黄昏のガンダルヴァ   作:猫弾正

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03_77 無垢の足跡

 一月も中旬に差し掛かると、日中でも氷点下十度の日も珍しくない。

 数十年に一度の大寒波と言うのも嘘ではなさそうで、さらに夜中から明け方にかけては、氷点下二十度を下回る日もあった。

 

 例年なら、とうに簡易宿泊所に閉じこもってる時期だが、しかし、高級防寒具と言うのは凄いもので、もふもふの暖かな防寒具にゴーグルまでを着込んでいれば、こんな寒さでも案外、動けるものだ。

 

 市民街区でも、動き回ってる市民たちの大半が、もう少し着膨れしてる。これより劣るが、似たような防寒具を徒弟のトリスや部下のジーナ・エクルストンには買い与えている。要するに、労働者階級が市民たちより明白に良い防寒具を着ているのは、少し危険かな、とも危惧を覚えないでもないが、とは言え、マギーは服飾を扱っている行商人だから。と言う扱いで、辛うじて許容されたと見ていいだろうか。

 

 三年間で、百着以上は売ってきた。市民の好みの服を探して、販売した甲斐もあるというものだ。これで良質な装備を身に着けていても、危険視はされ難い、と思いたいものだが、油断は禁物であった。

 古代や中世、いや20世紀の国家ですら、地元民を脅かす程の富を蓄えた移民やよそ者は、得てして悲惨な末路を辿っており、そこに殆んど例外は存在しない。

 いや、移民が原住民を駆逐した場合のみは、例外となるだろうか。

 

 ポレシャ市は、比較的に寛容な土地とは言え、富裕層ほどに、交渉相手の衣服を鋭く値踏みするものであり、そこには、当然によそ者の行商人が持つ財産や伝手への警戒も含まれている。彼らの許容する閾値を見誤ってはならない。

 しかし、厚手の防寒服でも、あと何日を動けるかな、とも悩ましく思っている。

 気になるのは隣人リリーと猫耳ココだ。

 特にココは、世話をしなければ、あっという間に痩せてしまう。

 しかし、冬も残り一か月と半分。目を離しても、なんとかココも生き残れるのではないかと例え、願望混じりと自覚していても、マギーはそう思いたかった。

 

 

 

―――――

 

 

 

 保安官助手としてのマギーちゃんが門前町に赴いたのは、1月12日の午前9時であった。助手の助手としてジーナ・エクルストン。それにニナが鼻水を垂らしつつ、ついて来る。

 

 道中、ニナは連続でくしゃみをする。

「……休んでいてもいいのだよ」とマギーが心配するも、首を振って頑固そうについて来る。道中の経営してる数少ない喫茶店で暖かいレモネードを買い、度々、全員で腹を温めた。

 一キロもない道のりをゆっくりと歩いて、ひと気の殆んど見当たらない門前町へと足を踏み入れる。

 

 伝令に渡されたメモを見ながら訪れた目的地は、門前町でもやや奥まった一角。市民街区とも、北の中町からも離れたドーソン通りだった。北と西を防壁に囲まれた地所に漆喰と煉瓦造りの閑静な邸宅が佇んでいる。

「わぁ、綺麗な家。庭に花があるし、裏庭には芋や人参が作られてるね」ニナが感心したように視線を投げかけた。既に現場検証なのか。数人の保安官や民兵などが歩き回っていた。大手の強盗団や家畜窃盗団などが潰えた今、治安機関もいよいよ小粒の犯罪に対しても、人海戦術を取れるようになってきた。

 

 ドーソン通りは、かつて、ポレシャ市を安全な土地と見込んで、他所から越してきた富裕層とその子孫たちが住み着いた一帯だ。市民街区よりも大きく、そしてかなり古そうな邸宅が並んでいたが、最近の手入れはやや怠っているのか。漆喰がやや汚れている。百年前の先祖に比べて、やや経済的に凋落してるのかも知れない。それでも正規居住者の子孫には、居住権を割引で購入でき、邸宅もほぼ引き継がれるのだから、没落しきることもポレシャ市の税制では滅多にない。

