低ランクの冒険者でも最上級のダンジョンに挑むのは自由です。 作:駄文亭
取得経験点
リュンクスを殺人事件の容疑から救出。
1000点
リュンクスを盗難事件の濡れ衣から救出。
1000点
《夜鴉》一党を捕縛。
1000点
合計取得経験点。
3000点
経験点の使用
シーフ技能を2レベルから3レベルへ上昇。
2000点消費
残余経験点。
1000点
セージ技能を1レベルから2レベルへ上昇。
1000点消費
最終残余経験点。
0点
成長後の技能
* シーフ3
* ソーサラー1
* セージ2
* レンジャー1
* ハンター3(一般技能)
レンジャー1とハンター3は今回新たに取得した技能ではなく、成長前から修得済みの技能である。
今後の成長計画
次にソーサラー技能を1レベルから2レベルへ上昇させる場合、通常の必要経験点は3000点。
セージ技能2レベルを修得しているため、必要経験点が500点軽減される。
3000-500=2500点
次の冒険で2500点を獲得できれば、ソーサラー技能を2レベルへ上昇できる。
今回の成長では、シーフ技能を3レベルへ上げて探索・潜入能力を強化し、残りの経験点でセージ技能を2レベルへ上げた。
これにより、古代王国遺跡の調査能力を高めると同時に、次回のソーサラー技能成長に必要な経験点を軽減できる。
事件が終わってから三日。
リュンクスが《古代王国の扉》亭を訪れ、礼の代わりに疑念を残して帰った翌朝。
ロックは自室の床へ装備を並べていた。
最高品質のブロードソード。
パリーパリー。
ミスリルメッシュ。
鍛えの鞘。
スタッフスリング。
通常の石弾。
そして、革と布を重ねて厳重に包んだエクスプロード・ブリット。
どれも、これまでに手に入れた大切な装備だ。
魔法の品は、単に金持ちの証ではない。
冒険者が危険をくぐり抜け、生きて帰ってきた証でもある。
もちろん、値段や希少性を自慢するためのものでもない。
危険な場所へ挑む者にとって、魔法の武器と防具は命を守る手段だった。
使える物を持っているのに、置いていく理由はない。
「口の守りが、あれですからね」
ロックは机の上へ広げた紙へ目を落とした。
正確な地図ではない。
王都地下水道の奥で見つけた遺跡を、記憶に従って描いた略図だった。
人工始原の巨人。
その口に当たる正面入口を守っているのは、竜牙兵だ。
ただし、通常の竜牙兵ではない。
魔法の武器。
魔法の鎧。
魔法の盾。
古代王国の魔術師たちが残した装備に身を包み、何百年もの間、正規の入口を守り続けている。
今のロックが一人で挑めば、まず勝てない。
魔法の装備を持っているからといって、実力差まで消えるわけではない。
だから正面からは入らない。
だが、別の入口を選ぶことと、装備を軽くすることはまったく違う。
鼻腔に当たる経路から入ったとしても、内部が安全である保証はない。
人工始原の巨人の体内には、今も何らかの管理機構が動いている。
赤い荷を運ぶ者。
異物を排除する者。
より強い敵へ対処する者。
それらが生物の身体を模して配置されているのなら、普通のスケルトンウォーリアと遭遇する可能性もある。
最高品質のブロードソード。
パリーパリー。
ミスリルメッシュ。
鍛えの鞘。
これだけ揃っていれば、普通のスケルトンウォーリアを相手にしても、どうにか勝負にはなる。
だからこそ、すべて持っていく。
「問題は左手ですね」
ロックはブロードソードを右手へ持ち、左腕を動かした。
二刀流をするなら、左手にはもう一本の武器を持つ。
だが、常に二本の剣を振るうつもりはない。
狭い通路。
不安定な足場。
いつ襲われるか分からない暗闇。
そうした場所では、攻撃の手数を増やすより、一撃を確実に防ぐ方が生存へ繋がることも多い。
ならば、盾が必要だった。
◇
王都オランには、普通の武具屋には並ばない品を扱う店がある。
奇跡の店。
冒険者たちの間ではよく知られているが、誰でも気軽に通える場所ではない。
扱っているのは、魔法の武器。
魔法の防具。
魔法の装身具。
用途の分かりにくい古代王国の品。
そして、普通の商人なら買い取ることすら躊躇うような品々だった。
ロックが店へ入ると、表通りの喧騒が扉の向こうへ消えた。
店内は静かだった。
武具屋のように剣や鎧が所狭しと並んでいるわけではない。
一つ一つの品が間隔を空けて置かれ、値札よりも先に注意書きが目へ入る。
勝手に触るな。
鞘から抜くな。
身につけるな。
魔法を試すな。
注意書きの多さだけでも、この店の品が普通ではないことが分かる。
ロックは店主へ声をかけた。
「ガードグラブはありますか」
店主はロックを見た。
次に、その腰のブロードソード。
ミスリルメッシュ。
パリーパリー。
鍛えの鞘へ順番に視線を移した。
「何に使う」
「遺跡探索です」
「どこの遺跡だ」
