低ランクの冒険者でも最上級のダンジョンに挑むのは自由です。 作:駄文亭
第1ミッション終了後・成長報告
取得経験点
項目 経験点
ミッション達成 +2,000
合計 2,000
経験点の使用
成長内容 消費経験点
シーフ1→2 1,500
レンジャー0→1 500
消費合計 2,000
未使用経験点 0
成長後の技能
技能 レベル
シーフ 2
レンジャー 1
ソーサラー 1
セージ 1
ハンター(一般技能) 3
成長の意味
シーフ技能を伸ばしたことで、遺跡内における罠の発見・解除、隠された仕掛けの調査、忍び足、鍵開けなどの探索能力が向上します。
さらにレンジャー技能を取得したことで、シーフ技能だけでは拾いにくい危険を補完できます。地下水道や遺跡周辺での、
* 崩落しそうな天井や壁
* 不自然な足場
* 魔物や獣の気配
* 異臭
* 水流や風向きの変化
* 周囲の音が急に消える異常
* 待ち伏せの兆候
などを察知する能力を獲得しました。
今回の経験点はすべて使用し、未使用経験点は0点です。
数日後。
ロックは、盗賊ギルドから紹介された店の前に立っていた。
王都の商業区から一本外れた路地。
看板には、杖と星を組み合わせた紋章が描かれている。
店の名は《奇跡の店》。
神の奇跡を売っているわけではない。
普通の武器屋や防具屋では扱えない、魔法の品を取り次ぐ店だ。
扉を開けると、乾いた鈴の音がした。
「いらっしゃい」
奥の卓にいた老人が顔を上げた。
店内に並んでいる品は少ない。
空の飾り棚。
鍵を掛けられた小箱。
由来の分からない杖。
武器屋というより、鑑定士の仕事場に見えた。
「ヨアヒムさんの紹介です」
ロックが名前を出すと、老人は納得したように頷いた。
「灰鼠の客か。話は聞いている」
老人は卓の下から、細長い木箱を取り出した。
まず現れたのは、飾り気の少ない銀色の指輪だった。
「《パリーパリー》だ」
見た目だけなら、露店でも売っていそうな品だった。
ロックが指にはめる。
何も起こらない。
光らない。
熱くもならない。
「動いてみろ」
老人に言われ、ロックは腰の剣へ手を掛けた。
ゆっくり抜き、
構える。
その瞬間、指輪をはめた手が微かに引かれた。
剣先が自然に動く。
何かを受け流すための位置へ。
「持ち主の動きを助ける。だが、指輪が勝手に戦ってくれるわけではない」
「分かっています」
「分かっていない者ほど、その台詞を言う」
老人は無愛想に答えた。
次に取り出されたのは、灰銀色の鎧だった。
細かな金属環を編み上げている。
金属製でありながら、驚くほど軽い。
ロックは両手で持ち上げ、環の一つ一つを確かめた。
「ミスリル銀か……」
「銀とは少し違う。魔術師や精霊使いが好む金属だ」
ロックは袖へ腕を通した。
身体へ馴染む。
革鎧より重い。
だが、鉄製の鎖帷子とは比べ物にならないほど動きやすかった。
剣を抜く。
腰を落とす。
左右へ踏み込む。
身体を捻っても、動きを邪魔されない。
これなら、古代語魔法の複雑な身振りも妨げられない。
「これも」
「即決するのか?」
「命を守る物ですから」
老人は何も言わず、次の品を出した。
今度は鞘だった。
古びた革に覆われている。
装飾はなく、
新品にも見えない。
だが、近づけた剣が僅かに震えた。
「《鍛えの鞘》」
老人が告げる。
「収めた剣を少しずつ鍛える。もっとも、鞘へ入れておくだけで名剣になるほど都合のいい品ではない」
「剣を選びますか?」
「相性はある。だから、こちらも用意した」
最後に出されたのは、新しいブロードソードだった。
魔法の剣ではない。
けれど、刃の厚み、
重心、
鍔の角度、
柄の握り。
どこを見ても、丁寧に仕上げられている。
ロックは右手で握り、
左手へ持ち替えた。
