夏油傑のペット   作:なすちょ

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リアルが忙しく投稿が遅れました。
誤字報告助かってます。




「ウメッウメッ」

 

あれから私は目の前で行儀悪く汁を飛ばしながら麺をすする呪霊の少女にラーメンを奢っていた。

言動だけなら男勝りな少女と言えるだろう。

だがその異様な外見と抑えてはいるものの強者たるその呪力は未だ健在であり私を萎縮させていた。

 

「あの…少し質問よろしいですか?」

 

「タメ口」

 

「い、いいかしら?」

 

そういうと黒い少女は無骨ながら握りしめた箸を止めることなく、耳だけをこちらに向けた。

どうやら食事優先のようだ。

 

「あなたは呪霊にしては人の食べ物に興味津々でその上知能が人並みに高いみたいだけど、

元呪術師または呪詛師ということでいいのかしら?」

 

その質問に体をビクッと1度揺らし、せわしなく動かしていた箸と口を止める。

まずい、踏み込みすぎた質問だっただろうか。

今日付けられたばかりのトラウマが再度浮き上がってくる。

 

「そう、そうだよ!俺は元呪術師!あー思い出した!思い出した」

 

思い出したというより閃いたように少女はまくし立てた。

 

「だったら名前と所属、それと公開してるなら術式も教えてちょうだい、調査するから。」

 

「あー、やっぱ呪詛師、うん、そう、呪詛師だった気がする!」

 

この子…絶対に嘘ついてる…

知能が高いとはいえ、見た目通り程しかないみたいね。

初めから呪霊でも人でも少女でも呪霊は呪霊、払うのが呪術師の仕事。

 

「すみません、ラーメンもう一杯ください。」

 

「あと餃子も」

 

「……すみません餃子も」

 

「かしこまりましたー」

 

私は椅子から立ち上がるとバッグに手を入れる。

 

「少し電話してくるから、頼んだもの食べててくださ、ちょうだい?」

 

「りょ」

 

トイレの個室に入ったあと急いで電話をかける

 

『 おう深山か、遅かったな死んだかと思ったぜ、等級はどんなもんだった?』

 

「どんなもんも何も特級よ特級!」

 

『特級!?、おいよく生きてたな!?』

 

スピーカーから割れるほど大きな声がトイレ全体に響いてくる。

 

「今から呪霊の情報を送るからあとは勝手にやって、稼げるし重宝してくれたから働いてたけど、もうこの仕事からは降りるわ、私が生きてるのはあいつの気まぐれなんだから!」

 

そこから私は電話越しに不審に思われない程度に手早く全ての情報を伝えた。

席に戻ると広く綺麗にされていたテーブルはあられも無く汁や食べかす縮れたティッシュなどで汚されていた、まて、これ私が食い散らかしたことになるってこと!?

消沈した私を他所に肝心の少女は2杯目のラーメンを食べ終えており餃子に手をつけようとしていた。

 

「お!やっぱ姉ちゃんも食べる?」

 

「色々あって食欲ないから遠慮するわ、それよりもっと食べる?」

 

少女は嬉しそうに目を輝かせる。

それを見るとただの少女に見えて私は少し心が痛んだ。

 

「私この後用事があるからここでお暇させてもらうわ、ここに代金置いとくから好きなだけ食べなさい」

 

そういい5万程汚れていない机の端っこに重しを載せて置いておく。

 

「姉ちゃん良い奴だな!奢ってくれてありがとう!死ぬなよ!」

 

呪霊のくせにそれを祓う呪術師である私を心配するような言動に酷く頭が混乱する。

そうだ、帰ったら甘いものでも食べよう、そして引っ越すのだ。

海外でもいい、もう呪霊と関わらない仕事と環境に着き、投げ出していた電子機器と向き合ってみよう。

そう思いながら自動ドアの前にある暖簾に手をかけようとしたその時、暖簾がほぐれるように端から燃え始め連鎖するように自分の腕が燃え始め、驚きから瞬きをしようとすると瞼は二度と開くことなく私の意識は痛みを感じるよりも前に体と共に崩れ落ちた。

 

 

 

 

いやぁ!5万も奢ってくれるなんて太っ腹なお姉さんだぜ!

あっ!お姉さんなら夏油がどこにいるか知ってるかも。

流石に未来の特級呪術師だし教えてはくれないかもだけど聞くだけなら損はしねぇよな。

 

そう思い呼び止めようと出口へ視線を向けると、身体が燃え尽き崩れる深山の姿がその光すら吸い込む黒い眼に焼けるように映し出された。

 

姉ちゃんが殺された!?

俺は自称特級だぞ、その俺が一切気づけなかった?

俺に良くしてくれた姉ちゃんをよくも殺してくれたな、絶対に殺して俺の脳内で拷問を繰り返して廃人にしてやる。

まて、落ち着け俺、今は姉ちゃんの魂の確保だ。

全力で息を吐き、全力で魂を吸う。

 

呼吸にしても特級の全力によって、深山以外の既に焼け死んだ客や店員の魂もまとめて吸い出されていた。

ほとんどが一般人故に力の足しには何にもならないが、少女にとってそれは今気にすることではなかった。

 

全ての魂を縛魂した後一息ついてから出口の方へ殺意と共に全力で警戒を始めると、出口から2人分の足音が響いてきた。

1人は人間、一体は二足歩行ではあるが呪霊。

 

「ちょっと漏瑚、無闇に人を殺さないでくれるかしら?」

 

「人間ごときがわしの通り道を塞いだからだ。」

 

男女の言い争うような声が聞こえてきた。

 

「大体君は興奮するとすぐに噴火するんだから後始末するこちらの気にもなってくれない?」

 

