とりあえず飯は出してくれた。出してはくれたが、見たこともないよくわからない食い物で、お世辞にも旨くはなかった。それでも腹は満たされたので、俺たちはとりあえず寝ることにした。
女も男も同じ牢獄に押し込められているのだが自然と女子は女子でかたまり、男子もその近くへと集まっていた。
「勇太……俺のルーディア値って、どうなんだろうな」
隣に座る原西裕司(はらにし ゆうじ)が不安げに呟く。クラスの中では比較的仲の良い男だ。
「なんだよ、原西。状況を受け入れるのが早いな……」
「だってよ、高ければ高いほど好待遇なんだろ? やっぱり高い方がいいよな……」
確かに、そのルーディア値とやらが高ければ、それだけ良い扱いを受けられるのだろう。だが、そんな上手い話がそうそうあるわけないと思うがな。
俺達がそんな会話を交わしていると、金持ちでちょっと気取った雰囲気の御影守(みかげ まもる)が、珍しく会話に入ってきた。
「まぁ僕の数値が高いのは間違いないだろうけどね」
「お前、自信があるのか御影」
「そうだね。ルーディア値がどんなものかは知らないけれど、その人間の本質的な価値はやはり誤魔化せないんじゃないかな。そうなると、このクラスでは僕か女子の白雪結衣(しらゆき ゆい)が高いと思うよ」
御影のその自信の根拠がどこにあるのかはわからなかったが、奴はフッと不敵に笑った。
そして次の日。俺たちは一列に並ばされ、変な丸い板の形をした機械の上に、一人ずつ立たされることになった。
一番手は、運動神経が抜群のサッカー部エース、岩波蓮(いわなみ れん)だ。岩波が丸い板の上に立つと、機械の前で数値を確認していた男が、弾かれたように声を上げた。
「12000だ! 1万超えのハイランダーだ!」
その宣言に、周囲で見物していた大人たちが一斉にザワザワと騒ぎ始めた。
「一人目でハイランダーだと? 今回の商品はとんでもない高品質なんじゃないのか」
「もしかしたら、久しぶりにダブルハイランダーが出るかもしれないな」
思い思いにそんな会話を交わしている。どうやら、1万を超えるかどうかが一つの大きな基準のようだった。
岩波はそのまま次の部屋へと移動させられた。
続いて、次の奴が丸い板に乗せられる。根暗で大人しく、クラスでも全く目立っていない榊春馬(さかき はるま)だ。
「榊だぜ。あんな根暗、どうせ低いだろよ」
「だな。俺、榊より低かったら生きていけねえわ」
周囲の男子からそんな陰口が漏れる。しかし、機械が弾き出した数値は、彼らの口を完全に塞ぐことになった。
「に……29000だと!? ダブルハイランダーだ!」
「すごい! しかも、もう少しでトリプルじゃないか!」
本人は至って無表情で全然喜んでいないが、周りの連中は大騒ぎになっている。それだけ凄いことなのだろうが、俺たちにはまだピンときていなかった。
「ハイランダー以上が二つも続くとは……。やはり
「そうだな、これは期待ができるぞ」
会場に大きな期待感が膨らんでいく。だが、その後は一万を越える数値はしばらく出なかった。2000とか3000台の平均的な数値が続き、周囲の大人たちもちょっとガッカリした様子を見せ始める。ちなみに、さっき「榊より低かったら生きていけない」と言っていた香山(かやま)の数値は2200だった。
そして、次の盛り上がりを巻き起こしたのは、やはり彼女であった。
「出たぞ! トリプルハイランダーだ! 36000はここ数年で最高数値だぞ!」
白雪結衣。やっぱり、あの御影が言った通り普通とは違う才能があるのかもな。
トリプルハイランダーという響きがどれほど規格外なのか、周りの盛り上がりは異常なほどだった。まるでお祭り騒ぎだ。
さて、次は幼馴染の光里渚(みつさと なぎさ)だ。まあ、あいつは大したことないだろ……そう思っていたが、意外にも健闘したようだった。
「6500だ、ハーフレーダーだな」
白雪の36000があまりに凄すぎて目立っていないが、ここまでで5000を超えているのはクラス25人中、わずか5人だけだ。だからかなり上位のはずなのだが……まあ、あいつはあんなもんだろう。
「よし、次は俺の番だな!」
そう息巻いて、今度は原西が丸い板の上に乗った。
「3300だ」
「え? すみません、何か間違ってませんか?」
「なんだ……間違ってない、お前は3300だ」
「いや……そんなはずは! もう一度測ってくれませんか?」
「たく……ほら、もう一度乗ってみろ」
あまりにしつこい原西に、担当者が面倒くさそうにもう一度測り直した。だが、数値はやはり3300であった。
「ええ! そんなバカな……いや……何かの間違いで」
「いいから行け!」
怒鳴られて、原西は仕方なく次の部屋へと移動させられた。あいつは一体、自分に何を期待していたんだかまったく。
「11000……ハイランダーだ!」
そう告げられたのは御影だった。原西と違って、こちらは宣言通りちゃんと高い数値が出たようだ。
その次は南先生だ。あちらの連中からしたら先生も生徒も関係ないらしく、俺たちと一緒に並ばされていた。南先生は4300と、そこそこの数値だったようだ。
そして、俺の前だった舟塩が自信満々に丸い板に乗った。その数値は8000。なかなかの好数値なのだが、本人は自分の満足いく結果ではなかったようで、少し不貞腐れた顔をしながら通り過ぎていった。
そして最後に、俺の番が来た。一体どんな数値が出るのやら。
俺が丸い板の上に乗ると、計測担当の男が驚きの声を上げた。
「…………嘘だろ。2って……針が2を指してるんだが」
計測担当が、慌てて別の担当を呼んで確認を求めている。
「ちょっと待て……そんな数値ありえるのか? 壊れてないか……」
「そうだな。お前、ちょっと一度降りろ」
そう言われて、俺は一度丸い板から降りた。
「うん……ちゃんと動いてるな……」
「もう一度、乗ってみろ」
俺は言われるがままに、もう一度そこに乗った。
「あっ……ちょっと待て。今、針が一周しなかったか?」
「おいおい……この計測機は最新のもので10万まで測れるんだぞ。一周なんてするわけないだろ」
「10万か……だったらありえないな。だとしたらコイツのルーディア値は
「100以下は久しぶりだな。まあ、地球人でもたまにはこんな
「………………」
ゴミ……ゴミ、ね。
酷い言われようだな、おい。