どちらの手でも違和感がない。
軽く振る。
止める。
切っ先がぶれない。
「同じ形の剣でも、出来には差がある」
老人が言う。
「これは腕のいい職人が、使い手のために手間を惜しまず仕上げた物だ」
「これにします」
ロックは剣を《鍛えの鞘》へ収めた。
鞘の内側で、
金属が小さく鳴った。
まるで、互いを確かめ合ったようだった。
「それから、これも見るか?」
老人が小さな金属弾を卓へ置いた。
親指ほどの大きさ。
表面には、細かな魔法文字が刻まれている。
「何ですか?」
「《エクスプロージブ・ブリット》。専用の投石器で撃ち出せば、命中した場所で爆発する」
ロックは触れずに眺めた。
「誤って落としたら?」
「それだけでは爆発しない」
「火に入れたら?」
「試したければ、自分で買って確かめろ」
「遠慮します」
老人が初めて笑った。
「どうする?」
ロックは少し考え、
一発だけ購入した。
何度も使う物ではない。
何度も使える金額でもない。
だが、どうしても正面から崩せない相手に出会った時。
あるいは、
退路を作らなければならない時。
最後の手段が一つあるだけで、選べる作戦は増える。
ロックは弾を厚い布で包み、
丈夫な小箱へ入れた。
他の投石用の弾とは、絶対に混ざらない場所へ収める。
「いい買い方だ」
老人が言った。
「高い品を買ったからではない。使わない品を、使うつもりで扱わなかったからだ」
ロックは頭を下げた。
「ありがとうございました」
大量の銀貨が、
軽い指輪と、
鎧と、
鞘と、
一本の剣へ変わった。
金は減った。
だが、失ったとは思わなかった。
生き残る可能性に替えたのだ。
◇
翌日。
ロックは何度かに分けて、探索用品を地下水道へ運び込んだ。
一度に運べば目立つ。
大荷物を抱えて下水道へ入る少年など、衛兵でなくても気に留める。
だから、背負える程度に分けた。
毛布。
油。
松明。
ランタン。
縄。
くさび。
小型の槌。
手鏡。
羊皮紙と筆記具。
保存食。
水。
最後に、丸めたテントを運んだ。
目指したのは、竜牙兵と戦った部屋だった。
黒い扉の手前。
広さがあり、
出入口を見張りやすい。
敵を排除した後も、別の何かが入り込んだ形跡はなかった。
ロックは、まず部屋を掃除した。
砕けた骨を集める。
使える破片と、
使えない破片を分ける。
大きな破片は部屋の隅へ寄せた。
細かな欠片は袋へ入れ、別の場所へ捨てる。
綺麗にしすぎてはいけない。
ここを誰かに見つけられた時、
秘密の探索拠点だと気づかれてしまう。
ロックは、入口側へ古びた毛布を敷いた。
欠けた木椀。
空の酒瓶。
拾ってきたぼろ布。
火を焚いたように見せるための灰。
腐りかけた木箱。
一見すれば、浮浪者が寝泊まりしているだけの場所だった。
奥には、さらにぼろ布を吊るした。
その向こうへ、
本当に必要な道具をまとめる。
地図を書く場所。
保存食を吊るす場所。
水袋を置く場所。
探索用品を入れた箱。
予備の光源。
手当てに使う布。
何をどこへ置いたかは、目を閉じても手が届くように決めた。
ロックはランタンを二つ、離れた場所へ置いた。
片方はすぐ使える状態にする。
もう片方は油を抜き、蓋を閉めて保管する。
松明も同じ場所へまとめない。
火は光を与える。
だが、精霊使いが敵なら、
その火自体が攻撃の足場になる。
一つの炎から火の精霊を呼び出され、
ランタンを壊されたとしても、
すべての光源を失わないようにする。
油も分ける。
火口箱も分ける。
暗闇の中で一つを失っただけで、何もできなくなるような置き方はしない。
「これでいい」
ロックは、部屋の中央から全体を見渡した。
浮浪者のねぐら。
そう見える。
だが、ぼろ布の向こうには、
遺跡を攻略するための道具が揃っている。
