黄昏のガンダルヴァ   作:猫弾正

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03_26 信頼と裏切りの狭間

 重たい背嚢を背負ってバリケードを通り抜けたマギーとニナは、脚を引きずるように街路を抜けて、ようやっと居留地へと帰還した。自由都市から二日掛かりの帰路だった。稼げるようになったのはいいものの、仕入れる荷を増やし過ぎたかもしれない。三十キロから四十キロ近い荷を担いで、油断ならない盗賊共の目を搔い潜りながら街道を長駆踏破するのは、マギーたちにしても流石に些か堪えるものがあった。

 

 勿論、マギーなら、もっと重たい荷だって運べるが、敏捷性が失われるのが拙かった。

 それでなくとも街道筋には怪物の類が跳梁跋扈している。巨大蟻やら巨大鼠に襲われた際にはバットを振るって撃退するし、ゲッコーやら屍者《ゾンビ》やらの二、三匹に襲われた時には走って振り切らなければならない。むやみやたらに全力疾走すれば、さらに凶悪な怪物やら盗賊の領域に飛び込みかねないので、また神経をすり減らす。

 小型変異獣の群れに襲われて、最後の一匹が死に絶えるまで戦い続ける羽目に陥ったのも一度や二度ではない。近場に他の旅人もいない状況では、三匹とか、多いと五匹もの変異獣とマギー一人で戦う羽目になる。

 と言うか、ついさっきまで変異獣と戦っていた。五匹、普通は死ぬ。

 小型の変異獣とは言え、あっさりと片付けられたことに、マギーは自分でもびっくりしてる。そう言えば、昔はこれくらい動けたわ。追い詰められると人間、意外となんとかなるものだと感慨に耽っていた。なんとかならずに死ぬ奴も多いが。

 ニナ?応援はしてくれるよ。あと、逃げ回りつつ、槍で牽制してくれた。

 

 とは言え、変異獣の牙と爪が通らないでも打撲は痛い。あと、返り血で付いた変な体液も臭い。せっかく防弾、防刃装備のコートを買ったばかりでこれか?ふざけんなよ?!この世に神がいるとしたら、クソGM気質に違いない。新装備に合わせて、出現する怪物の数も増えるし、手強くなります。

 いや、本当は分かってる。少し慎重さに欠けた。分厚い防刃コートも着てるし、何とかなると思って、少し怪しげな岩場を迂回するのを怠った。まあ、中型や大型でなかった分、よしとしよう。中型変異獣が群れで出てたら、逃げることも出来ずに死んでいた。

 

「マギー、ちょっと待って……足、攣った」槍は杖替わりにもなる。疲労困憊のニナは、足を引きずりながら喘いでいた。

「頑張れ、頑張れ」マギーが胸に拳を当てながら一生懸命に励ますと、ニナはイラっとした表情を浮かべて小石を投げてきた。反抗期なのか?

 

 二人の塒は、街外れにある小さな空き地に建てた簡易テントだ。新聞紙の天幕だとあんまりにも悲惨なので、最近になってやっと少しだけマシなねぐらを作り上げた。二本の木の棒を縄で組合わせて三角を作り、それを複数、竜骨で固定した骨組みに新聞や布を敷いたテントだった。新聞紙の天幕を暇な時間に少しずつ改築したら、いつの間にか成長していた。

「こんなに立派になって……ほんとにうちの子かい?」

 風が強い日には心もとないが、それでも全部お空に飛んでった以前よりはまだ居心地が良い。顔だけ出してると、まるでカタツムリの観光客になった気分にもなれる。

 

 テントに足を踏み入れると、背嚢を無造作に隅へ投げ、しゃがみ込むように座り込むと、全身の力が一気に抜けた。

「……ああぁ」呻きながら、怪物の体液と泥にまみれた軍用コートを脱ぎ捨てる。なんでこんなに重たいんだ、これ。確かに本物の軍用だけあって防御性能が高いのは認めるが、重いし、暑いし、嵩張るし――――日常生活で使うにはまったく不向きだった。

