黄昏のガンダルヴァ   作:猫弾正

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03_64 冷夏

 ポレシャの市民区画の公園。柳の木陰の下、芝生に寝転びながらマギーちゃんはサンドイッチを味わっていた。

 ランチボックスには、マスタードとマヨネーズ、僅かなお酢と胡椒、ハムにレタス。トマト。卵。傍には本物の紅茶。ニナが膝枕してくれている。

 疲れないか、と尋ねて、交代してもいいと告げるも、木の梢の傍で微笑んでいる。

 働いている人たちが通り過ぎていくが、休日は人それぞれ。

 マギーはそれなりに市の役に立っている。清潔な身なりでのんびりしていれば、非難の目で見られる事もなかった。

 

 今年の夏は、涼しくて随分と過ごしやすい。言い換えれば、冷夏だ。

 ついでに言えば、去年も冷夏で相当な不作だったが、今年はより冷え込んでいる。

 間違いなく相当の不作――下手をすれば凶作となるだろう。

 

 二年続きで不作が続けば、食べ物は値上がりし、各地で不足分を巡って争いが起こる。

 大勢の自由労働者や作男が職を失って、放浪者や乞食へと転落するし、食い詰めた浮浪者《ホーボー》や廃墟漁り(スカベンジャ―)、貧農、盗賊、浮浪傭兵に無宿人《ノークォーター》、乞食らが何百人もの徒党を組んで町に押し寄せて来るかも知れない。

 中世から近世以前の日本や欧州の歴史で幾度となく繰り返されてきた光景だった。

 

 マギーには、手に取るように分かる。何故なら、不作の年の年中行事だから。そして、名のある賞金稼ぎや護衛、他には特に傭兵にとって攻守いずれにしても稼ぎ時でさえあったから。

 雲が出たら雨が降るように、不作になったら暴動や略奪が起き、町が荒廃するのは、自然な成り行きだ。屍者や変異獣がそれに乗じれば、町の一つ、二つが地図から消え去ることもある。

 

 そして、今年は聊か冷え込み過ぎだった。その分、越冬の難しさも、作物の出来も相当に酷いことになるに違いない。それでもマギーには幾らかの金があり、余分の毛布と、薪に食料の備蓄があった。

 己とニナ、それに隣人リリーや同居人の徒弟トリス、よく顔を出すココ、子分のジーナ・エクルストン。ここら辺の面倒を見る事くらいは出来る。間に合った、とマギーは考えていた。

 

 

「お、丁度、ええのがいたぞ」急な呼びかけと共に影が差した。見上げると、シエル・ガライが微笑んでいる。「なにさ?」当惑してマギーは尋ね返した。

 

 

 

 ※※※※

 

 

 

(……何故、わたしは此処にいるんだろう?)引っ張られたマギーは、議事堂の会議室の隅の席に大人しく座っていた。

 議題は冷夏について。少し頭のいい渡り人(オーキー)や浮浪者《ホーボー》だって、冷夏による作物の不出来と、食糧不足から起きるであろう一連の地獄絵図を予想済みな筈で、長年を生き残ってる大型居留地の指導層が無能な筈もない。

 参事会は既に一連の出来事を危惧して、一通りの対策を練っているようだ。

 

「今年の資材だが、食糧の配給を予定している。倉庫に備蓄は少なくなる」議員の発言に「つまり、倉庫を修繕する?」とマギーは戸惑いながら尋ねた。

「どうして、そうなる?既存の倉庫容量を使いまわすで充分。だから、下層地区のバリケードに多めの資材を廻します」若い参事にやや呆れた様子で言われた。

 急に連れて来られて、脳が会議用に切り替わっていない。考えてみたらその通りの返答を受けて、下町暮らしのマギーは赤面しつつ、「有難い」と呟いた。

 

「……ところで、契約している樵たちだけど。我々の森林に勝手に入らないように見張っている必要があるし、ゆくゆくは此方の正規労働者のみ入れたいとも思っているのだけれど」と、シエル・ガライがマギーを一瞥した。

