季節は、新年――1月に入った。酷く寒い日々が続いている。日中でも気温は度々零下10度を下回り、時には零下20度近くに達する日もあった。
街路を出歩く人々の姿も疎らになり、下層地区の
冬の雨や雪は、貧しい人々にとっては時に致命傷になりえる。服を着込めば出歩けない気象でもないけれど、濡らしてしまえば、替えの服がいるし、乾かすのに余計な薪も必要で、冬場の洗濯は兎に角、辛い――骨に染み入るほどの水の冷たさだ。
だから、無理はしない。浮浪者やら廃墟生活者たちも、破れた傘を用心深く持ち寄るし、小雨も嫌がって屋内に閉じこもっている。とにかく、体力を温存して冬をやり過ごすのだ。
となると、廃墟を徘徊する一部の廃物漁りには、行き倒れを真っ先に見つける好機ともなるのが、黄昏の世の救いがたさであろうか。廃墟の片隅に逃げ込んだ郵便配達人を見つけたのは、だから、セフの廃墟漁りたちにとって言わせれば、勤勉さの賜物だろう。
まずは、猫耳のココが足を止めた。
廃市街の彼方から、何か聞こえてきたと足を止め、耳をピクピクとさせる。廃墟漁りの班を組んでいるセフの兄さん、姉さんらは、普段はココを省いている癖、こういう時だけは親しげに、しかも無思慮に話しかけてくる。
何か聞こえたのか?怪物か?逃げた方がいいか?――そんな雑音を無視して音の聞こえた方向へとある程度走ってみれば、乾いた銃声が二度、三度、響き渡った。
(……何があった?)と、慎重に歩を進めて街角から覗いてみれば、古びたアパート二階の渡り廊下。閉められた扉を爪で引っ掻き、削りながら唸り声を上げる変異獣が三、四匹も徘徊していた。
窓が木板に補強されているのを見ると、廃墟生活者の住処か、或いは、旅人たちの設けたシェルター。しかし、扉はどれほど持つだろうか。
鋭い爪に、狡猾な知性の変異獣は、言うまでもなく危険な相手だ。野犬やコヨーテは勿論、時と状況によっては、狼や屍者の群れをすら上回るほどの脅威を人々に与えてくる。
(……誰か、追い詰められたな)―――ココが頭を引っ込めて思案してると、追いついてきたセフ衆たちも光景を目撃したようだ。
「誰か、襲われてやがる」「なに持ってるだろ」「食べ物持ってるかなぁ」声量は抑えつつも、囁き合う声に、欲望と軽い恐怖が混じっていた。
変異獣は襲った獲物の持ち物は持っていかない。とは言え、露骨に嬉しそうな囁きは、あまりに醜悪に過ぎた。
誰も、ココには何も言わない。似たような状況では何時もそうだ。話しかけると分け前を与えないといけない、と思い込んでいるようだ。
だから、話しかけられないうちにココは離脱した。平行に疾走し、想定した変異獣どもの視界を多めに迂回して、建物の反対側に音もなく回り込んだ。
そこにも変異獣が地階をうろついていたが、建物の窓から建物の窓に猫のように飛翔する。
道路一つ分の幅を飛び越えて、二階窓から室内にするりと入り込むと、ココは敢えてノックをする。三度。三度。
「……誰だ」苦しげな声での誰何。白いハンカチだけ出して、ひらひらさせると「……分かった、撃たないから」と苦笑する気配が響いてきた。
そっと覗いてみると、藍色の制服に手提げ鞄の郵便配達人が、建物の奥で壁に寄りかかっている。脇腹から出血していた。
眺めたココは、おのれの鞄から包帯と軟膏、消毒液を出した。それから不燃布と金属皿を取り出し、新聞を捩って、ライターで火をつける。氷点下でも凍らないように若干のアルコールを含んだ酒瓶を差し出すと、郵便配達人は、受け取って一口飲んだ。
「……運がいい。ポレシャの下層地区まで二十分。マギーを呼んでこれる」ココは囁いた。
「……マギー?保安官助手の。でも一人じゃ。自警団でも手に負えないかも」郵便配達人が痛そうに呻いてる。
「三匹か、そのくらいならどうにでもなる。いつも狩ってる」言ってから、ココは尋ねた。
