黄昏のガンダルヴァ   作:猫弾正

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03_89О 6月20日Ⅵ バッカスの酒場

 廃市街とも外地区とも付かぬ一帯では、日がな一日をモンドの酒場で過ごす者たちがいる。麦とホップ、そして湖の水と炭団子や薪を持ち込めば、随分と安い値でエールと引き換えされる。通貨が不安定な土地の単なる物々交換ではない。エールの材料は、穀類となにかしらの薬草か香草。そして水であり、製造には火を用いて麦芽を乾燥させ、或いは煮沸する工程が存在している。廃墟民や浮浪者《ホーボー》には、中世よりの伝統的なエール作りの台所を蘇らせた眼帯にビヤ樽のごとき腹を持つ店主こそ、酒神バッカスの化身に違いないと崇拝しているものもいるほどだ。

 

 廃墟地帯の失われた図書館に忍び込んだ際、巣食った巨大な人食い猿に目を喰われながらも、秘められた造酒に関する書籍を持ち帰ったのだが、失われた知識を探求する冒険の過程で片目を捧げたるは、まさしく知恵を求める神々の探索に相応しいではないか、と。脳までアルコールが漬かった酒神の使徒たちは、街角でそうのたまって――もとい、霊感に突き動かされるままに布教を行っている。

 

 

 奥に位置するカウンターでは、二人のバーテンダーが樽の蛇口から直接にエールを注いでいた。特に濃厚なエールを詰めたバッカスの恵みの樽が入荷され、蛇口が取り付けられて開かれると、小さな鐘が鳴らされる。

「おれぁ、この一杯の為に生きてるぜ」言いながら、廃墟生活者がポケットから小銭に真鍮の空薬莢、ビタ銭とよれよれの紙幣を取り出し、引き換えに手持ちのカップにエールが注がれた。杯を傾けてから深々とため息を漏らし、毛布に座り込んで大事にそうに一口一口と味わっている。煤けたランプと、卓上に放られた割れかけの蝋燭の明かりが照らす中、細々とした商取引や、どこぞの一帯が危ういなど噂話を交わしているが、密輸商人やら牧者衆やらの、カウンター席の金を持っていそうな客層よりも不思議と穏やかに時を過ごしているように見えた。

 

 

 南方の湿原諸邦からやってきた痩せた男は「自由居留地圏は随分と良さそうなところじゃないの」と感慨を漏らした。

「パンとサーカスだよ」合流してきた褐色肌の娘が、「貴族の代わりに、金持ち商人が威張っているだけじゃないか」面白くもなさそうに鼻を鳴らした。会話を聞きながら、ジルカは口元に静かな笑みを浮かべた。ジルカたちとは別口に酒場を訪れ、近くに腰を降ろした――二人組の南方人たちは、既に色々と町を見て回っているようだ。

 

 痩せた土壌に水源も乏しい自由居留地圏は、それでも居留地同士で争わない仕組みを幾重と積み上げている。警備隊や傭兵隊同士の小競り合いや、各々が契約してる牧者衆、鉱夫団の縄張りを巡っての代理戦争はあっても市民軍同士の本格的な戦争は滅多に起きない。少なくとも、南方の平原諸邦よりも、小競り合いも戦もずっと少ない。

 

 自由居留地圏の各市(ブルグ)の主要な収入は商工業であり、隊商や行商人に拠る交易であり、街道から上がる通行料であって、例外はあるものの肥沃な穀倉を有する市は滅多にない上、いずれの市《ブルグ》も相応の防備を整えている。市民兵主体の市《ブルグ》軍では征服するにも難があり、強力な傭兵隊を他所から呼び込むのも躊躇われる。要するに、基本的には資源に乏しい自由居留地圏では、他国を征服しても利益が見合わないのだ。

 

 

 

 ※※※※

 

 

 

 戦乱の地に生まれたものは大抵、人生で一度は隣国について調べるものだ。ジルカも二十歳になるか、ならぬかの頃に近隣地方の諸事情について調べてみた。

 

