黄昏のガンダルヴァ   作:猫弾正

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03_90R 空腹の話

 職人が馬車の幅を測り、持ち込んだ木の棒を削っていた。取りあえず、間に合わせの木の車軸をその場で仕立てて後日、サイズの合った鉄の車軸へと交換するのだ。

 ちなみに共通規格の必要が薄れている為、身体尺であるヤードとポンドが復権している。幾ら掛かるか分からず、団長は戦々恐々としているが、ポレシャ市の職人たちは見積書を出してくれるので安心である。(土地によっては口約束だけ交わした後に、流れ者とみるや水増しして吹っかけてくる職人もいる‼)

 恐ろしく手際が良い職人たちの背後では、置かれた鍋で獣脂が煮られている。鉄製の車軸にしろ、木製の車軸にしろ、油を差さなければ、摩擦によって軋み、熱が発生して傷んでしまう。機械油が無ければ、獣脂の出番だ。

 

 ところで獣脂やラードは、貴重なカロリーになる。熱々のスープに入れれば、とろみがついて身体も温かくなる有難い代物だ。特に冬などには、保存食料として重宝される。旅芸人一座の雑用の子供など、いつも腹を空かせている。

 食用ではなく、古くなった獣脂ではあるが、一人の子供が近寄ってさりげなくパンに獣脂を塗りつけた。それから物陰に行くと指で塗り伸ばし。がつがつと水筒の水で流し込み、涙を零しながら食べ続ける。

 

 一人が上手くやると他の子供も動き出すが、もう職人も警戒している。フラフラと鍋に歩み寄った犬耳の子の尻を、一座の老芸人が柳の鞭でピシリと打った。犬耳の子は、キャンキャンと鳴きながら離れていった。

 

 親方マギーとジーナ・エクルストンが立ち去った後も、職人仕事の見物に残っていた徒弟トリスと猫耳ココだが、久しぶりに空腹と言うのがどんなものかを思い出していた。腹の皮が背にくっ付きそうな惨めさと恐怖の入り混じったあの感覚。今は日中、ほぼいつでも敷地の何処かにパンやスープがある生活をしてるので、つい忘れそうになるが、ひと昔前は、そして今でも大半の人間は、飢えと隣り合わせの生活を送っている。

 

 一座の雑用係たちは、幌馬車から取り出した天幕を組み立てている。木箱から天幕を取り出し、毛布を敷くと借り受けた空き地へと広げている。荷を運んでいる子がいた。巻き毛で山羊の角と耳。目は山羊のように瞳孔が横に割れている。質素な貫頭衣からして雑用係だろう。文明の最盛期、人が愛護用として作り出したとか、軍用の試作品だとか、色々言われている猫耳だが、獣人めいた山羊も一種なのか。

 

 巨大な蜘蛛のところへ飼料を運んでいた山羊角ちゃんも腹を空かせているのだろうか。干し草をひと掴み手に取ると、口に運んだ。もっしゃもっしゃと咀嚼しながら、メェー、と鳴いた。

「美味しいのかしらん?」徒弟トリスが猫耳ココに囁くと、巻き毛の山羊角ちゃんは振り返って「不味いに決まってるよ」

「お腹空いてるから仕方ないのよ」と愚痴りながら、山羊角ちゃんは干し草を整えている。

「腹の足しにはなる。消化できるだけ。林檎食べたい」

 

 猫耳ココが肩掛け鞄から、青い小ぶりな林檎を取り出した。

 ナイフで半分に切ると「にゃー」と放って渡す。「あ、ありがと」林檎を掴んだ山羊角ちゃんが齧り付こうとしたとき、「やめろ!」横合いから別の雑用係の少年が飛んできて林檎を叩き落した。「お情けは沢山だ!」向き直って叫んだ少年は働きやすい服に平坦な体つき、実際の性別もよく分からない。

 

