低ランクの冒険者でも最上級のダンジョンに挑むのは自由です。   作:駄文亭

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第18話 裏門の泥

 男爵邸の裏門は、使用人棟と馬屋の間にあった。

 

 正門のような装飾はない。

 

 荷車が一台通れる幅の木戸と、徒歩用の小さな脇扉。

 

 外へ出れば、貴族街の裏手を通る細い路地へ続いている。

 

 商人の荷車。

 

 食材を運ぶ業者。

 

 薪や炭を納める職人。

 

 屋敷の主人が目にする必要のない者は、すべてこちらから出入りする。

 

「鍵は誰が管理しているんです」

 

 ロックが尋ねると、案内役の衛兵は脇扉を見た。

 

「普段は家令だ。執事も予備を持っている」

 

「昨夜は閉まっていましたか」

 

「今朝、調べた時には閉まっていた」

 

「鍵も掛かっていた?」

 

「ああ」

 

「誰が確認しました」

 

「家令だ」

 

 ロックはヨアヒムと目を合わせた。

 

 家令が管理する門を、家令自身が確認している。

 

 それでは、門が夜中に使われなかった証明にはならない。

 

「昨日の夜、衛兵が到着した後に裏門を見ましたか」

 

「いや。犯人は書斎の窓から逃げたと聞いていたからな」

 

 衛兵は悪びれもせずに答えた。

 

 ロックは脇扉の前へしゃがみ込む。

 

 足元は石畳だった。

 

 庭とは違い、雨が降っても足跡は残りにくい。

 

 それでも、何も残らないわけではない。

 

 石の継ぎ目。

 

 扉の下。

 

 蝶番の周囲。

 

 雨水と一緒に運ばれた泥や砂は、低い場所へ集まる。

 

「開けてもらえますか」

 

 衛兵が家令を呼びに行った。

 

 ほどなくしてオスカーが現れる。

 

 痩せた身体。

 

 黒い上着。

 

 疲れを隠すような険しい表情。

 

 家令はロックを見ると、露骨に不快そうな顔をした。

 

「今度は裏門ですか」

 

「昨夜、使われなかったか確認します」

 

「使われておりません」

 

「どうして分かるんです」

 

「今朝も鍵が掛かっていました」

 

「夜中に開けて、閉め直した可能性は?」

 

「ございません」

 

「なぜ?」

 

「鍵を持っているのは私と執事だけです」

 

「だからです」

 

 家令の眉が動いた。

 

「あなたか執事なら、開けて閉め直せます」

 

「私を疑っておられるのですか」

 

「確認しているだけです」

 

「言葉を変えただけでしょう」

 

 オスカーは腰の鍵束から一本を選び、乱暴に錠へ差し込んだ。

 

「ご覧になればよろしい」

 

 鍵が回る。

 

 乾いた金属音。

 

 家令は脇扉を開けた。

 

 外の路地から、湿った風が吹き込んでくる。

 

 ロックは蝶番側へ回り込み、扉の下を調べた。

 

 泥が細く削られている。

 

 扉を開閉すれば、下端が地面近くを通り、堆積した砂や泥へ弧を描く。

 

 その跡は新しかった。

 

「昨夜、雨が止んだのはいつです」

 

「日暮れ前だったはずだ」

 

 衛兵が答える。

 

「その後、この門を使った人は?」

 

 家令が即座に否定する。

 

「おりません」

 

「今朝は?」

 

「食材の搬入前です。まだ誰も使っておりません」

 

 ロックは泥へ指を触れた。

 

 表面だけが乾きかけている。

 

 今朝開けた跡ではない。

 

 昨夜、雨が止んだ後についたものだった。

 

「この門は昨夜、開いています」

 

 家令の顔が強張った。

 

「何を根拠に」

 

「扉の下の泥です」

 

 ロックは弧状の跡を示した。

 

「雨が降っている間に開けたなら、水で崩れます。今朝開けたなら、もっと湿っています」

 