 

 それからフラフラと隣にある段ボールの家へと向かった。そこにはリリーがいる。

 2日間を歩き通して疲労困憊の身体で、寝床に転がると先に寝ていたリリーの横に寝転んだ。

「うわあああ!なんやぁ?!」

 リリーが驚き、身じろぐ。微かに残っていた日中のぬくもりが、マギーの疲れた身体を優しく包み込んでいた。

「お日様の匂い……」くん、とリリーの髪に顔を埋める。ヤニカスの分際で、なんでこんなにいい匂いがするんだろう。

「はぁ……食べちゃいたい」軽く戯れかかるように、マギーはリリーを掴んだ。

「や、やめやぁ!」リリーが本気で嫌がる声を上げたが、マギーは聞いていない。

「最近、ニナが冷たいんだ。倦怠期かな?」

「なら、余計に浮気すんなや!」叫んだリリーは最近、面倒を見ていたセフの子供たちに出て行かれた。あれだけ面倒を見てやったのに、本物の親が帰ってきた途端、挨拶もなしに出ていって、それきりだ。互助会か何かを通じて、子供たちに仕事を世話し、衣食住の面倒も見た。それなのに、後から現れた親が言うに事欠いて「奴隷にしやがって!」言い放った。

 強気な父親が、ろくに食べてないリリーを突き飛ばした時は、ぶん殴ってやろうかと思った。いや、実際殴った。背後から脾臓を一撃すると、父親は真っ青な顔で無言で蹲った。数か月も無しのつぶてだった癖、子供たちが自活できるようになった途端、帰ってきた薄っぺらい姿に、言いたい事は沢山あったが……マギーは深く考えるのは止した。

 

 ともかく、傷心のリリーを慰めてやろうと、マギーは優しくリリーを抱きしめる。

「その変な指の動き……やめぇ」リリーが喘いだ。

「変になっちゃえ」

「ちゃうわ!ホンマに怒るで?!」言われたマギーは戯れるのを止めて、不貞腐れたように横に寝転んだ。

「こんなにリリーを心配してる人がいるのに……リリーは、リリーの事をどうでも良いと思ってる連中の事で悩み、傷ついてる」

「……抉ってくるなぁ」

 人の心は単純ではない。立ち直って欲しい、駄目な時はなにをやっても駄目。 立ち直れるかは結局、リリー次第でしかない。そんな事を考えつつ、マギーは大きく欠伸すると、其の儘毛布に包まって寝入った。

「うちの寝る場所が……おい?!起きぃ?」

 

 

 

 ※※

 

 

 

 四月の初め、雑貨屋での売り上げは622クレジットに達した。

 うち利益が287クレジット。この頃には、コンスタントに稼げる、特別な金額でもなくなっていた。マギーとニナは月に二、三度の行商に出ていた。渡り人《オーキー》の日当が、おおよそ15から25クレジットなので、仮に毎日、居留地で仕事にありつけたとしても行商での稼ぎには及ばない。

 

 もう飢餓や寒さに怯える事はなくなる。無事に行商を続けられるかは別の話ではあるが。

 (……最後の峠を越えたか)とマギーは思ったが、予期していたほどの驚きも感慨も浮かばなかった。こんなものか、と静かに思っただけだ。

 

「622……か」何故か、雑貨屋の爺さんの方が感慨深そうに呟いていた。

 頷きながら、マギーは支払いに注文を付ける。

「200は、小麦引き換え証。100は、都市通貨」

 爺さんが軽く頷くと、小さな金庫へとしゃがみ込んだ。他に、客も店員も居なかった。爺さん、安心して背中見せてるのは、それだけ信頼されたからだろうか。

 