「え?いや。それなりの理屈やトラウマがあるかも知れんけど。林檎……決めるのは山羊角ちゃんだよね」と戸惑いを少し見せつつ、徒弟トリスは言った。

「そうだよ」山羊角ちゃんは林檎を拾って袖で拭くと、土の付いた切り口を悲しげに見つめてから、皮から被り付いた。

「土の付いた部分、削るよ」と手を出すと、ててっと歩み寄って、齧った林檎を手渡してきたので、汚れた切り口だけをナイフで削った。切った部分を拾い上げた山羊角ちゃんは、林檎を齧りながら、汚れた方を払って驢馬の方へ持っていった。気づいたが、山羊角ちゃんの足先は蹄になっていた。なのに手は人間と同じ五指である。

 

「だって、あんまりにも惨めじゃないか」雑用の少年の言い分に、山羊角ちゃんは首を傾げてメェーと鳴いた。

 何かしら、あったらしい。それは分かる。でも山羊角ちゃんは相手にせずに林檎を食べ終わる。猫耳ココも林檎を齧り、徒弟トリスは小さなサンドイッチを取り出した。

 職人の仕事ぶりを淡々と眺めながら、車軸の外付けを外して、太さを合わせて削り、きっちりと嵌めて獣脂を塗る作業を眺め、おー、だの、へぇ、だの感嘆の言葉を洩らし続けている。若い職工が照れたように鼻を掻いた。雑用の少年が少しだけ暗い眼差しを若い職工に向けつつ、無言で立ち去っていくのを、職人たちも含めて皆無言で見送った。

 

 なにかしら、おのれの境遇に思う所があるのか。簡単に転職も出来なければ、仕事だって見つかりにくい世の中だ。徒弟トリスも、猫耳ココも、誰もが生きるのに理不尽な体験の一度や二度はしているけれど、それだけに日常的に鬱屈を抱えてる者を理解できるとは言わない。迂闊に触れないのが、ここはかえって優しさなのだ。

 

「面白い?」と山羊角ちゃんが尋ねてくる。

「にゃー」と猫耳ココ。

「商売のタネになるかも。色々、勉強になる」トリスは、んふーと鼻息を洩らした。目の前で、職工が見事に一発で車軸に車輪のサイズを合わせて見せたのだ。

 ほぇー、と目を瞬いている山羊角ちゃんに「行商人の徒弟だから」と言ってから、トリスは、胸に手を当てた。

「わたしはトリス。こちらはココ」

「にゃー」と猫耳ココ。

 

「ルー。一座の見習いで、もうじき一人前、らしい」と貫頭衣の山羊角――ルーが言った。「同行させてもらってるとも言う」と付け加えてきた。

 徒弟トリスは、首を傾げた。山羊娘ルーの貫頭衣は、下働きにしても粗末に過ぎたからだ。

「この服は、一座で働いて食事を貰ってるけど、良い服なり食事はお金を払わないといけない」ルーが言った。

「まだ、稼げないと?」トリスが質問すると「うーむ。んめぇー」悩んだルーだが、途中で欠伸をする。

「そう、稼げないの。ずっと雑用」山羊角ルーが、んふふと笑った。

「きっと、稼げるよぉ」近くで荷物を運んでいたお姉さん芸人がルーの頬に触れつつ、怪しげに囁いた。

「そのうち……そのうちにねぇ」応えたルーが「メぇー」と鳴いた。

 トリスと猫耳ココは、そっと目配せした。姉さん芸人は、胸の谷間が見えるドレスを着ている。示唆する稼ぎも、なんとはなく見当がついた。多分、春を売るのだ。

 

 ポレシャ市は、仕事の口が多い大きな居留地ではあるが、それにしたって流れ者が定職に有り付いたり、割のいい仕事で稼ぐのは難しい。いずれ出ていくのが確定しているなら、なおさらだ。雇い主の農場主や親方たちだって土地に腰を据えた働き手を探している。旅人の若い娘がすぐ稼げるとなると、どうしたって仕事は限られてくる。

