ええっ!?この世界ってグラブルじゃないの!? 作:ざいざる嬢
ごめんよバブさん、
この小説に出す時は最高にかっこよく書くから……!!(※出ません、というか出せません)
「──っていう感じでした」
「……そう。やっぱりあの女と一緒なのね」
ダンジョンの授業を終えて数日後、私はクラリス先輩に授業での報告を済ませていた。主にジルクさんのことについて。
実際そこまで関わらなかったものの、対面し言葉を交わしたのでその時の様子を報告しに来たというわけだ。
ただマリエという令嬢を殿下たちと一緒になって仲良くしているのも、悩みはしたけど報告した。
この事実にクラリス先輩は悲しそうな顔を浮かべていた。
「……一時の気の迷いだといいのだけれど」
「アンジェリカさんはご立腹でしたけどね」
まあ婚約者がいるのにあの態度はいただけない。いじめがおこなわれるのはどうかとして、あれは怒られて当然だと思う。平民でも分かる不敬極まりない行為だ。
殿下たちがそれを許しているとしても、その婚約者には関係ないのだから、そこは弁えないといけないでしょ。
下手すると家同士の争いになりかねないことを理解しているのかな? その辺りちゃんと殿下たちも説明していればまだ……いや、どうなんだろう?
「アンジェリカも大変よね……。私もそうだけど、最近は私たちへの口さがないことを言う連中も増えているし……」
「え?クラリス先輩にそんなこと言う人がいるんですか?」
「貴族社会も色々あるのよ。私たちの行動がそのまま家の評価につながることもあるの。
私もアンジェリカも婚約者がマリエとそういう仲になっているという噂から、あることないこと言って騒ぎ立てて私たちの評判を落とすことで家の力を少しでも削ぎ落したいのよ。敵対派閥にとっては力を強められるこれ以上ないチャンスだから」
なるほど、学園も小さな貴族社会だというけれどこの一件はここまで影響を与えることになるのか。思った以上に面倒だな。
「……最近、アンジェリカがユリウス殿下に直接警告されたそうなの。彼女の取り巻きがマリエをいじめていたから今後接触するなって」
「それってアンジェリカさんが命じたんですか?」
「アンジェリカはそういうことをする子じゃないわ。でもね、彼女の実家──公爵家の力を考えれば彼女じゃない取り巻き気取りの連中が気に入られようと勝手に動くことも考えられるわ。特にまだその辺りを理解していない一年生はね」
つまりアンジェリカさんが命じてもいないし、頼んでもいないのに勝手にマリエさんをいじめていて、問い詰められればアンジェリカさんのためにやったと言い逃れたと。
なんとまあ気持ちの良くない話だ。他人の名前を勝手に使った挙句、迷惑しかかけていないとは。虎の威を借る狐とはまさにこのこと。
これはジータちゃんでもケジメをつけさせるレベルだ。貴族の名も団長の名もそんな軽々しく扱っていいものではないのだ。
そもそも、そんなことしなくても公爵家ともなればマリエさんの実家を直接潰すとか出来そうだし、やるメリットがないよね。それでもやってしまった実行犯の令嬢たちはバカッターか何かだろうか。言い得て妙だなぁと我ながら思う。
「多分、そのこともあってアンジェリカはちょっと感情的になっていると思うの。 ……元々激情家だから、昔から怒ると騒ぎを大きくするところがあったから。でも、このままだと間違いなく悪いことが起こるわ」
「……婚約破棄、とかですか?」
婚約関連なら真っ先に思いつくのがそれだ。
でもグラブルっぽくないんだよな……グラブルで婚約うんぬんかんぬんあったのってロミジュリイベントぐらいじゃないっけ?
