行きましょう、全ての愛がある場所へ -ある少年がキヴォトスを救うまでの軌跡- 作:やきそばVer2
原作:ブルーアーカイブ
タグ:BlueArchive 先生(ブルーアーカイブ) 連邦生徒会長 鷲見セリナ 聖園ミカ 蒼森ミネ 朝顔ハナエ 鬱展開注意
そして、成長した少年がキヴォトスを救うまでの物語。
序盤の主人公がかなり暗いため、ご注意ください。
【現実世界:通学路】
(死にたい死にたい死にたい...死にたい!)
(楽になりたい!学校怖い!消えてしまいたい!)
鉛のように重い足を引きずり、学校に向かう。
(もう何もかもがいやだ!でも、死ぬのは怖い。でも、楽になりたい。)
中学に入学後、すぐに始まった苛烈ないじめにより、少年の心は壊されていた。
『死にたい』という欲求。それに相反する『死ぬのが怖い』という怯え。その2つが、少年の心の中に同時に存在していた。
『死ぬのが怖い』、この考えがあったからこそ、最後の一歩を踏み出してはいなかった。
だが、その一歩を踏み出してしまうのは、時間の問題であった。
いつもの通学路を歩いていた少年。
突然、目の前に見知らぬ女性。いや女子高生と思しき少女が立っていた。
「こんにちは。〇〇くん。」
「どうして僕の名前を...」
「ふふふ。お気になさらないでください。」
アニメでしか見たことがない、青い髪。そしてピンクのインナーカラー。
白いコートのような服と、白い編み上げブーツ。
そして、彼女の頭上には謎の幾何学模様が浮かんでいた。
「辛かったですよね...〇〇くん。でも、もう大丈夫ですよ。」
「あなたは...一体...いや、騙されないぞ!そう言ってあなたも僕をバカにする気なんだ!!」
しかし、彼女は慈愛に満ちた目で、少年を見ていた。
そして、こう話しかける。
「とても素晴らしいところにお連れします。」
「ですから----行きましょう、〇〇くん。すべての『愛』がある場所へ。」
直後、少年の視界は白い光で覆い尽くされた。
【シャーレビル:執務室】
「ついにこの日が来てしまったか...」
カレンダーに書かれた印を見て、そうこぼす先生。
(私が彼と対面した時。私は今まで通り平静を保てるのだろうか...)
スマホを取り出しながら、そう考えた。
「ちょっといいかい。頼みがあ-----」
【とある学園自治区:裏路地】
僕はゴミ箱の裏にうずくまっていた。
スケバン達を振り切ったものの、いつ見つかってしまうかわからない。
僕は、声が出ないようにと、必死になってこらえていた。
不運なことに、逃げる際に足を捻挫し、強い痛みを感じていた。
もう、逃げることはできなくなっていた。
(なんだよこの世界!なにが『すべての愛がある場所』だよ!まるで戦場じゃないか!)
叫びたくなる衝動をこらえ、起きた出来事を思い出す。
~~~~
白い光が消えた時、目の前には信じられない光景が広がっていた。
ぱっと見は、日本によくありがちな町並みだった。
しかし、明らかにおかしいところがあった。
ロボット人間、大きな鳥や犬のような獣人。
さっきの女性と同じように、頭の上に幾何図形が浮かんでいる少女達。
「ここはどこ?それにいったい...君は何者なの?」
さっきの少女に疑問を投げかける。
しかし、返事はなかった。
彼女の姿は、忽然と消えていたのだ。
「見ない顔だな。お前何者だ?」
「なにジロジロ見てるんだ?ヤんのか?」
視線の先には彼女ではなく、スケバン達がいた。
今までの経験から、反射的に逃げ出す僕。
しかし、それは最悪の選択であった。
「おい!どこに行く気だ!」
「とっちめてやる!」
「ぼくちゃん~、一緒にあそびましょうね~」
スケバン達が、銃を手に追いかけてくる。
(エアガンを持ってる。痛いのは嫌だ!)
バンバンバンバンバンバン
銃撃音が鳴り響く。
その音は、明らかに玩具の音ではなかった。
「え?」
状況の理解が追いつかない中、目の前の車に無数の穴が開く。
ガソリンに引火したのか、撃たれた車が燃え出す。
(エアガンじゃない...もしかして、実銃!?)
それを見て、本能的な恐怖を感じる。
(やばいやばいやばい!逃げなきゃ殺される!)