 

 辺りの数軒の邸宅は、一軒一軒に敷地が広く、狭くない庭があり、花や野菜が育てられている。そして、なによりも肝心な事に壁と格子が高くて分厚く、頑丈で手入れを怠ってない。怪物たちに侵入されたとして、多分に屍者や巨大蟻の数匹くらいなら、持ちこらえられるし、中から攻撃もし易いよう窓の角度と位置も考えられて配置されていた。全ての家が閉じ籠れる小さな砦めいた作りを持ち、備えを設けている。

 

 邸宅の防御力自体は、市民区画の邸宅より高いかも知れない。市民たちの多くは、通りに面した廃屋をセメントやレンガで修繕した家屋だが、此方は二階建てで単独で攻撃に持ち堪えられるよう設計されていた。

 勿論、市民街区は、強力な民兵と保安官、防壁に守られており、加えて家々は屋上から相互に援助できるよう配置されている。

 

 要するに地区の全域が全体での防御思想に一貫されて配置されている市民地区に対して、軍隊も、防壁も頼れない、しかし、金と資材だけは何とか用意できた富裕な正規居住者の一団が、身を守るのに建てた邸宅の集まりが、この一角なのだとマギーは仲間たちと囁き合った。

 

 

「すると一帯、おそらく正規居住者でも、富裕な人々が暮らしてる地域かな?」寒そうに口に掌を当てながら、ジーナが囁いた。

「警備はいないのか」ニナが首を傾げると、近くにいた民兵の一人、コーンフィールドが口を挟んできた。

「まともな警備は金が掛かるっち。年寄ん夜警、見回らせるのと訳が違う」説明してくれる。

「市民みたいに町の仕組み、使える訳でもない」途端、近くにいた市民出の保安官助手に咳払いされて、コーンフィールドも言い直した。

「互いに信頼できる近所だけでもないんで、人を出し合うのも難しい」民兵の言葉に、マギーは頷いた。

 

 勿論、ポレシャは良い土地だ。当時は新参のよそ者たちが砦みたいな邸宅を購入した上、子々孫々が揃って住み続けているのだから、財産が不当に奪われたりしてない証左だろう。間違いなく良い町だが、それでも時に、マギーも息苦しさを感じる瞬間があった。

 

 何処の町や村であろうとも、都市にも、田園にも、濃淡の差はあれど差別や排他、不公平や行政的な冷淡さは蔓延っている。

 長年働いてやっと蓄えた富を理不尽に奪われる移民もいれば、逆に偏見が侵略者や乗っ取りとせめぎ合い、地元民を守る壁として働く状況も幾度となく見てきた。

 若干の不条理に息苦しさを感じつつも、防衛の為のコストと見做せるのは、土地に馴染みつつもあり、成功しつつあるよそ者と言う立場だからだろうか。

 

 

 ポレシャ市は、比較的に制度的な冷淡さは抑制されてる割に、安全性に侵略耐性なども考えて設計されており、よく機能している。今のところは。

 当然だが、移民も善良な人間ばかりではないし、住民と危険な侵入者の鬩ぎあいと軋轢は、ポレシャに限ったことでもない。

 住みやすい居留地を狙う側――必ずしも冒険者や略奪者、遊牧民や軍人に限らず、血を流さずに奪おうとする他所の町に都市、宗教家や商会、王侯。或いは民族・部族集団や血統なども絶えることはないし、本来の住人にせよ、首尾よく奪ったものにせよ、土地を得たものは、今度は自らがそうした侵略者と永遠に戦い続けなければならない。

 本来の住人と移民のどちらが正しくて、どちらが悪とは、マギーは言わない。

 ただ、誰もが考え抜き、死に物狂いで安住の地を得ようとしている。

 みんな恐くて、頭がいい。マギーも時々、恐過ぎて泣きたくなる。

 

 

