アリスの少しファンタジーな終末世界放浪記   作:シベリアワシミミズク

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第二話

アリス「…敵は…居ませんね。」

 

私は現在拠点にしている地下鉄駅の廃墟にエマを置いてその周辺を歩哨していた。盗賊や魔物にバレないような場所にいつも拠点を構えているので敵襲は無いのだがたまにあるのでいつもこうして警戒している。

 

腕時計を見てみると現在は午後9時、そもそもこの時計自体かなり古く半壊してあるものなので目安にしかならないがそろそろ晩御飯の時間だろうか。

 

一通り辺りを歩哨してみて敵も居なかったので私は地下鉄駅へと入っていき、階段を降りた先にある改札階にはリュックの中身を整理しているエマがいた。

 

エマ「あっ、マスター!」

アリス「体はどうですか?エマ。」

エマ「はい!もうバッチリです!体のMP切れも無くなっていた大体元通りになってきました。ほら見てください!」

 

そう言いながらエマは元気そうにぴょんぴょんと跳び跳ねると彼女に実っている私には1ミリも無い重そうな双房がぶるんと揺れた。初めて会った時は私と同じだったし食べてるものも同じなのにこの残酷な格差は一体何なのか。

 

エマ「…マスター?どうかしましたか?」

アリス「…何でもありません。」

エマ「ほ、本当ですか?」

 

私は平静を保とうとするがどうやら感情が態度で出ていたようでエマは少しあわあわとしている。

 

アリス「取り敢えずエマの体に何もなさそうで良かったです。」

エマ「…でもあの力はなんだったんでしょうか…。」

 

そう言うとエマは少し俯いた。

 

エマ「あの時…物凄いバフが私に掛かった時…私が私じゃなくなるような感覚で…少し怖かったんです。このまま全部壊れちゃえって憎しみに支配されて…少しだけでも本気で思っちゃったんです。私は…どうなっちゃうんでしょうか…。」

アリス「…そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。もしも何かあったとしてもアリスが何とかしますから。」

 

私はそう言ってエマの少し震えた肩に手を置く。

 

エマ「…えへへ、マスターの手は暖かいですね。凄く落ち着きます…!」

アリス「ふふっ、なら良かったです。でもあの力は出来るだけ使わないようにしましょうね。」

 

そう言うとエマは少し落ち着いたように頷いた。

 

アリス「…少し疲れてるようなら今日の晩御飯はアリスが作りましょうか?」

エマ「いえ、今回は作りたいメニューが決まっているのでマスターはお手伝いをお願いします。」

アリス「分かりました。何をすれば良いですか?」

エマ「なら地下鉄ホームまで行って地下水をこれで汲んできて貰えますか?。」

 

そうしてバケツを渡されるとランタンに火を付けて私は改札を通って更に下にある地下鉄ホームへと階段を下った。このD.U.シラトリ区にはかつてより地下水がかなり湧く土地で地下鉄を整備する際に溢れ出る地下鉄をポンプで押し出していた。

 

しかし世界が崩壊してからポンプを動かす人間も居なくなったので地下鉄には地下水が溜まっているのだ。ここの水は綺麗で無加工でも飲めるものであると言うのは結構前には分かっていることなのでここに来る時は毎回汲みに来ている。

 

そうして私はランタンで真っ暗な構内を照らしながらホーム辺りまでやって来た。ホームには1m程水が溜まってきておりランタンで照らすと大小様々な魚が泳いでいる。

 

私は自分の顔に水が飛ばないように細心の注意を払ってバケツと水筒代わりの瓢箪にその地下水を汲んで、銃剣を洗うと一口だけ手で汲んだ地下水を飲んで再びエマの元へと戻った。

 

アリス「エマ、終わりましたよ。」

エマ「流石マスターです!こっちもそろそろお鍋の準備が出来るので少し待っていてください。」

 

エマは駅に散らばっているコンクリート片で簡易的な釜戸を作って今やっと火を灯した所だった。

 

アリス「エマ、換気はしましたか?」

エマ「はい!元々ここはかなり空気の入れ換えがしやすい場所だったので少し手を加えるだけで問題ありませんでした。」

 

密閉された部屋で火を炊くと一酸化炭素が充満してたちまち死んでしまう。私は問題ないがエマは問題大有りなのでこの辺は徹底しなければ。

 

アリス「エマの料理を少し見ていても良いですか?」

エマ「はい、別に良いですよ!」

 

私はエマの近くまで行くと彼女の手の動きを観察した。彼女はとても料理が上手い。それこそ初めて会った時は私が料理を担当していたがどこで覚えたのかいつの間にかエマは私の料理を遥かに凌駕する腕前になっていた。