「まあ、兎に角、我々の労働者を送りたいけれど、屍者や変異獣、熊、狼とも遭遇しうる危険な場所でもある」場所も良く知らない森の資料を広げながら、説明してきて「クロスボウが欲しい。森の中、マスケット銃では敵を呼ぶ。槍では取り回しがあれだし、刃物で白兵戦をさせるのもね」どうやら本題を切り出してきた。

 

「五人かそこらに持たせるだけでも大分、違う」シエルの言葉にマギーは「調達しろと?」と首を傾げる。

 武器工房の多い自由都市はルガリエ地区に、マギーはよく出入りしていた。市には他にも人がいるだろうが、武器を見る目を持ち、旅に慣れており、ほぼ確実に帰ってこれる者となると案外、少ないかも知れない。

 さらには仕入れる元手を持っているので、前金を出して持ち逃げされる恐れもない。勿論、他にも商人を呼びつけていても不思議でもないが。

「何時でも幾つでもいい。人口も仕事も増加傾向だし、ルガリエ製の相応の威力を持つクロスボウが欲しい」参事たちの要望に頷いて「すると、張力30~60ポンドでいいかな?」とマギーは提案した。

 

 ルガリエ製の軽クロスボウは、マギーとニナも今現在、使っている代物だ。

 野良犬や小型変異獣、巨大鼠や巨大蟻(働きアリ)には充分であり、対人でも鎧を付けてない者、厚手の服や革鎧くらいなら倒せる。鎖帷子となると質と距離によるだろうが。有効射程は二十メートル。護身用には充分だろう。

 

「……悪くないが、もっと強力な奴でもいい」参事たちは顔を見合わせてから、肯いたり、首を振っている。「勿論、持ち込んでくれたら買い取るけどね」と捕捉してきた。

 ふむん、と、マギーは考え込んだ。

 元々、クロスボウは扱いやすい武器だ。銃と違って摩耗が少ない。手入れと修繕が簡単で、なによりボルト(弾)が簡単に制作できる。

 取り扱いが容易い割に強力なので、例えば防衛戦に五台、十台のクロスボウがあれば色々と違ってくる。しかし、張力60ポンドを越える代物となると、護身用や治安維持を越え、それ以上の用途に踏み込むことを求められる。

 

(……クロスボウで、我々の樵を武装させるね)

 同時に、契約してる樵衆と揉めた時、町に賊徒が押し寄せてきた時、それなりに信用できる労働者たちを其の儘、戦力へ転用できる訳だ、とマギーは感心した。

 勿論、口に出したりはしない。防衛戦。或いは、戦闘用のかなり強力な代物となれば、張力は80~120ポンド。価格も相応に張るので値段で折り合う為、マギーも些か、慎重に交渉を行った。相応の価格が提示され、手に入ったら、市内へと持ち込むとマギーは約束した。

 

 もっとも武器売買は、利潤が多い代わりに常に火種を孕んでいる稼業だ。例え、市からの要請にせよ、管理には慎重にならなければなるまい。おのれがやや危うい領域に足を踏み入れつつあると自覚しながら、マギーは契約書に目を通し、署名した。

 

 

 契約書が回収され、写しが手渡された。丁寧に折りたたんで胸ポケットに入れたマギーは、紅茶を手に窓辺に歩み寄った。

 外の景色を眺めながら「……今年は寒いね」顔を顰めると、室内で誰かが「……全くだ」と囁いた。

 

 

 

 ※※※※

 

 

 

 ポレシャ市の町外れ。マギーとニナは路地裏の空き地に暮らしている。

 空き地と路地の境界で、マギーとニナは木杭を打ち込んでいた。

 私有地の境に杭を打ち込んでは、長い蔦を折り曲げては縫い込んでいく。歴史番組で知った境界柵の作り方だ。前々から少しずつ作り上げていた。後は、粘土と土、それに牛糞などを塗り込んで壁にする。

 曠野は冷涼な気候で、年間降水量は800~1200ミリ。冬の嵐を除けば一年を通して乾燥している。白アリがおらず、黴も繁殖し辛い気候に、緩やかに劣化しても十年程度は保つ。

 

