運命は札に宿り、
選択は指に宿る。
人は祈り、
神は見通す。
一枚は希望。
二枚は欲望。
三枚目は■■。
■■
人も神も二十■■一を夢見て、
自ら破滅の境■■界へと近づく。
■■
■■
奈落
───────────────
ウッドが口にした「ブラックジャック」という未知の響き。イマリは興味を隠しきれず、卓へと身を乗り出した。
「早速、ブラックジャックの遊び方を説明するぜ、耳をかっぽじって良ぉく聞きやがれ!」
先ほどまで畳に広げられていた花札は、いつの間にか脇へと片付けられている。代わりに座卓の上に置かれたのは、ウッドが懐から取り出した、52枚のカードの束だった。艶やかな紙の感触に加えて、4つのスート、数字、人物が描かれた見知らぬ絵柄の数々。イマリはその一枚を指先でつまみ上げ、しげしげと眺めている。
「引いたカードの合計が21に近い方が勝ちだ。超えたらバースト。その時点で負け。運だけじゃなく、引き際を読む遊戯だァ」
ヒット、バースト、スタンド。聞き慣れない単語が、ぽんぽんとテンポよくウッドの口から飛び出してくる。イマリの瞳は、その一つ一つを逃すまいとするように、好奇心で爛々と輝いていた。
狸の尻尾が楽しげに揺れる。遊戯の神としての本能が、未知のルールを瞬時に理解しようと働きかけているのかもしれない。乾いた音を立てるカードの手触りさえも、花札とは違う新鮮さとして、彼女の指先に伝わっているようだった。
「なるほど!21に近づけるんだね!花札とは全然ちがうけど、面白そう!」
声が弾み、小さな拳がぎゅっと握られる。
「勝利条件は……先に20勝した方の勝ちって事にするかァ!」
「あとは遊びながら覚えな。先行はテメェに譲ってやるぜ!一枚目のカードだけは裏側表示で伏せて、自分だけがその数字が分かるってわけよ」
ウッドが二枚のカードを双方に配る。しゃっ、しゃっ、と軽い音を立てて、四枚のカードが座卓に滑った。イマリの視線は、その指先から一瞬も離れない。
配られた二枚のうち、一枚目の裏側のカードをそっと持ち上げて確かめる。彼女の引いたカードは7と3。21への境界線はまだ遠い。
「引くか、止めるかを選びなァ!」
ウッドの気合に満ちた声が響く。イマリは手の中のカードとにらめっこをした。眉根を寄せ、唇を小さく尖らせながら、頭の中で勝利への方程式を組み立てていく。
「なら……もう一枚引く!」
勢いよく宣言し、めくられたカードは8。合計は──18。
さっきまで遠かった境界線が、一気に目前へ迫る。イマリの喉が小さく鳴った。手にしたカードの端を、指先がきゅっと握りしめていた。
(わあ!一気に21に近づいた!……これなら、勝てそう……!)
勝利を確信したかのようにイマリはぱっと顔を輝かせ、自信満々にウッドを見つめる。
未だかつてない程に高揚していた。新しい遊戯、新たな戦略、その全てが彼女を昂らせていた。
「次は、オレの番だ」
ウッドは静かに自分のカードを確認する。彼の表情は変わらない。カードの山を見ずに指を止める。合計は16。
(16か…中途半端な数値だな。バーストするリスクはあるっちゃああるが……ここは踏み込むぜェ!)
