低ランクの冒険者でも最上級のダンジョンに挑むのは自由です。   作:駄文亭

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第65話 門番

 人工始原の巨人の前で、ロックは口元を見上げた。

 

 巨大な唇は固く閉ざされ、その前には二体の竜牙兵が無言で立っている。

 

 以前と寸分違わぬ位置。

 

 何百年という時を経ても、その役目だけは変わっていなかった。

 

「やっぱり、そこだよね」

 

 ロックは帳面を開き、簡単な見取り図を描き加える。

 

 心臓炉まで探索して分かったことがある。

 

 この遺跡は壊れている。

 

 だが、壊れながらも機能している。

 

 ならば、消化器も同じだろう。

 

 口から入れば、喉を通り、胃へ落ちる。

 

 普通の生き物なら、一度飲み込んだ物は戻さない。

 

 つまり――

 

「入ったら帰れない」

 

 そう考えるのが自然だった。

 

 だから今日は入らない。

 

 まずは門番だけ排除する。

 

 消化器への挑戦は、万全の準備を整えてからだ。

 

     ◇

 

 ロックは広間へ入らず、周囲の地形を調べ始めた。

 

 竜牙兵は動かない。

 

 ならば動かせばいい。

 

 問題は、どう倒すかだ。

 

 真正面から戦えば勝てるかもしれない。

 

 だが、それは最悪の手段だった。

 

 消耗した状態で、この先へ挑む気はない。

 

 まして相手は魔力を宿した竜牙兵。

 

 油断すれば命を落とす。

 

「だったら……落ちてもらおう」

 

     ◇

 

 口へ続く一本道。

 

 竜牙兵が侵入者を追えば、必ず通る場所。

 

 ロックはそこでシャベルを振るった。

 

 石板を外し、土を掘る。

 

 汗が額を流れる。

 

 土を運び出し、さらに深く掘る。

 

 人一人がすっぽり収まる程度では浅い。

 

 竜牙兵が這い上がれない深さまで掘り進める。

 

 完成した穴を見下ろし、ロックは荷袋から一本の爆裂弾を取り出した。

 

 高価な消耗品だ。

 

 一発二千五百ガメル。

 

 下手な魔法の品より高い。

 

「痛い出費だけど……」

 

 命より安い。

 

 そう呟き、爆裂弾を穴の底へ固定した。

 

 起爆用の導線を慎重に伸ばす。

 

 その上から細い板を渡し、土を被せ、石板を元の位置へ戻す。

 

 一見しただけでは分からない。

 

 十分だ。

 

     ◇

 

 準備を終えたロックは、広間の入口へ立った。

 

「さて」

 

 小石を拾う。

 

 狙うのは竜牙兵ではない。

 

 壁。

 

 乾いた音が広間へ響く。

 

 カン――

 

 二体の竜牙兵が同時に顔を向けた。

 

 赤黒い魔力が眼窩の奥で揺らめく。

 

 侵入者。

 

 排除対象。

 

 その判断だけで十分だった。

 

 白骨の兵士が、一斉に走り出す。

 

「よし!」

 

 ロックは踵を返した。

 

 全力では走らない。

 

 近すぎても遠すぎても失敗する。

 

 距離を一定に保ったまま、落とし穴へ誘導する。

 

 足音が迫る。

 

 重い。

 

 速い。

 

 生者の走りではない。

 

 機械のように一定の速度で追い詰めてくる。

 

「三……二……一!」

 

 ロックは穴を飛び越えた。

 

 着地。

 

 振り返る。

 

 二体の竜牙兵は速度を落とさない。

 

 そのまま偽装された床へ踏み込んだ。

 

 石板が砕ける。

 

 支え木が折れる。

 

 二体まとめて、穴へ落ちた。

 

「今!」

 

 ロックは導線へ火を点けた。

 

 一瞬。

 

 爆裂弾が炸裂する。

 

 轟音が地下を揺らした。

 

 炎が穴の中で渦を巻き、白骨の身体を飲み込む。

 

 爆風が骨を砕き、魔力を帯びた武器ごと壁へ叩きつけた。

 

 煙が晴れる。

 

 穴の底では、一体が腕だけを痙攣させていた。

 

 もう一体は頭蓋が吹き飛び、動かない。

 

「さすが竜牙兵」

 

 ロックは二本目の爆裂弾を杖投石器へ装填した。

 

 狙いは外さない。

 

 身を起こそうとした竜牙兵の胸骨へ命中した瞬間、再び爆発が起きた。

 

 骨片が四方へ飛び散る。

 

 今度こそ沈黙した。

 

     ◇

 

 十分ほど待ち、ロックは穴を覗き込む。

 

 動く骨はない。

 

 魔力の揺らぎも感じられなかった。

 

「これで入口は安全になった」

 

 巨人の口は、静かに閉ざされたままである。

 

 ロックは中へ入らなかった。

 

 口の向こうは、一方通行かもしれない。

 

 胃へ落ちれば戻れないかもしれない。

 

 その推測を確かめるのは、十分な準備を整えてからでいい。

 

 焦る理由はない。

 

 探索者に必要なのは勇気ではなく、生きて帰ることなのだから。

 

 ロックは帳面へ短く書き込んだ。

 

 《門番排除完了》

 

 そして王都オランへの帰路についた。




第65話終了時点 収支報告

所持金

項目 金額
第64話終了時所持金 20,000G
火晶石購入 -3,200G
爆裂弾3発購入(2,500G×3) -7,500G
現在所持金 9,300G

※爆裂弾は3発購入。作中では2発使用・1発残。

⸻

未入金資産(競売中)

盗賊ギルドへ預託

品目 状態
ミスリル製ブロードソード+1 競売中
ミスリル製ラージシールド+1 競売中
ミスリル製チェインメイル+1 競売中

最低落札保証額(手数料差引後):65,000G

入金予定:約1週間後

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所持装備

武器

* 高品質ブロードソード
* レイピア
* ジャベリン×3
* 杖投石器
* 通常弾
* 爆裂弾×1
* メイジスタッフ

防具

* ミスリルメッシュ
* パリィ・パリィ
* ガードグラブ
* 鍛えの鞘

冒険者道具

* ロープ
* 楔
* シャベル
* 冒険者セット
* 遺跡調査帳

⸻

消耗品

品目 状態
火晶石 使用済み
爆裂弾 3発購入・2発使用・1発残

⸻

資産総額(見込み)

内容 金額
現金 9,300G
競売代金(最低保証) 65,000G
総資産見込み 74,300G以上

⸻

次章予定

* 盗賊ギルドで競売結果待ち(約1週間)
* 魔術師ギルド定例レックス遺跡調査へ同行
* ミリシャ・アンザス初登場
* 残り500経験点を獲得
* ソーサラー2取得
* 《フォーリング・コントロール》習得
* 消化器系ダンジョン攻略準備完了
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