 兎も角、そろそろ正規居住権を手に入れてもいいかも知れない。

 相当の大金が掛かるが、今のマギーなら手が届く範疇だ。

 そして、手に入れるなら、まずは己とニナの分。

 それから、ジーナ・Eとトリス。後はココだろうか。

 金で買える分、権利としては薄いが、代わりに付随する義務もさほど多くはない。

 なにより身分を買えば、参事会も、マギーに対して幾らかは安心するだろう。

 そう考えてから――(いや、して欲しいのだな)とマギーは願望が混じったと自己解析しつつ、自嘲の笑みを浮かべた。

 真面目に生きるにせよ、或いは、参事会と距離を取るにせよ――ともあれ、恭順と迎合の姿勢を示しておくのは、生存のために役に立つに違いない。

 

 

 

 現場には、保安官らと民兵の他、門前町の衛兵らも二、三人が手伝いに歩き回っていた。帯剣してる衛兵らのハーフプレートは、弱装弾の拳銃やマスケットなら、時に弾けたりもする。貫通する可能性も多分にあるが。

 何をしていいか分からない様子で指示を受けては、やや鈍臭く動き回ってるが、これは仕方ない一面もあった。鎧や剣、ハルバードも入り込んだ野犬や変異獣、時には屍者の爪や噛みつきに対処する為で、治安維持と見回り――そして怪物への対処が衛兵らの仕事だ。

 

 取り立てて無能ではない。人口密集地で至近に侵入する可能性がある野犬やコヨーテ、怪物相手に、装備も訓練も最適化されている。ただ、普段から定期ルーチンに従事して、調査には明確に不慣れだ。それでも呼ばれたのは、被害者の家族たちを相手させる為か。不安そうな女性や子供たち相手に、顔見知りの衛兵らが屈みこんで話を聞きこんでいる。

 

「銀のライター。親父の形見なんだ。取り返してくれ」被害者と思しき男性が訴えているが、難しいだろうな、とマギーは思った。

 窓の向こうの室内では、保安官補が二人。歩き回って指紋や手掛かりを探してるが、簡素な道具に、或いはルーペなど19世紀の器具が主なのは予算と伝手の制約によるものだ。武器と弾薬の補充に予算を回せば、どうしたって他が乏しくなる。

 

「例の怪盗事件?」近くにいた保安官補に聞くと苦い顔で「多分にぃ」とうなずいてきた。こうまで続くと、内部の犯行だって疑いたくもなる。実際、若干だが市民街区で空気がぎすぎすし始めているそうだ。

 

 現場で指揮を執ってるマクロード副保安官が、マギーたちを見つける。

「マギーが来た」と言って、近くの野外用コンロを差すと、お湯が焚かれ、湯気を立ててる偽コーヒーが乗っていた。寒さの厳しい時期には、有難い。

「寒い」ニナが言いながら、偽コーヒーのカップを手に取った。

 

「何かないか?」マクロード副保安官は、短兵急に尋ねてくる。

「足跡は?」マギーも偽コーヒーを飲みながら、首を傾げる。

「石畳にも、靴跡も残ってない」と渋い表情を浮かべた副保安官。

「昨日は吹雪だよ。痕跡残ってるかね」とマギーは首を振るう。

 そもそもがいつ盗まれたものか。被害者も気づいたら棚から無くなっていたと、甚だ頼りなげな証言しか与えてくれない。

 

 と、上を見上げるニナ。「屋根の雪が少し欠けてる」呟くと、ひょいと飛翔して、取っ掛かりを掴み、其の儘、するすると屋根に昇ってしまった。

 姿が見えなくなり、「三階の窓が開けられそう。開けていい?」と尋ねてくる。

「止めなさい。壊れると厄介だ。だが、内側から試してみよう!」マクロード副保安官が叫んだ。

「何度か雪も降ってるから、昨日より前かも」マギーが上司を見ると「気づいたのが今朝で、もっと早く入られていたかな」肯いたマクロード副保安官が考え込む。

 