「オレは……引くぜェ!ヒットォ!」
躊躇なく引く、運ではない、これは計算だ。引いたカードは4だった。合計は20で非常に強い。
イマリの目がぱっと輝いた。
「わあ……!すごい!お兄さん強いね!」
「まだ勝負は終わってねぇ。テメェの番だ」
イマリは自身のカードをじっと見つめる。さっきまで楽しかった顔が、少しだけ真剣になる。
(あと3……でも引いたら壊れちゃうかも……)
小さな指が宙で揺れる。
「……止めるね」
ウッドが伏せていたカードを開く。 合計は20。
「クククッ……オレの勝ちだァ!どんなもんよォ!」
「むぅ~!お兄さん、強すぎ!」
勝負は目まぐるしく入れ替わった。19で止めたイマリが勝ったかと思えば、次では17で止めたウッドが静かに勝利を収める。
一進一退の攻防。だが、数回のやり取りを経た頃、部屋の空気は微妙に変化していた。
(......ふーん。)
唇を尖らせながらも、イマリは悔しそうではなかった。彼女の目はカードではなく、真正面に座るウッドにじっと注がれている。
(今、......止めた)
(なのに、さっきは引いた)
(数字じゃない……お兄さんの心が、次を決めてる)
(なら──お兄さんを…見ればいい)
子供のような拗ねた顔の裏で、神の思考は冷静に回転していた。勝敗の分かれ目。
そこには必ず、彼の選択と、ほんのわずかな躊躇がある。運ではない。これは読み合いだ。
───────────────
序盤、勝負の流れは明らかにウッドへと傾いていた。彼の持つ確率論の知識と冷静な判断力が、いつカードを引くべきかを的確に見極めていたからだ。
自身の手札と場に出されたカードの情報、それら全ての要素を計算し、彼は最善手を打ち続けた。堅実かつ、論理的。それが彼の戦い方だった。
しかし、中盤に差し掛かる頃、戦況の天秤はゆっくりと、しかし確実にイマリの側へと揺れ動き始めていた。
(迷いは指先に出て、覚悟は呼吸に出る)
(人の体は、嘘をつけないんだよ?お兄さん)
彼女はもう、場のカードだけを見ていない。彼女は”見て”いた。ウッドの表情筋の微かな動きを。呼吸のリズムを。
カードに触れようとする指先の、ほんのわずかな躊躇いを。それらは、数字よりも雄弁に、彼の”次”の行動を物語っていた。
ハッタリに惑わされずに本心を見抜く。遊戯の神としての本能が“観察”という新しい武器を彼女に与えていたのだ。
(チッ……やはり読まれてるな。だが、奴は花札の時、盤面を完全にコントロールしてみせたガキだ、それくらいは想定済みだぜ。けどよぉ……)
(オレには───秘策があるぜぇ?)
ウッドもまた、その変化に気づいていた。こちらの駆け引きが通用しなくなっている。だからこそ、彼は次の手を用意していた。
予めプログラムされた機械のように、正確無比な対抗手段を。“時間”という絶対値に、自分を固定する。
5…
4…
3…
2…
1…
「しゃあっ!───カードを引くぜェ!」
(引いたカードは8、よっしゃあッ!合計は19…かなり強力だぜェ! )
「ほらよ、テメェのターンだぜ」
イマリはすぐにウッドの奇妙な変化に気がついた。先ほどまでの迷いや逡巡が消え、彼の動作はまるで精密な機械のように正確になっている。
まるで、何かの周期に従って動いているかのように。
彼女は内心で感心した。こんな方法で自分の観察眼をかわそうとするなんて、人間とは、かくも面白い生き物なのか。
(すごいよお兄さん。イマリの目をごまかすためにそんなことまで考えるんだ)
イマリは次にウッドを“見る”対象を変えた。視線は顔から腕へその動きを支える体全体へ。
(ふふっ今のお兄さん、すっごく喜んでる。場のカードは20とかその辺りかな?)
