アリスの少しファンタジーな終末世界放浪記 作:シベリアワシミミズク
モモイ『うわぁ~ん!全く新しいアイデアが浮かばないよ~!』
アリス『んあーッ!このままじゃまたユウカに怒られます!』
ケイ『…全く、だからあれ程やるべきことは早くやりなさいと言ったじゃないですか。』
ミドリ『そうだよお姉ちゃん。まだゲームの発表日までの締め切りに余裕あるからって毎日ゲーム三昧の生活にのめり込んだのはお姉ちゃん自身でしょ?』
モモイ『だってさ~…。』
ユズ『で、でもまだ2ヶ月あるから皆で一緒に…頑張ろう…!』
アリス『はい!アリスも勇者としてどんなクソゲーが出来上がろうとも頑張ります!』
モモイ『最初からクソゲー扱いは酷くない!?』
ミドリ『あはは』
ケイ『うふふ』
パチリ…
アリス「…夢…ですか。」
私、只のアリスはシャーレ跡の廃墟で目を覚ました。最近は色々あってあまり寝れてなかったのでソファで仮眠を取っていたのを思い出す。全く、機械である私が夢を見たってしょうがないだろうと思いながらむくりと上半身を起こして回りを見渡した。
そこにはかつての賑わいは無く苔や草が生い茂ったオフィスしか目に入らず、過去はもう戻らないものだと改めて思い知った。私は近くに置いておいた物資集め用のリュックから水筒を取り出してとぽとぽと中身の清潔な水を手で汲んでそれに写っている自分を見つめる。
そこには自分で言うのもなんだが、機械でなければ真っ黒な隈も浮かんでいただろう私の窶れた顔が覗き込んでいた。そしてそんな顔を見るのは早々に切り上げて汲んだ水を決して顔に付かないよう一息に飲み干すと私はソファから立ち上がる。
アリス「…こうしてはいられません。早く探し物を探さないと…。」
そうして私は武器とリュックを背負って頼まれた探し物を見つけるために改めてシャーレのビルの探索を開始したのだった。
アリス「…う~ん、やっぱり見つかりませんね。」
ここはかつて「D.U.シラトリ区」と呼ばれていた廃墟群だ。そろそろ探索を初めて2時間経つがRPGゲームならそろそろレアアイテムでも出てくれて良い頃合いだ。しかし現実はそう都合よくは出来ていないらしく未だに私はこのビルを彷徨い歩いている。
しかし驚くことにこのビルは殆どが草木に覆われて今にも崩れそうなビルが多い中で未だに良好な保存状態を保っている。もう300年は確実に経っていると言うのに頑丈な物だ。
アリス「…やはりここでは見つからないのでしょうか…。」
先程からシャーレのビルを下から上まで探してみたがお目当ての物は見当たらない。このままでは町で受けた依頼を完了出来なくなってしまうが幸い食料はまだ沢山あるし先程も換金価値の高い壊れたスマホや小型ラジオも回収できた。
おまけに武器や弾薬だって不足していないのでぶっちゃけもう去っても良いのだが、ある意味過去のキヴォトスの中心地とも呼べるこの場所ならそれとは別の私の求める"答え"があるはずだと思っていた。
しかしどうやら無駄足だったらしいことを私はビルを下から上まで探して辿り着いたシャーレ屋上のヘリポートで悟った。
私はそこで傾き初めている夕日を眺める。このビルよりも高い建物なんて大体崩れているので遮る物なんて何もなく綺麗な景色だ。
…今なら答えが分かるかも知れない。
アリス「…えいっ!」
何故だかそう思った私は屋上の柵を越えて飛び降りた。
ビュウウウウウウウ!!
私が重力によって地上に引き戻される力と風の抵抗によって生まれる大きな風切り音を聞きながら私は地上150メートルの高さを落下していく。普通の人ならきっとこれで答えを見つけられるはずだ。
ドゴォォォォォォン!!!