 

 人類最古の職業・娼婦であるが、小遣い稼ぎならともかく、楽な仕事でもあるまいとトリスも思っている。トリスは乙女なのでよく知らんけど。体感だと市内の花売り娘の三人から四人に一人は、春をひさいでいる。残りの三分の一は薬草や雑貨、手当などに詳しく、残りの三分の一は、花束を綺麗にリボン巻いて飾り付けながら長持ちさせたり、種や野菜、家庭菜園などにも詳しい。混合している層もあれば、純粋技能で食べている者たちもいる。

 

 金と引き換えに客を取る層は、既に形成されている。酒場二階の居心地のいい部屋の高めの娼婦。石鹸で身体を洗って清潔を保ち、おのれの部屋に客を招く女――女性を相手にするハンサムな男性や少年もいるそうだ。門前町や中町は、店や部屋が多く、街角に立つ女は、町外れ地区だけでなく、外地区や廃市街にもいる。商売ついでに小遣いを稼ぐ娘。あと、普通に男好きや女好きの者たちもいて、相手がお気に召せば、デートの後に懇ろになれるそうだ。

 

 二千から三千もの人が暮らすポレシャ圏である。若者を相手にしてくれる後家もいれば、農村地帯にもそういう娘はいるし、娼婦の集まった通りもあると噂は耳にしている。これは男だけの秘密らしく、徒弟トリスも猫耳ココも場所は知らない。

 正直、真っ当な商売を行っている親方と生活を一緒にしているうち、徒弟のトリスもココも色事の類には疎くなっていた。鼠が取れる地区やら、野菜の見つかる一帯、屍者が入り込んで危険な通りは知ってるが、男女関係に興味を抱く前に廃市街から巣立ってしまった。昔の知り合いとの縁も大半を切っている。興味を持たない層の知識は、中々に入ってこないものだ。

 

「あたしも、そのうち町に立つんで……」ルーが巻き毛を揺らした。

 難しい言葉にトリスは頬を撫でた。

 悩んだ末に――沈黙しても良かったのだが「やりたくないんっすか?」と尋ねた。昔の言葉遣いに戻っていた。

「誰だって口を糊せんと……」小さな角に触れながら、ルーが言う。猫耳ココは傍らで大きな欠伸をしていた。人の心がないんかな、こいつ、とトリスは思った。

 先刻の少年か少女かは、ルーの境遇に憤懣を抱いていたのだろうか。

「親方が、酒場で女の子を口説いたけど、断られたのは知っているにゃあ」猫耳ココの突然の言葉に、ルーが噴き出した。徒弟トリスもクスクスと笑った。勿論、親方を尊敬し、感謝しているが、それはそれ。完璧人間とは思ってない。

 

 それから地面に座って、職人たちの仕事を見続ける。互いの仕事の話などをポツポツとしてみる。山羊角のルーは、芸人としてはまだ半人前だが、ジャグリングを披露するらしい。今は四つのボールを操ることを練習しているそうで、まず四つからがお捻りを貰えるようになる境界だそうだ。

 祭りの後も、しばらくはポレシャ市に留まるそうだ。町の人々が一座の曲芸に飽きるまでは、空き地を拠点に各地区や農村をドサ回りして稼ぐつもりのようだ。

 

 仕事の口でもないかと聞かれたので、門前町のお店での清掃の仕事などは紹介できるとトリスは告げた。煙突掃除夫の口もあるが、肺を病むものが多い厳しい仕事で、酒場での給仕も酔客に絡まれやすい。小柄で可愛らしい山羊角の少女には難しそうにも思えるが、春をひさぐよりはマシかも知れない。そもそも娼婦でどれほどに稼げるかも不明だった。銀貨が必要な高めの娼婦から、ビタ銭で新聞紙の上に寝転ぶ娼婦まで供給は埋まっている。とは言え、ポレシャ市は大きな町だ。他所からやってきた若い娘たちに興味を示すに違いないおっさんや若者たちだっている。