「ありえるけど、あまり現実的じゃないわね。アンジェリカのレッドグレイブ家はユリウス殿下の後ろ盾だし……」
「でもそのアンジェリカさんとの仲に溝が生まれていますよ?」
「そうなのよね……どうしたらいいのかしら……」
頭に手を当てて悩むクラリス先輩。
下手に介入すると問題になると考えているんだろう。貴族というのは本当に面倒くさいなと思わずにはいられない。
とりあえず私も出来ることからしようか。クラリス先輩にはまだまだ恩を返し切れていないし、こういう貴族絡みなら何のしがらみもない──悪いように言えばいつでも切り捨てられる──平民の私が都合がいいだろうし。
「ってことがあったんだよ」
『愚かしいな、感情に振り回され短慮な行動に出るなど。この学園の新人類の末裔の評価を下方修正する必要がありそうだ』
「それは否定しないけどさ、まだ学生なんだしそこまで考えが至らないのは仕方ないんじゃない?」
『それは否だマスター。ここはマスターの生きていた時代とは制度が異なれば文化も異なる。貴族が無知蒙昧であってはならない』
「手厳しいね」
『その点、前世があるとはいえ貴族社会で上手く後ろ盾をつけて学園生活を過ごせているマスターは評価に値する』
「突然褒めてくれるじゃんか、ありがとうね」
クラリス先輩への報告を終えて、それを更にファーさんに報告している。
そして報告しがてら私は身だしなみを整えている。何故かって? 今日が学期末のパーティーだからだ。
元々貴族の子息令嬢が通うこの学園は学期末にパーティーがおこなわれる。多分、一学期を通して学園になれた子息令嬢とで交流を持ち、このパーティーで約束を取り付け長期休暇で親睦を深める──といった名目があったんだと思う。
実際、ダン先輩によれば婚約者がいない男子生徒はこの学年末パーティーに力を入れているらしい。それも学年に比例して必死になっている男子生徒が多いとか。
ちなみに私とリビアは対象外だ。だって貴族の令嬢じゃないからね。がはは!
とはいえ、ある程度身だしなみは整えておくべきだ。髪に櫛を通してすかし、ナチュラルメイクを施し、ドレスではなくクリーニングした制服に袖を通せば完成だ。
「よしっ! いつもの可愛いジータちゃん☆」
『……自分に自信があるのは良いが、自ら”ちゃん”付けするのは減点だな』
「別に良くない!?」
常日頃から自分をちゃん付けしてるのは痛いと思うけどさ!! 立派なキャラ付けじゃん!!
『私だけが相手なら構わないが、衆目の下ではやらないことだ』
「え? ファーさん以外の前ではやらないに──」
そんな他愛ない話をしながらファーさんに留守を任せて部屋を出ようとすると妙な視線と気配を感じた。
そういえば前にファーさんが私を監視しているストーカーみたいなやつがいるって言ってたな。そいつか?
『ジータ?』
「……そこかッ!!」
『!?』
ジータちゃんセンスで感じ取った気配と視線を頼りに手刀を振るえばガンッと何か固いものに触れた感触があった。姿が見えないから透明化しているみたいだ。
勢いで壁や床にぶつかった音がしたけど、変わらず姿は見えない。このままさり気なく逃げる気か? そうは問屋が卸さない。
「逃がすかストーカー!!」
さっきの感触で対象の大きさは何となく把握している。拳大の球体だ。野球ボールやテニスボールだと思えばいい。
振った手の勢いと弾いた感触から今その球体がある場所を予測する。その上で気配を探り──。
「砕けろッ!!」
『くっ……ここまでですか』
躱された! 素早く私のパンチを躱した球体はそのまま音もなく消え、私から一目散に離れていった。
「逃げるなァ!! 逃げるな
気配を頼りに球体を追いかける。五感をフルに感知させ球体を追い続け、追いついては魔法や手刀を叩き込もうとするも、球体は巧みに逃れ一時間に亘る攻防の末私は球体の追跡を諦めた。
流石の私も一時間ぶっ通しで五感を働かせるのは厳しかった。武器を手に持っていればもう少しやりようがあったけど、寮で武器を持ち歩くわけにもいかず、更に言えばパーティーに武器を持ちこむなんて…………あっ。
「ああああああああっ!! ストーカー狩りに夢中になりすぎてパーティーのこと忘れてたああああっ!!」
私は泣いた。折角の用意が全て水の泡だ。
今から準備し直して参加したところでその頃にはパーティーも終わってしまっていると悟った私はトボトボと自室に帰りファーさんに事の顛末を語った。
『マスターはもう少し自制することを覚えるべきだ。この世界がマスターの憧れの世界だということは理解しているが、それでもここ最近は衝動に身を任せすぎだ。付き合っている私も私だが、このままだと互いの評価を下げざるを得ない』
「はい……すみません……」
『しかし……まさか私と同じ旧人類の兵器がいるとはな』
「え? あれってファーさんと同じなの?」
『おそらくはだが。 ……念のため女子寮全体のセキュリティレベルをさらに一段階上げておこう』
そして翌日、私はリビアからとんでもない事件を聞かされることになる。
乙女ゲーイベントに参加できないジータちゃんに悲しみの声……。
これも捜査と監視を命じた自称モブが悪いんだ……。
だから決闘後に予定しているリオン回で存分に苦しんでくれ……!!