そうして私は勢い良く地面に衝突した。草木に侵食されて脆くなったアスファルトは粉々になり、ビルから強引に生えた大木に止まっていた小鳥達は大きな音に驚いてパタパタと飛んでいく。
アリス「………やっぱりダメでしたか…。」
私はコンクリートの瓦礫からひょいと頭を出してそう言った。今回もまた失敗だ。映画やゲームで良く見た綺麗な景色を見た後に死ぬと言うのは一種の様式美と言っても良いほどに多用された答えであったがそれが私に適応されることはやはり無かった。
…まあ過去何百年試してダメだったのだからある程度は想定していた答えではあったのだが、それでも少しは希望を抱いてはいたのでショックである。そうして崩れたコンクリートの瓦礫からよいしょと身を起こした私にヘイローの無いとある人影が近づいてきた。
???「マスター!何か凄く大きな音がしましたけど大丈夫d…って本当に大丈夫ですか!?」
アリス「はい…残念ながら。」
そう言いながら私は衣服に付いた土汚れをぱっぱと手で払いながら目の前の人物…白尾エマへそう言った。
エマ「にゅふふ、そうですか!…なら良かったです!」
アリス「全然良くなんてありません…まただったんですから。」
私は自分より背の高いエマを見上げてそう言うが彼女はどこか少し嬉しそうだった。全く、私はエマをそんな子に育てた覚えは無いのに。
エマ「そうだ、マスター見てください!ここのフィールドではこんな沢山の野草やキお肉が獲得出来たんです!」
そう言ってエマは背中の籠の中身を私に見せる。そこには色とりどりの野草や茸、そして既に捌かれた状態の兎肉が入っていた。
アリス「おお、これは美味しそうですね。毒とかは大丈夫ですか?」
エマ「にゅっふっふ~、ご安心をマスター。この中にあるのはリンゴや白菜、ニンニク、兎肉と言った毒の無い美味しい食材だけですから。これとこの前クエストをクリアして交換して貰ったお味噌と一緒にお鍋で煮たらきっと絶品ですよ。…ああ想像するだけで私の空腹ゲージが減ってきちゃいます!」
アリス「ふふ、そうですね。それじゃあ直ぐ早く帰って食べましょうか。」
そうして私たちは崩壊した街並みを歩き始めた。もう日は落ち始めており朽ちたアスファルトが明るい橙色に照らされている。
エマ「マスター、私が覚えてる限り確か飛び降りはこれで579回目でしたっけ?結局答えは見つけられたんですか?」
アリス「残念ながら今日もお預けでした。アリスはやはり答えを見つけられないんでしょうか…。」
エマ「…それってそうしてまで本当に見つけないといけない隠しイベントなんですか…?」
エマは白い髪の上に被っている大きなウィザード・ハットを揺らしながらそう言った。彼女は過去にボロボロになっていた姿をミレニアム跡地で保護してから7年という一瞬の時間を私の弟子として共に旅をしている少女である。
こんな狂った世界でもかなり陽気であるの彼女だが、私が答えを見つけるのを何故か嫌がっている様子がある。
アリス「はい、魔王であるアリスにはこの答えが必要なんです。」
エマ「そうですか…。まあ私は魔王に付き従う魔女ですからマスターに従いますよ!」
そう言ってエマはにこりと笑う。彼女の陽気で純粋な笑顔はかつての私の名付け親である少女の顔がふと浮かぶような素敵で、尚且つ苦いものだった。
アリス「…では早速アリスに従って貰いますね。」
エマ「えっ!?今ですか…?」
アリス「エマ、右横に避けて下さい。」
エマ「…へ?」
ズガガガガガガガガ!!!