「まだ言えません」
「そうか」
店主は、それ以上尋ねなかった。
冒険者が未発見の遺跡を隠すのは珍しくない。
発見を公表する前に、入口や危険度を確認したい者もいる。
権利を巡って揉めることもある。
不用意に場所を聞き出そうとしないのも、この店の商売なのだろう。
店主は奥へ消え、しばらくして革手袋のような品を持って戻ってきた。
ただし、普通の手袋ではない。
手首から前腕にかけて硬い補強が施され、その内側に魔力が宿っている。
装着した腕で攻撃を受ければ、小型の盾を構えているのと同じように扱える。
形としては手袋に近い。
だが、役割はスモールシールドだ。
そして、明確なマジックアイテムだった。
「千五百ガメルだ」
「買います」
ロックは即答した。
安い買い物ではない。
事件を解決しても金銭報酬はなかった。
だが、出し惜しみをするところではない。
ガメルは、死んだ後まで持っていけない。
千五百ガメルで生存率が上がるなら、払う価値はある。
ロックは代金を支払い、その場でガードグラブを左腕へ装着した。
指は自由に動く。
物を掴める。
縄も扱える。
扉や罠を調べる際にも、普通の盾ほど邪魔にならない。
左腕を上げる。
小型の盾を構えるのと同じ感覚で、正面を守れる。
「いいですね」
「魔法の品だからといって、何でも防げると思うなよ」
「分かっています」
「ならいい」
店主の忠告は正しい。
魔法の盾があるから攻撃を受けていいわけではない。
攻撃は避ける。
避けられなければ受け流す。
それも間に合わない時に、初めて盾が命を拾う。
ガードグラブは無敵になる道具ではない。
失敗した時の余地を一つ増やす道具だった。
◇
奇跡の店を出たロックは、そのまま武具屋へ向かった。
次に必要なのは副武器だ。
主武器は最高品質のブロードソード。
だが、武器を一本しか持たずに遺跡へ入る気はなかった。
剣は折れる。
手から離れる。
狭い隙間へ落とす。
魔法や罠で使えなくなる可能性もある。
予備は必要だ。
「レイピアとサーベルを見せてください」
武具屋の主人は、壁に掛けていた二本を卓へ置いた。
レイピアは細身で軽い。
狭い場所でも突きを出しやすい。
サーベルは湾曲した片刃で、斬る動きに向いている。
ロックは一本ずつ手へ取った。
握り。
重心。
鞘から抜く動き。
腰へ帯びた時の位置。
ガードグラブを装着した左手でも扱えるか。
ブロードソードを失った場合に、すぐ持ち替えられるか。
何度か確かめた後、ロックはサーベルを置いた。
「レイピアにします」
「そっちでいいのか」
「狭い通路へ行くので」
斬撃が必要なら、ブロードソードがある。
副武器には、主武器と違う使い方ができる方がいい。
レイピアなら、狭い場所でも突きを通しやすい。
万が一、二刀流が必要になった時にも、重い剣を二本持つより扱いやすい。
次にロックは投げ槍を選んだ。
「ジャベリンを三本ください」
「三本も持っていくのか」
「投げたら戻ってこないかもしれませんから」
ジャベリンは投擲武器だ。
だが、投げるためだけの品ではない。
近づきたくない敵を牽制できる。
狭い通路で前方を探ることもできる。
床へ刺して目印にする。
扉を固定する。
何かを支える。
状況によっては短槍として突く。
剣とは違う用途がいくつもある。
ロックは三本をまとめ、背負えるように固定してもらった。
◇
宿へ戻ると、ロックは改めて装備を床へ並べた。
最高品質のブロードソード。
主武器だ。
パリーパリー。
魔法の防具として、致命的な一撃を避けるために使う。
ミスリルメッシュ。
軽さと強度を両立した防具だ。
鍛えの鞘。
剣を収めるだけの鞘ではない。
これもロックを守るための魔法の装備だった。
ガードグラブ。
左腕へ装着する魔法のスモールシールド。
新たに加わった防御手段だ。
レイピア。
主武器を失った時の副武器。
必要なら左手へ持ち、二刀流にも使える。
ジャベリン三本。
投擲。
牽制。
短槍。
道具。
複数の役割を持たせられる。
スタッフスリング。
距離を保って攻撃するための武器。
通常の石弾。
そして。
エクスプロード・ブリット。
ロックは包みを開かなかった。
強い衝撃を受ければ爆発する。
扱いを間違えれば、敵ではなく自分が死ぬ。
だが、危険だから置いていくという選択はなかった。
危険な品は、危険だからこそ最後の切り札になる。
硬い扉。
崩せない壁。
正面から倒せない敵。
退路を塞ぐ障害。
そうした状況で、これ一つが生死を分けるかもしれない。
「使わないのが一番ですけど」
ロックは厚い布。
革。
木製の筒。
さらに別の袋を重ねた。
歩いているだけで衝撃が伝わらないように固定する。
通常弾とは絶対に同じ袋へ入れない。
取り出す時に間違えない位置へ収める。
急いでいても分かるよう、手触りも変えておく。