「利益は、287クレジット」ニナが軽く計算してから告げた。

 うん、と頷いたマギーは、「やったぜ」とニナの肩を抱き寄せた。雑貨屋で調達できる都市通貨は、三百が限度だろう。ただし、居留地内には、他にも手元の都市通貨を遊ばせている土地持ち農民や市民などは少なからずいる。そうした顧客に崩壊前の玩具やら陶器の食器などを持ち込めば、もう少し引き出せる。最終的に、仕入れに廻せる都市通貨は四百ほどとなる見込みだった。

 

「……此処が頂かぁ」小さく呟いたマギーは、悪くない、と微笑んだ。仕入れに使える外貨量の制約から頭打ちでもあるが、不満はなかった。

「なんか言った?」ニナが尋ねてきたので、マギーは、居留地紙幣の束をニナの胸ポケットに突っ込んだ。

「ふぁ?なにするの?」

「これは生活費に使っていいお金です」

「……居留地ポンドが見たことのない金額、溜まり始めた」プルプルと震えてるニナに、マギーは笑って語り掛けた。

「お金を貯めたら、小さな土地でも買おう」

 

 爺さんが手を頭の後ろに組んで天井を見上げた。

「お前ら、立派なもんだ。いや、本当に大したもんだ」

 うふ、褒められて素直に嬉しかったのか、ニナが微笑んだ。マギーもクネクネしてみた。だが、爺さん。言葉とは裏腹に難しい表情を浮かべている。

「……小麦の引換証だがな。融通してやってもいい」口を開いた爺さんの言葉の意味が、マギーの脳髄に浸透するのに2秒ほど掛かった。

「そりゃ、何時もしてもらって……あ」

「議会でもな、ようやってる言うんで。まあ、色々と条件は付けるがな」

 色々と手を廻してくれていたらしく、どうだ?と身を乗り出した爺さんに、ニナと顔を見合わせてから、マギーは頷いた。

「お願いする、滅多にない話だからね」

「言っとくが、あんまりいい麦じゃねえぞ。二等と三等の混ざりものだ。まあ、相手の商人次第なのもある」爺さんの眼鏡が、鈍く光ったようにマギーには思えた。

 

 

 

 ※※

 

 

 

 グレインズ一家は、自由都市ズールの片隅で、小さな穀物商店を営んでいる。エミリー・グレインズは、一家の長女で売買などで、稼業の手伝いをしている。とある過去によって、経理は一部しか任せられていないし、チェックも入れられている。

 

 去年の今頃だったか。昔馴染みのマギーが突然、行商をするなどと口走って店に転がり込んできた。月に何度か、僅かな小麦を持ち込んでは換金し、蚤の市を廻ってはつまらないガラクタをかき集めて、また居留地へと持ち帰る。そんな生活がいつまで続くか見ものだな、といささか冷ややかな目で眺めていたエミリーだが、三か月くらい経った頃から、少し様子が変わってきた。

 

 持ち込む小麦の量がいきなり増えた。居留地へと持ち帰っている、商品の売れ行きが順調と言う事だろう。最初は、遂に焼きが廻ったかと思ったが、よく考えたらこいつ、高名な冒険商人オーの弟子だった。基礎はしっかりと仕込まれていたようだ。

 ……10キロ、15キロ、時々は20キロ、15キロ、また15キロ

 ポレシャの小麦は、それなりに高く売れる。積み重なれば、意外と馬鹿にならない。エミリーにとっていい小遣いとなってくれる二人を、屋根裏部屋に泊めるくらいは安いものだった。

 

 ここ半年ほどは、ずっと20キロで安定している。もう少しは持ってこれそうなものだが、街道上には怪物も出没する。二人組では、それが敏捷さを損なわない限度なのだろう。死なれては元も子もない。小麦がやや安めに手に入る間は、長く生きて貰わなければならなかった。 

 

 

 

 

 エミリー、それに弟のリチャード、妹のクララ、義妹のジナが呼ばれたのは、マギーが尋ねてきたその日の夕食だった。仕事柄、家族で別々に食事を取ることも珍しくない夕食の席に、父に招待されたのか。マギーはすでに席に座って、図々しく高価な蒸留酒《リキュール》をきこしめていた。父とマギーの前には、数枚の書類とメモが散らばっており、食卓に並べられた家庭料理と対照的に、奇妙に緊迫した空気が漂っていた。