 建物内の階段を音もなく降りてきたニナは、其の儘、侵入口と見做されていた窓から出てくる。ニナは登攀に関して、かなり厳しい鍛錬を維持している。

 廃墟育ちの少女でも結構、ギリギリだとなると……考え込むマギーだが。

「いや、複数人で、肩を貸したかも……」臙脂服のコートの男女が肩を貸して、登ってみせた。

「彼らは?」知らない顔が出入りしているのは滅多にないが、マクロード副保安官が教えてくれた。

「レンジャーだ。農村でも類似の事件が。

 盗まれた農民たちが雇い、合同調査となった」

 

 寒空の下、保安官補と民兵の大半は引き上げた。人海戦術でも怪しげな痕跡は見つからず、一部の法執行官は残留して近隣での聞き込みに回っている。

 被害者宅に招き入れてもらい、台所で偽コーヒーを啜りながら、マギーはポレシャ全域の地図を眺めた。現時点での被害は、門前町。或いは、市民街区でも警戒の薄い邸宅に集中しており、犬を飼っている家には入ってない。

「どうにも連中、市内の事情に詳しいな」マクロード副保安官が発言した。

「常に現金、或いは金目の小物を数点……今のところ、住人には手を出してないが」とマギーは呟いた。

「例によって、時々ですが浮浪者や廃墟生活者が入り込んで、ゴミを漁ることがあるそうだが……」保安官補の一人がメモを取り出した。

「被害者が言うには『ニックやケヴィンには無理だよ。爺さんだし。疑いたくないな』とのことです。長年の野外生活に身体もぼろぼろだし、三階から入れる身のこなしは難しい所だが……」

 

「そう言えば、猫耳も見たことがあると。六歳の娘さんの証言ですが、こちらもやはり、早朝にごみを漁ってたと」保安官補たちの言葉に「猫かね。市内にも何人か見掛けるが……」マクロード副保安官は頷いた。

 マギーが考え込んでると、階段の上からニナが呼ぶ声が聞こえた。

 三階へと上がると、階段に近い窓の部分。ニナは、途方に暮れたように佇んでいた。

 視線の先。窓の外側。破れた服の繊維だろうか。

 古い金属の掛け金に、白黒の布が多めに絡まっていた。

 マギーは手袋を付け、ビニール袋を取り出すと、ピンセットで採取を行う。

 窓枠の繊維を袋に入れたまま、マギーはしばらく動かなかった。

 どうにも見覚えがあった色合いだった。

 

 ――――

 

 

 

 自宅に戻ったマギーは、静かに物憂げな表情をしていた。

 昼飯や夕飯は五人、六人で賑やかに過ごすのが習慣になっているが、例え、無言でも穏やかに食事を楽しむものを、今日のマギーはただ静かに考え込んでいた。

 

 ジーナは陰気に沈黙し、ニナは深刻な表情を浮かべて、考え込んでいる。

 マギーが二人に二言、三言を語ると、大分、マシな雰囲気になったが、トリスは戸惑っていたが、マギーは微笑み、事情は語れないが心配はいらないと肯いた。

 

 多少の苛立ちや動揺を他人に見せるほどに、マギーは未熟な人物ではない。

 やがて、ココがやってきたので、マギーは抱きしめた。ココは抵抗せずにゴロゴロと喉を鳴らしていたが、マギーは猫耳少女の服に目を止め、袖口が切れてることについて尋ねた。

 白黒の服。マギーの与えた服。ココは首を傾げて、分からないと告げ、マギーは静かにうなずいてココの髪に鼻先を埋めた。

 

 

 

 ※※※※

 

 

 

 近隣の農村や農場でも、窃盗は発生していた。

 一人暮らしや夫婦、親子で2、3人などの家庭の留守を狙われたようで、当初は、気づかれない事例も多かった。どこかに紛れているのではないかとか、気の責ではないかと、恐らくは2年ほど前から、嵩張らない高価な小物が一点か、二点。

 

 腹を空かせた放浪者や旅人、巡礼などが農村のごみ箱を漁ったり、納屋を勝手に寝泊まりなんて出来事も、日常茶飯事ではある。よそ者と言えば、廃市街からやってくる浮浪者《ホーボー》たちもいる。時には鶏やら薪、やはり家財の窃盗事件も起こるとは言え、連中にもそれなりの掟や縄張りが存在しており大抵、十数年前から、同じ顔ぶれがやってきて滅多にトラブルを起こすものでもない。が、時には新参の徒党がやってきて、浮浪者同士の縄張り争いや暴力沙汰が起きることもある。

 

 

「浮浪者《ホーボー》……浮浪者《ホーボー》か」とマクロード副保安官は呟いた。

 時に軽い盗みを行うとはいえ、これまでは、あまりに当たり前の光景として見落としていた。だが、影で、より組織的な窃盗団が結成されていたとしたら?