「一時間は待つ?」
「それくらいなら、多分……扉が壊れないうちに隙間から牽制すれば……」郵便配達人の答えに「また、来る」告げて、窓から飛び出したココは、ポレシャの下層地区へ向かって走った。
マギーは幸い、いつもの場所にいたので四十五分で戻った。クロスボウの射手が五人。斉射で変異獣二匹を殺害すると、残りは逃げ散った。
市の保安官助手とその一団に助け出された相手を見て、「郵便配達人じゃねえぁ!」小さく悲鳴を洩らしたセフの仲間たち。郵便配達人は、仕送りの現金やら小さくて値の張る指輪や装飾品を託されることも多く、死体を漁るには最高の獲物でもあった。
仏頂面のセフの仲間の憎々しげな視線も気にせず、配達人を病院まで運んだココは、それから再び廃墟漁りの仕事に合流した。
毒々しい沈黙と陰気な雰囲気を気にせず、半日を廃市街を歩き回って何も見つからなかったので、最後には門前町に忍び込んでゴミを漁った。腐りかけた野菜やカビの生えたパンらしき何かを見つけたので、支給された袋にトングで入れた。
(まあ、誰か食べるんじゃないかな?どうでもいいけど。私はいらないけど)
住人に見つかれば、当たり前だが嫌な顔をされる。だから、明け方や日没前にやるのだけど、みんながあまり文句を言うからココ、頑張った。
ん、と、何も考えてない顔をして、得意げに傷んだ食べ物を差し出すと、セフの班長は、ため息を漏らして受け取った。受け取るんだ。
ふふん、と無邪気そうな表情を浮かべると、毒気が抜かれたのか、まあ止めろと言わなかったしな、とブツブツ言いながら歩き出した。悪党に慣れ切れないみんなのことが、ココも実は嫌いではない。尻尾を振りながら、やや冷めた視線を最後尾で仲間の背に投げかけつつ、アジトへと帰る道を歩き出した。
※※※※
零下が20度近くにも達すると、流石に冬の旅は無謀だ。マギーやニナが纏う厚手の高価な防寒服でも、手足の感覚が鈍くなり、息が白く凍りそうになる時がある。
自由都市への行商を打ち切ったが、かと言って稼ぎが無くなる訳でもない。
簡易宿泊所でも、暖炉に近い良い寝台を確保している二人は、暖かな日中、市内を数時間、歩き回るくらいなら平然としていたし、それならそれで稼げる方法も幾らかは残されていた。
春から秋にかけて、時間が足りずに丘陵を横断できない日には、自由都市から丘陵の手前まで荷を運ぶだけの時もあった。地図を作り、秘密の経路の段差を埋め、亀裂に吊り橋を作れないかを検討を重ねた。 冬の寸前まで、人が通れるだけの道にしても、どうにか驢馬を連れて通れるようにならないものか。工夫を重ねてもした。しかし、状況もすぐには変わるものではない。
だから、今は市内で動き回って、需要と供給の差から利鞘を稼いでいる。廃墟漁りや廃墟生活者、浮浪者から資材を買い漁り、整備して市民街区に転売する。
自由都市から足りない資材を仕入れる仕事に比べれば、全くつまらない仕事ではあったが、それでも週に二百は稼げた。現状、良い状態を保っている。問題はない。問題が起きても対処できる余地は残っている。
日々を積み重ねながら時々、寒い冬の夜にマギーは、ニナやジーナ・エクルストンと肌を重ねもした。その際、徒弟のトリスは真っ赤になって離れている。トリスや隣人リリーは、メグの結婚式に感嘆を洩らしていた。いずれそのうち、良い相手が見つかるといいとも思う。それはそれとして、マギーちゃんはリリーによこしまな感情を抱いてもいたのだった。gff
穏やかな日差しのその日、マギーたちは、久しぶりに自宅の敷地でリリーと出会った。積もる話もあった。薪を焚きつつ、メグの結婚式の話や、ココが人を救った話などを行いながら、リリーが料理を作ってくれる。残念ながら、マギーの作れる料理と言ったら、具の大きなカレーとかシチューで、廃墟育ちのニナと来たら、茹でたジャガイモと焼いた肉で満足してしまう。当然に料理の腕は向上しない。