 

 リチャードは鋭い視線で不快そうに、クララは無表情に。ジナは不思議そうに首を傾げている。賭博場に出入りして一時、勘当寸前までいった長女《エミリー》の友人と言う事もあり、上二人はいかにも胡散臭そうにマギーを眺めている。

 対照的なのは、父のジョナサンで、珍しく上機嫌で、やはりあまり飲みなれない酒杯を傾けていた。状況が読めないながらも、エミリーは奇妙に胸騒ぎを覚えて顔を強張らせた。

 

「おお、エミリー。それに、リチャード。クララ。ジナ。久しぶりに一緒に食事をしようと思ってね」ジョナサンが話し始めた。

「此方は知ってると思うが、マルグリットさん。エミリーの古い友人だよ」

 マギーが顔を見せる度に、顰め面をしていた人物とは思えない程の笑顔で、マギーを家族一同へと紹介している。

「知っています。姉さんを留置場に迎えに行った時、一緒に放り込まれていましたからね」リチャードが冷ややかにピシャリと言って、酒杯を手にしたマギーが苦笑を浮かべた。

「まあ、昔の事だ。若い頃には色々あるものだ。そうでしょう」

 中年男の厚顔さか、ジョナサンは全く笑顔を崩さずにマギーに水を向けた。

「はっきり言う。だからこそ、リチャード君の方がいいでしょう」とマギーの言を受けたジョナサンが、「でしょうな」朗らかに笑った。

 ジョナサンは笑顔で手を広げて食事を勧めた。温かいポタージュや分厚い豚肉の皿が並んでいるが、その香りもエミリーにはどこか遠く感じられた。

 

「今日は少し、いい話をしたいんだ」父は突然、重々しい口調で言った。

「少し変則的だが、ポレシャと、小麦引き換え証の取引が出来るかもしれん。年間で半トンに届かない程度だが、我が家のささやかな商売にとっては、有り難い話だよ。それに、より広い取引の取っ掛かりになるかもしれない」

 

「詐欺ではないですか?」がリチャードが慇懃無礼と言ってもいい口調で告げた。

「此方が、ポレシャの参事会のサイン入りの署名と委任状」マギーは落ち着いて書類を取り出した。

「ポレシャに来て確かめて貰っても構いません。むしろ、その方がいいでしょう」

「マルグリットさんは、居留地からの信頼が厚いようですね」兄が手に取った書類を覗き込みながら、クララが呟いた。

「変則的と言ったのは、この引換証が我が家の専属契約だからだ」ジョナサンがもう一枚の書類を示しながら、ほほ笑んでいる。 

「収穫期の後、小麦を引き出す事が出来るのは、我が家か、その代理人だけだ。つまり、資金繰りに困ったからと言って、引換証を他所の店に流すことは出来ない。だから、小規模取引だ。元々、ポレシャが此方でちょっと物資を調達するのに、信頼できる取引相手を探していて、それに我が家が選ばれたんだよ」

 

「我が家!我が家!」エミリーが食卓を叩いた。突然の激昂に家族全員が視線を注目させる。

「……ごめん」エミリーは長い溜息を洩らしながら言葉を続けた。

「それで、交渉担当は?……当然、わたしが」

「いや、リチャードに任せようと思ってる」ジョナサンはにっこりと笑った。

「……あの、さ」エミリーは少し困惑した表情を浮かべて続けた。声は震えていたかも知れない。

「マギーは私の知り合いなんだけど。元々、私の伝手があったから、来た話でしょう」

「ポレシャの代理人として、わたしは、最も信頼できる人物と契約を結びたい」マギーは淡々と言った。

「……マギー。あんたとは長い付き合いだよね?」エミリーはマギーを見ず、食卓の上に視線を彷徨わせてから、鋭い視線を旧友へと向けた。

「踏み台にする気?」言ったエミリーに、しかし、マギーは微笑みを返してきた。

「まさか。これまでと同様、これからも取引は続けるよ。エミリーが良ければ、だけど」それからマギーは肩を竦めた。

「それとは別に、依頼された件に対しては、属する共同体に対して責任がある。それとこれとは、全くの別件なんだ」

 エミリーの視線が鋭くなったが、マギーはまるで動じなかった。むしろエミリーは震えていたかも知れない。

 