 

エマ「先ずは味噌だれを作っていきます。」

 

そう言うとエマは林檎と玉葱、ニンニク、先のクエスト報酬で貰った越後麹の味噌を取り出した。

 

エマ「林檎と玉葱は皮を剥いて四等分に切ったらおろし器ですりおろしてニンニクは包丁で微塵切りにします。」

 

そうして彼女は手際よくしゃっしゃと皮を剥いてそれをすりおろすとボウルにそれと刻んだニンニクと味噌大匙2杯、そして砂糖と胡麻油を加えて和えて私の汲んできた水でちょっとずつそれを伸ばした。

 

エマ「これで味噌だれは完成です。マスター、味見してみてみますか?」

 

そうして口元に運ばれたスプーン一杯のそれを私がぱくりと口に入れた瞬間、林檎のフルーティーな甘味と味噌の塩味、それにニンニクのガツンと刺激的な匂いと胡麻油の芳醇な匂いが相まってそれは正しく絶品であった。

 

アリス「凄く美味しいです…!…もう一杯貰っても良いですか?」

エマ「にゅふふっ!マスター、味見なのでこれ以上はダメですよ。これはお鍋に入れるために作ったんですから。」

アリス「…そうですか。」

 

少し残念だがこれを加えた鍋の味を想像するとそれもどうでもよくなってくる。私は魔王であり機械だから食事なんてとらなくても問題ないのだがやはり美味しいものは口にしたい。

 

エマ「次は本番のお鍋です。先ずは火に掛けたお鍋に胡麻油をひいて余った刻みニンニクに馴染ませます。」

 

そう言って鍋にそれらを加えると途端に食欲をそそるいい匂いが漂ってきた。

 

エマ「マスター、そこにある白菜とニラと兎肉を良い感じに切っちゃって下さい。」

アリス「分かりました。」

 

そうして私はまな板にそれらを寝かせると腰の鞘から抜いた銃剣でトントンと切り始めた。白菜とニラは一口サイズにザク切りして、兎肉はきめが細かく柔らかい背肉と良い出汁が出る前足を適当な大きさに切った。

 

本当なら一番お肉が乗ってて旨味が濃厚な後脚も入れたかったのだが如何せんかなり硬いお肉なので後で叩いて干してジャーキーにすることにした。

 

アリス「エマ、切り終わりましたよ。」

エマ「おお、早いですね!流石マスターです!」

 

エマは私の切った食材を受け取ると改めて調理を開始した。

 

エマ「先ずはお肉から先に入れていきます。」

 

するとお鍋に私の切ったお肉が入る。ジュワァ…という肉とニンニクに火が入る香ばしい音と釜戸火のパチパチと言う音が合わさって実に良い雰囲気になっている。

 

エマ「そしてある程度お肉に火が通ったらお鍋の端に寄せて白菜と少しの塩とお水を入れたら蓋を閉じます。」

 

そう言って彼女は投入された白菜がじゅうじゅうと音を出している鍋に蓋をした。

 

エマ「…ここからは開けてはいけませんよ?…もしかすると呪いのデバフを受けてしまうかも…。」

アリス「ふふっ、そうですね。」

 

そう言いながら鍋が出来上がるまで二人で雑談をした。これと言って何か大切なことがある訳じゃない、只思ったことや感じたこと、これから何をしたいかなどを二人で語るのである。

 

エマ「…マスター…。少しだけ…良いですか?」

アリス「…?どうかしたんですか?」

 

突如、エマが少し神妙な面持ちで問いかけてきた。そんないつもの陽気な彼女に似つかわしくないその表情を見て彼女の顔を見て話を聞く。

 

エマ「実は…あの凄まじいバフを受けて倒れた時に…声が聞こえたんです。」

アリス「…声…ですか?」

エマ「はい、女の人の声でほんの一瞬だったのでもしかしたら聞き間違いかも知れませんけど。」

アリス「…それは何と…。」

 

私がそう尋ねるとエマは一息置いてこう言った。

 

エマ「…"マダムを倒せ"…と。」

アリス「…マダム?…もしかして…」

 

マダム…いやあり得ない。そんなはずはない。だって…だったら何であの時私は…

 

ジュウウウ…

 

アリス「…この音は?」

エマ「あっ!お鍋が吹き溢れてます!」

 

よく見ると鍋からふつふつと汁が溢れて釜戸火にジュウジュウと音を立てて落ちていた。エマは急いでミトンを付けて鍋を火から引き上げると蓋を開けて中身を確認する。

 

エマ「ふぅ~、何とか全滅は避けました…。」

 