自動ドアのガラスが溶け空いた穴からくぐるように1人の女性が焼け落ちた店内に入ってくる。

続くようにひとつ目をギョロギョロと動かし異形の怪物が自動ドアだったものを殴り飛ばし入ってくる、富士山のような頭からはグツグツとした音とともに湯気がたっていた。

 

少女はそのどちらも見覚えがあった、今世ではない、前世でだ。

 

「縫い目.....。」

 

「縫い目が気になるの?私たちに協力するなら特別に教えてあげてもいいけれど?」

 

「っ!!」

 

怒りからイヤホンサイズまで縮めていた左腕を、縫い目の女目掛けて巨大化させながら叩きつける。

遅れて左腕の中指から一気に燃え尽きた。

痛みを感じた瞬間本能から蓄えた呪霊の魂へ痛みを押し付ける。

一瞬の痛みで我に返った。

 

ミスった!よりにも寄って漏瑚と羂索に無策で殴り掛かるなんて。

大事な左腕を完全に消された、これじゃあ治るのかどうかも分からない。

 

拳を受け止めた一つ目の呪霊漏瑚は手に着いた灰を不愉快げにはたきながら羂索へ話しかけた。

 

「おい羂索、これでは勧誘どころか殺すしかないぞ、こいつが本当に我々呪霊の時代への一歩になるのか!?」

 

「君がやたらめったら人を殺すからだよ漏瑚、心配せずともこの子は面白い時代への礎になる。

今のところ私の実験の中でこの子が一番成長性が高い。

なにせ生まれたのはたったの十日前、初めは二級がいいとこだったけれどこのスパンで高い知力にまだまだ未熟ではあるが特急クラスの呪力量と戦闘力。

人の負なる感情から影だけを摘出したのだが、元の要素からは想定できないほどの成長性なんだ」

 

「お、おうそうか」

 

縫い目を除けば顔の整っているただの人間のように見えるそれが、彷彿とした表情で抑えていた自分の好奇心を刺激され感極まったようにまくし立てた。

 

「他でも人間そのものの悪感情を集結させた呪霊の生成の実験もしているがこれはまだまだかかりそうだし、今私の好奇心の3割は君に注がれているんだよ、これ程躍動したのは180年ぶりだ。」

 

羂索にどれだけ興味を持たれるか、これは呪術廻戦を知っているものなら誰でもわかる事だ。

 

「改めて聞こう、私の暇つぶしに付き合ってはくれないかい?」

 

「嫌だ。」

 

「即答か、つれないね」

 

羂索は身を翻すと外へ歩き出した。

 

「おい!?羂索!こいつはどうするんだ!」

 

予想外の展開に漏瑚が怒鳴ると、一目もくれずに羂索は答えた。

 

「無理やり捕らえても成長の邪魔なだけだよ、これからの時代は自由な教育が子供の成長を促すんだ、だけどねそのうち君を従えるよ、ちょうどいい肉体の候補も絞ってあるんだ。」

 

愉快げに遠くを見つめる姿は、酷く何度も繰り返した経験と自身から来る、今を楽しむ若者のようであり、未来を見据える年寄りのようにも見えた。

 

 

「かっ、はぁはぁっ、」

 

羂索達が去った後全開まで張り詰めていた警戒を解いた俺は、息を切らしていた。

当たり前だ、同じ特級とはいえレベルが違う。

5分ほど座り込み休んだ後、後回しにしていた現実を確かめに生得領域へ意識を沈める。

 

 

 

 

 

「ごめん姉ちゃん」

 

俺は自分の部屋へ姉ちゃんを呼び出し謝罪していた、二人の気まずさを間に挟まれるちゃぶ台だけが誤魔化すことなど到底無理だろう。

 

「何言ってんの、そもそも私は電話で情報を言えるだけ言いまくりともっと沢山食べさせて他の呪術師が来るまで足止めさせようとしてたんだから。」

 

「え?、5万はありえない親切心じゃないの!?」

 

2人の間が少し開いた気がする、たが先程までの気まずさはかなり緩和されたような気がした。

 

「あんたに巻き込まれて死んだのは文句言いたいけど、これについてはおあいこってことでいいわね?」

 

「え、うん?」

 

「あとついでに私をここの部屋にずっと居させて、知ってる情報ならなんでも言うから、いい!?縛りね?これ、」

 

「え、うん?」

 

「はい!言質とった!縛りも結んだ!」

 

少女は今までの大人の女のようなかっこいい姿から一変小さな子供のような変わりように酷く混乱していた。

深山も深山で死んだことで肩の荷が降りていたのだろう。

普段装っている完璧バリキャリロールは肉体とともに燃え尽きてしまっていた。

 

「あっ、姉ちゃんに頼みがあってさ、夏油傑って知ってる?」

 

「あー来年高専に入る有望株のことでしょ?まだ呪術側は引き込んでないみたいだから普通に中学生やってるんじゃない?」

 

「そいつに用があってさぁ、場所知ってる?」

 

「ああ、前玉の輿狙おうとして色々調べてたから学校ぐらいなら分かるわよ。」

 

「調べたのに学校しかわかんないの?」

 

「それはあれよ、ねっと?が苦手だったのよ!」

 

「はあ?」

 

 

覚悟したものの、ほとんど責められることなく、逆に少女は別の意味で落胆した




漏瑚一派:原作では5人ほどいたが、いまは漏瑚と羂索しかいない。

オリ主:現在縛魂数
   人間約13人(内二級1人三級一人)
   話し相手ができた。

深山:フラグを立てた後即死んだ、死んだことにより元の性格が色濃く出始めた。
  これからはオリ主の話し相手兼解説役
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