 新たに危険な乞食王が生まれ、浮浪者たちを犯罪的に使役していたら?

 最終的なしっぺ返しを喰らう可能性が大きいとはいえ、浮浪者《ホーボー》たちの全員にその程度の想像力を期待するのは、間違っているかも知れない。

 

 ここ数年、巨大蟻襲撃の後始末と遊牧民との戦争で、廃市街に対する監視と諜報の目が緩んでいたのは確かだ。

 或いは、現時点では、少人数の異能者や変異者の仕業と言う線を重視すべきだろうか。漂白民や大道芸人の軽業師と言う可能性だってある。

 ニナは特級の危険領域で育った廃墟の民で、普通の廃墟生活者とは、生まれ持った技能が違う。しかし、同様の危険領域で育った廃墟の子が外の世界に出てきて、しかも、良識や常識を知らない可能性もあるのではないか?

 

 

 いずれにせよ、容疑者は数多いる一方、リソースは限られていた。

 窃盗犯の捜査には、近隣の農村や農場からレンジャーたちも加わっている。

 大型居留地のポレシャ市も、千人規模の共同体に過ぎない。市民層の最良リソースを生存の為、保安官と民兵に集約させる必要があって、門前町も、保安官と民兵隊に最良の人員を供出している。

 市民がおよそ四百人。古くからの正規居住者層が三百人、昔から繋がりが強い近郊の自作農や農場主と家族が四百人。およそ1200人から選ばれた上澄みが保安官であり、レンジャーであった。

 

 途方に暮れつつも、マクロード副保安官も幾つかは手を打っている。

 容疑の濃い廃墟の徒党からアリバイや金遣いなどを調査するが、犯行件数がそもそも少なく、犯行時刻も不鮮明であった。

 見かけた内から共通の徒党を洗い出そうにも、記憶も曖昧な部分が多い。

 

 そこで考え方を変えた。

 盗まれたと思しき品々の写真やスケッチを作成し、探偵を雇い入れる。

 名うての盗品探偵として知られており、盗品市場へと潜っている。

 買い戻すだけで逮捕はしない。だから、知ってるごく一部の故買商も阻害しない。

 

 自由都市ズールの盗品市に流れたと睨んだ通り、証拠品の噂と辛うじて物証をひとつだけは確保できた。

 残りはツァリオ市かも知れないが、そこまで手を伸ばす余力はない。

 その故買商と付き合いのある隊商や行商人を追いつつ、ポレシャ方面でも窃盗時期に近い、各行商や隊商の来訪時期と行き先を洗い出し、此方で売買された流れを追う。可能性としては家畜商や牧者、牧童なども往来はしているが、彼らはあまり市内には入らない。とは言え、一部牧者たちと窃盗組織が繋がっていた場合はお手上げだが、現時点では優先順位は低いとみて、留意とわずかな調査に抑えてある。

 

 気の遠くなるほど膨大、かつ、報われるかも分からない洗い出し作業を、マクロード副保安官と直属の班は根気強く、足とペンを使って続けていた。

 元賞金稼ぎの嗅覚から自由に犯人を追わせていた保安官助手マギーが尋ねてきたのは、十三日の昼頃。持ち込んだ繊維を、現場で見つかった繊維と同一のものか鑑定してほしいと申し出てきた。

 

 

 

 

―――――――――――

 

1月中旬_12630都市通貨

 

 

 ……マ、マギーちゃんを信じろ(震え声

 

 

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