「死にたい」と考えていたはずなのに、『生きていたい』と強く願った少年。
生まれて初めて、『生きていたい』と本気で思った瞬間だった。
~~~~
「見つけたか?」
「手分けして探せ!」
辛うじて、隠れることには成功した少年。
だが、捻挫した足では逃げられない。
どんどん大きくなる足音。
見つかるのは、時間の問題だろう。
(もうおしまいだ...)
「あっ、み~つけた!」
遂に、スケバンの一人に見つかってしまう。
続々と集まってくる、スケバン達。
死の恐怖におののく少年。
その時だった。
「救護!」
叫び声とともに、スケバンの一人が吹き飛ぶ。
(?????)
何が起きているのか、理解不能になった。
「セリナ!ハナエ!その子を保護してください!」
「私はこの方達に...強度の高い救護を施します!」
直後、残りのスケバン達も次々と吹き飛ばされる。
「了解です。団長!」
「もう怖くないですよ。少し痛むかもしれないですが、我慢してください。」
三人の少女、いや三人の天使がそこにはいた。
すべてに見捨てられた少年は、この時初めて救われた。
だが、この時はただ一人を除いて、誰も知らなかった。
救われたのは...少年だけでなかったことを。
彼女たち...いや、キヴォトスすらも救われることになることを。
【トリニティ総合学園:保健室】
「んっしょ、終わりましたよ。治るまで、安静にしていてください。」
怪我の処置を終え、少女が少年に話しかける。
それに対し、怯えた様子で答える少年。
「どうしました?」
少年の視線の先には、可愛らしく装飾された銃があった。
「もしかして、『キヴォトス』の外から来られたのですか?」
「きゔぉとす?」
「やっぱり!安心してください、あなたを傷つけるつもりはありません。」
「学園都市キヴォトスです!それが、この世界の名前です!」
「ここでは、銃を持ち歩いているのが常識なんです。裸で出歩いている人よりも、銃を持たずに歩いている人のほうが少ないくらいですし。」
「水着で徘徊される、変わった趣味の方もいらっしゃいますが。」
「そう言えば、お名前を伺っていませんでしたね。私は鷲見セリナといいます。」
桃色の髪をした少女が、自己紹介をする。
「〇〇といいます。」
「〇〇くんですか。ん、〇〇?」
「どうしましたか?」
「いえ、何でもありません。ただ、ある方と同じ名前だなと思っただけです。」
「〇〇くんは、どういった経緯でキヴォトスに来られたのですか?」
セリナの質問に対し、少年は、謎の少女に出会ってからのことを説明した。
~~~~
「見知らぬ方に、いきなり送られてきた...ですか。」
「ということは、行く当てがない状態なのですね?」
「そうです。」
途方にくれる少年。
その少年に質問するセリナ。
「少し話は変わるのですが...。何発くらいまでなら、銃で撃たれても大丈夫ですか?」
「はい?」
「ですから、『どのくらいなら気絶しないか』をお聞きしているのです。」
「?????一発でも撃たれたら、死にますよ。」
「耐久力も、先生と同じくらいですか...」
思案しているセリナに、少年は問いかける。
「セリナさん...でしたっけ。そういうあなたは、撃たれても大丈夫なんですか?」
「何十発も撃たれたら気絶しますね。でも数発なら全く問題ありません。」
「セリナさん、どれだけ体が頑丈なんですか...」
「?別に頑丈ではないですよ。他の方たちと同じくらいですし。」
「中には何百発も撃たれても平気だったり。テルミット爆弾で燃やされても、大砲で撃たれても、傷一つつかない方もいますよ。」
「あなた達は、不死身なんですか?」
「不死身ではないですが...通常兵器で死ぬことは、まず無いですね。」
「……」
セリナの口から放たれる、言葉の数々に圧倒される少年。
「ひとまず、暫くの間はここに滞在していてください。団長には、私から伝えておきます。」
「落ち着いたら、先生にこれからのことを相談しに行きましょう。」
そう言い、セリナは退室する。
こうして、長かったキヴォトスでの最初の日は、終わっていった。
~~~~
次の日
「楽になりたい...消えたい...」
状況が落ち着いたことで、少し考える余裕ができた。
だが、それは少年に悪い影響を及ぼしていた。
余裕ができたことで、一時的に頭から消えていた『死にたい、消えたい』という考えが、復活してしてしまったのだ。
「朝ごはんをもっt、どうしたんですか!〇〇くん!」
