ! マヤノアトルガンのさらに内側から伸びてくる!」
「いったいどこから抜けてきた!?」
蒼い幻影が水面を滑るように伸び、マヤの内側へ並びかける。
マヤがわずかに外へ動く。それに合わせてブランも寄った。
二羽が動いたことで、密集した鳥群の中央に、一瞬だけ隙間が生まれる。
ティルの蒼い残像が走る。その跡だけが、一本の静かな道になった。
メテオの瞳が動く。
ほんのわずかに。
前方の形が変わった。
ティル。マヤ。ブラン。
動いた三羽。その向こう。
ゴール。
残された距離。
風。
どこを通れば、最も無駄なく前へ出られるか。
どの一歩なら、最後まで形を崩さずに走り切れるか。
一瞬の変化を、紫の瞳が拾っていく。
だが、その道を見つけたのはメテオだけではなかった。
ラオーの瞳が開く。
残り百ヤルム。
『いけ……』
アルタユの装束をまとった人物が手すりをつかむ。
『いけッ、ラオーッ!!』
黄金の王者の首が落ちた。体が深く沈み込む。
跳ぶ前の竜が大地へ力を溜めるように、肩から腿までの筋肉が一度だけ大きく収縮する。純白の飾り羽が後方へ流れた。
ラオーの脚が大地へ触れる。
グォン――!
白砂が円形に弾け飛ぶ。黄金の体が、光となって前へ出た。
ビーナスも動く。
「ここでセルビナスカイ! ……スカイがきたッ、ここにきて再加速だッ! スリップストリームから抜け出した! まだ諦めていないぞぉ!」
メテオの後ろで借り続けた風から飛び出し、芦毛の体が再び加速する。
内からティル。中央にマヤとブラン。その後ろからビーナス、灰白の翼が再び風をつかむ。
三国の代表――メテオ、サリア、グラス。
そして、そのすべてを縫うように黄金の光が迫る。
白砂の上から、逃げ場が消えていく。
開いた道へ正確に足を運び、前にいる鳥との距離だけを消していく。
【アルタユきたッ!】【届くのかッ?!】
一羽が動けば、隣の一羽が詰める。
先ほどまで見えていた隙間が狭まり、新しい隙間が生まれ、また消える。
メテオは乱れない。無理にこじ開けようとはしない。前だけを見る。
けれど。
【アルタユきたッ!】【ここからッ?!】
一歩前へ出れば、別の一羽が横へ並ぶ。
脚は、もう軽くなかった。中盤で使った力は戻らない。
肩が熱い。腿が重い。踏み込むたび、白砂へ力を奪われていく。
息を吸う。吐く。もう一度。
一定の呼吸。一定の歩幅。
乱さない。崩さない。
それがメテオの強さだった。
【アルタユきたッ!】【本当にッッ?!】
さらに一羽。黄金が灰白を呑み込み、漆黒へ迫る。
だからこそ分かる。残っている力も。あと何歩、この走りを維持できるのかも。
最後まで走れる。
だが――。
実況席の二人が同時に立ち上がった。
「「あの位置から届くのかぁぁぁぁ!!」」
このままでは。届かない。
紫の瞳の先で、七羽の翼が重なる。
マヤとブラン。
ビーナス。
サリア。
グラス。
ティル。
ラオー。
どの一羽も止まらない。どの一羽も、この栄冠を譲るつもりなどない。
『スターオー!』『まだ伸びろぉぉぉ!』『一番星、落ちるなぁぁぁ!』
観客の叫びが、巨大な波となって押し寄せる。
ウィンダスターオー。
一番星。
スターオー。
いくつもの名が、走路を飛び交っている。
その中で。
――メテオ……!
