唐突だが、俺は悲しい事に原作君と同じく闘気を纏うことができない。それは俺がこの世界で剣士として一流になることが出来ないということを表している。
だが!俺は諦めない!闘気を纏えないからと言って光の太刀などの奥義が使えないと決まった訳では無い。俺は水神流の相手の剣を受け流すという『流』を闘気無しでも行えるし、足運びだけならエリスにも負けてはいない。つまり、俺には技術はある。足りないのはそれを必殺の域まで押し上げる速度と力。
足りないならばそれを魔術で補おう。
所詮。闘気も魔術と同じ魔力を扱うもの。ならば、闘気を魔術で再現することはできるはず。魔術はイメージの世界。それを想像さえ出来るなら出来る。……そのはずだ。
再現すると決めたのならまず再現すべきものを観察し、覚えなくてはいけない。俺はまだ三大流派の奥義と言えるものを何一つ見ていないだからそれを観ることから始めた。
俺の身近で奥義を使える人物といえばやはりギレーヌとなる。その為、一番始めに挑戦する奥義はエリスと同じ無音の太刀となる。
エリスの手本としてギレーヌは毎日無音の太刀を披露してくれている。それを元に再現していこう。
1回目 まず闘気を魔術で再現するために全身に魔力を回す。全身から血が噴き出るだけ。何も起こらなかった。
3回目 部分的に強化してみることに、足を強化。すごい速さで壁に激突。血の染みが壁に出来た。魔術で洗浄しておく。
8回目 込める魔力が多かったのかと思い、量を制限。それでも力の加減が出来ずに指が変な方向へ折れ曲がる。
――二桁の回数やっても再現できる兆しが無いため、一度課題を一つ一つ洗い出そう。
まず、力。俺はどんなに剣を勢いよく振るっても岩を斬ったり、砕いたりは出来ない。これを解決するために魔力を体にぶん回したら、体が魔力に耐えられずに破裂。
次に速度。俺が全力で走っても人の限界は超えられない。これを解決する為に足先から魔力をブーストしたら、勢いが良すぎて壁に激突。
最後に魔力。込める魔力を多くすると体を動かす余裕がない。制限しても体と魔力を同時に操作しなくてはいけず、少しでもずれると折れ曲がる。
………これ、無理じゃね?
これまでの闘気を再現する方法では体が耐えられずに剣を振る時間が無い。何も出来ずに血が噴き出るか、激突して血が噴き出るかのどちらか。
アプローチを変えなくてはいけない。体内から解決するのはダメ。だから体を外からサポートするようにしないと……そういえばライダーって初代は改造人間だけど後発はスーツによる強化ばかりじゃないか?
全身を覆うスーツを作る技術はないが……一時的に魔術を纏うようにすれば……――いける。やれる気がする。
そして、苦節半年。ミリス大陸に向かう七日ほど前のこと。遂に何とか魔術は形になった。こんな事をする時間があるなら他の事をやっておけば良かったとは思うものの。俺の剣神流の成長限界が見えた為にギレーヌが俺に剣術をあまり教えてくれず、エリスへの光の太刀伝授に注力しているから剣術の授業の間暇だったんだ。仕方ない。
[場面は戻り、青竜山脈頂上。青竜の群れと対峙するルーデウスへ]
[竜はそれぞれブレスを溜めすぐにでも目の前の矮小かつ、無礼な存在を跡形もなく消し去らんとしている]
「さあさあ、お立ち会い!今此処に、剣神流奥義!光の太刀をお見せしようじゃありませんか!」
[ルーデウスが声を上げるのと同時に彼を空から囲う竜がブレスを一斉に放射する。世界でみても強力な魔物である竜のブレスが交わる箇所にいるルーデウスは末端から焼け焦げていっているが気にする様子はない。それどころか剣を仰々しく抜き、唱える]
「偽典・光の太刀」
[同時に彼を囲いブレスを出していた竜の首が残らずに斬り落とされる。それはまさに光の速さである。一瞬にして青竜山脈山頂に静寂が生まれ、この戦いの勝者が決まった]
「完全勝利。……ゴホッ、ゴボッ」
はぁ、まだ完成とは言えないかな。たった一回の技で利き腕と両足がひしゃげ、内臓もズタボロ。こんなものは実戦じゃ使えないね。精々格下相手にしか使えないわ。一々治癒魔術使わなきゃいけないのがダメ。要改善って事だな。
さて、そんな些事は置いておいてここいらに転移魔法陣を設置しよう。お邪魔だったトカゲはどっか行ってくれたし、山頂に設置しよ。
あーしてこーして、こーじゃ!よし完成。では一回アスラに帰りますか。ミリスで活動するための装備を回収しに行かないと。あーあ完全に俺ってバレないように剣士として活動するつもりだったのにこれじゃダメだな。一回装備作り直そうかな?
帰還!何処に埋めていたかな?俺の怪盗衣装。あっ、あったあった。これこれ、かなり派手な奴。まずはザントポートで名を上げていきたいから出来るだけ一目で分かるやつにしたんだよな。ちゃんと予告状も作っておいたんだよ。
これを着て、髪を黒くしたら完成。怪盗ルパン一世。
何故髪を黒く染めたのかというと実はこの世界黒髪がいないようなのだ。何故いないのかはよくわからない。他の絶滅した種族者は黒髪だったのかもしれないし、魔力の影響で黒髪が生まれないのかもしれないし、この世界がぐちゃぐちゃしているのが原因かもしれない。これの真実は創造神のみが知ることだろう。考えても仕方ない。重要なのは黒髪だといくら捜索してもバレないってこと。これで俺がめちゃくちゃしても大丈夫。
とりあえず、怪盗するんだから予告状を出そうか。
『予告状
本日未明。屋敷の一番の財宝をいただきに参ります
怪盗ルパン』
これでいいかな。よし、庭に向けて投下。
偽典シリーズ
本編ルーデウスが剣術の成長の限界を感じていた時に剣術すらも魔術でやろうとして生まれたもの。別名剣術魔術。
本来闘気で肉体を強化してから行う技を外側から無理やり一切強化していない生身で行う為に全身はズタボロになる。使う意味は無い技である………はず。
唯一の利点として魔術であるために無詠唱であればアレンジが効き、たとえ手や足であっても技を出せることだろう。
だが、こんな事をするくらいなら普通の魔術を使ったほうが良いに決まっている。