「それだけで昨夜だと?」

 

「少なくとも、雨が止んでから今朝までの間です」

 

「夜中とは限らない」

 

「では、いつ開けました」

 

「私は開けておりません」

 

「執事が開けた可能性は?」

 

「フランツも開けていないはずです」

 

「本人に聞かなければ分かりません」

 

 家令は口を閉ざした。

 

 否定はしている。

 

 だが、驚いてはいない。

 

 裏門が使われた可能性を、最初から考えていたように見えた。

 

          ◇

 

 ロックは外の路地へ出た。

 

 石造りの塀が左右へ続いている。

 

 道幅は狭く、馬車同士がすれ違うのは難しい。

 

 昨夜の雨で、路地の端には泥が残っていた。

 

 中央は荷車の車輪に踏まれて固い。

 

 だが、塀際には人の足跡が残っている。

 

 屋敷の使用人。

 

 荷運び人。

 

 巡回する衛兵。

 

 誰のものか分からない跡が幾重にも重なっていた。

 

「さすがに足跡だけでは無理か」

 

 ヨアヒムが言った。

 

「全部を見分けるのは無理です」

 

 ロックは裏門から数歩離れた場所へ進む。

 

 泥の中に、片足だけ深く沈んだ跡があった。

 

 人が立ち止まり、身体を捻った時につく跡。

 

 そのすぐ横に、細い線が走っている。

 

 ロックは指で辿った。

 

「何だ、それは」

 

「何かを引きずった跡です」

 

「死体か?」

 

「細すぎます」

 

 縄。

 

 袋。

 

 あるいは、地面へ届く長い外套の裾。

 

 線は裏門から路地の中央へ向かい、車輪跡に潰されて消えている。

 

「夜中に誰かがここへ出た」

 

 ロックは立ち上がった。

 

「そして、門の前で一度立ち止まっています」

 

「入った者か、出た者か」

 

「まだ分かりません」

 

 塀の反対側には、別の屋敷の裏門がある。

 

 路地の先は大通りへ通じている。

 

 人目を避けて出入りするには都合がよい。

 

 だが、犯人がここを通ったと決めるのは早い。

 

 裏門を使ったのが、殺人とは無関係の使用人かもしれない。

 

 この屋敷には、自分の秘密を隠すために嘘をつく者が多い。

 

「昨夜、裏門の近くにいた人間を探します」

 

「使用人全員へ聞くのか」

 

「いいえ」

 

 ロックは馬屋を見た。

 

「まず御者です」

 

          ◇

 

 御者エルンストは馬屋にいた。

 

 五十歳を過ぎた大柄な男で、毛の濃い腕には古い傷がいくつも走っている。

 

 男爵家には二十年近く仕えているという。

 

「旦那様の愛人?」

 

 エルンストは露骨に顔をしかめた。

 

「奥様がそんなことを話したのか」

 

「愛人がいたとは、まだ決まっていません」

 

「なら余計なことを聞くな」

 

「男爵が火の日と風の日に出掛けていたそうですね」

 

 御者の手が止まった。

 

「仕事だ」

 

「どこへ?」

 

「旦那様の商売先だ」

 

「毎週、同じ場所へ?」

 

「そういう仕事もある」

 

「ラウル・ケスラーの商会ですか」

 

「違う」

 

 返答が早すぎた。

 

 ロックは少し間を置く。

 

「僕は、ラウルの商会だとは言っていません」

 

「今、言っただろう」

 

「質問しただけです。行き先を知っているから否定できたんですよね」

 

 エルンストは黙り込んだ。

 

 ヨアヒムが馬屋の入り口へ立ち、逃げ道を塞ぐ。

 

「昨夜、裏門を使いましたか」

 

「使っていない」

 

「誰かが使うのを見た?」

 

「見ていない」

 

「犬が吠えた時は、どこにいました」

 

「馬屋だ」

 

