ええっ!?この世界ってグラブルじゃないの!? 作:ざいざる嬢
「決闘ォ!?」
「そ、そうなんです! リオンさんと殿下たちが──」
ストーカー騒動の翌日、リビアが私の部屋に来たので何事かと思ったらパーティーでは大変なことが起きていたらしい。
何かというとアンジェリカさんとマリエさんの決闘騒動だ。
なんでもマリエさんがユリウス殿下以外の男と手を繋ぎ親しくしていたところを見たアンジェリカさんがそれを咎めたところ、逆にその程度で怒るなと返された挙句「聞くに堪えない」と一蹴されたそうだ。
逆に殿下を筆頭とした五人の令息はマリエさんをかばい、全員がマリエさんを愛していると宣ったと。
自分の忠言も届かず、周囲の嘲笑に耐えかねたアンジェリカさんはマリエさんに決闘を挑んだ──というのがこの騒動の流れだった。
決闘は本物の武器を使った実戦で行われるが、女性は代理人を立てることが出来るという。
そこで決闘を挑まれたマリエさんの決闘代理人に立候補したのがユリウス殿下、ジルクさん、グレッグさん、クリスさん、ブラッドさんの五人。
対するアンジェリカさんの代理人はリオンさんたった一人だという。
ここだけ見るとアンジェリカさんの今いる状況は絶望的と言ってもいいだろう。なにせ相手は殿下に加え宮廷貴族の跡取りたち。持っている権力も財力も違いすぎる。
リオンさんが冒険で成功した実力者とはいえ、分が悪すぎる。
「私が参加していればこんなことには……」
「そういえばジータは昨日どこに行ってたんですか? パーティー会場では見かけませんでしたけど……」
「昨日はね、パーティーに行こうとしたらストーカーを見つけて、それを排除するために戦ってたんだ。逃がしちゃったけどね……」
「ええっ!? ス、ストーカーですか!? 大丈夫なんですか……?」
「私は大丈夫だよ。でもリビアも気をつけてね、相手は拳大の大きさの球体──多分ドローンのカメラとかだと思うから」
「ド、ドローンですか?」
あのストーカーめ、お前さえいなければこんな騒動になる前に仲裁できたものの……! 次は木っ端微塵にしてやるぞ……そのために私は奥の手を使うことを厭わないからな。
というかマリエさんの代理人の中にジルクさんいたよな!? クラリス先輩という
「とりあえず私もアンジェリカさんとリオンさんに力を貸そうかな」
「えっ!? でも決闘ですよ、それも鎧を使った本格的な……死んじゃうかもしれないんですよ!?」
「ん~、大丈夫だよリビア。私、こう見えて強いから」
鎧か……師匠にメカニックの極意を叩き込まれた時に何度か整備と操縦をしたことがある程度だけどなんとかなるでしょ。
問題は鎧の方だな……ファーさんの製造した量産機を使えばいいんだろうけど、そうなるとなんで平民の私が鎧なんて高級品を持っているのかを問われることになる。
未だ師匠以外にロストアイテムの詳細を話していないから出所を問われれば面倒になるのは分かり切っている。
なら──。
「よし、アンジェリカさんとクラリス先輩に鎧借りられないか聞いてくる」
「ジータ! 待ってくださいジータ!!」
心配してくれているリビアを置き去りにして私は早速二人の下へと駆け出した。
まずは代理人になることを伝えるためアンジェリカさんに会いに行こう。
「よくここにいると分かったな」
「親切な先生がアンジェリカさんはここにいるって教えてくれたので」
あのイケオジ先生がいなければ私はアンジェリカさんの部屋を荒らした犯人を八つ裂きにしなければならなくなるところだった……。部屋を訪ねたらドアが半開きになっているから、ノックをして覗いてみたら酷い有様だった。
同時に昨日の今日でセキュリティレベルを上げておいてよかったと思う。部屋を荒らすことは阻止できなかったけど、代わりに犯人の顔はバッチリ記録出来ている。後でイケオジ先生に提出しよう。大問題ですよって。
そもそも他人の部屋に勝手に入って荒らして回るとか空き巣や泥棒と大して変わりがない。貴族の子息令嬢も堕ちたものよ……。ファーさんじゃないけど評価を下方修正せざるを得ないよね。