聞こえた。
あまりにも大きな競争場の中。
何万人もの声。八羽の足音。白砂が弾ける音。
実況。風。そのすべてが重なる中で。
確かに。自分を呼ぶ、小さな声があった。
中盤。一歩。二歩。三歩。
子供たちが自分たちだけの名前をつけて、大声で叫んだ。
あのときも、彼らの声は聞こえていた。
きっと今も。声が枯れるほど叫んでいる。
自分がどれほど苦しいかなど、彼らには分からないだろう。
残された脚がどれほど少ないかも。
七羽すべてが、どれほど強いかも。
そんなことは関係なく。
ただ。まだいけると。負けるなと。信じてくれる。
メテオの羽先が、わずかに乱れた。
七羽から押し寄せる風圧。
けれど。紫の翼が開く。
一枚。また一枚。乱れかけた羽根が風を探す。
そこに、まだ風はあった。
ほんのわずか。
翼を支えるだけの風。
前へ行くための風。
メテオは、それを捕まえた。
羽根が揃う。翼の角度が戻る。
首は上がらない。脚も乱れない。
もう一度。いつもの走りへ。
黄金の王者が猛然と迫る。その翼が純白の一番星へ並びかける。金色が、視界の端を埋める。
ラオーが見いだした先。
ティルが通り抜けたことで生まれ、マヤとブランが動き、ほんの一瞬だけ開いた道。
メテオの瞳も、それを捉えていた。
ビーナスが気づいた。サリアも翔ける。グラスは大地を踏み抜く。
そして、ラオーが来る。
道は狭い。長くは開かない。今しかない。
紫の瞳が前を向く。白い一番星が、再び前を向く。
――まだ。
――まだ終わっていない。
――あの子たちが、まだ信じてくれている
応えなければならない。
もう一度。自分を「メテオ」と呼ぶ、あの声に。
最後まで自分を信じてくれる、あの子たちに。
ゴール板が迫る。
「譲らない! 譲らない! マヤノとブライアンがまったく譲らない!!」
「誰が抜ける! 誰が抜ける! 誰が抜けるんだッ!!」
八羽が一つになる。
その僅かな隙へ、綻んだ紫電を纏った一番星が飛び込む。
自由の翼が伸びる。
内から蒼い幻影。
深海の狩人が食らいつく。
再び風をつかんだ逃げ鳥。
漆黒の大彗星が翔ける。
外から赤銅の重戦車。
その中央を、黄金の王者が突き抜けようとしている。
十ヤルム。
「マヤが逃げ切るか?! ブランが差し切るか?!」
五ヤルム。
「アルタユきたッ!グラスも伸びてくるッ!一塊で突っ込んできたぁぁぁぁぁ!!」
嘴が並ぶ。翼が重なる。脚が白砂を蹴り上げる。
メテオにはもう、横を見る余裕はない。
サリアが、グラスが、ラオーがいる。
マヤも、ブランも狙っている。
自分と同じく風を纏うビーナス。気配を殺しているティル。
姿は見えなくても分かっている。
全員がいる。
全員が前へ出ようとしている。
だから。自分も。最後の一歩のために。白砂を蹴り上げる。
『もう一回だ! もう一回飛べぇぇぇ!』
小さな体から絞り出された声が、何万もの歓声の中へ飛び込んでくる。
もう一回。
その言葉が、メテオの中へ落ちた。
もう一回。
さっき飛んだ。
それでも……。
―――"まだだ、まだ一番星は落ちていない! 振り絞れッ!!"―――
七羽の脚が伸びてくる。
負けじと脚を伸ばす。紫の翼も風を押し返す。
七羽の嘴がゴールへ迫る。
紫を纏う純白の胸が、七羽の胸と並ぶ。
ほんのわずか。
羽根一枚にも満たない。
最後の……最後の一完歩。
その瞬間、純白の羽根が紫電を宿したように、ひときわ鮮やかに煌めいた。
「大接戦だぁぁぁぁぁ――」
―――ドゴォォォォーン!!
ゴール板の真上で、巨大な爆発音が鳴り響いた。
赤。
青。
緑。
黄金。
色とりどりの花火が、八羽の上へ一斉に咲く。
「……気の早い祝砲が鳴り響いたぁぁぁ!」
『もう上げたのか!?』
『誰が勝ったんだ!』
『見えなかったぞ!』
『今の花火で余計に分からない!』
八羽がゴール板を駆け抜けた。
嘴が並ぶ。翼が重なる。脚が白砂を蹴り上げる。
マヤが残したようにも見えた。
ブランが差したようにも見えた。
内からティルが届いたようにも。
黄金のラオーがすべてを呑み込んだようにも見えた。
赤銅のグラス、漆黒のサリア、灰白のビーナス。
そして。
最後に紫電を宿した、白い一番星。
『メテオだ!』『メテオが光った!』『最後にもう一回飛んだぞ!』
子供たちは確信したように叫ぶ。
観客席では、勝ったと叫ぶ者、負けていないと叫ぶ者、投票券を空へ投げる者、慌てて拾い直す者が入り乱れた。
『マヤだ! マヤが残した!』
『違う、ブランが差した!』
『ラオーだ! 最後に黄金が前へ出た!』
『内を見ろ、ティルがいるぞ!』
『グラスも並んでいた!』
『スターオーだ! 最後に白が出てる!』
『誰でもいい、判定を早くしてくれ!』
「写真判定です! まだ勝者は分かりません! 皆さん、落ち着いて投票券はまだ捨てないでください!」
その注意が遅かったのか、観客席のあちこちで、空へ舞った紙片を追いかける者たちが一斉に屈み込む。
『俺の券!』
『それは私のだ!』
『番号を見ろ、番号を!』
『踏むな! 頼むから踏むな!』
走路の先で、八羽が少しずつ速度を落としていく。
祝砲の煙が風に流れ、白砂の上へ色の薄い影を落とした。