「一人で?」

 

「ああ」

 

「馬は騒ぎませんでしたか」

 

「少し落ち着かなかった」

 

「いつ頃です」

 

「八つの鐘を過ぎた頃だ」

 

 番犬が吠えた時刻に近い。

 

「何か音を聞きましたか」

 

「裏門の方で、戸が鳴ったような気はした」

 

「確認しなかった?」

 

「風だと思った」

 

 昨夜は雨の後で風もあった。

 

 戸が鳴っても、不自然ではない。

 

 だが実際には裏門が開いていた。

 

「門を使ったのが誰か、本当に見ていませんか」

 

「見ていない」

 

 今度の否定には、先ほどまでの強さがなかった。

 

「では、男爵の行き先を教えてください」

 

「それと事件に何の関係がある」

 

「男爵が会っていた人物は、首飾りの行方を知っているかもしれません」

 

 エルンストの顔色が変わった。

 

 ほんの少しだったが、ロックは見逃さなかった。

 

「知っているんですね」

 

「何をだ」

 

「首飾りを誰へ届けたか」

 

「知らん」

 

「男爵自身が持っていった?」

 

「知らん」

 

「あなたが運んだ?」

 

「知らんと言っている」

 

 エルンストは背を向け、馬の鞍へ手を伸ばした。

 

 会話を終わらせようとしている。

 

 ロックはその背中へ問い掛けた。

 

「男爵は愛人に会っていたんじゃない」

 

 御者の手が止まった。

 

「違いますか」

 

「……」

 

「夫人は愛人だと思っている。でも、あなたはその言葉を聞いた時、驚くより先に怒りました」

 

「長年仕えた旦那様を侮辱されたからだ」

 

「それだけなら、行き先を話せるはずです」

 

「話せない仕事もある」

 

「男爵は何をしていたんです」

 

 エルンストは答えない。

 

 だが沈黙そのものが、ロックの推測を肯定していた。

 

 男爵の定期的な外出。

 

 帳簿に記録できない支出。

 

 財産目録に載らない宝石。

 

 回収の難しい債権を巡る取引。

 

 愛人ではなく、別の秘密がある。

 

「男爵は誰かを匿っていましたか」

 

 エルンストが振り返った。

 

 目に浮かんだのは怒りではない。

 

 警戒だった。

 

「なぜそう思う」

 

「愛人へ会いに行くなら、御者がここまで守る必要はありません」

 

「旦那様の名誉に関わる」

 

「夫人はすでに愛人だと思っています。その誤解を放置してまで隠す事情です」

 

 ロックは一歩近づいた。

 

「男爵は、誰に会っていたんです」

 

 エルンストの視線が、ヨアヒムへ移る。

 

「その男は何者だ」

 

「護衛です」

 

「盗賊ギルドだろう」

 

 ヨアヒムは否定しなかった。

 

 エルンストは苦い顔をする。

 

「なら、なおさら話せん」

 

「相手は盗賊ギルドに知られて困る人物ですか」

 

「違う」

 

「では衛兵に知られると困る?」

 

「……」

 

 今度の沈黙は長かった。

 

 やがてエルンストは馬屋の外を確かめ、小声で言った。

 

「旦那様は、女に会っていたわけじゃない」

 

「誰です」

 

「少年だ」

 

 ロックは眉を寄せた。

 

「男爵の子供?」

 

「違う」

 

「では?」

 

「名前は知らん。俺たちは《小鳥》と呼んでいた」

 

「俺たち?」

 

「旦那様と俺だ」

 

「どこにいるんです」

 

「北市場の外れだ」

 

 エルンストは唇を噛んだ。

 

「使われなくなった染物工房の二階に住まわせていた」

 

「なぜ匿っていたんです」

 

「知らん」

 

「毎週、男爵をそこへ運んでいたのに?」

 

「聞くなと言われていた」

 

「首飾りも、その少年へ?」

 

「それは違う」

 