 

 町について、旅について、しばらく雑談を重ねて、帰り支度を始めた職人たちが引き上げるのに合わせて「それじゃ、帰るかな」と徒弟トリスと猫耳ココも立ち上がった。「またね」巻き毛のルーが首を傾げたので、手を振って別れを告げると空き地を後にした。

 街路をぷらぷらと歩きながら「祭りの前に、ゴムが売れた訳かー」とトリス。「祭りが終わったら、抗生物質が売れるにゃー」猫耳ココが囁いてきた。

 

 

 

 ※※※※

 

 

 

 19世紀より以前、人類はしばしば飢餓に苛まされていた。此処で言う【飢餓】とは、個人の飢えでは無い。起きると地域が丸ごと死に絶えるほどの食料不足だ。

 猛威を振るった飢餓の脅威が軽減されたのは、無線や連絡網の整備に船舶や鉄道など大規模輸送の発達。中央集権型の国民国家誕生による国家規模での物流の成立など諸々の条件を前提として、初めて人類は食料不足に脅かされず、少なくとも当時の先進国で万単位の死者を出すことは無くなった。

 

 つまり、巨大な物流と生産力が消え、他所の居留地との連絡も途絶えがちになり、統一された通貨が消えた黄昏の時代。再び飢餓が人々を脅かし始めていた。

 領域国家や都市、大型居留地などにおいては、残された統計や予備、備蓄の概念が僅かに脅威を軽減するも不作や凶作、戦乱や略奪で衰退――或いは、住人が逃散した中規模の居留地や惣村、小集落や部落、村落が数えきれないほどに地図から永遠に消えていた。

 

 

 曠野東部地方の一角を占めるポレシャ圏は、ポレシャ市を中心としたかなり広大な領域だが、実際のところ、ポレシャ市に忠実な居留地となると、外地区と近隣農村部を除くと、若干の集落くらいだろう。ポレシャ市を中心として交易を行い、物価と物流と保証し合い、緩い連帯と野盗に脅かされた時の警備隊の派遣。交易・治安・相互扶助で繋がった緩い経済圏がポレシャ圏である。点在する居留地のうちには、当然に独立独歩の共同体が少なくない。

 

 曠野の日常的な脅威である屍者や変異獣。寒冷地の大型狼。それに近年、大地に蔓延っている巨大蟻に加えて去年、一昨年の恐ろしい冷害によって破綻した村は少なくない。ポレシャ市にしてからが去年の冬は辛うじて殆んど死者を出さずに持ち堪えたものの、薪と食料の備蓄は殆んど払底しかけた。

 

 もともとポレシャ市を盟主とする緩やかな同盟と不仲であったり、没交渉であった共同体のうちには、二年連続の寒波をなんとか生き延びたものの、今年に入ってから廃村や遺棄された村も少なくない。隊商の往路から外れている為、他所から食料を仕入れたり、失われた家畜を補充するのが困難で、存続するに最低限必要な人数を割り込んでしまった農場もいくつもあった。そうして生まれ故郷から流れ出た人々は、渡り人(オーキー)や浮浪者《ホーボー》となったり、人狩りに捕まったり、一部の人は自らを売って奴隷になったり、或いは大きな町に流れ込んでいた。

 

 

 町外れ地区は、路傍の狭い路地や廃墟に見慣れぬ浮浪者《ホーボー》や渡り人(オーキー)たちが屯っていた。瓦礫に腰掛け、先行きの不安ゆえか、落ち窪んだ昏い眼差しで道行く人々をじっと見上げている。妙な話だが、地元の浮浪者《ホーボー》や廃墟生活者を思しき者たちのほうが、貧しい身なりなのに楽しげな表情で道を歩いている。

 

