モニターに映ったカウントダウンの数字が小さくなり、やがてカウントダウンが0になると、文字が切り替わって満場一致特別試験の最初の課題が表示される。
【課題① 3学期に行われる学年末試験でどのクラスと対決するかを選択せよ
クラス階級の変動があった場合でも、今回の選択が優先される。
()内の数字は対戦時に勝利することで得られる追加クラスポイント。
選択肢 Bクラス(50) Cクラス(25) Dクラス(0)】
「これは2年生最後の3学期、その学年末に行われる特別試験に向けた対戦相手を決めるための選択肢です。補足で書いてあるとおり、現時点でBクラスを満場一致で選択した場合、仮に現Bクラスが学年末までにCクラスに降格していたとしても、対戦相手はこの選択肢時点のBクラスと追加クラスポイントのままです。また希望する組み合わせが全クラス不一致だった場合には学校側がランダムに決定します」
試験だからか、後ろで見てる監督役を気にしてなのかいつもより丁寧な口調で説明する星之宮先生に違和感を覚えつつも今回の課題の内容を確認する。
要するに学年末に坂柳さんと葛城のクラス、堀北さんのクラス、龍園のクラスのどこと戦うかを選んで、選んだ相手が変更されることはないということか。
「必ずしも希望するクラスとたたかえるわけではないけど、自分たちがどのクラスと戦えば勝てるのか、それを見極めて選択してください」
星之宮先生の説明を聞き終えて、1回目の投票では誰かと話すことが許されていないため、クラスメイトたちが各々で思考を巡らせる。
(勝ちを選ぶのであれば下のクラスを狙うのが定石というやつなのだろうが、上位クラスと違い追加で得られるクラスポイントがないという点があるな)
(メリットとデメリットが予め提示されているけど、学年末までまだ5ヶ月ほどある。もしかすると、ここから龍園くんのDクラスが特別試験を勝ち抜いて浮上することも可能性としては有り得るよね)
(俺たちならどこのクラスと戦っても大丈夫そうだけど、坂柳と龍園のクラスは何してくるかわかんねぇしCクラスの方がいいのかな)
(下のクラスの方が戦いやすいってわけじゃないから難しいな。かと言ってCだと追加で貰えるクラスポイントは少ないし……今のクラスポイントなら無理はしなくてもいいけど油断は禁物だって言うし……どうしよう)
神崎、一之瀬さん、柴田、網倉さんの思考がクラスメイトの大体の総意であったため、ピックアップしておいたが残りの36人もしっかりと考えを持っている。
「では、第1回の投票に移ります。制限時間は60秒です」
この60秒を過ぎてしまうとペナルティタイムに突入するが、そのような事はなくクラスメイトたちは思い思いに好きな選択肢へと投票を行なう。
一之瀬さんと神崎は事前に話し合いなしで満場一致にならないように1番上と1番下の選択肢を押すように取り決めているようで、2人はそれぞれの意思とは関係なく投票する。
僕はどこと戦おうが関係ないし、最終的にはクラスの意思を尊重するため、1番上のBクラスを選択する。
60秒を待たずに全員の投票が終了したため、モニターに投票結果が発表される。
【第1回投票結果 Bクラス6票 Cクラス32票 Dクラス2票】
みんな戦いやすいのはCクラスと感じているらしく、それはリーダーとして台頭している堀北さんの性格やクラスの気質、1年生の時の学年末試験で勝ったことも踏まえてのものが多かった。
満場一致にならなかったため、ここからは10分間、自由に席を立って生徒に接触したり、会話することが許される。
しかし、クラスメイトたちは立ち上がることはせず一之瀬さんと神崎に目を向ける。
「よし、じゃあ早速満場一致に向けて話をすすめて行こっか。概ねCクラスに固まってるみたいだけど、BとDに入れた人にも考えはあるはずだから、聞いてみたいんだけど……どうかな?」
一之瀬さんが教室全体に通るように言うと、C以外に入れた8人のうち一之瀬さんと神崎を除外する6人の声を待つ。
そのうちの1人の僕は言うべきかと思ったが、その前に神崎が口を開いた。