ジーナやトリスも生まれ育ちから、マギーやニナと似たり寄ったりで、猫耳のココに至っては、食べるだけだ。猫属に期待する方が間違っているのだろう。
自然、農村出のリリーが料理担当となり、リリーの分を含む食材を出すことで、作ってもらう流れができていた。
リリーちゃんが鍋に向かいながら、六人分の料理を作ってくれている。揺れるお尻を眺めながら、「早く食べたいなぁ、ぐふふ」お腹を減らしたマギーちゃんは舌なめずりしてしまう。
「なんや、随分とご機嫌やな」
「久しぶりにリリーと会えたからね。機嫌も良くなるってものさ」マギーは、笑顔をリリーに向ける。
寒い季節だ。人肌が恋しくなる季節でもある。時は殆んどの傷を癒し、忘れさせてくれる。リリーは素っ気ないけれど、優しい娘さんだ。不誠実な婚約者の裏切りに傷つけられた心がまだ痛むなら、慰めてあげたいとマギーは思うのだ。
都合のいい空想と理解しつつも、兎も角、久方ぶりの再会を祝おうとしていたマギーちゃんだが、招かれざる客が路地の曲がり角からのっそりと姿を見せる。
「……昼時くらいは遠慮してほしいのだがね」マギーは、『骨喰み』ジョージアを睨みつけた。
「爺さまが市民街区や門前の警備で相談あるから、後で来てくれって。伝言でな」頭をぼりぼりと掻きながら、「それにしても、随分といい匂いさせてるなぁ」鼻をひくひくと蠢かせて、ジョージアはうっとりとしていた。
「俺も飯は喰ってないんだよ」哀れっぽく訴えてくる大男。
「知らんがな」マギーは、犬を追い払うように、しっしっと手を振った。
「お前に食べさせる飯はねえ」
この時、言語化はできなかったものの、何故かマギーちゃんは既に、嫌な予感に襲われていた。必死に不吉の化身ジョージアを追い払おうとしてると
「ええやん。この人もお腹空かせてるみたいだし、冷えてるし」案の定、リリーが言い出した。行きずりの浮浪児におのれの食事まで与えてしまう娘だから、そういいだすのは予想済みだ。
「お金持ってるんだから、お店で買いなさいよ」マギーが指摘するも「越してきたばかりで店も分からんのよ」と情けない顔で言ってのける。
嘘だ。とマギーは見抜いた。
賞金稼ぎにとって入念に地形を下調べするのは、殆んど第二の天性である。
「なら、どうぞ」とリリーが席を示した。
「いや、歓迎されてないみたいだし」遠慮がちに言うジョージアだが、遠慮するくらいなら、最初からくるなとマギーは思う。
「どうせ、余るんだから」リリーが言って、「夜食ですぅ」マギーは訴えた。
するとリリーが腹を立てたように言った。
「なんで、そんな意地悪言うんや」マギーを睨むと、ジョージアに向かって「そんなら、うちのぶんから分けます。ね、食べてってください」
「それなら、ありがたく」ジョージアがいそいそと座った。
「リリーの手料理を夜も食べられると楽しみにしてたのに」
マギーは、ニナやジーナ・エクルストンに(なんか言ってよ)と目配せしてみるが、二人は面白くなってきたとニヤニヤしてるばかりだ。二人ともにマギーの恋人だが当然、他に恋人が増えるのを歓迎するはずもない。
ジョージアにまで食事を配って、リリーはなぜか、来訪者の隣に座った。
マギーが隣の席を空けてたのに。
大きな席には、ジョージアが座った。リリーは少し離れたその隣に座った。
不機嫌そうなマギーの隣、トマトと肉団子、チーズや野菜のシチューを描きこみながら、ジョージアがうなった。
「旨いな。おふくろの料理を思い出す」
「まあ、どちらの出で」とリリー。
「ペトランの田舎の方でね」懐かしそうに言う賞金稼ぎが皿の底をパンで拭った。
「話が弾んでるぅ?」マギーが呻いた。
