かなり応えました
そして次の日に、私はD.U.へ向かった。
目指す場所は連邦生徒会ビル——実に来るのは5ヶ月ぶりだ。
自動ドアの前に立つ。
かつて、契約が途中で切れてしまい、ここを去った時のことを思い出す。
「またここに来るとはな」
“…あ、来た!こっちだよ!”
あの大人…いやもうこう呼ぶ必要はないか。先生は私を見つけるとすぐさま大きく手を振り声をかけてきた。
自動ドア越しに。
一歩踏み出して、ビルの中に入ると懐かしい匂いと共に、ちょうどいい冷気が頬に触れる。
「ああ、来たぞ。受付をするから少し待っててくれ」
“いや、もうこっちでやっといたから大丈夫だよ”
「…何?」
“あとは君が書くところだけだから”
”とりあえずそこの小会議室で書いちゃおうか”
全く周到な大人だ。
言われる通りに、自分の個人情報——名前を書くのに手間取ったが——を全て書き終えると、先生は印鑑を押し
“これで正式にシャーレに入部できたよ。いらっしゃい”
「ああ、これから正式によろしく頼む。あと名前なんだが…」
“カーリー、でいいんだよね?”
もはや自分の名前すらノイズで聞き取れず、忘れてしまった私には新しく名前をつける必要があった。
カーリー、私の新たな名前。
由来は何もないが、ただそう呼ばれたかった気がしたからだ。
“じゃあ、まず部室を案内するね。着いてきて”
「ふむ…」
D.U.まで歩いている時、というか駅から歩いている時まで様々な視線を浴びた。
恐怖、関心、値踏み、無関心…
そして、憎悪。
慣れているが、ここでの憎悪は…
「ずいぶん嫌われたようだな」
“…カーリー?”
「視線が憎悪を孕んでいる。が、あそこの視線とは訳が違う」
理由は…まあ。いいだろう。
私が何をしていたかなんぞはどうでもいい。
“もし何かされたら言ってね”
「何かする勇気はないだろうな。ブラックマーケットほど血の気が多い場所でもない」
“あはは…あそこがちょっとおかしいだけだから…”
「知ってるさ。誰よりもな。だからあの場所を普通にしたいんだ。」
他愛のない会話ののち、エレベーターがやってきた。
扉が開くと、遠くまで見渡せるように一面ガラス張りで作られた空間が見える。
眩しさに目が眩みながらも目的の階へつき、小綺麗なベルの音が鳴る
“ここが部室だよ。当番の子も居るから仲良くね”
「それは相手の行動次第だ。」
部室のドアを開けると、異様にだたっ広いオフィスと、壁一面に敷き詰められたガラス窓、机が少しとソファがいくつかある空間に繋がっている。
「あ、先生。おかえりなさい。隣の人は…」
“ただいまユウカ。昨日連絡した新しく入る子だよ”
「どうも。カーリーだ。ブラックマーケットから来た」
「え、ええ…ブラックマーケット!?先生、変な人じゃないですよね!?」
“大丈夫だよ。ね?”
「…」
“なんで黙るの!?”
「いや、新鮮だなと思ったんだ。逃げようとしない、変に敵意も見せてこない。ここにいたらボケそうだ」
“まあ、場所が場所だったからね…”
「先生、結局彼女は…」
「安心しろ。変に危害を加える気はない。信頼もすぐにしなくていい。結果で示す」
“…とまあ、こんな感じだから。大丈夫だよ”
「なら、まあ…」
「それで、貴様の名は?ユウカとか言ってたが」
「貴様…まあいいわ。私は早瀬ユウカ。ミレニアムサイエンススクールのセミナーをやっているわ。これからよろしく」
「よろしく。ミレニアムか、一度だけ行ったことがある。進んだ技術を持っているようだな?」
ミレニアム。
以前潰した組織を思い出す。ミレニアム郊外に本拠を置く犯罪組織。サイバー犯罪を主とする組織…以前のブラックマーケットでは見られなかったものだったが…もっとも、乗り込んでみるとあっけなかったがな。
「ええ、キヴォトスで一番技術が発展してると言ってもいいわ」
“そうだね。ゲヘナもトリニティもあんなにビルとか建ってないもんね”
「…ここは平和でいいな」
呟いた言葉は、誰も聞き取らなかった
シャーレの説明は——
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ロボトミー用語解説
TETH:幻想体(アブノーマリティー)の危険度のうち一つ。ZAYINより危険だが、大きな損害を出すことは少ない。F-01-02やT-02-43がこれに該当する