闇夜よりも暗い顔をした少年に、セリナは驚く。
「もう楽になりたいんです。僕なんか、いなくなった方がいいんです!」
ただならぬ様子、そして、尋常ではない発言を放つ少年を、セリナは抱きしめる。
「大丈夫です。大丈夫なんです!この部屋には〇〇くんを傷つける人はいません。」
「〇〇くんが怖がると思って、銃も置いてきました。安心して、セリナお姉ちゃんに身を委ねてください。」
『愛』や『優しさ』を失っていた少年には、彼女の献身的な心が、とても暖かいものに感じられた。
「ゆっくり、ゆっくりでいいですから...何があったのか、教えてください。」
「言いたくないことは、言わなくていいです。話せることだけで大丈夫です。」
「全部受け止めてあげます...怖いものは、ここには無いんですよ。」
少年は促されるまま、すべてを打ち明けた。
中学に入って、すぐにいじめを受けたこと。
最初は庇ってくれた友達も、段々といじめる側になっていったこと。
内容もどんどんエスカレートしていき、すべてが嫌になったこと。
そして、その所為で『自殺』することばかり、考えるようになったこと。
すべてを打ち明けた少年にセリナは語りかける。
「辛かったですね。そんな状態じゃ、死にたくなるのも当然ですよ。」
「でも、もう大丈夫なんです。キヴォトスには、いじめてきた相手はいません。」
「少しずつ、少しずつでいいですから...人生を取り戻していきましょう。
この時の彼女の温もりを、私は一生忘れないだろう。
そして、この日を境に、私は人生を取り戻していくのであった。
【トリニティ総合学園:広場】
キヴォトスに来てから、二週間が経過した。
「キヴォトスが、どういうところなのかわかった?」
説明を終えたハナエが、少年に問いかける。
「元居た世界とかなり違いますが、大体分かりました。」
「それにしても、〇〇くん、ずいぶん元気になったね!みんな心配してたけど、なんとか立ち直れてくれたみたいで嬉しい!」
救護騎士団による献身的な治療により、少年はかつての明るさを取り戻しつつあった。
雑談に花を咲かせる二人。
その時、三人の少女が少年に話しかける。
「はじめまして、〇〇さん。桐藤ナギサと申します。」
「君が〇〇くんだね。私は百合園セイアという。以後お見知りおきを。」
「聖園ミカだよ。よろしく☆」
自己紹介をしつつ、少年に近づく三人。
「少々お話したいのですが、お時間よろしいでしょうか?」
ナギサが少年に話しかける。
~~~~
「となると、今まで通り救護騎士団の元に置いておくべきだね。」
セイアがつぶやく。
『少年の保護をどの組織で行うか』それを決めるために、ティーパーティーの三人は少年の元を訪れた。
しかし、ハナエから詳しい事情を聞いた三人は、他の組織では対応しきれないことを悟る。
そのため、これまで通りにすることを決めた。
「それでは失礼いたします。」
ナギサがそう告げ、話を終えた、ナギサとセイアは去っていった。
「〇〇くん、私とちょっとお話しよ☆」
「実はね、私も似たような境遇なんだ。」
一人残ったミカは少年に話しかける。
その目は少し昏かった。
「私もね、実はいじめられているんだ。」
「大事にしてたアクセサリーを燃やされたり、水泳の授業の前に、水着を切り刻まれたり...」
「他の子達に『魔女』って言われて、バカにされたり...」
「でもね。〇〇くんみたいに、死にたいとは思わなかった。なんでだと思う?」
問いかけるミカ。
「僕が受けたものほど、酷くなかったからですか?」
「それもあるかもね。でも、それだけじゃないんだよ。」
「私には、心の支えになる人がいるんだ。」
「何があっても助けてくれた、ナギちゃんとセイアちゃん。」
「それに、命がけで助けてくれた先生。」
「みんなのおかげで、今の私が生きていけてるんだ。」
「〇〇くんは、元いた世界には助けてくれる人がいなかったみたいだけど...」
「でも『キヴォトス』にはいるでしょ!」
「ここでなら、全部やり直せるんじゃないかな!」
ミカは続ける。
「ねえ、一度『先生』に会ってみない?」
「みんな『先生』に助けられてるし。〇〇くんのことだって、きっと助けてくれるよ!」
少年は静かに首を縦に振った。
頷く少年を見ながら、ミカは一人考える。
(私に非があることは、敢えて伝えなかったけどね。)
(だって、伝えたりしたら、〇〇くんが『自分のせいだ』なんて考えちゃうだろうし。)
(これで良かったんだよね、先生?)