 自由居留地圏には、確かに人々の間に、旧世界のような自由な生き方が許されていた。或いは、残されていたと言うべきか。まず、大抵の居留地で見ず知らずの他者を拉致して奴隷とする行為が違法とされている。親の作った借金や罪科が子に引き継がれることも公にはない。奴隷身分に対する殺害や無闇な暴力は司法によって裁かれるし、解放される道筋が機能してる。全ての人々が自由に街道を往来しており、戸籍の無い旅人や漂泊民を見かけても、殺して持ち物を奪われる真似は違法とされている。他の土地よりも、身分証を得やすい。大抵の町では、よほど度が過ぎなければ市長や大商人を悪く言ってもなんのお咎めもない。庶民でさえ、成り上がりの機会に恵まれている。他の土地では普通ではないことが、北の地では当たり前とされていた。

 

 ポレシャ市から少し南の村々でも、宵の刻。町門の前に入りそびれた旅人たちが三、四人たむろしていた。焚き火の明かりが木壁を照らし、親切な門兵が肩を竦めながらも湯を分けていた。湿原諸邦ではあまり見られない光景だが、確かに自由居留地圏では旅人たちに対して親切な文化が根付いている。自由居留地で意地の悪い衛兵が、湿原諸邦での平均的な衛兵に違いない。

 

 だけど、貧富の差は湿原諸邦よりもずっと大きい。西方の商業都市連盟《リーグ》ほどではないけれど、例えば自由都市ズールでは十余の豪商家の財産が千人の庶民を凌駕しているそうだ。殆んどの庶民の生活も、南方の農民ほどには安定してない。怪物――屍者の群れや変異獣に脅かされ、滅びる居留地も少なくない。そしてなにより厳しい冬。わずかに百里を隔てただけで、野外の桶の水が一晩で凍る程に冷え込み、吹雪が吹き荒れる長い冬が待ち受けている。変異獣や狼の群れが咆哮し、屍者が唸りを上げる曠野の長い夜。

 

 だから、一長一短――むしろ、湿原諸邦の方がまだ暮らしやすい。かつてのジルカはそう結論した。今でもそれほど間違っているとは思わない。だが今、貧民たちの集う酒場で、屈託なく笑う客たちの姿を見るに、若い娘であった時分に北へと移住していたら今頃、どんな暮らしをしていただろうかと空想を弄ぶ瞬間もあった。

 

 とは言え、ポレシャ市は、自由居留地圏でも比較的に暮らしやすい町と聞いている。そして今は春明の初夏。一年でもっとも暮らしやすい時期ならば、人々も自然、笑顔を浮かべよう。錯覚とまでは言わないが、苦しい時期を過ごす者は、時に隣の芝生が青く見えるものだ。自由居留地圏が必ずしも湿原諸邦より暮らしやすいと限った訳でもない。食い詰めた挙句に、曠野から逃れてくる難民や放浪者も少なくないのだから。

 

 

 ラジオからは、もの哀しげなバラードが流れてくる。気取ったクラシックなどより、この手の酒場に馴染んでいた。市の両替屋を訪れた時には、延々とゲーム音楽を流していたが、どういう趣味なのか。次は別の両替屋を使うとしよう。

 柱に寄り掛かったジルカは、くつろいだ姿勢のままに酒場の雰囲気を楽しんでいる。入口の方では、流しの楽士や踊り子が小金を持った鉱夫や牧者ら相手に舞を見せ、音楽を奏でている。中途、幾度となく客たちが入れ替わった。一、二時間で切り上げる者もいれば、朝っぱらから延々とエールを呑んではサイコロ賭博に興じたり、鼠肉の塩焼きをつまみにしながら、機嫌良さそうに鼻歌を歌っている親父もいた。

 

 

 いかにも金回りの悪そうな商人の一団が、奥の空いている座布団や毛布へと座り込むと、安いエール片手に取引相手のしわさを罵り始めた。見たところ、零細隊商の末端隊商員といったところか。遠来より持ち込んだ品を町商人たちに安く買い叩かれたと見えて、かなり荒れた雰囲気を漂わせていた。男の一人がジルカに目を止め、装飾品を見せながら口説いてきたが、連れである浅黒い肌の男が割り込んで鬱陶しい自慢話と口説きを遮ってくれた。

 

 

