もう内容を覚えてない、知らない人のほうが多いと思うんである程度は原作沿いで行きます。
ゆるして。
-1
言の葉の樹から遠く離れた、辺鄙な村。
………かつて伝説の召喚士が居たというその付近を、赤髪を二つ結びのおさげ髪にした少女が歩いていました。
少女の名はランプ。
この辺りでは見かけない、滑らかな生地を綺麗に整えた衣服を身に纏う彼女は、お供の白い猫のような魔物……マッチと共に歩き続けていました。
「ねえランプ……本当にこんなところにいるのかな?」
「そんな自信なくすような事言わないでマッチ!
これしか方法はないんだから!」
「数百年前にたった一度だけ現れた、今存在するかどうかも分からない人を探すことがかい?」
「うっ………」
そう、たった一度だけ。
後に『コール』と名付けられたその召喚魔法を使えるものは、最初に現れた召喚士の少女からただの一人も現れることはありませんでした。
「………マッチだって、神殿を出るときは賛成してくれたじゃない」
「そりゃあ……僕だって神殿のやろうとしている事は間違ってると思うからね。
けど、まさか頼みの綱があやふやな言い伝えだなんて思わないじゃないか」
「それでも……今何か出来るのはわたしたちだけだから。
だから早く、召喚士を見つけないと……」
「それはそうかもしれないけどさ…少し休んだほうがいいよ。
しばらく歩き通しでもうフラフラじゃないか」
「そんな時間ないよ!
急がないと……急いで、召喚士を見つけない、と、あれ……?」
ランプは倒れてしまいました。
身体の疲れと、精神的な疲労が重なりもはや十数歳の少女には耐えられなくなってしまったのです。
「ああもう、言わんこっちゃない……!
誰かに助けを……って、こんなところに人なんていないし、参ったな……」
倒れて動けないランプと、途法に暮れるマッチ。
もはや手詰まり、とでも言うべきそんな時でした。
茂みががさがさと揺れる音が、二人に向かって近づいてきたのです。
「……? マッチ、今の音なに?」
「え? 僕は何もしていないけど……」
「でも、なんかガサガサって……。
音が、だんだん近づいて───」
「……まさか、魔物?」
「ど…どど、どうしよう!?
マッチ、戦える!?」
「あのさぁランプ。
これでも長い付き合いなんだし無理だって分かるだろ?」
「そっ、そんな言い方しなくていいじゃん!」
「だから護衛も戦力もなしに神殿を出るなんて無茶だって言ったんじゃないか……」
二人が言い争っている間にも、音はどんどん近づいてきました。
そして………。
「………あのー。
大丈夫、ですか?」
「……人? いや、気にしてる場合じゃないか。
すまないけど、手を貸してくれないかい?連れが倒れて困ってたんだ」
「うん。
えっと…大丈夫?お水でも飲む?」
「は、はい、えっと……」
茂みから現れたのは、ランプより少しばかり背の高い少女でした。星の形をした髪留めで、ランプより高めの位置で二つ結びにした、黒いマントとサイハイブーツが特徴的な女の子。
彼女は『きらら』と名乗りました。
この近くの村に住んでいるのだとも。
「しかし、よく僕たちに気づいてくれたもんだよ……。
結構道からは外れているよね?」
「えっと……誰かがいるような気がしたから……。
それに、この辺りは慣れてない人だと時々迷っちゃう事もあるから」
「なるほど……僕たちは運が良かったわけだね。
っと失礼、僕はマッチ、この子はランプ。よろしくね」
「こちらこそ。
……ところでランプとマッチはどうしてこんなところまで来たの?住んでる私が言うのもなんだけど、なんにも無いところだよ?
……あ、でも近くの牧場は少しは有名かなあ…」
「───わたしたちは、『召喚士』を探しに来たんです。
伝説の召喚魔法……『コール』を使える召喚士を」
「……それって、大昔の言い伝えの?」
「はい。
異世界の人々……今の世界に『クリエメイト』と呼ばれる方々の力を借りる事ができる、唯一無二の魔法。
そのお力が、わたしたちには必要なんです!」
「必要って……一体、どうして?」
それは、とランプが口を開いた時。
「っ!?」
「きららさん?」
「どうかしたのかい?」
まるで、
「……あのね、ランプ、マッチ。
実は、二人の事を見つけたのは偶然じゃないの」
「「え?」」
「昔から……なんて言えばいいのかな、
人と人の繋がりみたいな…そんなモノを、ぼんやりと感じられるの。二人に気づいたのも、その力のおかげで……」
「……きららさん、それってもしかして『パス』じゃないですか!?