 また早い否定。

 

「では、どこへ」

 

「知らない」

 

「首飾りを馬車へ載せたことは?」

 

 エルンストは目を逸らした。

 

「ありますね」

 

「……一度だけだ」

 

「いつです」

 

「競売の翌日」

 

「男爵と一緒に?」

 

「ああ」

 

「行き先は?」

 

「染物工房だ」

 

 夫人の推測は間違っていた。

 

 男爵は首飾りを愛人へ贈ったのではない。

 

 正体不明の少年がいる場所へ運んでいた。

 

「首飾りは少年へ渡したんですか」

 

「分からん。旦那様は箱を持って一人で二階へ上がった」

 

「持って下りてきましたか」

 

「見ていない」

 

「少年が首飾りを持っている可能性がある」

 

「そうなる」

 

 ロックは思考を巡らせた。

 

 ラウルは、男爵邸に首飾りがあるとリュンクスへ伝えた。

 

 しかし実際には、競売の翌日に屋敷から持ち出されている。

 

 ラウルがそれを知らなかったなら、古い情報を売っただけ。

 

 知っていたなら、リュンクスを空の屋敷へ誘導したことになる。

 

「昨夜、男爵はその少年に会う予定でしたか」

 

「知らん」

 

「夕食の席で時計を気にしていたそうです」

 

「俺は何も聞いていない」

 

「昨夜、馬車は使われましたか」

 

「使っていない」

 

「少年が屋敷へ来る可能性は?」

 

 エルンストの顔が曇る。

 

「一度も来たことはない」

 

「男爵は、少年に裏門の場所を教えていましたか」

 

「知らん」

 

 ロックは裏門を振り返った。

 

 雨が止んだ後に開かれた門。

 

 門前で立ち止まった足跡。

 

 地面を擦った細い跡。

 

 もし《小鳥》と呼ばれる少年が男爵邸へ来たのなら、正門ではなく裏門を使わせるだろう。

 

 人目を避けて匿っている相手だからだ。

 

「その少年は、何歳くらいです」

 

「ロックより少し下に見えた」

 

「髪や目の色は?」

 

「黒髪だ。目は……青かったと思う」

 

「身なりは?」

 

「最初に見た時は襤褸を着ていた。後から旦那様が服を与えた」

 

「怪我は?」

 

 エルンストが怪訝そうにロックを見る。

 

「なぜ聞く」

 

「何かを引きずった跡が裏門にあります。足を怪我していた者なら、歩いた痕跡かもしれません」

 

「右脚を引きずっていた」

 

 ヨアヒムが低く息を吐いた。

 

 ロックは裏門の外で見つけた跡を思い出す。

 

 片足だけ深く沈んだ足跡。

 

 その横に続く細い線。

 

 長い外套ではない。

 

 杖。

 

 あるいは、傷んだ足を補うために地面へ突いた棒。

 

「《小鳥》が昨夜、この屋敷へ来ています」

 

「何だと」

 

「まだ断定はできません。でも痕跡が一致します」

 

 エルンストの顔から血の気が引いた。

 

「旦那様を殺したのは、あいつだと言うのか」

 

「分かりません」

 

「なら――」

 

「会って確かめます」

 

 ロックは言葉を重ねた。

 

「男爵が匿っていた理由」

 

「首飾りを渡した理由」

 

「昨夜、屋敷へ来た理由」

 

「それが分かれば事件の形が見えます」

 

「待て」

 

 エルンストがロックの肩を掴もうとする。

 

 ロックは半歩下がって、その手を避けた。

 

「《小鳥》を衛兵へ渡すつもりか」

 

「話を聞くだけです」

 

「盗賊の言葉を信用しろと?」

 

「僕は盗賊じゃありません」

 

 ヨアヒムが後ろで鼻を鳴らす。

 

 ロックは気にせず続けた。

 

「それに衛兵へ先に知られれば、男爵を殺した第二の盗賊として捕まえられます」

 