「一之瀬、そいつらの考えを言うよりも、俺とお前の意見を言った方が満場一致に近づくんじゃないか?」
「それはそうだけど……でもBとDに入れた人にも何かしら考えがあるはずだし……」
すまん、何もないんだ。
後で合わせるからいいやと思っていた。
それは他の奴らも何人か同じだったりとあまりにも杜撰な投票であることを知っているのは僕だけだ。
どうしたものかと悩んでいると神崎が口火を切った。
「では俺から言わせてもらおう。俺は学年末に戦うのならBクラス。つまり坂柳と葛城のクラスだと考えた」
堅実そうな神崎がCクラス狙いじゃないことに驚いた様子の他のクラスメイト達を気にすることなく、神崎は理由を述べていく。
「理由は消去法だ。龍園のDクラスは勝ったとしても上乗せされるポイントがない上に何をしてくるか分からない相手だ。次にCクラスは最初こそ0ポイントだったが高円寺や綾小路、平田に堀北や櫛田といった勉学、運動ともに優秀な生徒が多い。純粋なポテンシャルでのぶつかり合いになると少しでも読み間違えればあちらの方が有利になる可能性が高い。そしてBクラスは総合的なスペックは上でこっちのような斉木や一之瀬、柴田のような突出した能力を持つ生徒はほとんどいない。それにうちも勉学、運動ともに上昇傾向にある。上乗せされるクラスポイントも多く、勝算は十二分にあると思うがどうだ」
時間を気にしてかやや早口にしつつも、これまたよく通る声で教室内に意見を伝える。
「反論や他に意見があれば遠慮なく言って欲しい。俺は逆にCクラスに投票したみんなの意見を聞きたい」
「じゃあ、私から言わせてもらおうかな」
神崎の問いかけに一之瀬さんが応える。
「私は堀北さんのクラスがいいと思う。神崎くんの言った通り、優秀な生徒が多いって話だけど綾小路くんと高円寺くんはムラっけがあるというか、多分楠雄くん相手じゃないと本気を出してこないと思うから気にしなくていいと思う」
そんなハッキリ言うのか。
というか、この前の豪華客船での水泳であの2人のことは色々とバレたらしいな。
僕にはどうでもいいことだが。
「平田くんや堀北さん、櫛田さんも優秀だけど敵わない相手じゃないと思うな。それに堀北さん達なら龍園くんや坂柳さんみたいな搦手は使ってこないと思うし、変則的な特別試験になっても問題ないんじゃないかな。報酬の方は減っちゃうけど、私たちのクラスポイントならそこまで気にする事はないと感じるから私はCクラスがいいと思うな」
一之瀬さんが言い切ると柴田が「その意見に賛成だ」と肯定の意を示す。
それに続いて他のクラスメイトたちも頷きを返すと、それを見た神崎が肩を竦める。
(よし、これでCクラスに傾いたはずだ。恐らくではあるが、BやDに入れたやつにまともな考えはないだろうしな。少し手はかかったが、これでいい)
神崎があえて少数派に回ったのは確実に満場一致にするための演技だったわけだが、神崎としては上乗せのクラスポイントを狙っていたのは事実だろう。
それでも結局は一之瀬さんの意見によってCクラスへと傾いている。
「どうかな、神崎くん。他のみんなも」
「ああ、俺もその方がいいと思う」
「じゃあ、Cクラスに入れてくれれば満場一致になりそうだね」
そうして第2回目の投票でAクラスはCクラスに固まり、満場一致特別試験の初の課題をクリアする。
「満場一致により、1つ目の課題はCクラスの選択で確定します。学年末試験で対戦するクラスは正式決定したらみんなに伝えるけど、それは明日以降になると思います」
わずか10分程で1つ目の課題をクリアすることができたが、最速とはいかなかったようだ。
坂柳さんのBクラスはすでに2つ目の課題に入っており、他のクラスもほぼ同じタイミングで課題を終えていた。
「休憩は取らなくても大丈夫かな?」
星之宮先生が確認してくるも、昼休みを終えたばかりであるため、まだ便意を催している生徒はいない。
「じゃあ次。2つ目の課題に移ります」
【課題②・11月下旬予定の修学旅行に望む旅行先を選択せよ
選択肢 北海道 京都 沖縄】
「えっ……? (修学旅行……?)」
(行先決めていいの?)