 幾らポレシャ市が大きな町と言っても、一つの地区に数十人が家族を養える仕事の余剰はない。十人や二十人の仕事は見つかっても、良い仕事は地元民が優先で、家族を養うには賃金が足りない半端仕事も多い。 痩せた子供を抱きしめ、手を握っている父親がいる。夏至の夏祭りなのに肌寒さを感じたのか。「……お父ちゃん」子供が大きく身震いした。「ここにいる。父ちゃんは此処にいるぞ」涙が膝に零れ落ちて、薄くなったジーンズの生地に滲んだ。

 

 道を歩いていた男女が立ち止まった。渡り人(オーキー)だろうか。平凡な顔立ちに粗末な服装の若い女は、しゃがみ込んだ。

「あんたの子かい?」女の問いかけに頷いた父親が、慄いたような祈るような表情で見上げてきた。「……人買いか?」

 

「なら、むしろ良かったんだろうけどね」ポケットを探った女は、数枚の銅貨と爪ほどの薄い銀貨を父親の手にそっと握らせた。周囲からは見えないよう屈みこみながら「外地区や農村の方がまだ仕事はあるよ」囁きかける。

 外地区は、時に廃墟帯からの屍者や変異獣が紛れ込んでくる。そして農村の仕事では、喰い繋ぐのもやっとだろう。父親が一瞬だけ躊躇い、しかし肯いた。

「ありがとう」女の掌を振るえる手で掴み、拝むように頭を下げてから子を抱きかかえて歩き出した。

 

「ポレシャも聞いていた程には、いい所じゃなさそうだね」皮肉っぽい口調で言いながら、女は道の中央を歩き出した。物陰でこちらの様子を窺っている放浪者が幾人かいた。

「去年一昨年の冷害で、外から流れ込んできた連中さ。例年よりずっと多い」と連れの男が告げた。背は低いががっしりした体形で、地を踏みしめるように一歩一歩を歩いている。

「なるほどね。何処も変わらないって事か。北も、南も……」女の言に「そうさ。何処も変わらない。なにも……だから、あまり目立つような真似をせんでくれ」男が女を眺め、なにかを言いかけて口を閉じた。

 

「普段、あんたを何と呼べばいい? 」本名を呼ぶ訳にはいかなかった。女は有名人だからだ。

「そうだね。あんたの好きな名前で呼んでいいよ。アンナでも、ディアナでも。

 暫くは一緒にいるんだからさ」女は笑いながら「仕事も探さないとね。水運びなんかいいかもね」と告げた。

 

「仕事……かの赤泥が下町で水汲みか」囁くような声で呟きつつ、男が面白そうに女を眺めると「おかしいかい?あたしだって子供の頃はあったさ」

「おかしくない。それでこそだ」男は頷いてから、補足するように告げた。

「だが、賃金は身分証のあるなしで随分と変わる。それにギルドの伝手もあった方がいいな」

 

「両方、大丈夫さ。紹介状の伝手もある。書いてもらうさ」女の言葉に男は首を振った。

「おっと、それ以上は聞かせないでくれ。万が一、俺が捕まった時、余計なことは知ってない方がいい」陰気な表情に笑みを浮かべつつ、感心したように告げる。

「だが、呼び名をなんでも良いとはね」

「二つ名なんて、どうでもいいさ」女が心底どうでもよさそうに遠くを眺めて呟いた。

「あたしからしたら、ウロボロスだの、ポレシャの剣だの名乗って、目立ちたがる連中の方が頭がどうかしてるよ。ウロボロスだって……中二病かい」鼻で笑う女が肩を竦めた。

「でかい入れ墨なんかいれてるそうで。正体を触れ回ってるようなもんだ」嘲笑を浮かべる女を男は窘めた。

「一部の傭兵や賞金稼ぎ。武人気取りの連中にとっては、おのれの名を知らしめてこそ意味があるんだろう。確かに馬鹿みたいに思えるが、それを敢えてして生き残ってる連中は舐めない方がいい。不利な条件を背負って、生き延びてきたんだからな」

 

 

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