「アンジェリカさん、決闘の代理人まだ募集してますよね? 微力ですが私も力になりますよ」
「お前が……? 悪いが見返りを期待しているのなら諦めてくれ。さっきバルトファルトにも言ったが、私にはもう力がない。実家からも大人しくしていろと指示された」
疲れた顔でアンジェリカさんは天井を仰ぎ見ていた。その眼には一体何が映っているのだろうか。
「それに相手は殿下を始め、名門の貴族たちだ。平民のお前が喧嘩を売っても何の得にもなりはしない。だから……」
「アンジェリカさんはどうなるんですか?」
「私か? 私は終わりだ。良くて辺境送りだ。最悪は──自裁*1だろうな」
いくらなんでも、それはあんまりじゃないだろうか。
確かにアンジェリカさんは衆目の下で後先考えず感情のまま決闘を申し込んだかもしれない。
でも、それはユリウス殿下のためでもあり、今後を考えれば王国のためでもある。
婚約者として殿下を始めとしてた令息たちとそういう仲になったマリエさんの所業に目を瞑るわけにはいかないだろう。
それを咎めた結果、彼女の周りにいた取り巻きは離れ、殿下たちの敵なら何をしてもいいと部屋を滅茶苦茶にし、実家からも見捨てられそうになっている。
そして、アンジェリカさんはそれを自分の責として受け入れようとしている。こんな悲しい話があっていいだろうか。
「分かりました」
「そうか……そういえばすまなかったな、お前をお茶会に招待する約束が──」
「私を代理人として認めてください。私はアンジェリカさんの味方ですから」
「──は? な、なにを言っている!? お前、私の代理人になったらどんな結果で終わろうと学園にはもう──」
こんな状況になってもアンジェリカさんは平民の私の心配をしてくれている。本当に良い人だ。
だから私はこのひとを助けたい。グラブルのジータちゃんなら、きっとそうする。
「それならそれで構いません。その時は当初の予定よりも早く冒険者になればいいだけのことですから。元々、この学園に入学しなければそうしていたので気にしないでください」
師匠の言いつけを破ることにはなるけど仕方ない。私はアンジェリカさんを助けるって決めたんだから。
それに……。
「それにアンジェリカさんのためだけじゃありません。クラリス先輩というものがありながら、堂々とマリエさんのことを愛していると宣言したジルクさんに制裁を与えるつもりなので、アンジェリカさんの代理人にならなくても私が手袋を投げつけてやりますよ」
そう明るく笑って言うとアンジェリカさんは若干引いたような感じになってしまった。何故?
「お前もバルトファルトも……ダンジョンを攻略する冒険者の多くは頭のネジが外れているというのは本当なのかもしれんな」
そんなことないと思うけどなぁ……。
私はただ
「……これからは私のことは”アンジェ”と呼んでくれて構わない。今の私から出来るせめてもの礼だ。」
そうして私はアンジェリカさんの代理人に認められた。ただ、このことは私のことを心配してか期限ギリギリまで伏せておいてくれるらしい。
本当に良い人だ。もしも実家から放逐されるような結末を迎えるなら私の騎空団に迎え入れようと思う。
さあ、次はクラリス先輩のところへ行かなければ!!
裏話
実は老婆伝いにジータちゃんがどんなロストアイテムを持っているかの詳細はローランドとリオンの師匠だけが知っています。学園の特待生に迎えたのはリオンの師匠ですね。
ローランドもそれを後押ししていて、それを見たミレーユ様に「し、仕事してる!?」って驚かれています。やらないと命の保証がないから仕方ない。
それ以外の宮廷貴族は平民がロストアイテム持ってるらしいから何とかして抱き込むか奪い取る算段をつけてます。
現在一番近いのはアトリー家、次点でレッドグレイブ家になります。
え?ロストアイテムを因縁吹っかけて奪おうとする老害がいるだなんてそんな……。