 背の低い壁だが、巨大蟻に壊されるとしても其の儘、真っすぐに侵入してくるのだけは防げる。野犬やコヨーテは飛び込んでくるだろうし、変異獣も登れる。屍者だって乗り越えては来るだろうが、数秒は稼げる。

 その数秒、心の準備をする数秒が大事だった。まあ、滅多に侵入してくる場所でもないが、無人の方角に多少なりとも備えがあるだけでも、気持ちが少しだけ楽になると言うものだ。

 

 他の方角にも境界柵を作るべきだろうか。文明崩壊後《ポストアポカリプス》の社会に、どうしたって資材は限られている。きちんとした木材なり、煉瓦や石材、漆喰を調達しようにも色々と伝手と手間暇に時間も必要となる。

 下層地区の家々には、どうしても泥や布の小屋、段ボールやタープの天幕などが目立つ理由であった。町外れに住まう自由労働者や渡り人(オーキー)たちが良い家を建てるには、時間を掛けて、少しずつ資材を集める以外に手はない。

 

 

 廃墟方面の境界柵が完成して、取りあえずはめでたいと、小さな壁を眺める。

 それは勿論、屍者の群れが押し寄せてきたり、変異獣の大群が襲撃してきたら、殆んど時間稼ぎにもならないけれど、野犬やら少数の屍者、巨大蟻と言った低度の脅威は、幾らか防いでくれるし、ぶつかれば音だって立てる。

 寝込みを襲われても気づけるかもしれない。逃げたり、対処できる余裕が作れるかも知れない。かも知れないばかりだが、大事なのは、まず生き残る事である。

  

 娘たちが鍋を囲んでいる。庶民にとって、鶏肉はご馳走だ。徒弟のトリスや猫耳ココは涎を垂らしているし、隣人リリーやマギーの子分ジーナ・エクルストンも上機嫌で出来上がりを待っている。

 トマトに豆、鶏肉、オリーブオイルに米をぶち込み、大きなパンの塊を焼いて切り分けている。夕暮れ前の安らかなひと時に、近所の小屋や天幕、廃墟からも明かりや笑い声、楽しげな歓談の声が漏れてくる。

 

 木の骨組みと段ボールに布を組み合わせた小屋の傍らで泥山に寄りかかりながら、行商人のマギーは、手鏡を覗いて、折れかけた鼻の位置を整えていた。

 先週の損害は、三千都市通貨。都市通貨の三千は、地区通貨に両替すれば、四千五百程度の価値は持っている。

 これは労働者の一家が一、二年、慎ましい生活を送れる金額である。どうにも絶不調と言うべきだろうか。週に二回も、襲撃を受けた。二度目は、バットやタイヤレンチを持った略奪者《レイダー》の小徒党でなんとか撃退できたが、マギーはかなりいい一撃を喰らってる。ニナは少し不機嫌そうに見えるも、当の本人マギーは、あまり気に留めてない。

 

「君も私も無事だったんだよ」マギーはクスクスと笑っている。

「……三千ですよ?」ぶっきら棒に言うニナ。

「たかが三千さ」とは、マギーの言い草だ。

 絶句してるニナにマギーは曰く「だって、ねえ。命ではなく、お金で済んだんだよ」

「そうですね」ニナが溜息を洩らした。本物のコーヒーに砂糖とミルクを入れて差し出すと、マギーは小さく笑った。

「ニナの年齢だったら、わたしもイライラしていた」マギーは言いつつ、それでも二人の暮らし向きは少しずつ上向いていた。

 

 収入だけはあるマギーたちだが、下層地区の暮らし向きは、金だけあっても中々に向上しない。物資不足の曠野では、万事に時間が掛かる。大量生産大量消費は遠い過去の話だった。

 店に足しげく通い、或いは廃屋や探ったり、職工、職人を当たったり、都の蚤の市で買い集めて、家を建て、家具を探すことでようやくに人がましい暮らしを作り出せる。

 それでも多分、店や職人と遭遇できる分、古代の田園社会よりはマシだろう。中世社会と比べたら一部、劣ってるかも知れない。

 