メテオも、ゆっくりと歩調を緩めていく。
走っている間は崩れなかった首が、ようやく少しだけ下がった。
大きく息を吐く。熱い。脚が重い。翼の先まで疲労が染み込んでいる。
出し切った。最後の一歩まで。
もう一度と言われた分まで。
メテオは首を少しだけ動かした。
遠い観客席。
そこから聞こえてくる声は、もう再び大きな一つの歓声へ戻っている。
今は、あの子たちの声も聞き分けられない。
それでも。
先ほどの声は、まだ耳の奥に残っていた。
――メテオ。
――まだいける。
――負けるな。
――もう一回飛べ。
メテオは静かに目を閉じる。
届いていた。
全部。
ちゃんと。
巨大な表示板へ、白い文字が浮かぶ。
――写真判定中。
競争場が落ち着かない。
『スターオーだったよな!?』
『最後、紫が光ったぞ!』
『いや、並んでる!』
『頼む……一番星であってくれ!』
『ウィンダスに持ってこい!』
誰もが表示板を見上げている。
子供たちも。
先ほどまで声を枯らして叫んでいた小さな応援団は、今度は身じろぎひとつせず、ただ白い文字を見つめていた。
やがて、実況がレースを振り返る。
誰もが声を抑え、判定の時を待ち続ける。
長い。
あまりにも長い写真判定。
メテオは静かに立っていた。
結果は、まだ分からない。
けれど。
最後の一歩を思い返す。
声が届いた。風を捉えた。脚を伸ばした。もう一度、飛んだ。
自分にできることは、すべてやった。
あとは。
あの子たちと一緒に、答えを待つだけだった。
――表示板の文字が消えた。――
ざわめきが引く。
競争場の奥から奥へ。
何万人もの声が、波を引くように小さくなっていく。
実況席から、息を吸い込む音が響いた。
「判定が出ました! 一着、ウィンダスターオー! 二着――」
『『『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!』』』
二着の名は、聞こえなかった。
『スターオーだぁぁぁ!』
『一番星が取ったぞ!』
『ウィンダスだ! ウィンダスが勝ったぁぁぁ!』
『最後の伸びだ! あの一歩だ!』
『見たか、紫が光った瞬間!』
星形の紙飾りが空へ飛ぶ。紫の布が何本も振られる。
何万人もの歓声の中心で。
その中でもひときわ高い声が弾けた。
『やったぁぁぁぁぁ!!』
『メテオが勝ったぁぁぁ!』
『やっぱり飛んだ!』
『もう一回飛んだんだ!』
メテオが顔を上げる。
その声だけは、すぐに分かった。
先ほどまで。遠い観客席から。届くかどうかも分からないほど離れた場所から。
自分を押してくれた声。
――メテオ。
今度は、はっきり聞こえる。
勝者が戻る通路の向こう。
小さな影が一つ飛び出した。
続いて、もう一つ。さらに一つ。
「メテオーッ!」「メテオぉぉぉ!」「勝ったぞー!」「すごかった!」
子供たちが走ってくる。
短い脚を懸命に動かして。
星形の飾りを握ったまま。
紫の布を引きずりそうになりながら。
互いを追い越し。ぶつかりそうになり。
それでも誰一人止まらず。真っ直ぐに。
メテオのところへ。走ってくる。
レース中とは違う。もう歓声の向こうではない。
すぐ近く。
顔が見える。
声が聞こえる。
笑っている。
全員。声を枯らして。息を切らして。
それでも、とびきり嬉しそうに。
「メテオ!」
メテオの紫の瞳が、大きく開いた。
走っている間、最後まで崩れなかったその表情が。
ほんの少しだけ、柔らかくなる。
純白の首が上がる。
子供たちへ向かって。鮮やかな紫の翼が、大きく開いた。
「クルルァァァッ!」
高い声が響いた。一番星からの返事。
一瞬。
子供たちが目を丸くする。そして。
「返事した!」
「メテオが返事したぞ!」
「聞こえてたんだ!」
「やっぱり聞こえてたんだぁ!」
また歓声が弾ける。
子供たちがメテオの周りへ集まっていく。
小さな手が伸びる。白い羽毛へ触れようとして、届かなくて。
背伸びする。別の子が跳ねる。笑い声が重なる。
メテオは逃げない。静かに立ったまま。
自分を囲む小さな応援団を、一人ずつ見ていく。
あの声だった。
最後の直線。苦しさの中で聞こえた声。
何万人もの歓声の中から、自分を呼んだ声。
まだいけると。負けるなと。もう一回飛べと。そう言ってくれた。
だから……。だから、もう一度飛べた。
子供たちは、まだ騒いでいる。
「次も勝とうな!」
「メテオならできる!」
「さいごのやつ、もっとすごい名前を考えるぞ!」
「メテオメテオスパートだ!」
メテオは、静かにその声を聞いていた。
そして、ほんの少し誇らしげに胸を張る。
純白の羽根へ、遅れて差し込んだ光が落ちる。
紫の翼が小さく煌めいた。今度は雷のような激しい光ではない。
夜空に最初に灯る星のような。
小さく。
けれど確かな光。
メテオは、自分を見上げる子供たちへ顔を向けた。
―― "ありがとうございます。貴方たちの期待は、裏切れませんから" ――
(=゚ω゚)ノ お待たせしました。メテオ推しの方、おめでとうございます!
おみごと! ウィンダスターオー、子供たちとの絆の大勝利!
子供たちとメテオの掛け合いにほっこりしますね。