 リュンクスと同じだ。

 

 身元の怪しい少年。

 

 人目を避けて匿われていた。

 

 事件の夜に屋敷へ来た痕跡がある。

 

 衛兵にとって、これほど分かりやすい容疑者はいない。

 

「僕たちが先に見つけます」

 

「逃げていたら?」

 

「逃げた理由を調べます」

 

「死んでいたら?」

 

 その可能性もあった。

 

 犯人がリュンクスへ罪を着せるために証拠を作ったのなら、《小鳥》もまた消されるかもしれない。

 

「急ぎましょう」

 

 ロックはヨアヒムへ向き直った。

 

「ラウルの監視は続けてください。僕たちは染物工房へ行きます」

 

「一人で行く気か」

 

「ヨアヒムさんも来るんですよ」

 

「俺は護衛だったはずだが」

 

「便利な肩書でしょう」

 

 ヨアヒムは呆れたように笑った。

 

「言うようになったな」

 

          ◇

 

 男爵邸を出る前に、ロックは衛兵へ一つだけ伝えた。

 

「裏門が昨夜使われています」

 

「誰が使った」

 

「まだ分かりません」

 

「家令と執事を拘束するか?」

 

「しないでください」

 

 案内役の衛兵が目を細める。

 

「なぜだ」

 

「犯人に、こちらが裏門へ気づいたと知られたくありません」

 

「屋敷の中に犯人がいると?」

 

「可能性はあります」

 

「なら危険だろう」

 

「だから、見張ってください。ただし普通に」

 

 衛兵は不満そうだったが、最終的には頷いた。

 

 表立って騒げば、真犯人が証拠を処分する。

 

 あるいは逃げる。

 

 今はまだ、事件の全体像を掴めていない。

 

 ロックとヨアヒムは屋敷を後にした。

 

 目指すのは北市場の外れ。

 

 使われなくなった染物工房。

 

 男爵が密かに匿っていた、右脚を引きずる少年。

 

 リュンクスを罠へ掛けた者とは限らない。

 

 男爵を殺した者とも限らない。

 

 それでも、首飾りの最後の行方を知る人物だった。

 

 ロックは歩きながら、エルンストの証言を整理する。

 

 競売の翌日、男爵は首飾りを持って工房へ行った。

 

 昨夜、男爵は誰かを待っていた。

 

 裏門は雨が止んだ後に開かれている。

 

 門の外には、右脚を庇うような痕跡が残っていた。

 

 そして男爵は殺された。

 

 これらがすべて偶然とは思えない。

 

「ヨアヒムさん」

 

「何だ」

 

「《小鳥》が男爵を殺したと思いますか」

 

「会ってもいない人間を、犯人と決める気はない」

 

「意外ですね」

 

「お前がリュンクスを庇っているのと同じだ」

 

「僕は庇っていません」

 

「そういうことにしておこう」

 

 ロックは何も答えなかった。

 

 空には厚い雲が残っている。

 

 日暮れまで、あまり時間はない。

 

 男爵が守っていた少年は、今も工房にいるのか。

 

 それとも、誰かに先を越されているのか。

 

 北市場へ近づくにつれ、人通りは増えていく。

 

 その雑踏の中で、ヨアヒムの部下らしい男が一人、何気ない足取りで近づいてきた。

 

 男は二人とすれ違う瞬間、小さく囁いた。

 

「ケスラーが動きました」

 

 ヨアヒムが足を止める。

 

「どこへ向かった」

 

「北市場です」

 

 ロックは前を見た。

 

 目的地は同じだった。

 

 ラウル・ケスラーもまた、染物工房へ向かっている。

 

「急ぎます」

 

 男爵の秘密を知る少年。

 

 首飾りの行方。

 

 そして、先回りする情報商人。

 

 事件を解くための事情聴取は終わった。

 

 次に必要なのは、誰よりも早く現場へ着くことだった。

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