そう言うと先程までエマの居た場所にはガトリングガンが撃ち込まれた。
私が言わなければヘイローの無いエマはそれによって蜂の巣だっただろう。
エマ「わわっ!?しゅ、襲撃イベントですか!?」
アリス「その通りです。殺りますよ。」
そう言って私は背中のウィンチェスターM1897トレンチガンを取り出すと腰にある銃剣を銃口付近に取り付けてガトリングガンを放った敵のいる方向へ構える。
パカラッ!パカラッ!パカラッ!
すると向こうから銃を空に撃ちながら馬に乗ってやってくる人達が来た。見たところ只の盗賊のようだ。
どうやら全員がヘイロー持ちのレバーアクションライフルや馬車に載せた手回し式のガトリングガンと言った西部劇で出てくるような重武装であるらしく、私達を格下と見るとノコノコと馬から降りてきた。
盗賊1「おいおいこんな危ない所をそんな弱っちぃ装備でフラついて大丈夫かァ?そんなんだと私らみたいな怖~い人達に殺されちゃうよ?」
彼女らは総勢7人のグループで見たところかなりの手練れだ。
盗賊2「まあ良い、兎に角お前らはその荷物を全部あたしらに寄越しな。」
アリス「そうしたら逃がしてくれるんですか?」
盗賊3「…いや、最近は血を全く見れてないから私達は欲求不足なんだよ。だからお前らは今から私達のオモチャになって貰うことにしたんだ。」
盗賊4「ああ、まずお前らのキレイな腹割って腸引き出してそれをお前らで互いに食べさせ合わせるんだ。そしてゲロまみれのお前らの目玉をくり貫いてそれから…ああ!考えるだけで興奮してくるッ!」
どうやら逃がしてはくれなさそうだ。個人的にはそれで構わないのだが今はエマもいる。それらの案は中々に魅力的だが今回は見送らせて貰おう。
アリス「…そうですか。ならばアリスは抗わない訳にはいきませんね。」バッ
盗賊1「…なっ!消え…」
そう言うと私は盗賊の一人へと一気に距離を詰める。そして…
グサッ!
盗賊1「グガッ!?」
その盗賊の首もとに深く銃剣を突き刺してグリグリと回りの肉を抉り抜いた。そしてその盗賊は地面に倒れ込むと傷口から真っ赤な鮮血をドボドボと溢れさせて涙を浮かべながらパクパクと口を動かしている。
キヴォトスの人達は基本的に普通の人よりは死ににくいが生き物という特性上死ぬこともある。銃で撃たれ過ぎたり高いところから飛び降りたりなどの耐えきれない程の外的損傷を負うこと、そして鋭利な刃物などで刺し殺されたときなどである。
盗賊2「ひ、ひぃ!?」
アリス「アリスだってこんなことしたくありません。…ですが、手を下さなければエマを守れない時は容赦しません。」
そう言って次はガトリングガンに張り付いてる敵を倒しに行く。
盗賊2「…な、舐めるなァ!!」
ズガガガガガガガガガガガガガガ!!!
盗賊の内の1人は必死にガトリングガンの回転ハンドルを回しながら抗戦するがその弾幕の雨が私を捉えることは無かった。
ズガァン!ズガァン!
そして私がショットガンを馬車の車輪を狙って撃ち込むとバランスが崩れて2人目の盗賊は地面に転がり落ちた。
そして私は腰を抜かしそうになっている二人目の盗賊の方へ向く。彼女からは先程までの余裕さはすっかり抜け落ちており、私のことを恐怖の眼差しで見つめてくる。そして突きつけた銃剣を盗賊に突き刺そうとした時…
盗賊3「おらぁっ!」ガッ
アリス「…っ!?」
突如、私の背後に忍び寄っていた3人目の盗賊から首をがっしりと締められてしまった。
盗賊3「ははァ!油断したな小娘がッ!今からその細い首を刈り切ってやるよォ!」
そう言うと盗賊は腰からククリナイフを取り出すと私の首を刈り切ろうとした。しかし…
盗賊3「…っ!?な、なんで刃が通らないんだ!?」
アリス「…そんなのでアリスを殺せるなら300年も苦労しませんよ。」
盗賊3「クソッ!ならこのまま締め落として…」
そうして盗賊は腕に力を入れる。成る程、誰かから首を締められると言う手もあったのか。これなら首吊りとは違って答えを手に入れられるかもしれない。しかし…
エマ「…光よッ!」
バァン…ズオォォォォォオオ!!!