 昼時が近づくと炒った豆、或いは茹でた豆に塩を振った料理が注文され始める。表口の客が購うのが人参や蕪、キャベツの類の料理ならば、奥の客が口にする昼飯は、やはり豆に雑穀、米の粥は共通として、どこでも取れる茸の類。豚に鶏、巨大鼠に野犬の類。それに栗鼠や鼠など小動物の焼き肉と、茹でた野菜や酢漬けの付け合わせが土地の一般的な料理のようで、調理法も焼くか、茹でるかに塩と若干の酢を加えるばかり。

 南の土地で食されるパテやパイ、炙り肉に膨らんだ白パンと比べると、どうにも貧相で、美味そうには見えない。市民街区の食堂などに行けば、腸詰や羊の香草焼きもあるとは聞いているが、それにしても捜索が長引くようなら、どうしたって廃市街や外地区に滞在せざるをえないだろう。それでも、この単調で貧しさ曠野の食文化ばかりは、どうにもジルカには馴染めそうになかった。

 

 木製の皿から巨大鼠の肉を指でつまみ上げる。どうやら雑食の野生種を仕留め、其の儘、食肉にしたと見える。臭みは強いし、焼きすぎな上、内部には生焼けの部分が残っている。別に鼠肉だから、という訳でもない。南の湖沼地帯でもよく食べられている。ただ、湖沼地の野生種と廃墟領域のそれとでは食べているものが違う。肉の味も異なってくるのは仕方ないとしても、もう少しマシな調理法はあると思うのだ。

 だが、客たちは美味そうに平らげている。ちょいと金のありそうな労働者や、露天商。鍛冶職人の親方と見える屈強の壮年までが湯気を立てる大麦の粥をキャベツと人参の酢漬けと一緒に掻き込んでは、エールやビール、密造酒にどぶろくで喉を潤し、口元を拭っては満足げにげっぷを漏らす。

 

 

 昼飯時が過ぎ去って、しかし、夕暮れが迫る前に多くの客の席を立ち始めた。

 夜っぴて酒場で過ごしそうな者たちも見られるが、徒歩一時間ほどの自宅に帰るにしても、時間の余裕を見ておいた方がよい。

 

 廃市街の酒場で、あまり酔い過ぎるのも考えものだ。時折、足元が覚束ないほどにしたたか飲んだ酔客が消息を絶っては巨大鼠の巣窟で白骨が発見されたり、屍者の群れに混ざっている姿を見つけられる。明るいうちなら、クロスボウやマスケットを担いだ近所の男たちや勇敢な女が、家の近くまで送り届けてくれる。廃市街に暮らす者たちにとっては、酔客同士で連れ合って帰れるうちに帰路に付くのが長生きの秘訣だった。

 

 

 

 夕暮れの光の中、ポレシャの滞在中は、あまり食事には期待できそうにないなと考えながら、炒った豆をつまんでいたジルカの背後。

「お嬢」と柱の陰よりの呼びかけに、ペペが眠たげな眼を微かに細めた。

 いつの間にか、後ろの柱にフードの人影が寄り掛かっていた。

「もう一人が来たよ」ジルカが薄く微笑んだ。

 

「彼《ジョージア》は?」ジルカが世間話でもするように尋ねると「裏通りに入った。近所の棒手振に聞いたところ、そこは武器商人が住んでるそうだ」

「彼《ジョージア》が飼われてる?」と首を傾げるジルカに、柱の後ろで影が肯いた。

「そこまでは。武器商人と言っても、扱ってるのは火縄銃やクロスボウと言った農民向けの武器だが、品質はいいと。監視が厳しく、あまり接近は出来なかったよ」

「ふむん……あんたが?」ジルカは少しだけ驚いて尋ねなおした。

「近づける路地が限られた。向こうからは開けて見通しやすい構造。粗末な小屋だが、いい番犬を飼ってた。姿を消して一分足らずで踏み込んできた。カッツバルゲルを所持。装備からして、よく訓練されたランツクネヒトかな」と批評した。

 姿を消してから駆け付けるまで一分、確かに優秀な番犬だ。

 

