低ランクの冒険者でも最上級のダンジョンに挑むのは自由です。   作:駄文亭

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第58話 墓標喰らい討伐

 数日後。

 

 盗賊ギルド地下区画。

 

 ヨアヒムは報告書を読み終えると、煙管を静かに置いた。

 

「……十分だ」

 

 ロックは少し意外そうな顔をした。

 

「討伐は、まだですが」

 

「違う」

 

 ヨアヒムは首を横へ振る。

 

「依頼そのものが変わった」

 

 机の上へ羊皮紙を広げる。

 

 そこには墓荒らしの被害地点が書き込まれていた。

 

「最初は賞金首一体の始末だった。」

 

 一本、線を引く。

 

「だが、お前の調査で分かった。」

 

 もう一本。

 

「首なし騎士。」

 

 さらに一本。

 

「声を操る怪異。」

 

 もう一本。

 

「罠を作る不死者。」

 

 最後に円を描く。

 

「複数で役割分担した狩猟集団。」

 

 ロックは静かに頷いた。

 

「つまり、一万二千ガメルで片付く仕事じゃない。」

 

     ◇

 

「ギルドとしても放置できねぇ。」

 

 ヨアヒムは立ち上がる。

 

「これは盗賊の縄張りにも影響する。」

 

 墓地だけではない。

 

 旧街道。

 

 森道。

 

 巡礼路。

 

 いずれ商人も旅人も通れなくなる。

 

 そうなれば裏稼業も立ち行かない。

 

「王都へ正式に報告する。」

 

「冒険者ギルドにも?」

 

「ああ。」

 

「魔術師ギルドは?」

 

「呼ぶ。」

 

 ヨアヒムは笑った。

 

「ようやく国が動く。」

 

     ◇

 

 数日後。

 

 王都では正式な討伐隊が編成された。

 

 騎士。

 

 神官。

 

 魔術師。

 

 盗賊ギルドの案内役。

 

 レンジャー。

 

 二十名を超える討伐隊である。

 

 ロックも招集された。

 

 ただし。

 

 前衛ではない。

 

「案内役だ。」

 

 ヨアヒムが言う。

 

「お前以上に現場を知る奴はいねぇ。」

 

     ◇

 

 討伐は一日で終わった。

 

 森へ火を放つことはしなかった。

 

 神官が不浄を祓い、

 

 レンジャーが包囲し、

 

 盗賊達が退路を塞ぎ、

 

 魔術師が声の怪異を暴き出す。

 

 首なし騎士は神聖なる力によって倒れ、

 

 罠を張る不死者も逃げ場を失った。

 

 最後に見つかったのは、

 

 朽ちた礼拝堂の地下。

 

 そこには積み上げられた墓石と、

 

 数え切れない鈴が吊るされていた。

 

 だが。

 

 それらを操っていた存在は、

 

 既に灰となって崩れていた。

 

 討伐隊が踏み込んだ時には、

 

 自ら滅びたのか、

 

 あるいは誰かに始末されたのか。

 

 真相は分からなかった。

 

     ◇

 

 報奨金は予定通り支払われた。

 

 一万二千ガメル。

 

 だが。

 

 ロックの手元へ渡ったのは、その全額ではない。

 

 討伐は共同作戦である。

 

 盗賊ギルドへの情報提供。

 

 協力者への分配。

 

 必要経費。

 

 それらを差し引いた報酬でも、

 

 ロックにとっては十分すぎる額だった。

 

     ◇

 

 《古代王国の扉》亭。

 

 ロックは帳面を閉じる。

 

 最後の頁へ書く。

 

《墓標喰らい》事件

調査完了

集団型不死者による狩猟行動を確認。

声・戦闘・罠を役割分担することで旅人を襲撃していた。

王都討伐隊により壊滅。

 

 少し考え、

 

 最後に一文を書き添えた。

 

一人では解決できない事件もある。

 

 今回の勝利は、

 

 ロック一人の力ではない。

 

 リュンクスの観察眼。

 

 ヨアヒムの情報網。

 

 盗賊達の土地勘。

 

 騎士や神官、魔術師たちの専門知識。

 

 それぞれが持つ力を合わせた結果だった。

 

     ◇

 

 その夜。

 

 ヨアヒムが酒を片手に笑う。

 

「で、次はどうする?」

 

 ロックも笑って答えた。

 

「遺跡です。」

 

「また潜るのか。」

 

「まだ調べたいことがあります。」

 

 人工始原の巨人。

 

 あの巨大な古代遺跡には、

 

 まだ無数の謎が眠っている。

 

 《墓標喰らい》の事件で得た報酬も、

 

 いずれ探索資金へ消えていくだろう。

 

 それで構わない。

 

 ロックにとって金は目的ではない。

 

 未知へ辿り着くための手段なのだから。

 

 翌朝。

 

 王都オランの空は高く澄み渡っていた。

 

 ロックは荷物を背負い直し、

 

 地下水道へ続く石段をゆっくりと下り始める。

 

 未知は、今日も静かに彼を待っていた。




第49話~第58話「墓標喰らい編」収支報告

経験点

* 基本経験点:1,000点

累計未使用経験点

* 前回:1,000点
* 今回獲得:+1,000点

合計:2,000点

⸻

収入

内容 金額
墓標喰らい事件報酬(分配後) 8,000ガメル
護衛依頼などの小口収入 450ガメル

収入合計:8,450ガメル

⸻

支出

内容 金額
蜜蝋(耳栓実験) 5ガメル
厚手の布・革紐など実験用品 18ガメル
火口箱・油など消耗品補充 12ガメル
スタッフスリング用弾丸・雑費 15ガメル

支出合計:50ガメル

⸻

差引

8,450 − 50 = 8,400ガメル

⸻

今回の成果

* 《墓標喰らい》の正体を解明
* 集団型アンデッドの狩猟形態を記録
* 王都討伐隊編成の契機となる調査報告を作成
* リュンクスとの連携を確立
* 盗賊ギルドからの信頼向上
* 王都近郊の危険地域を一つ解決

⸻

ロック現状

冒険者レベル:3

技能

* シーフ3
* ソーサラー1
* セージ2
* レンジャー1
* ハンター3

未使用経験点:2,000点

今回の収支:+8,400ガメル(純利益)

300,000ガメルの《無限のバッグ》を目標とする場合、今回の報酬は大きな前進となりますが、まだ道のりは長く、今後も遺跡探索や賞金首討伐などを積み重ねて資金を蓄える必要があります。
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