盗賊3「な、なんで体に火が…あ、あああああああいいああああああううああ!!!」
エマがボルトアクションライフルから放った弾丸によってその盗賊は轟音と共に焔に包まれた。
盗賊3「熱い死ぬ嫌だ苦しい痛い死にたくない助けて助けてぇぇぇええええぇ!!!」
彼女は道端でジタバタと火達磨になりながら暴れて断末魔を上げていたが、やがて全身の火傷と酸欠からかその断末魔も鳴りを潜めて彼女は黒い炭になった。
エマはヘイローが無い代わりに弾丸に祈りを込めるとあのように様々な魔法が使えるのだ。今知ってる限りだと先程の焔を出す魔法と敵を氷漬けにする魔法、強い風を着弾地点に引き起こす魔法とそして…最後の切り札となり得る強力な魔法などなどである。
アリス「エマ、ありがとうございます。」
エマ「…ま、任せてください…これくらい…私だって…。」
しかしそう言うエマの表情は少し暗い。殺しと略奪、暴行が日常のこの世界で彼女は余りにも優しすぎる。それこそ命乞いをしてきた敵に関しては常に逃がすが隙を見せて殺されかけるかの二択なのだ。
その為私はここで生き残る術をエマに教え込んだので自分の身位は守れるようになったがそれでもまだ如何せん躊躇いがちだ。
アリス「エマ、無理そうなら隠れてて下さい。あとはアリスが何とかします。」
エマ「は、はい…すいません。」
そう言うと彼女はそそくさとビルの廃墟へと身を隠した。…さて、残るは4人。
盗賊4「ヘイローの無い帽子を被ったアイツ…もしかして"魔女"か?」
盗賊5「はぁ!?魔女なんて昔に駆除されたはずだろ?気持ち悪い!」
…またエマを魔女だとか言っている人がいる。こんな人達は直ぐに片付けてしまおう。
そうして彼女らに向けてショットガンを構えた時…
ドスン…ドスン…
アリス「…何ですかこの音?魔物?」
まるで体の奥底が震えるような一定の地響きのような物が鳴った。其処らの魔物じゃない。そしてそれはどんどんも大きくなっている。まるでこちらに近づいてくるように。
盗賊4「あ…や、ヤバイ!時間を掛けすぎた!早く逃げないと…!」
盗賊5「お、おい!早く逃げるぞ!アイツがくるぞ!」
盗賊6「わ、私を置いていかないでくれぇえ!!」
そう言うと盗賊達は私達や仲間の遺体を放って馬に跨がって逃げ始めた。あの盗賊の顔は尋常ではない恐怖を感じている様子だった。一体ここに何がいると言うんだ。
ドスン…ドスン…
アリス「エマ、直ぐにそこから出て、出来るだけアリスの側から離れないで下さい。」
エマ「は、はい!」
私が素早く指示を飛ばすとエマは隠れていた廃ビルから出てくると私のそばにやってきた。こうでもしないとヘイローの無いエマは守れないのだ。
…来る。未だにそれな何かは分からないが何かが来ると言うことだけは直感的に理解できた。
盗賊7「はぁ…!はぁ…!死にたくない!死にたk…」
グチャリ
アリス「…えっ?」
突如、逃げ遅れた最後の盗賊が何物かに頭を噛み千切られた。それはビルの上におり、その長い首を使って盗賊の首を食ったのだ。
エマ「ま、マスター…何なんですか…あれ…。」
ドスゥン!
