クラス最安値で売られた俺は、実は最強パラメーター 作:Yunnan
修学旅行。俺たち学生にとっては、待ちに待った最高の日だ。
バスの車内では、すでにクラスメイトたちが楽しそうに会話に花を咲かせている。そんな喧騒の中、俺――織田勇太(おだ ゆうた)だけは、一人ボケーっと窓の外の景色を眺めていた。
なんの代り映えもない、退屈で平穏な日々。
その時だった。俺たちが乗っているバスが、異常に大きく揺れた。
「なんだ、地震か!」
クラスメイトの一人が、うろたえた声を上げる。
……だが、地震にしては様子がおかしかった。窓の外の風景が、見たこともない奇妙なものへと変化していく。なんともカラフルな色合いの模様が、モヤモヤと大量の煙でも立ち込めているかのように渦巻いているのだ。
そして、さらに大きな衝撃が走る。バスはドスンと、どこか深い場所へ落下したかのような感覚に襲われ、完全に停止した。
「なんだよ、何が起こったんだ!?」
「いや、崖から落ちたんじゃないの!?」
「落ち着いて、みんな……っ」
「南先生、どうなったんですか!」
担任の南先生が必死になって俺たちを落ち着かせようとするが、一度火のついたパニックはなかなか静まりそうにない。
ガチャリ!
その時、バスのドアが勢いよく開けられた。
車内に突入してきたのは、中世の兵士のような、よくわからない古風な格好をした男たちだった。
「全員、ここから出ろ!」
「なんだよお前、どうして出なきゃいけないんだよ!」
クラスで一番のイケイケグループにいる舟塩が、その兵士に色をなして食ってかかる。すると兵士は、無造作に手にしていた槍の柄で、舟塩の足を激しく殴りつけた。
「いてっ!」
「次は突き刺すぞ」
感情の籠もらない真顔でそう告げられると、さすがの舟塩も恐怖に顔を引きつらせて黙り込んだ。
「とりあえず……みなさん、言われるように外に出ましょう」
南先生が震える声でそう指示したため、俺たちは促されるままバスの外へと這い出た。
「勇太……怖いよ……」
外に出るなり、幼馴染の渚が珍しく弱音を吐いて袖を引いてくる。
「大丈夫だ。危害を加える気なら、とっくにしてると思うぞ」
何の根拠もなかったが、少しでも安心させるためにそう言葉を返した。
バスの外は、まるで昔のローマの街並みのような、原始的な作りの建造物の中だった。その常識外れの光景を見て、オタクでゲーム好きの田畑波次が狂喜の声を上げる。
「異世界転移だ! ここは絶対異世界だよ! すげー、まさか本当にこんな世界があるなんて……!」
異世界、か……。確かに、そう考えなければ説明がつかない状況だ。
全員が外に出揃うと、乗ってきたバスは変な機械によってどこかへ運ばれていった。原始的な文明に見えるが、所々でそういったメカニカルなものも見かける。文明レベルがよくわからんが、まあ、異世界の文明レベルを俺たちの物差しで測るわけにはいかないのだろう。
「よし、全員こっちへ来い」
数十人の兵士たちにがっちりと囲まれ、俺たちはどこかへ移動させられた。
……まあ、少しは予想していたが、連れて行かれた先は薄暗い牢獄だった。
「全員入れ!」
「なんだよ……どうしてこんなところに入れられなきゃいけないんだよ!」
「いいから入れ! 次、余計なことを言ったら刺し殺すからな」
本物の刃物を突きつけられて脅されれば、もう誰も文句は言えなかった。俺たちは家畜のように、一つの大きな牢獄へとまとめて押し込められた。
しばらくすると、兵士とは明らかに質の違う服を着た、少し偉そうな男が牢屋の前にやってきた。そいつは悪びれもしない様子で、こんな話を始めた。
「いや〜、乱暴な真似をして悪かったね。私はこの召喚所の所長で、バーモルというものだ」
「召喚所ってことは、やっぱりここは異世界なのか!」
波次が食い気気味に、嬉しそうに声を上げる。この状況下でよくもまぁそんな嬉しそうな声上げられるな。
「そうだね、君たち地球の人間からしたら『異世界』というものになるんだろうね」
「地球って……あなた方はそれを知っているんですか?」
南先生が代表して問いかけてくれた。
「もちろん。君たちが地球人だとわかって召喚しているからね」
「それは、どうしてですか」
「うむ、それではなぜ君たちがここへ召喚されたか説明しよう。――この世界では『魔導機』と呼ばれる旧魔導文明の道具が、建築、土木、運送など、あらゆる場面で使われている。だがね、その魔導機は特殊なエネルギーとリンクして動かさなければいけないのだ。しかし、この世界――ファルヴァの住人は、そのエネルギーが強い者が少なくてね。絶対的に魔導機の操縦者が足りないのだよ」
「それは、どういう意味ですか……」
「あなた方地球人は、その多くがその特殊なエネルギー……我々は『ルーディア』と呼んでいるのだが、その値が高いのだよ。だから膨大な予算を使って、こうして召喚儀式で定期的に地球から人間を召喚しているのだ」
なるほどな。要するに、その魔導機とやらの操縦者を補うための奴隷として、俺たちは拉致されたってわけか。とんだ傍迷惑な話だ。
「そんな勝手な……! 私たちの意思は無視ですか!?」
「まあ、悪いとは思っているがね。この世界での魔導機の操縦者は地位が高い。決して悪い生活ではないと思うよ」
……チッ。どうやら俺たちに拒否権なんて最初からないらしい。
「とにかく、明日には君たちはオークションに売りに出される。ルーディア値が高ければ高いほど、良い場所に買われるだろう。自分のルーディア値が高いことを祈っていることだね」
そう一方的に言い残して、召喚所の所長は歩き去っていった。