切り札は、持っているだけでは意味がない。
必要な時に使えなければならない。
同時に、必要でない時には絶対に作動させてはならない。
最後に探索用の道具を確認する。
麻縄。
白墨。
鉄釘。
小槌。
松明。
火口箱。
油。
水袋。
保存食。
包帯。
鍵開け道具。
細い銅線。
小型の鏡。
布。
空の革袋。
荷物は重い。
だからといって、必要な物を減らすつもりはなかった。
足が少し遅くなるのと。
必要な道具がなくて死ぬのと。
比べるまでもない。
◇
翌朝。
ロックは地下水道へ降りた。
上には、いつもの王都がある。
荷車が走り。
商人が店を開き。
兵士が門を守り。
冒険者たちが依頼を探している。
その下に、誰にも知られていない遺跡がある。
人工始原の巨人。
古代王国の十系統の魔術師たちが共同で造り上げた、巨大な実験施設。
正面入口である口は使わない。
魔法の装備に身を包んだ竜牙兵が守っている。
倒せない相手へ挑むのは勇気ではない。
ただの無駄だ。
ロックが選んだのは鼻だった。
生体を模して造られた巨人なら、空気を取り込む経路がある。
人間用の通路ではない。
狭いかもしれない。
危険な機構があるかもしれない。
それでも、正規入口より守りが薄い可能性は高い。
地下水道の奥。
石壁の割れ目のように見える横穴へ近づく。
微かな風が吹いていた。
湿った下水の匂いとは違う。
乾いた空気。
鉄。
油。
そして、何か古い薬品のような匂い。
ロックは松明へ火をつける前に立ち止まった。
奥から音が聞こえる。
硬いものが床へ触れる音。
一定の間隔。
一つではない。
複数。
同じ速さで近づき。
やがて遠ざかる。
巡回している。
ロックは壁際へ身体を寄せた。
ブロードソードを抜かない。
戦うには、まだ情報が足りない。
足音の数。
巡回の間隔。
戻ってくるまでの時間。
重さ。
武器を引きずる音があるか。
声を出すか。
光を持っているか。
何度も聞き取る。
敵とは限らない。
この施設の中で役割を与えられ、決められた仕事を続けているだけかもしれない。
人工始原の巨人の内部には、血液を模した循環機構がある。
赤い荷を運ぶ者。
侵入した異物を排除する白い者。
より強い脅威へ対処する者。
その動きを先に理解できれば、戦わずに進める可能性がある。
戦うとしても、相手の行動を知ってからだ。
ロックは左腕を上げた。
ガードグラブが腕へ密着している。
右腰には最高品質のブロードソード。
反対側にはレイピア。
背にはジャベリン。
身体を守るミスリルメッシュ。
パリーパリー。
鍛えの鞘。
スタッフスリング。
そして、最後の切り札。
準備はした。
だからといって、油断していい理由にはならない。
「まずは見る」
ロックは暗闇へ目を凝らした。
「戦うのは、その後です」
未発見のダンジョンは逃げない。
敵が強いなら、弱点を探す。
数が多いなら、分断する。
巡回しているなら、その隙間を通る。
戦端を開いた時には、すでに勝っている。
それがロックの戦い方だった。
人工始原の巨人。
その鼻腔に当たる暗い通路の先では。
赤い荷を運ぶオークたちと。
骨で作られた白い従者たちが。
巨人の血管を模した回廊を、今も変わらぬ歩調で巡り続けていた。
収支報告
購入品
品物 金額
ガード・グラブ(スモール・シールド状) 1500ガメル
レイピア(必要筋力10) 190ガメル
ジャベリン(投擲用)×3 345ガメル
合計 2035ガメル
計算は、
1500+190+(115×3)=2035ガメル
です。
ガード・グラブの扱い
画像のアイテムデータに従い、ガード・グラブは通常の盾ではなく、手を握り締めた際に腕の周囲へ盾に相当する力場を発生させるマジックアイテムです。
今回購入するのは、基本取引価格1500ガメルのスモール・シールド状の力場を発生させる型です。
左手に装着しますが、力場を発生させるには、その手に何も持たずに握り締める必要があります。そのため通常時は、
* 右手に最高品質のブロードソード
* 左手はガード・グラブで防御
という構えになります。
二刀流が必要な場面では、左手へレイピアを持つ代わりに、ガード・グラブの力場を使用しないという切り替えになります。
第25話終了時の主要装備
主武器
最高品質のブロードソード。
副武器
レイピア(必要筋力10)。
投擲・予備武器
ジャベリン三本。
遠距離武器
スタッフスリング。
通常弾。
エクスプロード・ブリット。
防具・防御装備
ミスリルメッシュ。
パリーパリー。
鍛えの鞘。
ガード・グラブ(スモール・シールド型)。
これなら通常時は防御を固め、必要な時にはレイピアによる二刀流、ジャベリンによる投擲、エクスプロード・ブリットによる非常手段へ移行できます。ロックらしい、戦況に応じて手札を切り替える探索装備になっています。