 大金を奪われた。流石に若干の苛立ちは覚えるが、その怒りも一分と掛からずに収まった。或いは、激発したり、発奮すべきかも知れない。感情の波が良い方向にも、悪い方向にも転がり得るのが若さなら、マギーは既に老練の心境に達していた。

 いずれ、機会があれば盗賊共に報復する心算だが、中々にそう上手く運ぶものでもなるまい。とマギーは気長に構えている。それでも、怠りない執念深さこそは、かつての賞金稼ぎ時代の残滓かもしれない。

 

 それにしても週に二度の襲撃は、些かの気がかりでもあった。

「的に掛けられてるかね?」とマギーが懸念を呟くと「可能性は有ると思うよ」とニナは頷いた。盗賊共が蠢動しているような理由が街道筋にあるのか。それともマギーたちが特に狙われてるのか。判断がつかない。

「何かしらの手を打ったほうがよくないかな?」とニナが尋ねてきた。

 ううむ、と唸ったマギーとて、取り立てて無策な訳ではない。幾つか打てそうな手は思いつくものの、例えば、他の行商人たちと纏まって同行すれば、幾らか安全にはなる代わり、取引先も、仕入れも全て割れてしまう。

 

 迂闊な相手と行動を共にすれば、顧客や、或いは商売そのものを奪われる事だってあり得る。何故なら、客たちがマギーから買わなければならない理由など無いのだから。

「取りあえずは、様子見で。駒も時期も揃ってないしね。

 それに逆に言えば、中々、殺されないと見られてる訳だからね」と消極的な方針を口にしたマギーが次の瞬間、愕然として「あ……忘れてた」と口走った。

「……なにを」戸惑うニナの前、マギーは――

 

 

 

 ※※※※

 

 

 

 マギーが相棒ニナと部下ジーナ・エクルストン。それに知己イザベル・ミラーを伴って赴いたのは、西の丘陵地帯。

 高い金を出してポレシャ市で馬を借り、西の農村までたどり着いて馬を預けると、さらに徒歩で麓近くの廃屋に宿泊。翌日から丘陵地帯へと入り込んだ。

 後込め式ライフルを四丁揃え、予備弾薬に食料や水も持っての強行軍に四人は黙々と陰気な雰囲気の儘に進んで、ほぼ夕方近くに見つけたのは、地面に倒れている人影だった。

 

 近寄って銃口でそっとフードを開けてみれば、布を纏った農夫の老人。

 誰かが舌打ちし、「タリウスの斥候ではなかった」とマギーが呟いた。

 イザベルが天を仰いで「戦争に巻き込んだ、こう言う事もある」背負っていたシャベルを取り出して黙々と地面に穴を掘り始める。

 

 遊牧民の【王《ムーテ》】に追われた際、同じ方向に並走していたのは、恐らく丘陵東側の村なり農場なりで物資を仕入れ、家へと戻る途中だったのだろう。

 もう少し調べようと、マギーはしゃがみ込んだ。

 老人の荷物を漁り、「……ねえ、老人がキャラメルの缶詰を買うと思う?」

 暫しの沈黙が全員に舞い降りた。

 「買う人もいるだろうけど、あなた。でも」イザベル・ミラーが恐怖で喘いだ。

 

 マギーは、さらに老人の持ち物を調べる。若干の現金の入った財布と身分証。多分、二人分として半月分ほどの食料。

 二人分と判断したのは、一か月は持たない果実なども混ざっているし、ピクルスに苦みの強いエールなどに、黒パン。そして焼き締めた薄いパンと野菜、肉など、若干、好みの違う食べ物が混ざっているからだ。根拠は薄いかも知れないが。

 

 【王《ムーテ》】タリウスの手勢と誤認して、無関係の老人を射殺してから何日経った?およそ一か月以上。

「子供と暮していたかもしれない」マギーは喘いだ。顔色は良くない。

「いや、他に近所の人がいるかも」ニナが囁いた。「行くのは危険だよ。だって……」

「行かなければ。そして見なければ」マギーが言葉を絞り出すと「……マギー。マギー!」ニナは強い言葉で止めてくる。

「必要ないよ。必要ない。仕方なかった。本当に……それに見つからないかも知れない。」

「落ち着いて、ニナ。私も仕方ないと思っている。だけど、もし、生きているなら。

 そして、死んでいるとしても、少なくとも見届けなければならない」マギーは淡々と告げた。

「ほ、他に家族がいるかも。態々、尋ねるなんて。よくない。よくないよ」袖を引いてニナは訴える。

「戦争だもの。間違える事はある。開き直りだけど、仕方ないとも思ってる。だけど、やった事を無かったことには出来ないよ」マギーは渋々と言っていた。

 

