僕がイオリ君と出会い、フルスクラッチを始めてから約半年ほどの時間が過ぎた。
色々と苦難はあった。
設計図を作らなきゃいけないけど、既存のロボットと違ってガチの美少女イラストを描かなきゃいけないから、まずイラスト勉強したり。
その後は装甲を含む武装の書き出しだったり。
その後は実際に作ったりをするが、曲線が多い美少女プラモを再現するために何十回何百回とプラ板に熱を加え微調整を繰り返し。
何度も諦めかけた。
多分、似たようなキットがあれば、それに飛びついて楽をしていたと思うが、生憎そんなものが無いため、より一層の覚悟のもとプラ板に熱を加え続けた。
髪が特にきつかった。
イラストと少しでも違うと感じれば作り直し。あの瞬間だけは陶芸家が自分の作品に納得がいかずに破壊する気持ちがわかった気がする。
そんな中、自身の足のリハビリもあり。
車椅子は無事に卒業できたが、走ったり等はまだきつい。ゆっくり体を動かしてなんとかって感じだ。
そうして足や腕、胴体が出来、頭をつけ、髪をつける。
それに武装を作り、装備させる。
塗装にも細心の注意をしつつ、顔を作った。
そうして、無事に1体の美少女プラモが完成した時の瞬間は何事にも変えられない満足感があった。
僕は急いでカバンに出来上がった美プラをしまい、両親に挨拶をした後にイオリ模型店へ向かう。
この感動をイオリ君に伝えるのと共に早くイオリ模型店にあるGBベースで彼女が動くのを見たかったからだ。
ちなみにGBベースというのは、プラフスキー粒子をエリア内に散布し動かせるようになる特別なマシン。中小規模のものなら、そこそこの模型店には大体併設されているものだ。
「善は急げってな」
***
転んで彼女を破壊しないよう、または僕の足を活動限界を迎えないように歩き、イオリ模型店に向かう。
イオリ君も自分のガンプラを作り始めたらしいし、多分店にいるだろう。いなければ最悪GBベースを借りて待っていたらいい。
でも、どうせならイオリ君にも見てほしい。
ある意味彼は、僕のフルスクラッチの師匠でもある。前世の僕より一回りも年齢が下なのに知識が意味わからないくらいあったのは助かった。
それに彼とはフルスクラッチを通じて、仲良くなった自信もある。
後半なんか、太ももの太さで議論したくらいだ。
顔を赤らめつつ、「ヨシダ先輩のその……機体いや、彼女……太もも、ちょっと削ってもいいのでは?」と言っていたのが面白かった。
削らねぇ!! 太くねぇから!!って黙らしたけど。
イオリ模型店の中に入ると、いつものようにイオリ君のお母さんが店番をしていたので軽く会釈をする。
そういや、この半年まだ一度もお父さんを見てないけど……複雑な家庭なんだろうか?
「あら、アサヒくんいらっしゃい〜、もしかしてセイ?」
「はい、今日いますかね?」
「いるわよ〜、ちょっと待っててね〜」
初めてイオリ模型店に来た時のように、イオリ君のお母さんは裏に消え、彼を連れてきた。
「お疲れ様です、ヨシダ先輩!」
「ごめんね、イオリ君。自分のガンプラで忙しいとは思うんだけど、報告がしたくて」
そう言って僕は自分のカバンを指差す。
彼はそれだけで意図が分かったようで、目を輝かせた。
「もしかして……完成したんですか!?」
「うん。GBベースとちょっと机借りていいかな?」
イオリ君に許可をもらい、作業机の上に彼女を取り出して置く。
「コンセプトはMSの武装と装甲を装備した美少女。一応名前は、フィリサティ。イフリート改武装だ」
完全オリジナルの武装だけは上手くいかず、既存のキットを改造して装備させるようにしたのは英断だった。
幸い、この世界にはないけれど、前世にはMS少女なるものが跋扈していたこともあり、設計図を描く時とかいい感じに想像を膨らませてくれた。
青いショートの片目だけ隠れたヘア。カチューシャをつけ、ジオン軍特有の一本角のアンテナに目が惹かれる。
胸部の部分にはイフリート改の装甲を微調整して装備できるようにし、ヘソ出しルックからのスカート。
どこかルーズソックスのようにも見えるように脚部装甲も調整し、赤い肩パッドのトゲは抑え気味にしつつ、腕全体を装甲で守るようにしている。
「すごい……すごいですよ、ヨシダ先輩! フィギュアにも見えますし、どことなくセーラー服? にも見えなくは無い感じにイフリート改の装甲があって……すごいです!」
「ふははは! しかもパージできる」
僕はイフリート改の装甲をパチパチと外す。
中からはスクール水着を着たフィリサティが出てくるようにした。
下着よりかはいいでしょう、パンツじゃないから恥ずかしくないもん!ってやつだ。
ちなみにフィリサティというのは英語で幸せというらしい。
らーぶ、らーぶ。
「一応ガンプラバトルは全年齢対象だからね。胸も控えめにして、多方面に配慮してるよ」
「……先輩の『癖』ってやつですよね」
「美少女プラモは己の好きを詰め込めるんだよ」
そう言いつつ、イオリ君はいろんな角度からフィリサティを見る。
ちょっと僕の癖がマジマジと見られるのは恥ずかしいが、こればっかしは仕方ない。耐えてくれフィサリティ。まだ恥ずかしさで泣いちゃダメだ。
「イオリ君、GBベースで早速動かしてみてもいいかな?」
「はい! 僕もどんなふうになるのか気になります!」
気が向いてるんで続きます。
次GBベース編です。