(イマリのカードの合計は17、このままでも強いけどここは……)
「一枚、引くね?」
イマリの合計は20。
ウッドは19──イマリの勝利だ。
「わーい!イマリの勝ちだね!」
「ッ!──あそこで引くとは、中々度胸があるなァ?」
(嘘……だろぉ……17が揃ってる状態で引いた時、バーストする確率はそれなりに高えってのによぉ……引き当てたというのか……このガキはよぉ……)
脳内で瞬時に確率を弾き出す。だが、それでもなお、目の前の結果は覆らない。思わぬ逆襲を受けてしまい、ウッドの表情筋がわずかに硬直した。ほんの一瞬。だがその一瞬こそが、命取りだった。
「あはっ……お兄さん、すごくびっくりしてるね」
イマリの狸耳が、ぴくりと嬉しそうに立つ。彼女はもう、カードの数字など見ていなかった。見ているのは、ウッドという人間そのものだった。
筋肉の収縮、血流の熱、無意識の高揚──それらは声なき雄叫びとなって、イマリの内側へと流れ込んでくる。まるで、彼の体そのものが、口よりも饒舌に喋り続けているかのように。
(12……弱いな、一枚追加だ)
「カードを引くぜェ!ヒット!」
(18……よし、強力な数字だァ!)
「このカードだ、ガキ!かかってきやがれ!」
声を張るたびに、ウッドの拳がぐっと強く握られる。その強さの分だけ、数字の強弱がそのまま伝わっていた。周期というノイズはもはや意味をなさなかった。より根源的で本能的な欲求が、人間には感知できない信号として、裏側のカードを丸裸にしていく。
「わっ、またイマリが勝っちゃったよ!……形勢逆転だね、お兄さん」
「ぬぅぅ──まさか逆転されるとはなァ……中々いいセンスしてんじゃねぇか」
(ポーカーフェイスを保ちつつ、引く時間、呼吸のリズムとともに一定にしているがよォ)
だが、その"一定"こそが、あるいは仇となっているのかもしれない。ウッドはまだ、そのことに気づいていない。背中を、冷たい汗が一筋伝った。畳についた手のひらが、じっとりと湿っている。偶然では済まされない回数だ。二度や三度ならまだしも──もはや数えるのも馬鹿らしいほどの的中率だった。
(──さっきから当てられすぎているなァ……)
そう、偶然ではなく必然。ウッドのプログラムは完全に解読され、その上で踊らされていたに過ぎなかった。
(まさかよォ……カードを引く時間、呼吸以外にも……序盤はオレが勝ち続けていたからよぉ、カードを透視するとかでは無いはずだぜぇ……)
(何処で判断するかは分からないが、オレのカードの内容が読まれている事だけは確かだなァ……いや……心かァ?)
脳内に電流が走り、ヒラメキが発生する。
(思い返せばよぉ、強力な数字を揃えた時、オレは無意識に気分が高揚していたぜ……)
(──待てよ、奴が突如として危険な賭けに出るようになったのも読心術で説明がつくなァ!)
ウッドの中で、一つの仮説が形を成していく。
(そうだ、もしオレ自身の選択理由……勝負に出るか降りるかの“きっかけ”が感情に起因するものだってんならよ……!欺く方法はあるぜェ!)
彼は伏せられたカードを確認し、引くか引かないかを予め決断した後、引くかどうか迷うように指を止める。その後、自身の中にもう一つの世界を構築する。
──それは脳内で繰り広げられる、壮大な一人芝居。魔法学園にて、学院の双華と称されるドラゴニュートの姫との甘酸っぱい出会い。邪竜ファフニールとの死闘の末に放つ、渾身の必殺技。仲間との勝利の雄叫び。
ウッドは己の精神をその空想の世界に深く沈めることで、現実のテーブルでの駆け引きから、己の感情の起伏という最大の情報源を切り離した。絶望、希望、驚愕、緊張──あらゆるノイズが思考に巨大な煙幕を張った。
「うーん……どうしようかな……」
イマリがウッドをじっと見つめる。そこに映るのは希望に満ちた表情。いつもなら、強い手なら高揚が、弱い手なら焦りが微かに滲む……これは強力なカードを揃える事に成功した合図。
(この感情は……希望。お兄さんの手札はとてもつよいカードだね!)