さらに、入口へ細い糸を張った。
目立たない位置。
誰かが入れば切れる。
床の一部には薄く灰を撒く。
足跡が残る。
扉近くの瓦礫は、わざと不自然にならない程度に並べた。
誰かが動かせば、戻ってきた時に分かる。
ここは安全ではない。
オラン王国が管理しているはずの地下水道でも、
実際には犯罪者や魔物が入り込んでいる。
王都の役人も、
危険な奥まで頻繁には来ない。
まして、その先に古代王国の遺跡があることなど知られていない。
だから、守ってくれる者はいない。
ロック自身が、
見つからないようにしなければならない。
奪われないようにしなければならない。
◇
最後にロックは、羊皮紙を広げた。
これまで歩いた地下水道。
遺跡への入口。
竜牙兵の部屋。
黒い扉。
覚えている限りの形を、線へ変えていく。
以前より迷いが少なかった。
距離を測る。
曲がり角を記す。
天井の高さ。
床の傾き。
風の流れ。
水音。
地図は通路の形を残すだけのものではない。
次に何が起きるかを考えるための材料だった。
竜牙兵との戦いを経験し、
ロックは罠を見る目を改めて鍛え直していた。
仕掛けを探す。
解除する。
利用する。
罠は敵が置く物とは限らない。
地形そのものを罠へ変えることもできる。
相手の武器を、
相手自身へ向けることもできる。
あの戦いで学んだことを、
偶然の成功で終わらせない。
ロックは黒い扉の位置へ印を付けた。
「次は、ここだ」
すぐには開けない。
まず観察する。
触れずに調べる。
周囲の石材との違いを見る。
隙間から風が来ているか確かめる。
音を聞く。
必要なら一度戻り、
対策を考える。
この部屋がある限り、
無理に先へ進む必要はない。
分からなければ戻れる。
道具が足りなければ取りに戻れる。
考えが足りなければ、
ここで考え直せる。
それが拠点を持つということだった。
ロックは新しい剣を《鍛えの鞘》から少しだけ抜いた。
よく磨かれた刃が、
ランタンの光を細く返す。
魔法の鎧。
魔法の指輪。
新しい剣。
爆発する弾丸。
確かに、以前より強くなった。
だが、装備が増えたから勝てるわけではない。
使う場所を選ぶ。
使わずに済む方法を探す。
使うと決めた時には、
それで決着させる。
ロックは剣を鞘へ戻した。
そして、ランタンの火を一つ消す。
残った光の中で、
黒い扉を見つめた。
探索は、扉を開けてから始まるのではない。
開ける前に、
すでに始まっているのだ。
第1ミッション終了後・収支表
収入
内容 金額
初期所持金・依頼報酬・遺跡財宝売却後資産 66,520ガメル
⸻
支出(装備更新)
品目 金額
パリーパリー(指輪) 7,000ガメル
ミスリルメッシュ 25,000ガメル
鍛えの鞘 6,000ガメル
最高品質のブロードソード 680ガメル
エクスプロージブ・ブリット×1 2,500ガメル
装備小計 41,180ガメル
⸻
支出(前線アジト整備)
品目 金額
背負い袋 50ガメル
ベルトポーチ 15ガメル
シーフ用ツール 5ガメル
テント 300ガメル
毛布×2 100ガメル
ランタン×2 80ガメル
松明×2束 10ガメル
火口箱 20ガメル
ランタン油×4 20ガメル
ロープ 10ガメル
くさび 20ガメル
小型ハンマー 10ガメル
手鏡 100ガメル
羊皮紙 10ガメル
羽ペン・インク 5ガメル
アジト整備小計 755ガメル
⸻
収支
内容 金額
総資産 66,520ガメル
総支出 ▲41,935ガメル
残資産 24,585ガメル
備考
* 遺跡内に前線アジトを設営済み。
* 装備を大幅に更新し、探索継続に必要な基盤を整備。
* 残資産24,585ガメルは、今後の魔法装備の追加購入、消耗品の補充、拠点維持費などに充当可能です。