伝説の召喚士様も感じ取ることができたという…!!」
「なんてこった……そんなことがあるんだね」
「……やっぱり、こんなの変だって思うよね」
「そんなことありません!わたしはとっても素敵だと思います!
……ええと、それでさっきは何を感じたんですか?」
「───とても強い『パス』を感じたの。
まるで、これまで
『この世界になかったような』という言葉を聞いたランプとマッチの顔色が、明らかに悪いものに変わり。
「きらら。その『パス』はどのあたりから感じるか分かるかい?」
「う、うん。
えっと……あっちの方かな」
「きららさん、案内をお願いします!
理由は後で説明しますから!」
そうして、三人……正確には二人と一匹が駆けた先には。
およそ数十はいるであろう、黒い猫のような魔物たちが
「……なに、あの黒いの?」
「アレは、『クロモン』という魔物です。
確か、『クリエ』に強い反応を見せるとかなんとか…」
「というか、クロモンがこんな大量に同じ場所にとどまってる事自体が異常だよ。
普通なら多くても十匹程度がせいぜいのはず……」
そうして、クロモンの群れの様子をうかがっているうち。きららが何かに気づいたかのように「あ……」と呟いたのです。
「きららさん?」
「クロモンたちが向かってる方向……私の住んでる村がある方向なの」
「なっ……!
だとしたら、村のみなさんも危ないです!すぐに止めないと!」
「ど、どうやって?」
「それは……わかりません。でも、だからってこのまま見過ごすわけにはいかないんです!
だって、わたしたちがここまで来たのは『女神様』を───この世界を守るためです。それにはもちろん、きららさんの住んでいる村だって含まれているんです。
だから……止めてきます。行くよマッチ!」
ランプは最後に一度、きららに頭を下げると。そのまま踵を返しクロモンの群れの先頭へ向かって駆け出しました。
幸いクロモンたちの速度ならば余裕で追いつくことができ、進路の先に飛び出すことくらいはできました。
「クロモンたち!止まりなさーい!」
ランプは叫び、クロモンの群れの前に立ちはだかります。
しかし
「「「くーっ!!!」」」
「ぎゃーー!?」
波のように押し寄せたクロモン達に、あっけなく押し倒されてしまいました。
「ランプ!やっぱり無茶だ、いったん下がって…」
「で、でもこのまま通したら……!」
そう言っている間にも、クロモンたちは押し寄せ続けます。
立ち上がってもう一度止めようとしても、いつの間にか山のように上に積み上がったクロモンたちが、それすら許してはくれません。
「ランプ!!」
「えっ……」
「きらら!? なんで君までここに…!」
「だって、放っておけないのは私も一緒だから……!
このっ、ランプから離れて!」
いつの間にか追いかけてきていたきららが、自分の持った杖でランプの上に被さったクロモンたちを押しのけようとします。
しかし、そんな事をされればクロモンたちも黙ってはいません。
「きゃあっ!?」
「きららさん!」
標的をきららに変え、再び波のように押し寄せるクロモンたち。小さくとも確かに魔物、それも少女たちよりはるかに多勢。大した武器も魔法もなく、立ち向かえる相手ではなかったのです。
「ううっ……このままじゃ、ランプもマッチも……」
縋るように、きららは自身の杖に手を伸ばす。
「お願い、誰か……!
力を、貸して───!!」
杖に着けられた星の装飾が、光を放つ。宙に魔法陣が三つ輝き、そこから誰かが現れた。
現れた者の一人が剣を振るえば、それは疾風の刃となって黒い群れを吹き飛ばした。
現れた者の一人が盾と槍を構え、群がる魔物らを止め、押し返してみせた。
現れた者の一人が杖を振るえば、少女たちの負っていた傷が立ちどころに消え失せた。
それは、まさしく奇跡と呼ぶに相応しい力だった。
「あ、あ……ああああっ!!
あれは、あの人たちは……クリエメイト!!」
「今、きららの杖が光ったのと同時に現れたよな……なら、まさかきららが……」
「───伝説の、召喚士……!」
これが、新たなる物語の始まった時。
奇跡のような、軌跡の始まりでした。
最初に『コール』されたクリエメイト三人は、コミカライズ版の御三方と同じです。
きらファンコミカライズ読んでネ。