 エミリーは腕を組んで座り、気まずい空気の中、父の顔を見つめた。クララは椅子の背もたれに背を預け、すぐにでも状況を把握したいといった様子で目をすばやく動かしていた。ジナは目を見開き、何か言いたげに口を開きかけたが、養父《ジョナサン》の目がそれを制した。

「まあ、みんな座りなさい。リラックスしていい、リラックスだ」ジョナサンは少し笑いながら、穏やかに告げた。誰もリラックスは出来なかった。

 リチャードは緊張した空気にも感染せず、廻された書類を精査するように見つめていた。

「この書類では、マルグリットさんと参議、そして店舗の代表者が三人揃わなければ、引き出せないとなっていますが?」

「はい。私を殺して、盗賊が引き換え証書を奪った場合に備えてです」マギーは落ち着いて答える。

「第三者による犯行が確認された場合、特記事項として参議とそちらの代表だけでも引き出せます」

 頷いたリチャードが、取引金額に視線を走らせてから、言葉を続けた。

「それでは、我々は、そちらに資金を払いながら、しかるべき時期まで小麦を受け取れませんね」

「そうなりますね。その分の利益は出る価格を、まず付き合いのあるグレインズ商店に最初に提示しました。ご満足いけないのなら、仕方ありません」

 マギーとリチャードの視線が空中で静かに絡み合った。

「……なるほど」数秒後、リチャードが冷笑を浮かべた。マギーは確かに、他の店にも当たれるのだ。

「代わりに帰路においては、ポレシャのガーズが自由都市の近くまで護衛します」

 これは破格の条件と言ってもいい筈だ。十人からの手練の護衛隊が付くなら、半トンの小麦だけでなく、他にも買い付けるチャンスが廻って来るなら。

 ジョナサンが一瞬だけ鼻息を荒くしたのにエミリーは気づいたが、次の瞬間には穏やかな微笑みを浮かべている。

(……狸親父め)俯いて拳を握るエミリーだが、リチャードとマギーは淡々と会話を続けている。

「そちらと此方が引換証と代金を取引するたび、取引記録の書類と日時を明記、ですか?」リチャードは書類内容を冷静に確認してから、問いかけた。

「普通の取引より、少し複雑ですね」

 

「御存じの通り、ポレシャは現在、いささか物資不足に陥っています」マギーが説明を続けた。

「ここで偽造や複製の引換証などがばら撒かれて、引き出しを拒否した場合、都市との取引そのものが遮断されかねません。それはポレシャにとって、避けたい事態ですので、新規取引先との引換証の発行に慎重になっている事を理解していただきたい」

「零細商店相手なら、踏み倒すことも可能では?」リチャードが懸念を問いかけた。

「それを否定しません。強い側がやろうと思えば、何でもやれます。信頼するしかないでしょう」肩を竦めたマギーだが、少し考えてから妥協案を出した。

「商会連、或いは穀物ギルドを通しますか?いささかの手数料を取られますが、商会連の公証人などが付けば、そちらも安心でしょう」

「ぜひ、お願いします。勿論、ポレシャの誠意を疑う訳ではありません」リチャードが淡々と言って「理解しております」マギーが微笑んだ。

(なんだこれ……なんなんだ、これは)

 エミリーにとって、この日の酒ほど、不味い酒は人生の記憶になかった。

 

 

四月上旬

 

 5576クレジット

 

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