遂にミリス大陸に行く日がやって来た。アスラにある転移魔法陣でミリス大陸に行けるものは見つけられなかった。もしくは元々ないのかも知れない。アスラとミリスでは宗教観がかなり違うからな。
そのため、俺が勝手に転移魔法陣を敷いてしまうことにした。
元々ある魔法陣を使って一番近づける王龍王国まで行き、そこから飛んでミリスヘ。そして、ミリスで前もってブエナ村近くの森に設置しておいた魔法陣と接続する陣を置く。
これをまず行おうと思う。
だが、ミリスに行く前にこれまでの事を1回振り返ろう。少しずつ想定していた状況とは変化していっているからな。
まずはシルフィのこと。
彼女は最近雰囲気が変化している?気がする。前々からなんかドロってした愛を向けて来ていたが……最近はなんか重みが増してきたような……?
[指を絡めながら]
「ねぇ、ルディ?私と一緒になってくれるよね?」
[両手をがっちり絡ませながら]
「私をおいて行ったりしないでね?」
[ガチ恋距離で目を合わせながら]
「ずっと一緒だよ?」
[力強く抱きしめながら]
「絶対離さないから」
こんな感じになってる。
ミリスのことが一段落したらシルフィとの付き合い方を考え直そうかな。その時間は作れるでしょう。………多分。なんかこのままだとまずい気がする。主に俺の貞操が。
次に父さんと母さん二人について……弟か妹がが二人出来たそうです。嬉しいですねー。俺そんなこと全然知らされてないんだけど。兄貴なのに……。いいもんね。俺には可愛い使い魔達ができたもんね。
そんな薄情な親たちとは違って二人の妹は会うたびに仲良くしてくれる。なんていい子達だろうか!魔術の腕も上達していっているし、今では二人共、中級魔術師だ。
二人の剣術についてはよくわからない。父さんは教える気あるのだろうか?パウロとゼニス的には男は剣術、女は魔術と決めていたらしいしそうするのだろうか?俺が教えてあげてもいいが……俺が教えるとなると前世の技になるからなーこの世界では邪道になってしまう。
アイシャはリーリャから水神流を教わっているみたいだけど……。親子仲は良いようでお兄ちゃんは安心しました。やっぱりノルンには前世の技であっても教えておくべきかな?ミリスから帰ってきたら始めようか。
後、二人は最近手芸にハマっているらしい。ノルンからは手袋を、アイシャからはマフラーをもらった。正直、ノルンのは保温性能が良くない。けどどちらもとっても温かい。
エリスは最近光の太刀の前身である、無音の太刀の習得に向けて訓練に明け暮れている。無音の太刀まで習得されたらもう模擬戦では俺が勝てることは無いだろう。魔術って手加減が難しいんだよな。電撃使っていいのなら勝てるだろうけど、それはもう模擬戦ではなく実戦だ。
「待ってなさい!ルーデウス!ギャフンと言わせてやるわ!!!」
ギレーヌについては特に話すことが無い。魔術はエリスと同じくあまり進歩が無いし……。短縮詠唱。ロキシーに教えてもらっておくべきだったかなー。普通は詠唱、短縮、無詠唱とするべきなのだろうか……。
フィリップにはアリエル女王誕生に向けての布石を打ってもらっている。今はエリスの誕生日会に来てくれたサウロスやボレアスとの関係が深い一族をアリエル派へと鞍替えさせようとしている。が、できているのはまだ少し。跡継ぎ争いに負けたフィリップではついて来ようとしてくれる人はまだまだ少ないようだ。
まあ、決着の日はまだ先。ゆっくりと着実に進めて行こう。最悪、渡した桜の枝を媒介にして人質取ればいいし。
アリエル王女にはあれから会えていない。まだ彼女は王になる気がないらしい。まあ、俺達の動きを察知した。ダリウスら第一王子派が呑気なアリエルを暗殺しようとしているらしいが……偵察が何とかしてくれるだろう。
導線がよくわからないんだよな。あのトーマスもチンピラみたいな末端だったからなあ。ダリウスとロア街のつながりがよくわかっていない。こちらの情報はしばらく筒抜けとなるだろう。
デリックにはそれとなく伝えてある。俺達が鞍替えしようとしているとそれをよく思わない勢力が動くと、まあそんな事は彼も承知しているだろうけど。一応伝えておいた。
さて、こんなところかな。
では行きます。
王龍王国に着きました。
時間もあまりないし、早速いつも通りに空を飛んで行きますか。アスラから飛べればこんな苦労することはないんだけど、何処に龍神がいるのか分からないのに赤龍の群れと戦う気はないんだよ。
とりあえず目指すはミリス神聖国!ゼニス母さんの実家ラトレイア家。せっかく近所に来るんだから挨拶しどうかな。
さぁーて、ミリシオン近辺に着いたはいいがどうしようか。俺、身分証明に必要なもの何も持ってない。冒険者登録前もってしとくべきだったな。
大丈夫大丈夫。バレなきゃ犯罪じゃないから。制空権なんてこの世界無いから。バレるはず無い。
ラトレイア家屋敷の場所は親切なスリが言うには居住区にあるらしい。正確な場所は知らないようなので、憲兵に突き出して、自分で居住区で探すか。
見つけたゼニス母さんの実家はでかい。大きな門、門の両脇にたつ獅子の像、門から入り口へと続く長い石畳の道、道の途中にある噴水、変な形に刈り揃えられた芝。 そして、その奥に白く綺麗なお屋敷が鎮座。
我らがボレアス家の城とは大違い。これが(実質)辺境伯と伯爵の違いか。ラトレイア家は多くの騎士を輩出する家であるが、立場としてはただの伯爵だからな。ボレアス家に限らず国境を守るのが役目であるグレイラット家とは色々と違ってくるのも当然か。
さて、現在俺は門の前で門番に剣を突きつけられている。何故か?来る予定のない不審者が来てるからじゃないですかね?