それはビルから降りるとその全貌を顕にした。一見するとそれは四足歩行で首の長いまるでキリンのような外見だが、良く見ればそれはキリンと言うには余りにも歪な物にも見えた。
その魔物は全長が25m程もある巨体であるのに足はガリガリに痩せ細っており、前足後ろ足共に人間の手のような形、色は全身焦げ茶色、そしてその長い首の上にある顔はパーツのそれは人間と殆ど同じであったが、顔に入りきらない程大きな目玉が撞木鮫のように横へ飛び出しており、頭上には大きなヘイローを携えていると言う正しく化け物であった。
魔物「…にゅう?」
盗賊4「で、出たぁ!」
盗賊5「クソッ!撃てぇ!撃てぇ!」
ズバン!ガシャ!ズバン!ガシャ!ズバン!ガシャ!
ズガガガガガガガガ!!!
そうして彼女達はその化け物に攻撃を開始する。しかしその怪物はまるで何も無いかのようにのすのすと盗賊達に近づいていく。
魔物「…にゅうん!」バクッ!
盗賊4「あ、あ、助け…」
バキィ!!
盗賊の一人がまた馬ごと頭から食べられた。最初は刃を立てずに口に含むだけだったが口の中のそれが獲物だと知るとがぶりと噛み千切ってしまったのだ。
ガブッ!バキィ!グチャ!ゴキャ!
魔物「にゅう!にゅうん!」
盗賊5「や、止めてくr…」ゴキャ!
盗賊6「う、うわぁぁぁぁぁ!?」グチャ!
そして怪物が怯える他二人を血痕を残してぺろりと食べると次は私達が標的になったようでその化け物はこちらへ振り向く。見れば見る程深いな顔である。
アリス「エマ、出来るだけ遠くへ行って援護をお願いします。ここはアリスが引き付けます。」
エマ「は、はい!分かりましたマスター!」
そう言うとエマは遠くへ走っていった。これで彼女に危険が及ぶことはないだろう。
魔物「…にゅう?」
その怪物は目を私に合わせる。その目は人間の顔から撞木鮫のように飛び出ているのに白目と黒目がハッキリ分かるほどにクリクリとしている。先程まで4人の人間を喰らっていた化け物とは思えない。
魔物「…うにゅう!」
そうして魔物は私のことを獲物として認識したようで先程と同じく噛みつこうとしてくる。こんな遅い攻撃なんて私なら直ぐに避けれるのだが…
バクッ!
私は抵抗しなかった。もしもこれで噛み潰されたなら私はそれで満足なのである。これで答えを見つけられる。これでやっとモモイやミドリに…いや、出来れば会いたくない。きっとその再会が幸せなことじゃないことはあの時の記憶で私自身が一番分かっている。
そんなことを考えながら怪物は口に含んだ私を噛み潰…
魔物「…ゔぉえっ!」ペッ
アリス「…え?」
さなかった。怪物は私を口に含んで飲み込もうとした途端に吐き出したのだ。やはり本物の肌ではなく人工タンパク質で構成された私の肌は不服なのだろうか。
魔物「…うにゅう…にゅう!」
そう鳴き声を発するとその化け物はどたどたと走った。化け物は細い足の割にはかなり素早く、そしてその方向は確かエマが逃げた方向であり、私を食えないと分かった怪物が今度は違う方向に逃げたエマを追いかけようとしたことは鳴き声を理解できない私にも理解できた。
アリス「…このッ、待ってください!」
ズドォン!ズドォン!ズドォン!
私はスラムファイアという連射方法を使って化け物の足の裏関節部分に散弾を撃ち込む。
魔物「…うにゅあッ!」
そう鳴き声をあげると化け物は撃たれた足を痛そうに見て次に殺意を滲ませた目でこちらを見てきた。どうやらしっかりとヘイトは稼げたようで一安心である。
魔物「うにゅぐえあッ!!」
そうして化け物は先程のように私へ噛みつこうとしてきたがこんな攻撃なんてチビメイド先輩ことネル先輩に比べたら遅すぎる。私はそれを避けると間抜けにも飛び出している目玉のうちの一つに散弾を叩き込んだ。
ズドォン!ズドォン!