「……じゃあ、引くね。」
イマリがカードを引き、バースト……15でスタンドさせたウッドの勝ちだ。
「15で止めたの……?なんで……!」
「ギャハハハ!その言葉をテメェから聞きたかったぜェ……!」
静かに息を整える。やった。遂に、あの神の目を欺いた。錯乱させた情報の奔流で、本命の一閃を隠し通したのだ。
─────────────
勝負は終盤に差し掛かり、ウッドは頭の中で空想世界での旅路を繰り広げて、感情を誤認させる事で彼は再び勝利を重ねてゆく。
「フヒャハハ!オレ様の勝ちだァ!形勢逆転だなァ!」
(あれ……? あれれ……?)
立場が完全に逆転した盤面を見て、イマリは目をぱちくりさせた。焦りと困惑がその小さな顔を覆う。
(どうして?さっきまで、あんなにイマリのほうがわかっていたのに。そして勝ってたのに……)
(なのに今は、お兄さんの考えていることがぜんぜんわからない)
イマリはもう一度、必死にウッドを見つめた。瞳を凝らし、感覚を研ぎ澄ませる。そこに見えたのは、もっと別の、この場所ではありえないはずの感覚。
愛おしさとか、恥ずかしさとか、そういうむずがゆいような気持ち。それはまるで、誰か別人の心がウッドの中に混ざり込んでいるかのようだった。空想。彼は、自分の内側に、イマリにも見えない世界を作り出している。
「そっか……だから、わからないんだ……」
その発想に、イマリははっとさせられた。感情という揺らぎを読む自分に対して、感情そのものを別の場所に置くという対抗策。そんなやり方、考えたこともなかった。
「すごいよ、お兄さん! そんなことできるんだ!」
思わず、賞賛の声が口をついて出た。
「ほお、トリックを見破ったか。そうよ、今のオレは”空想”という名の鎧を纏っているのさァ!」
「イマリ、そんなの初めて見た!むつかしいことするんだね!」
負けているのが悔しいはずなのに、それ以上に目の前の人間の知恵と工夫に、心から感心している彼女がいた。
───────────────
(いま、お兄さんの感情がはっきりと分かったかも)
その奇策は確かに有効だったが、諸刃の剣でもあった。常に精神を別次元に維持するのは相当な集中力を要する。
長時間の維持は不可能だし、一度深く入り込みすぎれば、今度は現実世界での判断が鈍る危険性も孕んでいた。その微細な変化を、遊戯の神が見逃すはずもなかった。
「ふぅん。なるほど……ね」
数戦後、イマリがぽつりと呟いた。そして次のゲーム。彼女は迷うことなくカードを引いた。
(ここは一つ、お兄さんを引っかけてみようかな?)
「一枚、引くね?」
彼女の宣言に、今度はウッドがわずかに眉をひそめる番だった。イマリからは何の迷いも読み取れなかった。
(やばいな、今のは確実に読まれた……よな?)
(クソッ……集中力が途切れているぜぇ、ずっと空想の世界にいるのはよぉ…普通にキツいぜ)
(それはそうと17だと不安だぜ…引くかァ……)
ウッドは朧気な思考のままカードを引く。結果、彼はバーストし、敗北した。
「……ぬぅぅぅん」
「やっぱり。今のお兄さんは、ちょっとだけ、ふらふらしてる」
イマリがにこりと笑う。
「イマリを置いてどこか遠くに行ってるみたいだから。疲れちゃった隙に、イマリはちゃんと見るね」
彼女はウッドの戦術の弱点を正確に見抜いていた。彼が精神を内に向ければ向けるほど疲弊する。
その瞬間、外の世界との繋がりが露わになる。
その隙を突けばいい。攻略法は見つかった。再び勝敗は拮抗し始め、残り2戦目になる頃には彼女はとうとう同点にまで追い詰めた。
───────────────
両者とも19勝し、最後の1戦。座敷に満ちる緊張は、これまでのどの局面よりも張り詰めていた。
ウッドは、伏せられた自分のカードをそっと開いた。数字を確かめた瞬間、指先が止まる。
破滅と至高を分かつ、薄紙の境界。21。
(ハハッ……やったぞ!マジかよ!)