どうやら何も無かったらしくエマはその豊かな物に手を当ててほっと胸を撫で下ろした。

 

エマ「さて、では仕上げとしましょうか。」

 

そう言うとエマは先程私の切った野菜を取り出した。

 

エマ「よし、良い感じに煮えてますね。最後はマスターが切ってくれたニラとすり胡麻、鋏で鷹の爪を散らして…完成です!」

 

そうして今日の晩御飯である兎肉の味噌煮込み鍋が完成したのだった。

 

アリス「では…手を合わせて…。」

エマ「はい。」

アリス「いただきます。」

エマ「いただきます!」

 

そして私たちはそのお鍋を食べ始めた。木の器によそわれたスープの表面に油の粒がきらめくそれは味噌とにんにくの香ばしい香りが漂っており、スプーンで一杯掬って口に入れると鷹の爪のじんわりとした辛さの奥に林檎と味噌の甘みとコクが広がり後を引く旨味がたまらない。一口食べるごとに食欲が刺激されていく。

 

アリス「…~~!美味しいですエマ!」

エマ「にゅふふ!喜んで貰えて嬉しいです!」

 

私は一心不乱にそれを口にかきこむ。本当なら米が欲しい所だがそんなものがいらないくらいにその鍋は完成していた。

 

アリス「エマ、おかわりをお願いします!」

エマ「マスター、そんなに急がなくてもおかわりは沢山ありますからね。」

 

そうしてエマからよそわれたそれを更に私は食べていく。やはりエマは料理が上手い。私のような機械と違って彼女はきっと皆から好かれて良いお嫁さんになるに違いないだろう。…こんな偏見にまみれた世界で無ければ。

 

そして全ての鍋を平らげた私たちは余ったお肉を燻製している間に寝るためのテントの設営を始めた。いつもなら野外でペグを指して固定するのだが今回は屋内なので重そうな石を置いておけば飛ばされる心配はないだろう。

 

アリス「さて、テントはこんなものでしょうか。」

エマ「ふぁああ…。もうくたくたです…。」

アリス「ふふっ、エマは今日、良く頑張ってましたからね。今夜はぐっすり眠って下さい。夜更かしはお腹の中の子にも悪影響ですから。」

 

私はテントの中に寝袋を広げながらそう言うと、エマは寝巻きに着替えて彼女の豊かな双房を支えていた下着を取り外すとナイトキャップをかぶって寝袋に入った。

 

エマ「ふぁあ…おやすみなさい…マス…ター……」すうすう

アリス「…寝ましたか。お休みなさい、エマ。」

 

そう言ってエマの頭を撫でるともう一度辺りの歩哨に向かうのだった。

 

・・・・・・・・・・・・

 

アリス「結局何もありませんでしたね。」

 

私は歩哨から帰るとテント前の焚き火の前に腰かけた。時刻は大体午前1時、もうそろそろ寝る時間だが私は今日は昼寝をしたしそもそも機械なので問題は無い。そして私はリュックから銃の整備セットを取り出すと手早く自分とエマの武器の手入れを始めた。

 

エマのボルトアクションライフルであるカルカノM1891に油を差したり銃身をブラシでゴシゴシと汚れを落としたりして整備していく。彼女はこのライフルを魔法の杖としてかなり無理して使っているのでこまめな整備をしているのだが、不思議なことに一切部品が磨耗していたりはしていない。

 

そして次に私のウィンチェスターM1897ショットガンとM1911コルトガバメント拳銃を整備して銃剣を研いでいく。…昔はエンジニア部の作ってくれたレールガンこと「光の剣:スーパーノヴァ」を使っていたがもう私は勇者なんかではなく立派な魔王なのでもう使っていない。

 

そうして全ての武器の手入れを終えると私は焚き火を消してエマの横に粗末な毛布をひいて横になった。エマの使っている寝袋と比べると悲しいくらい寝心地が悪いが過去に睡眠が悪くなれば早死にしやすいという内容の本を読んでからこれを使っている。

 

アリス「…お休みなさい。」

 

ふっとランタンの火を消して私は眠りにつくのだった。

 

・・・・・・・・・・・・

 

エマ「…んうぅ…おはようございます…。」

 

私、白尾エマは目を覚まして寝袋からむくりと起き上がる。時計を見ると今はおおよそ午前5時半、いつもよりも早起きだ。横を見るとマスターこと魔王のアリスが粗末な毛布に横たわっている。個人的にマスターにはもっと良いもので寝て欲しいのだが一貫してずっとあの臭いそうな毛布に寝転がっている。

 