魔物「ぐぇあえぇう!?」
そう鳴きながら化け物は一旦後ろに下がった。目玉はまだ潰れていなさそうだが血がだらだらと垂れておりダメージ自体は喰らってそうだ。まあ良い、兎に角早く決着をつけてしまおう。
私はスカートの中にあるスピードローダーで素早くショットガンのチューブラーマガジンにスラッグ弾を押し込めるとエマに合図を送った。
アリス「エマ!」
私はそう言うとエマの方を向いて化け物の後ろ足を指差してから右手の人差し指と親指を伸ばして中指の真ん中を折り曲げたハンドサインを送る。そして…
エマ「分かりましたマスター!」
バァン!パキィィィィィン!!
化け物の足は氷漬けになった。先程エマに掲げたハンドサインはエマへ氷魔法を撃つように指示する物だ。エマはヘイローが無いので戦闘が起きれば基本的に攻撃の当たらない後方からの支援が主となる。
その為私は後方のエマに伝わるようなハンドサインを考えたのである。そして身動きが取れなくなったその凍った足にショットガンのチューブマガジンにある全てのスラッグ弾薬を撃ち込んだ。
ズガァン!ズガァン!ズガァン!ズガァン!ズガァン!
ピシピシ…バキィン!!
魔物「うぎゅえあ!!??」
私が全て放ったスラッグ弾はその凍った足に命中しピシピシとヒビが入るとそのまま砕け散った。このスラッグ弾というのは普段使う沢山の鉛球が入った散弾とは違って一つの大きな塊である一粒弾を発射する。
これは700Jの破壊力である357マグナム弾より約3倍も威力の高い2700Jもの破壊力を誇るのだ。これを至近距離で撃たれれば装甲車だって討てるだろう。
アリス「よしこれで…エマ!必殺技を!」
そうして私はまた違ったハンドサインを掲げる。
エマ「…暗雲を貫く、光の一撃をッ!」
すると遠くから一閃の光線が真っ直ぐに魔物目掛けて飛んできた。それは先程の火炎魔法とは一線を画すとんでもなく巨大な物だ。
ズガアアアアアァァァァァァァァァァン!!!!
魔物「うぎぇあえええあいおぃぁぁぁ!!!」
そうしてその巨大な光に包まれて呆気なく敵は消滅した。…これはエマの最後の切り札である爆裂魔法であり、他の火炎魔法や氷結魔法とは一線を画すとんでもない威力である。
しかしこれを使うとエマは貧血気味になってしまうしそもそも破壊力が高すぎるので人口密集地や崩れやすい建物の回りでは少し危険だったりする。
アリス「エマ!撃破しましたよ!」
私が手を振りながらそう叫ぶと向こうからエマがてくてくとやって来た。
エマ「マスターが無事で良かったです!お怪我はありませんか?」
アリス「はい、残念ながらありません。」
私がそう言うとそれは良かったです!とエマは満足そうに頷いた。
エマ「…にしてもこの魔物は何なんでしょうか。もしかして超低確率スポーンのレイドボスだったり?」
アリス「それはアリスにも良く分かりませんがいつもの魔物に比べたらかなり異色の存在だということは確かですね。」
このキヴォトスにはいつからか"魔物"と呼ばれる存在が蔓延るようになっていた。これらは私がミレニアムから出た時には既に人類の脅威となっていたのでいつか出現したのかはわからない。
過去の私なら魔物と聞けば目をキラキラさせていただろうが今はそうではない。…あの時の私ほど憎くて仕方ない忌々しい存在もいないのだ。
そしてこの魔物は私の知る魔物とは全く違う物だった。普通魔物はこんなに大きくはないしヘイローだって無いのにコイツはそれらを持っていた。一体この魔物は何なのだ?私は気になったのでエマの攻撃によって原型を留めていないその死体をまさぐってみることにした。
ぐちゃ…ぬちゃ…
エマ「わわっ、マスター!それって触っても大丈夫なんですか!?状態異常のデバフが付いたら大変なことに…」
アリス「触って危険ならそれで儲け物ですけどね…ってこれは…。」