「良く逃げれたね」ジルカが囁きかけると

「ドネーから預かった子を置いて、隣の部屋に伏せたところ、口で注意だけして立ち去った」フードの人物は淡々と説明してきた。

 乞食のドネーは、湖沼諸邦を根城とする乞食組合の古参で、裏社会の顔の一人でもあった。仕事の為、子供や女、老人などを貸し出すなど手広く『事業』を営んでいる。ジルカも度々、仕事に便利そうな人手を借りていたし、時にドネーを仲介として、紹介先の仕事を手伝うこともある。

「……それは、随分と優しい対応でなにより」ジルカが嘆息した。

 

 借りた子供とは言え、死なせては寝覚めが悪い。権力者の縄張りには、『念の為』で貧民など始末してしまう警備も幾らかは見られるのだ。

 件の武器商人は、いまだ、それだけの権力に至らないのか。それとも無闇な殺傷を嫌っているのか。粗末な小屋に暮らしていると言うから、多分に前者。いずれにしても、 迂闊に近づくのは危険なようだ。

 

 

 今回の任務――滅びた封土の姫君を捕らえる仕事にしても、標的には供回りもいれば護衛の兵も付いており、さらには名うての騎士までが雇われていたのだから、差し向けられた兵士のことごとくが返り討ちにあったのもなんら不思議はない。

 【雇い主】も、最初から赤泥のジルカを雇えばよかったものを。しかし、二万大陸通貨の大仕事ともなれば、仕掛ける側も自然、大掛かりとならざるを得ない。ポレシャ市の防諜や民警も、まんざらの無能ではあるまいし、いずれ嗅ぎ付けてくるとしても、序盤で躓くのだけは避けておきたかった。

 

「彼《ジョージア》が武器商人を訪ねて、なにかを話し込んだ後、件の商人は護衛と徒弟たちを連れて出ていった。しばらくして留守宅で昼食をご馳走になった彼《ジョージア》も別行動に。迷ったが……」フードの説明に「ちょっと待って?武器商は女?」とジルカが口を挟んだ。

「妙齢の女性」と答えを聞いて、ジルカは不機嫌そうに小さく唸り、浅黒い肌の男が低く笑った。

 

 

 表口からは流れの楽士の歌や曲。奥ではラジオのバラードが流れる中、ため息をついたジルカは気を取り直し「で、それから?」と尋ねる。

「迷ったが、彼《ジョージア》を追った。市民街区の議事堂へと入り込んだが、議会衛兵だそうなのでおかしくはない」フードは囁いた。

「或いは、上司に状況を報告したかね」浅黒い肌の男が考えながら、告げる。

「もしかしたら、件の武器商人がお姫さまへの連絡を請け負ったかな?

「だとすれば、武器商人を追うべきだったか」揺れるフードを慰めるように「いいさ。初日だもの」とジルカは呟いてほほ笑んだ。

「それにしても……友は昔の友ならず、か。

 議会衛兵になってたのは、驚きだけどね」

 

 

 ジョージアの現況は、地区の検問を兼ねた出入口で色々と聞かされた。自警団のトムは人懐こい笑顔に噂好きの青年で、ジルカが古い友人だと関係を匂わせてみれば、それだけで随分とお喋りしてくれた。比較的、最近にポレシャ市に移り住んできてすぐに凶悪な犯罪者を捕縛したとか、老ジャッコーニの推薦で議会衛兵の地位に就いた。あとは、地区でも評判の佳人と割りない仲になりつつあるそうで、二十代から三十代の独身男たち――中には、既婚者からも多少の嫉妬を向けられている。

「いい暮らしをしてるようでなにより……ただ、彼《ジョージア》が敵だと色々とやりにくいね」ジルカが笑ったのか、苦い息を吐いたのかは他の者には見えなかったようだ。

 

 窓から差し込む夕暮れの淡い光の下、店員たちが蝋燭や松明を付けて回り出した。 ジルカが改めて『荷運びのペペ』へと正面から視線を向けた。

「質問は二つ」ジルカが星座の描かれたカードを差し出すと、ペペはそのうち二枚を受け取り、それから首を傾けて囁くようにか細い声でしゃべり始めた。

「該当する亡命者一行は、掴んでいない。有力市民の邸宅や隊商の店舗を亡命者一行が訪れたと言う話は、今のところは耳に入ってない」

 