エマ「…ん~!よし!早起きしたことですし少し早めの支度をしましょう。」

 

そうして私はテントを出ると改札跡を抜けてホームへと向かっていく。ホームには地下水が貯まっており屈んでばしゃばしゃと顔を洗うと身に付けている服を全て脱ぎ払った。

 

…私の子が居るはずのお腹はまだ膨らんでいない。もう6年も経つと言うのに一体いつになれば大きくなるのだろうか。

 

そして辺りに誰もいないことを確認してそっと帽子を脱ぐ。この帽子のせいで私は大変な目に合ってきたがそれ以上に大切な物なのだ。どんな目で見られようが出来ることなら片時も離さずに被っていたい物だが流石に水浴びの際は脱いでおかねば…。

 

ちゃぷん…

 

エマ「…ッ!冷たっ!」

 

私は4月の少し冷たい水にゆっくりと入っていく。初めは肩、次に胸、そして私の子が居るお腹、慣れてくれば全身を洗っていく。最初こそ凍えるほどに寒いが慣れてくると軈て普通に水浴びが出来るようになる。

 

全身を洗ったらやけに清々しい気分になったので泳ぐことにした。ホームは1m程の水深しかないが線路が敷かれていた場所はホームよりも深くなっているのでそこではゆっくりと泳ぐことが出来る。

 

ザバッ!ザバッ!

 

クロールに平泳ぎに背泳ぎ、バタフライはまだ出来ないが大体の泳ぎ方は独学で出来るようになっている。

 

そして暫く泳いでいると疲れてきたのでホームへと上がって手拭いで全身を吹いていつも来ている服と立派なヴィザード・ハットを被って改札階まで戻った。

 

改札階まで戻るとまだマスターは寝ているようで、可愛らしい寝息を立てている彼女の顔を私はじっと眺める。

 

アリス「………。」すぅすぅ

 

いつもは冷静で強くて私を導いてくれるマスターも食事とこの時だけは姿相応の少女のように見える。マスターは私の命の恩人だ。きっとあの時…マスターと初めて会ったとき助けて貰えなかったら私は死んでいただろう。

 

…マスターはいつも死のうとしている。飛び降りなんてもう四桁まで半分を切ったし、首吊りも毎回縄が千切れて失敗している。一酸化炭素による窒息や薬物のオーバードーズによる方法も試しているそうだがそれらも芳しくないらしい。

 

私はそれをやめて欲しいのだ。マスターが簡単に死なないことは知っているがそれでも命の恩人が死のうとする様を見るのは良い気にはならない。勿論魔王であるマスターの弟子である私が口出しすることはいけないのだろうがそれでも…だ。

 

ぐぅぅ…

 

アリス「…んん…。」

 

すると寝ているマスターのお腹から可愛らしい音が鳴る。

 

エマ「…もう朝ごはんを作ってしまいましょうかね。」

 

そうして私は朝ごはんの支度を始めるのだった。

 

エマ「さて…リュックの中にある物は…と。」

 

私はがさごそと食料の入ったリュックの中を漁る。中にあったのは半分位になったバケット、残り二つの卵、油紙に包まれた残り150g程のベーコンブロック、コーヒー豆、そして塩コショウなどの調味料諸々だ。

 

エマ「…もう町まであと少しですし思いきって全部使ってしまいましょうか。」

 

今日できっと人のいる街まで行けるし、その時にはクエスト報酬と廃墟街で見つけたお宝を売ったお金があるはずのでそれで物資を補給すれば良い。

 

エマ「では料理を始めましょう。」

 

そうして私はすぐに料理に取りかかる。先ずはもう消えていた焚き火にもう一度火を灯してそこに焚き火三脚を立てて水と砕いたコーヒー豆の入ったエスプレッソポットを吊るしてしまう。

 

そうしてエスプレッソが出来上がる前に手早く他の調理を済ませてしまうことにした。

 

昨日も使った釜戸に火を付けて薪をくべると、その上に鉄製のスキレットを乗せてもう小さくなってしまっている牛脂を無くなるまで塗っていく。

 

そうしてスキレットが熱くなってきたら分厚く切った4枚のベーコンと2つの卵を割って入れた。

 

スキレットの上でベーコンがパチパチと小さく跳ね、牛脂の香ばしい香りが辺りに広がる。

 

その後は軽く塩コショウをミルでガリガリと削ってベーコンエッグは完成だ。

 

そして完成したベーコンエッグをお皿に盛り付けると最後にバケットを分厚く2枚に切り取ってスキレットに乗せると残っているベーコンと牛脂の脂を吸わせるように焼いていく。

 