何の流派なのかは突きつけられるだけではわからないけど精々聖級程度。どうってことはない。
「俺、ルーデウスって言うんだけど知らない?ゼニス母さんの長子、何だけど」
「もし貴方が、ゼニス様の息子様であったとしても今日クレア様に面会する名前にルーデウスという名前はありませんし、この先の予定にも現在ありません」
「えー、可愛い孫が会いに来たんだよ?会いたくなるのが祖父母ってものでしょう?」
「そんな事は聞いた事ありません」
「えーそうなのー?そっちの人も同じ意見?」
「ええ」
「でも~」
「「でもではありません!」」
「でもだよ〜?」
「「ですから!!!」」
「その上はそうでもないみたいだよ」
[屋敷の方から紳士が歩いてくる]
「騒がしいですね。二人とも、不審者であるなら早く追い払いなさい。門番としての役割を果たすしなさい」
「ほら」
「「どこが!」」
「ふう、すみません執事長。この者が自分はゼニス様の子であると証言するものですから」
「どうすれば良いのか分からないと、」
「え、ええ。執事長はどう思われますか?」
「もし、本当にゼニス様のご子息であるのならクレア様にお伺いする必要があるでしょう。少し待っていてください」
「ほらね?」
「「ぐぬぬ」」
双子かな?甲冑で全然顔わかんないけど。
しばらく待っていると………
「クレア様は貴方とお会いになるそうです」
「そう?それじゃ早く案内して」
「はい、大奥様は奥にてお待ちです」
長い道を抜けて、玄関から中へと入れてもらうと、中はやはり上等な調度品であふれている。アスラ王城やペルギウス城とは比べ物にならないが、悪くない趣味だ。ギンギラギンの価値ある金属にだよりのものではない。
「それでは、こちらでお待ちください」
案内された場所は、いわゆる応接室。向かい合ったソファに、部屋の端に置かれた花瓶。部屋の端に立つメイド……。
お待ちですという割に、大奥様であろう人物の姿は無い。今は人前に出る準備中なんだろうけど。貴族っていうのはそういう事がある。フィリップの会談に同席している時にこちらをナメている奴はそういう事をよくしていた。
――つまりナメられてる?
「大奥様、こちらです」
そんな事を考えていると入ってきたのは白髪の混じった金髪のお婆さん。
それを見ると俺はアスラ式のお辞儀をする。恐らくミリスの礼儀作法とは異なるだろう。
「始めまして、おばあちゃん。俺孫のルーデウスって言うんだけど知らない?」
「ルーデウスという孫が居るのは知っています。ゼニスの手紙で聞いているのでですが貴方がそうであるという証拠はありません」
「ふーん、そう?じゃあこれでどう?母さんが俺に渡してくれたものなんだけど」
そう言って俺がクレアおばあちゃんに渡したのは俺が十歳の誕生日の時に届いたプレゼントについていた。ゼニスの直筆の手紙だ。
「確かにあの子の筆跡ですね。はぁ………ゼニスは自分の子に礼儀作法も教えていないのですか?」
やっぱり。それとも俺の言葉遣いかな?
「そんな水臭い事を言わなくてもいいんじゃない?俺は今日貴方に顔を孫として見せに来ただけ何だから」
「………そうですか。まあ座りなさい。ゼニスとあの男は何処にいるのですか?」
「今日は俺個人の訪問ですからね。二人は今頃、アスラのフィットア領のブエナ村にて健やかに過ごしているはずですよ」
「子供が一人で此処まで来たのですか?付き人もつけずに?」
「強いからね。水聖級魔術師だよ?俺」
「そうですか……それで、あの子はどうですか?あの男にとられてから…………」
それから俺は時間にいっぱい。おばあちゃんにお母さんの話をした。………そんなに心配なら自分で聞けばいいのにね?手紙で俺のこと知ったって言っていたけどそれ、多分貴方に向けたものじゃないでしょ?母さん。家で一回も貴方の話しなかったよ。
「それじゃあね、おばあちゃん。またいつか会いに来るよ」
「もう、そんな時間ですか……。次はキチンと礼儀作法を身に着けて来なさい」
「はーい」
「はいは、伸ばさない」
「はい。じゃあね」
「ルーデウス様。門までお送りします」
「そう?ありがとう」
そうして、クレアおばあちゃんとの会談を終えた後、俺は青竜山脈に来ていた。
「さあ!龍討伐の開始だ!」
群れた龍の雄叫びが空気を震わせる。