低ランクの冒険者でも最上級のダンジョンに挑むのは自由です。   作:駄文亭

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第38話 成長報告

ロックはパダへの護衛依頼と、レックス遺跡周辺での一連の事件を乗り越え、着実に経験を積んだ。

しかし、経験を焦って使うつもりはない。

人工始原の巨人の探索では、必要となる技能がまだ見えていないからだ。

現在の技能

冒険者レベル:3

* シーフ 3
* ソーサラー 1
* セージ 2
* レンジャー 1

一般技能

* ハンター 3

未使用経験点

1000点

今すぐ技能を伸ばすこともできる。

だが、ロックはあえて使わない。

人工始原の巨人の探索を進めれば、

「何が足りないのか」

「何を伸ばすべきなのか」

その答えが見えてくるはずだからだ。

経験は、一度使えば戻らない。

だからこそ、必要になるその瞬間まで温存する。


第38話 廃棄物収集庫

 人工始原の巨人の探索を始めて、そろそろ一月になる。

 

 ロックは地下水道の入口で荷物を広げ、一つ一つ確認していた。

 

 水袋が二つ。

 

 干し肉と堅パン。

 

 油壺に予備の灯芯。

 

 毛布、帳面、筆記具、細縄。

 

 そして腰にはブロードソードとレイピア。

 

 これ以上荷物を増やせば動きが鈍る。

 

 逆に減らせば生きて帰れない。

 

「やっぱり三日が限界か……」

 

 水だけは誤魔化せない。

 

 節約しても三日。

 

 帰路を考えれば、奥で活動できるのは実質二日ほどだった。

 

 循環器系はあまりにも広い。

 

 一つの支流を調べ終える頃には、水袋の残量ばかり気になる。

 

 地図は埋まる。

 

 しかし探索速度は落ちていた。

 

「途中で休めれば違うんだけどな」

 

 そう呟いてから、自分で苦笑する。

 

 前回、それを試した。

 

 荷物を床へ置いた瞬間、白いホムンクルスが現れ、毛布も水袋も背負い袋まで運び去ろうとしたのである。

 

 敵意ではない。

 

 ただ片付けられただけだった。

 

 巨人にとって、床へ置かれた荷物は「散乱物」でしかないらしい。

 

「野営は無理か」

 

 それでも諦める理由にはならない。

 

 片付けられたなら、運ばれた先がある。

 

 今日は、その行き先を調べる。

 

     ◇

 

 循環器系へ入って半日。

 

 ロックは導管の陰へ身を潜め、ボーン・サーヴァントの動きを観察していた。

 

 骨だけの身体。

 

 無駄な動きは一切ない。

 

 床へ落ちた破片を拾い、

 

 壊れた器具を抱え、

 

 静かに通路の奥へ歩いていく。

 

「よし……」

 

 十分ほど距離を取り、後を追う。

 

 骨の従者は警戒する様子もなく進み続けた。

 

 幾つもの導管を越え、

 

 補修路を曲がり、

 

 最後に大きな鉄扉の前で止まる。

 

 扉は半ば壊れていた。

 

 骨の従者はその隙間から中へ入り、抱えていた荷を積み上げる。

 

 すぐに別の荷物を抱え、何事もなかったように出て行った。

 

 ロックは十分待ってから扉へ近づく。

 

 中は広かった。

 

 天井近くまで積み上げられた部材。

 

 折れた導管。

 

 砕けた石板。

 

 錆びた工具。

 

 割れた魔晶石。

 

 まるで古代王国の倉庫を、そのまま放り込んだようだった。

 

「廃棄物収集庫……」

 

 思わず呟く。

 

 ここへ集められるのは、掃除された物ばかりではない。

 

 交換された部品。

 

 役目を終えた器具。

 

 修理不能と判断された物。

 

 つまり――

 

「魔法の道具もあるかもしれない」

 

 ロックは周囲を見回した。

 

 目だけでは分からない。

 

 古代王国の魔法の品は、見た目がただの金属片ということもある。

 

 腰の発動体へ手を添える。

 

「――センス・マジック」

 

 小さく古代語を唱える。

 

 視界が変わる。

 

 魔力を持つ物だけが、淡く色づいて見え始めた。

 

「多い……」

 

 思わず息を呑む。

 

 倉庫のあちこちに光がある。

 

 しかし近付いてみると、

 

「魔力灯……割れてる」

 

 別の反応。

 

「発動体……芯が折れてる」

 

 さらに別。

 

「魔晶石……空か」

 

 どれも魔力を帯びてはいる。

 

 だが、壊れている。

 

 役目を終えた物ばかりだった。

 

 ロックは失望しない。

 

 帳面を取り出し、

 

 位置と形だけを書き留める。

 

「修理できる人なら価値が分かるかもしれない」

 

 それだけでも収穫だった。

 

 倉庫を一周した頃。

 

 ふと、壁際の瓦礫へ目が止まる。

 

「……?」

 

 他とは違う。

 

 壊れた器具の淡い残光ではない。

 

 静かで、

 

 揺らぎが少なく、

 

 今も安定して魔力を放ち続けている。

 

 ロックは瓦礫を一つ持ち上げた。

 

 その時だった。

 

 通路の奥から、骨が触れ合う乾いた音が聞こえる。

 

 カツ。

 

 カツ。

 

 カツ。

 

 巡回だ。

 

 ロックは手を止めた。

 

 水袋を見る。

 

 今日はもう引き返す予定の時間だった。

 

 ここで欲を出せば、帰りの水が足りなくなる。

 

「……次だな」

 

 瓦礫を元へ戻す。

 

 帳面を開き、

 

 丁寧に書き込む。

 

廃棄物収集庫、南西壁際。

安定した魔力反応あり。

回収は次回。

 

 帳面を閉じる。

 

 宝を見つけたとは思わない。

 

 まだ、そこに何かが埋まっているだけだ。

 

 ロックは足音が近付く前に収集庫を後にした。

 

 背後ではボーン・サーヴァントが何事もなかったように廃材を積み上げていく。

 

 巨人は今日も、自らの身体を静かに整え続けていた。

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