すると暫くして少しくたくたになっていたバケットが脂でカリカリになってきて実に美味しそうになっていた。

 

アリス「…うぅん…エマ、おはようございます…。」

エマ「マスター、おはようございます!」

 

すると眠そうな目を擦りながらマスターがテントから起き上がってきた。

 

エマ「もうすぐで朝ごはんですよ。」

アリス「…そうなんですか?なら早く支度しないと…。」

 

そういうとマスターはいそいそと服を着て準備を始めた。

 

私、只のアリスは美味しそうな匂いに釣られて目を覚まして今は着替えを終えた所だ。この服はあの時…モモイから貰ったミレニアムの現存する数少ない制服であり、かなりのお気に入りである。

 

アリス「今日の朝ごはんは何ですか?」

エマ「にゅふふ、それは見てからのお楽しみです。」

 

そういうとエマは2人分の皿を持ってくるとその1つを私に渡した。そこには脂の良い匂いのする厚切りのバケットの上にジューシーそうな分厚いベーコン、そしてきらきらと輝く目玉焼きが乗せてあった。

 

アリス「おお…!これはラピュタパンですね!」

エマ「…らぴゅた?」

アリス「昔にそういう映画があったんです。」

 

確かゲーム開発部の皆と金曜ロードショーで一緒に見た記憶がある。今となっては嫌な思い出だがあの作品に出てくる食事はどれも美味しそうなものだった。

 

エマ「マスター、エスプレッソはいりますか?」

アリス「はい、砂糖たっぷりでお願いします。」

 

トポポポポ…

 

そういうとエマは音を立てながらエスプレッソをマグカップに注ぎ入れるとリュックから砂糖の入った瓶を取り出してそこから大匙3杯の砂糖をエスプレッソの中に入れた。

 

エマ「はいマスター。」

アリス「ありがとうございます。」

 

そうして手渡されたマグカップを覗き込むときめ細かな泡の層ができているエスプレッソが顔を覗かせた。

 

ふぅふぅと息を吹き掛けて一口飲んでみるとコーヒー豆の鼻に抜けるような芳醇な香りとエスプレッソ特有の濃厚な味わいと砂糖の甘さが口いっぱいに広がった。

 

そしてその後にラピュタパンを一口かじると脂を吸ったバケットのサクッとした食感にベーコンの塩味、塩コショウのかかった目玉焼きのぷりっとした白身と濃厚な黄身の味わいが舌を撫でた。

 

アリス「…このバケット凄く美味しいです!」

エマ「そうですか?ありがとうございますマスター!」

 

そうして私はラピュタパンを一口食べた後に残る脂っぽさをエスプレッソで流し込んで更に口に残った苦味をラピュタパンで上乗せするという無限ループに入ると気付けば私の皿とマグカップは空になっていた。

 

エマ「マスターもう食べちゃったんですか?」

アリス「はい、とても美味しかったです!」

エマ「…良ければ私のも食べますか?」

アリス「…それはエマのでしょう?ならエマが食べないとダメです。」

 

幾ら美味しいからといって流石に弟子から朝ごはんを強奪することは出来ない。ここは年長者としての威厳を見せなければ。

 

そうして朝ごはんを食べ終わった私達は物資を纏めていた。

 

アリス「さて、では一度依頼主への完了報告をするために町へ戻りましょう。」

エマ「分かりました。では早く撤収準備をしてクエストを完了させましょう!」

 

そして私達は最後に汲めるだけの地下水を汲むとそそくさと物資を纏めて拠点としていた地下鉄駅を後にした。

 

 




・白尾エマ

役職:SPECIAL、アタッカー

このお話の■■■。過去ミレニアム跡地でアリスに保護されて、現在は共に旅をしている少女であり、その姿は在りし日のワイルドハント2年の白尾エリと酷似している。何故かヘイローが無く弾丸一発で普通に死んでしまう程に脆く弱いが、魔法のような物を使うことができ、メタい話だがこのお話の中でも最強クラスの攻撃力を誇る。そして謎の宝玉に触れてから何故か他の生徒のスキルを使うことが出来るようになった。

武器
カルカノM1891
エマが先祖代々受け継いできた1891年製のボルトアクションライフルであり、6.5mmカルカノ弾を6発装填出来る。これは彼女が小さい頃から馴染みのある武器でありエマ曰く最早自分の一部であるとのこと。

ベレッタM1915
エマの15歳の誕生日にアリスから貰った1915年製の拳銃であり、9mmグリセンティ弾を7発装填出来る。オープンスライドデザインと言う弾詰まりが起こりにくいデザインが採用されている。大切な物を数多く燃やされたエマの大切な宝物だ。
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