「確かかね?」と浅黒い肌の男が確認するも、頷いたペペは淡々と続けた。

「鉱夫団の拠点や富農の邸宅にしろ、似たようなものさ。召使ってのはお喋りが大好きで、秘密を抱え込むことを我慢できない。放浪の姫君なんてお話は特に大好物だ。十人で逃げ込んでくれば噂にもなるし、何時までも隠し通せるものでもない」

 例外はあるにしろ、確かに下位の召使と言うものは事情通であると同時に大抵、お喋りを日々の楽しみにしているものだ。

「そうかい」考え込んでいるジルカに、浅黒い肌の男は懐疑的な視線を向けた。

「そもそも、お姫さまは本当にポレシャ市に逃げ込んだのかね?」

「今さら、疑うのかい」肩を竦めたジルカが言葉を続けた。

「ガルダ領主(ロード・オブ・ガルダ)、白髭のベリル卿(サー・ベリル)は、ポレシャ市と長く取引していた。

 自由居留地圏に逃げ込んだなら、行き先はポレシャ市以外にあるまいよ」

 

 ジルカの断言に対して、浅黒い肌の男が眉を顰めた。

「決めつけるのは危険だぜ。でかいヤマだ。

 報酬も多いが、しくじれば命が危うい」窘めるような慎重な口ぶりで告げる。

「確かに、姫さまがポレシャ市で足を止めたとは限らない」渋々と認めつつも、ジルカは反論を試みた。

「だけど、途中までの足取りは、どうしたってポレシャを目指しているとしか思えない」地図を眺めながら、幾度となく確信した方針をジルカは口にした。

「追われる者の足取りなんぞ、当てにできるものでもないぜ。他の追手連中には大陸行路や、蒼月の砂漠へと向かった奴もいる」浅黒い肌の男の言い分に、ジルカは優しく微笑んで頷いた。

「確かに、仮定に仮定を重ねている。あんたもそうしたいなら、そうしな。止めはしないよ」穏やかに告げたジルカは片膝を抱えて、冷たい目で浅黒い肌の男を眺めた。

「お嬢が心配なんだよ、俺は。付き合うさ」浅黒い肌の男が嘆息しつつ言うと「なら、ぐちぐち言うんじゃないよ。どっちみち、何処かに賭けなきゃならないんだからね」ジルカはぴしゃりと決めつけた。

 

「二つ目の質問だけど……」落ち着きを取り戻したジルカが尋ねると、ペペは頷き、女武器商人の正体について知る限りを語った。

「スネイクバイトだ」悪名高い賞金稼ぎギルドの名を口にする。

「ああ、曠野地方の女賞金稼ぎたちか」浅黒い肌の男が眉をひそめる。

「湿原諸邦でもたまに見かけるよ。殺しの腕だけは立つ厭らしい蛇どもさ。なにが面白いのか、女同士で乳繰り合ってやがる」ジルカが吐き捨てるように言った。

『蛇』とは、身体のどこかに竜や蛇の入れ墨を刻んでいるスネイクバイトたちを揶揄しての俗称だ。

 

 赤泥のジルカは賞金稼ぎであると同時に、幾つかの土地では賞金首でもある。賞金稼ぎや護衛を兼ねるスネイクバイトらに狙われた経験も一度や二度では効かない。

「手強い奴らだが、その一人か」浅黒い肌の男が舌打ちすると「二つ名持ちのひとりだ。ウロボロス。スネイクバイトの最古の一人。侮らない方がいい」

 ペペの忠告に対し「ふぅん。大層な名前だ」ジルカは、深い笑みを口元に浮かべた。

「なんとも、面白くなってきたじゃない」

「お嬢の悪い癖だ」浅黒い肌の男は、夕暮れの茜色に染まりつつある天井を仰いだ。

 

 

 

―――――

 03_89Nの判定

 

 リジィ 1D100_73-15

 フード 1D100_13   低い方

 

 

 英語に、都市と町の中間の市を示す単語が見つからなかったです。歴史的に自治都市の多い大陸――フランスにはあったので、ブーグ(Bourg)そちらから借りました。

 

 ドイツ語のお城――ブルク(Burg)に似てますが、両方ともラテン語の砦・城塞(burgus)から来てるそうです。でも、AIにまた聞きしただけで裏取りもしてないので、この知識が間違ってたらAIの責です。

 

 

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