(───そろったぜぇ!!……21がよォ!!最後の……運命の一戦でよォ!!)
込み上げてくる歓喜を抑える間もなかった。いつもなら、勝負の最中は空想の世界へと意識を逃がし、感情という最大の情報源を覆い隠す。だが今この瞬間だけは、その手順を踏むことすら忘れていた。抑えようのない歓喜が、堰を切ったように全身から溢れ出す。
(───っ!この誤魔化そうとする気がぜんぜん無い感情って……)
対するイマリが息を呑む。指先が、卓の上でぴくりと震えた。今までにないほど、ウッドから発せられる感情が凄まじく高まっているのを感じた。これまで彼女が読み取ってきたのは、微かな呼吸の揺れや、指先のわずかな躊躇いだった。
だが今、伝わってくるのは、そんな繊細なものではない。まるで陽の光を直視するような、覆いようのない眩さだった。
(すごい──最後の勝負で、揃えたんだね。21を!)
イマリは自分の手元へと視線を落とした。場のカードは、合計20。
あと一枚。エースを引ければ21。この勝負は引き分けとなる。
だが、それ以外のどのカードを引いても──バースト。ウッドの勝利が、確定する。
薄い、本当に薄い一本の糸。イマリは、その糸の上に立たされていた。
「……ふふ」
イマリの口元に笑みが浮かぶ。怖くない。むしろ、楽しくてたまらない。笠の下の瞳が、まっすぐにウッドを見据えた。
「いいよ、お兄さん。イマリも……覚悟、決めるね」
「絶対に……引き当ててみせるね。──ヒット!」
小さな指先が、山札の一番上へと伸びる。一瞬だけ、その指が止まった。祈るような、それでいて挑むような、一拍の間。
めくられたのは──9。
「あー……!」
イマリの手にしたカードは21を大幅に超えてしまった。数字を確かめるまでもなく、場に置かれた札がすべてを物語っていた。
「見せてやる!オレの──手札は『21』だぜェ!」
最後のカードが置かれた瞬間、イマリは動かなかった。ぱっちりと見開かれた瞳が、座卓の上のカードを交互に見ている。何度も、何度も。まるで、その数字が変わってくれることを、ほんの少しだけ期待しているかのように。
「オレの───勝ちだぁぁ!!」
しん、と静まり返った部屋に、外の風が障子を揺らす音だけが聞こえる。長い、長い沈黙だった。
「……まけた」
ぽつり、と呟かれた言葉は、驚きに満ちていた。彼女はゆっくりと顔を上げ、まっすぐにウッドを見る。その大きな瞳には、今までの寂しさや焦りとは違う、きらきらとした光が宿っていた。
「すごい……すごい、すごいよお兄さん! イマリに勝っちゃうなんて!」
「ああ。遂に……遂に……勝った!勝利を掴み取ったぞ!!勝ってみせたぞォ!!」
ウッドは高らかに拳を突き上げ、歓喜の声を上げた。激闘を制した事を告げる、凱歌だった。その声は、座敷の壁を震わせるほどに大きく、そして誇らしげだった。
イマリは負けた悔しさより、自分を打ち負かした存在への強い興味が勝っている。彼女は身を乗り出すようにして、前のめりになった。笠の縁が、ウッドの顔にかかりそうなほどの距離だった。
「ねえ、名前、なんていうの?」
その問いは、これまでのどの言葉よりも、素直で、飾り気のないものだった。
「オレ様の名は鴨撃ちのウッドだ!覚えておきなァ!」
「うん、ウッドだね!イマリ、ちゃんと覚えたよ、お兄さん!」
その響きを、彼女は何度も口の中で転がすように繰り返した。まるで、初めて手にした大切な札を、そっと胸に収めるように。