【シャーレビル:執務室】
「やっはろー、先生☆」
「やあ、ミカ。それに君が、〇〇くんだね?」
ミカとともに、シャーレを訪れた少年。
二人を出迎えたのは、サングラスをかけた先生であった。
「ミカ、少し席を外してくれないか?」
「いいよ。先生。また後でね☆」
ミカが退出するのを見届け、先生は話し始める。
「実はね。私も中学時代いじめられていたんだ。」
「君みたいに、『死にたい』と思ったことも何度もある。」
「でも、そこから立ち直れた。なんでだと思う?」
「ミカさんみたいに、誰かが助けてくれたからですか?」
少年は、問いに対して答える。
「半分正解。」
「確かに助けてはもらった。でも、それだけじゃない。」
「『強い信念』を持ってたから、耐えることができた。そして、すべてを解決させられたのさ。」
「『何を成し遂げたいのか?』その信念こそが重要なんだよ。」
「〇〇くん、『信念』ができるまで、私と一緒にキヴォトスを巡らないかい?」
~~~~
その日から、少年は先生の仕事について行くことになった。
ある時は、生徒間のいざこざを解決した。
またある時は、学園内での問題に対処した。
ときには、先生の作戦指揮を近くで見守り、効果的に生徒を動かす方法を学んだ。
そんな生活が半年ほど続いた。
その頃には、すべての学園を巡り終え、大半の生徒の顔と名前が一致するようになっていた。
少年は、おもむろに先生へ話しかける。
「先生。僕は先生みたいな大人になりたいです!」
とても満足した表情で先生は答える。
「そう言ってくれるのを期待していたよ。」
「そんな〇〇くんに、大事なことを教えるよ。」
「それはね。『何があっても生徒たちを信じる』ことだよ。」
「生徒たちはまだ『子ども』なんだ。だから、とにかく信じ切る。」
「そして、生徒だけでどうすることもできなくなったら、その時は『大人』の出番さ。」
「私たちが『大人』として責任を取って、『子ども』を守るのさ。」
そう言った先生は、寂しそうな目で少年を見つめる。
「そろそろ時間だね...〇〇くん、さようなら。」
「先生!一体何を言って?」
「そのままの意味さ。大丈夫、すぐにまたここに来れるよ。」
「少し、過去になr」
話が終わる前に、少年の視界は、白い光で覆われた。
【現実世界:通学路】
「夢...だったのかな?」
目が覚めた時、キヴォトスに行く直前の光景が広がっていた。
いつもと変わらない通学路、来たときと同じ時間帯。
それまで通りの日常が、そこにはあった。
だが、一つだけ決定的に違うことがある。
キヴォトスで過ごした経験により、いじめという困難に立ち向かう力を得ていたのだ。
楽な道ではないだろう。
だが、今の彼であれば、乗り越えることができるだろう。
「僕、いや私も、先生のような大人になろう!」
少年は、新たな一歩を踏み出す。
【サンクトゥムタワー:連邦生徒会本部】
「ちょっと待って!代行!見つけた、まってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」
「首席行政官。お待ちしておりました。」
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得の行く回答を要求されています。」
首席行政官と呼ばれた少女に詰め寄る、四人の少女。
その少女の傍には、一人の大人が立っていた。
その大人を見て、一人の少女が問いかける。
「ちょっと待って。そういえばあなたは誰?」
問いかけに答える大人。
「こちらの〇〇先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です。」
『先生』の紹介を行う、リン首席行政官。
「これからよろしく。また会ったね、みんな!」
「『また会った』とはどういう意味ですか?」
「ごめん、気にしないで。」
半信半疑ながらも、先生の指示に従う少女達。
(私は、キヴォトスの生徒たちに救われた。)
(生きる意味、そして困難に立ち向かう力をもらった。)
(これからは私が、彼女たちを。いや、キヴォトスそのものを救ってやる!)
決意を胸に、かつての少年は『先生』として歩み始める。
(『先生』いや『未来の私』、これこそが私の使命だったんですね。)
この話は『終わり』ではない。
ここが『始まり』なのだ。
メインストーリーに続く。
後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
「先生」が、全生徒の名前を把握していたり、来てすぐに戦闘指揮をできたこと、それらへの違和感からこのSSを書きました。
本編の前に、「こういったやり取りがあったのかなー」と妄想してみました。
繰り返しになりますが、駄文を最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
SSの長さはどう感じましたか?
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長過ぎる
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少し長い
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普通
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少し短い
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短すぎる