私は魔物の先程のギャングの死体が詰まっていた…恐らく魔物の胃袋であろう中で革のアタッシュケースを見つけた。これは先の街で受けたクエストで依頼主から探すように頼まれていたものなのだ。
これは僥倖と言わんばかりに私はひょいとアタッシュケースを拾い上げる。魔物の胃酸だとかギャングの肉片だとかが付いてるが中身に異常はないだろう。
依頼主からは決して中身を見るなと言われていたので確認は出来ないが、これで無事でなくても荷物を持ち帰ると言う依頼自体は完了したのだから文句は言わせない。
エマ「…ん?これは…。おおっ、見てくださいマスター!」
私がアタッシュケースを手に取った時どうやら何か見つけたらしいエマから声を掛けられた。彼女の元へと駆けつけるとエマは半分吹き飛んだ魔物の頭を凝視しており、その視線の先には抉れた脳味噌から何か輝く宝玉のような覗いていた。
アリス「…これは…黄金の宝玉?」
エマ「もしかしたら低確率ドロップのレアアイテムかもしれませんよマスター!質屋さんで高く売れるかもしれません!」
アリス「確かに気になりますね。少し取ってみましょうか。」
そうして私はぐちょりと魔物の欠けた脳味噌に手を突っ込んでその宝玉を取り出した。それはスイカ程のサイズで大きさの割にはそこまで重くなく非力なエマでも持てるだろう。そしてその宝玉は透き通るような綺麗な黄金色のとても綺麗な物であった。
アリス「……綺麗…。」
私は思わず口からそう漏らしてしまった。脳漿と血にまみれていたとしてもそれ以上に私を魅了する何かがそれにはあったのだ。
エマ「…マスター?どうかしましたか?」
アリス「…確かに高く売れるかも知れませんね。エマも是非持ってみて下さい。」
そうして私はその得物をエマに手渡す。最初こそエマはそれにこびりついている脳漿やらを見て少し絶妙な顔をしていたが、私がそれらを拭うと軈て覚悟を決めたようでそれを受け取った。
エマ「…これは…確かに綺麗で…え?」
アリス「…エマ?」
その宝玉を受け取ったエマは突如として固まった。私が声を掛けてみるがエマは上の空である。すると突然その宝玉は幾千もの光となって、それらはエマの体を包み込むとその全てが体の中へと入っていった。
エマ「………。」
アリス「…エマ?…エマ!エマ!!」
私はエマの肩を掴んで揺らす。…嫌だ、もう大切な人を失うなんてもう耐えられない…!お願いだから無事だと言って…!
エマ「…ちょ、ちょっとマスター!力が強いです!」
アリス「エマ!無事なんですか!?何ともありませんか!?」
エマ「だ、大丈夫ですよマスター!私は何のデバフも喰らってません!」
アリス「そうですか、良かった…。」
私は力が抜けたようにその場に座り込んだ。私は今まで何人と大切な人を見殺しにしてきたがエマまで喪ってしまえばきっと自暴自棄になって何をするのか分からない。
アリス「…それでさっきの光は何なんですか?」
エマ「それが私にもさっぱりで…。でも特に体には何も…ん?」
アリス「…エマ?」
エマ「何か…力が溢れてくるような気がします…!」
アリス「力…ですか?」
エマ「はい!これは凄いですよ…!バフが乗りに乗りまくってます!見ててくださいマスター!」
そう言うとエマはボルトアクションライフルを構えると少し大きな廃ビルへ照準を合わせた。
エマ「…最大魔力展開!目標、制圧します!」
ブゥン…
そう言うと何もないエマの頭の上に突如としてヘイローが浮かんだ。そのヘイローは黒色と紫色の混じった立体的な大きな物で温厚で争いを好まない彼女には不釣り合いなほどに厳ついものであり、それはかつてのゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナと同じ物だった。
アリス「…そのヘイローは…。」
エマ「…光…よッ!!!」
[EXスキル 終幕:イシュ・ボシェテ]
バシュウウ…ズドオオオオオォォォォォォン!!!
