……これは、遥か昔の物語。
このエトワリアと呼ばれる世界が、今の形を成すより遠き過去のこと。
とある辺鄙な村に、不思議な力を持つ少女がいました。
少女は隠れた人々を簡単に見つけ出したり、人同士の親密な繋がりを見抜くことが得意だったそうです。
しかし、周囲の人々はそれを気味悪がって少女を避けるようになりました。
そんなある時、村に……いいえ、エトワリア中に恐ろしい変化が起こります。
どこからともなく現れた大きな『くらやみ』が、空を覆い尽くしたのです。
『くらやみ』は太陽の光を阻み、エトワリアの人々は寒さと恐怖に苦しめられました。
それだけではありません。やがて『くらやみ』の恐怖から、魔物や人々が暴れ始めたのです。やがて多くの人、生き物達は恐れから互いを傷つけ合い、憎しみ合うようになりました。
そんな中、高くそびえるこの世界の中心……
その少女こそ、辺鄙な村に住んでいたひとりぼっちの少女……今の世に、伝説の召喚士として語られるその人です。
彼女はその召喚術で、異なる世界の人々の力を借り。空を覆う『くらやみ』を吹き飛ばしたのです。
しかし、『くらやみ』も黙ってはいませんでした。
空を覆っていた『くらやみ』は姿形を変えて、少女たちに襲いかかったのです。
遥か天の上で繰り広げる戦いを、人々はただ見守ることしか出来ませんでした。
やがて、戦いは終わりを迎え。
少女は、言の葉の樹を降りてきました。
しかし少女は樹を降りた後、倒れてしまいました。
激しい戦いで傷ついた彼女は、もはや樹の麓までの道を戻るので精一杯だったのです。
かつて同じ村に住んでいた者たちは、その姿を見て深く後悔しました。
自分たちが、一緒に戦っていれば。
自分たちが、側に居て肩を貸していれば。
自分たちが、もっと彼女を信じていれば。
こんな事にはならなかったかもしれないのに。
しかし少女は、それでも誰のことも責めはしませんでした。
最後の瞬間まで、優しく微笑み続けて。
やがて、力尽き亡くなりました。
深い悲しみと後悔の中、少女は手厚く弔われ。
やがて少女の生涯は物語として綴られ、読んだ人々に不思議な力をもたらす『聖典』となりました。
そしてそれらを綴った少女はやがて『女神』と呼ばれるようになり、かつて世界を救う戦いの場であった言の葉の樹の頂上に建てられた『神殿』で、召喚士によって呼び出された人々の住まう異なる世界を観測するようになったのです。
異なる世界の物語もまた『聖典』となり、人々に力をもたらすようになりました。
聖典がもたらす力はやがて『クリエ』と呼ばれ、それを与える異世界の人々は『クリエメイト』と呼ばれるようになったのでした。
こうして、今も続くエトワリアの基盤が誕生し。
世界を救った召喚士の少女は伝説となって、人々から忘れ去られていったのです。
────ところが、物語はここで終わりではありません。
このお話には、誰も知らない続きがあったのです。
初めは───この物語の殆どの者が、気づいていなかったでしょう。
何気なく始まったこの旅が………遥か遠き昔話に繋がっていたなんて。
言の葉の樹から遠く離れたこの土地から、新たな物語は人知れず始まったのです……