 灰色と赤錆色の土がまだらに露出した代り映えしない丘陵の奥、小高い岩と岩に挟まれる形で、見すぼらしい小屋がひっそりと立っていた。

 あっさりと見つかった。罠は仕掛けて無さそうだ。待ち伏せは、まあ、仕掛けるには絶好の土地だが、マギーは、無いと踏んでいる。

 音もなく近づき、窓からそっとのぞき込む。ベッドの上、毛布に包まっている小さな影。動かない。

 死んでるのだろうか。マギーの胃の腑に冷たいものが落ちた。とは言え、死んでたらそれまでだとも割り切っていた。ニナには、贖罪や罪悪感に動かされてるとでも思われただろうか。だが、全てはおのれが内在する律の為に過ぎない。

 

 マギーとジーナが小屋へと入っていった。イザベル・ミラーはニナの顔を見たが、表情がひどく強張っている。二人が子供を抱きかかえてすぐに出てきた。

 衰弱はしているが生きている。水だけは若干の残量があったそうで、命を拾ったのだろう。

「……じぃじ?」とかすれた声で聞いてくる。

「お爺さんは……近くで起きた戦争に巻き込まれて、怪我をしてしまいました。

 私は、お爺さんと多少の縁があったので、君を探しに来ました」マギーは嘘をつかずに子供を騙くらかすと「もう大丈夫です。おやすみなさい」と囁いた。

 

 その日は結局、小屋に泊まり込み、多めに水分とお粥を食べさせてから翌日、子供を背負って四人は丘陵を降りた。

 最寄りの農村へと辿り着いて子供を寝台に眠らせてから、四人で焚火を囲みつつ、これからの方針について、話し合いが始まった。

 

「どうするの?」ニナがじっとマギーを見つめていた。

「どうするべきでしょうね」マギーは苦笑を浮かべ「まだ分かりません」と首を振るう。

「近くの農民に。お金と一緒に」ニナがぽつぽつと語るのを、マギーは首を振って止めた。

「ニナ。ニナ。ポレシャ以外にこの子をまともに育てられる環境を知ってますか?」

「だってその子は……私たちが……近くには置いておけないよ。だって」ニナは泣きそうな表情で言った。イザベル・ミラーはずっと沈黙を守っていたが、ジーナ・エルクストンを一瞥した。

 

 部下であるジーナ・エルクストンが焚火を眺めながら、口を開いた。

「ねえ、今の時代、人の命が奪われるのは、木の葉が風に吹かれるのと同じです。

 一々。気に病んでいたら、仕方ない」

「君がそれを言うのか。ジーナ。この子と同じ境遇の君が」マギーは冷静な口調を保ったまま、尋ねた。

「私だから、言うんです。見捨てておしまいなさい、隊長。適当な子のない農民夫婦にくれてやるか。いや。気になるなら、北の比較的マシな修道会孤児院にでも送ればよろしい。適当な金額でも就ければ、そこそこの扱いは受けるでしょう」

 一息に言い切った部下の言葉に、マギーは暫し黙考してから頷いた。

「その通りだ。人の命が奪われるのは、木の葉が風に吹かれたようなものだ」言ってから、全員を見回して「ならば、結局、私の命が奪われるとしても、大したことはあるまいよ」そう告げた。

 

 これがエリオット・ドーソンがポレシャの市営孤児院に引き取られた由来であり、立ち会った四人の娘は終生、エリオットの祖父の死因の秘密については、口を噤むことを誓い合った。

 

 

 

 

―――――

 

 

8月中旬_5774都市通貨 2000都市通貨をエリオット・ドーソン名義で

 

 1D100_25 生存

 

 1D2_1  男の子

 

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