ジョージアは、元賞金稼ぎです。社会の屑みたいな連中の集まりです。
信用してはいけませんよ?だから、信じるなら私だと思います。
支離滅裂な思考のマギーがスプーンを握った手を震わせてると、「恐くないのかね。こんな顔の男が」ジョージアが言い出した。
「あたしだって、こんな顔だし」リリーが変異獣にやられた眼帯の下を見せて、微笑んだ。
「す、すまん」と焦ったジョージア。
「旨いなぁ。 お前さんを嫁に貰える男は幸せもんだ」等と、牛乳が酸っぱくなりそうな顔に訳のわからない言葉を吐き散らしてると、如何な化学反応が起きたのか。リリーが顔を真っ赤にして俯いた。
「いい加減にしろ。ジョージア」立ち上がりかけたマギーの眼前。
はにかむリリー。五年の付き合いで、マギーには一度も向けたことが無い、輝くような笑顔を浮かべて「いややわぁ」と照れてた。
「ひゃあ」とマギーは腰を抜かした。
実際に漏れ出た声は、ふやぁ、だったかも知れないが、どうでもいい。
「ひゃあ、て」とニナが呟いて、ジーナ・エクルストンが爆笑し、トリスもうつむいてぶるぶると震えている。ココは、専用の皿を舐めている。
「信じられん……これは、きっと悪い夢だな」マギーは呟いた。
勿論、夢ではなかった。
※※※※
週に2~3日、マギーちゃんは刑務所に入っている。
勿論、囚人としてではない。臨時所長としてである。
看守長としての役割でもいい気がするが長年、きちんと務めてる看守長がいる。本人が融通が利かず、識見に欠けている、と自覚しており、昇進を拒んで、然るべき刑務所長を寄越してくれと市議会に要請していた。
ちょっとやそっとの辛い出来事があっても、仕事をするのが責任ある大人というものであるから、マギーちゃんも虚ろな表情をしつつ、刑務所の机でペンを動かしていた。ドラゴンが暴れたのが半月前でよかった。今のマギーちゃんは、集中力が皆無なので、ロシアンルーレットで脅かそうとしたら、六人くらい撃ち殺しそうだ。
「審査は通った。冬が明けたら、仮釈放となる」刑務所長マギーちゃんは、密造酒団の首魁を前に書類を眺めつつ、言い渡した。
頭目は大きくため息を漏らしている。
「身元引受人は、父親を亡くした農夫とその姉妹の家。作男が五人くらい必要だが、一か所にまとめて乗っ取られるのも恐いので、君一人だ。ただ、お手伝いの女性がいても許されるかもしれん」マギーちゃんは、相手が理解するのを待ってから言葉を続けた。
「君らが凶悪な犯罪には手を染めてない事。それなりに真面な人生を過ごしてきたことは調べた。
あんなに派手にやらかさなければ、気づかなかったか。或いは、これは大きな声で言うべきではないが、ささやかな商売なら、見逃された可能性も大きい」最後は声を潜めながら、相手を顔を鋭く見つめて告げた。
「いいかね。写真を含めた引受人の戸籍は市内に二重に保存されており、定期的に自警団員や民兵が見回っている。妙な真似をすれば、すぐに分かる。人々の信頼を裏切らないように」
「理解したよ、所長。感謝する」密造酒団の頭は、手錠を掛けられたまま、跪いて呻くように言った。
「似たような台詞を吐いて後日、襲ってきた奴もいる。
恩を返せとは言わない。ただ、君たちが切羽詰まらないように祈っておこう」ここで初めて、マギーは少しだけ苦笑を浮かべ、密造酒団を牢獄へと返した。
佇んでいると、傍らの独房で寝転んでいた戦争捕虜リジィが、半身を起こした。
女ランツクネヒトのリジィが漏らした他の町のエージェントの情報は正しく、マギーもそれなりに報いた。今、室内には余計な毛布が二枚。夜間用の炭団子が多めに差し入れられている。
約束を守る。幾らかは私費で。楽に過ごせている筈だ。
「なんで、あんたが手紙書いてるんだ、スネイクバイト。そんなんやっても給料変わらんのだろ?」そんなリジィが、尋ねてきた。