エマがそう唱えると彼女のライフルの銃口が紫色に光ったかと思うとそこから凄まじい勢いのビームが発射された。
それはエマの持っている最後の切り札なんて比べ物にならない程の物であり、命中した廃ビルは粉々に吹き飛んでその威力は正にゲヘナ最強の風紀委員長の名に十分見合う物であった。
アリス「…凄い。こんなことが出来るなんて…。」
私が知る限りエマは魔法が使えるだけでこんな芸当は出来ない。彼女はヘイローの無い普通の女の子のはずだったが目の前の状況は明らかにいつもとは違う異常なものだった。
エマ「………」
アリス「…エマ?」
エマ「…くくく…。アッハハハハハ!!!」
突如、エマは高笑いをし始めた。彼女の表情はあの心優しいエマのものではなく、まるで憎しみという概念を形に模した物を宿したような眼をしていた。
エマ「アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!消えろ!消え失せろ!全員死んでしまえ!」
アリス「…エマ!」
私はそんな彼女に掴み掛かる。このままではいけない直感的にそう感じたのだ。
エマ「アハハハ…ハ…は……」
どさっ
アリス「エマ!どうしたんですか!?」
私はその場に倒れ込んでしまったエマへ急いで近づく。先程まで彼女の頭の上に浮かんでいたヘイローはもう後も形も無くなっていた。
エマ「う、う~ん…ま、マスター…。」
アリス「…エマ!」
エマ「わ、私はデバフを受けたみたいで…体に全く力が入りません…。おぶって下さい…。」
アリス「だ、大丈夫なんですか!?」
エマ「…うぅ…MPゲージが空っぽです…。お腹もすきました…。」ぐうぅ…
アリス「…そう、ですか…。」
だが起きたエマは先程の様子が嘘かのようにいつも通りだった。
そうして私はエマを背中に背負って彼女の背負っていた籠を手に引っ提げる。彼女と武器、見つけた金になりそうな道具に食料を含めれば100キロは越えてそうな物だがこれくらいなら負担にもならない。
エマ「…すいませんマスター…。いつも迷惑掛けてばっかりで…。」
アリス「…これくらい別に迷惑とは思ってませんよ。」
私はエマを背負いながらそう言った。…迷惑を掛けているのはいつも私だと言うのに。
アリス「…では帰りましょうか。」
エマ「はい!マスター!」
そうして私達は夕日に背を向けながらてくてくとD.U.シラトリ区跡地から去っていくのだった。
・アリス
役職:STRIKER、タンク
このお話の主役。背丈や服装は変わらないが、人の命を奪うことに躊躇が無かったり、ゲーム口調じゃ無かったりする。弟子のエマを大切に思っておりその為なら死んでも良いと思っているが、肝心な死ぬということが中々出来ないのでその方法を探している最中である。
武器
ウィンチェスターM1897トレンチガン
アリスが使っている1897年製のショットガンで12ゲージの弾薬を5発装填出来る。銃剣とスラムファイアという連射術を使って近距離で凄まじい攻撃力を誇る。光の剣はもうお役御免だ。
M1911コルトガバメント
アリスが使っている1911年製の拳銃で高威力の45ACP弾を7発装填出来る。信頼性の高い拳銃であり100年先でも動くと評判な程である。