「全く給料が安すぎる」ぼやきつつも、マギーは肩をすくめる。
「誰かの怠惰の責で、誰かの人生が損なわれるのを幾度かは見た。
ちょっとした働きで。まあ、給料分は働いておきたい。できることがあるならな」
ふむん、と少し感心したように頬を撫でてから、釈放される日も近い女ランツクネヒトは、何か言いたげにマギーを眺める。
「なんかあったかね?スネイクバイト」と尋ねてくる。
マギーが少し驚いて見返すと、「いや、様子が変だったからな」と言った。
「……たいした事ではない。そう、本当に大した事ではないんだ」寂しげに呟いたマギーだが、本当に申し訳ないくらい全然、まるで大した事ではない。
とは言え、気づかれたのは、他人をよく観察しているのだろう。
リジィは「そんならいいんだが」と気にした様子ながらも、再び寝台へと寝転んだ。
苦笑を浮かべたマギーは、親切心を起こし、「何か困ってることはないか」と尋ねてみれば、女ランツクネヒトは、「本隊への連絡を取りたい」と言ってきた。
釈放後でいい。仲間と合流するのに手紙を出したいというので、戦争捕虜たちの家族や仲間宛ての手紙に入れてやろうと請け負った。大半の傭兵たちの徒党や家族は、自由都市ズールの代理人経由で連絡が取れる筈であった。
「ただし、少なくとも冬の間は無理だ。釈放されても冬明け直後。暫くは連絡がつくか分からない」と告げて「しばらくとどまっていても構わない」と付け加える。
「刑務所に?まさか」嫌そうに言うリジィ。
「保護施設としての役割もある。労役はあるが、飯と寝床はある。幾らかの日当も」マギーは説明した。
「或いは、他に仕事を探すにしても……」言いかけたところで「隊長、あたし。あたしも留まりたいです」隣の牢内から元スネイクバイト団員のヘザーが手を挙げながら、口を挟んできた。
「君たちも、容疑が容疑で終われば、いずれ釈放されるだろう」と穏やかな口調でヘザーを窘めるも、何故か収まる様子を見せない。
噛みつきそうな顔で、リジィを睨みつけると「ずるいですよ!なんで、そいつだけ!?」と唸ったヘザー。「ヘザー!うるさい!」と牢内の仲間から怒鳴られてる。
「あいつ、明らかにあんたを好き好きって感じじゃないかね?」リジィが言うも、
「好意を見捨てるのは何時も恐いな。
どう反転するかも予想もつかない」マギーは冷淡に鼻を鳴らした。
女ランツクネヒトは、マジマジとマギーの相貌を眺めてなにやら合点してた。
「あー、美形だもんね。あんたは。勝手に期待されて、勝手に失望されて」
流石にマギーも、苦笑を浮かべる。
かつてのヘザーは、マギーに力があるから従い、今、昔の情義で助けるように訴えてきた。
リジィは、敵として結構手強かった。マギーの考え方や人格に興味を示し、問答した。虜囚ではあるが、犯罪者ではない。戦争の捕虜。いずれは釈放される。
例え、立場が変わっても、関係は維持できる相手でもある。
ヘザーには悪いが、誰しも、唯々諾々と従う人間ではなく、おのれを理解しようとする相手の方に興味を抱くものだ。
同じ判断基準を持つ人間同士の状況を越えて関係を持つ交友は、大抵、末永く楽しめる。味方に変わっても、或いは、再び、敵として相対しても―――
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01月上旬_12385都市通貨
「……クリフ」とかリリーが小声で呟いて、
「クリフ?」マギーが首をかしげて訊ね返す。
「うん、クリストファーのことよ」はにかみながら、言った。
マギーちゃん ● 3分18秒 決まり手:WSS 〇 クリストファー・ジョージア
マギーちゃん選手、白目を剝いてます。
息をしてませんね。担架で運ばれて行きます。
これは大変なことになりましたよ。大丈夫でしょうか?