(忍舞はないのか)
思わず柴田が呟いてしまうが、星之宮先生や後方の監督役から目線を向けられたことで手に口を置いて(黙ります黙ります)とアピールする。
しかし、柴田や小橋さんのようになんだこれはと思った生徒は多かった。
学年末試験の話をしたかと思えば修学旅行の行先の話だ。
無理もないだろう。
というか、忍舞ってどこだ。
「この投票先も先程と同じように、このクラスの結果だけで決まるものじゃありません。残り3クラスの状況に応じて結果が変わることもあるので、その点は理解しておいてください」
星之宮先生がそう説明してから第1回目の投票に入る。
すると結果は北海道と沖縄に半々で京都は0という真っ二つに割れる結果となった。
「満場一致とならなかったため、これよりインターバルを行います(うわぁ〜20人20人って綺麗に分かれたわね。これはなかなか時間かかりそ〜)」
星之宮先生の合図とともに10分間のタイマーが作動する。
そして、それを見つつ渡辺が言う。
「なんかこういうのもあるんだな。いやさっきみたいなのばっかりは全然いいんだけどさ」
「確かにね。けど、いいんじゃない? こういうのもさ」
渡辺や二宮さんの言うように今回の課題はあまりにも簡単ではあるし、緊張感に欠けるものだ。
しかし、これを不穏の前兆と捉えている生徒もいる。
神崎と浜口、姫野さんは前座が楽であれば後半には退学者を選べといった課題が出てくるのではと危惧している。
弛緩した者と不安を抱いた者でも割れているが、それを警戒して一之瀬さんが手を叩いた。
「よし! じゃあさっさと決めちゃおっか。北海道か沖縄か。これは互いにプレゼンして納得し合うしかないと思うんだけど」
「沖縄に入れた人は沖縄の、北海道に入れた人は北海道を推す理由を示せということか」
(そこまで仰々しくはないけど……)
いつにも増して真面目な顔で言う別府に一之瀬さんが苦笑いするが、修学旅行の行先というのは一之瀬さんや神崎の誘導で決められるようなことではない。
そう考えればプレゼンテーションは重要と言える。
『当然北海道だ』
「楠雄くん!?」
「お前から言うのか……(珍しいな)」
(斉木くん、北海道に入れたんだ……)
「待て待て、11月末で冬だから北海道とか言うんじゃないだろうな。修学旅行と言ったら沖縄だろう。夏とは違って過ごしやすいし、見るところはたくさんあるぜ(ちゅら水族館とか首里城公園とかな)」
立ち上がった僕に反論するように渡辺が立ち塞がるが、僕の敵じゃないな。
冬だから北海道?
僕がそんなつまらない理由で決めたと思っているのか?
『北海道の方がスイーツが美味い』
北海道といえば魚介や肉のイメージよりもやはりスイーツだ。
諸君私はスイーツが好きだと豪語出来る僕にはスイーツのイメージの方が強い。
北海道産牛乳を使ったアイスや生クリームはもちろん、牛乳があるならバターも作れて小麦もあるとなればケーキやクッキー……と上げればキリがないスイーツ大国ならぬスイーツ大県……いや大道か。
白い恋人にマルセイバターサンド、三方六と北海道土産の定番もスイーツばかりだ。
(やっぱり……)
(楠雄お前ってやつは……)
「それだけかよ……(スキーとか牧場とかそういうのが出てくると思ったぜ)」
一之瀬さんや柴田は呆れたように肩を落とし、対立派としては歯応えがないと渡辺も肩透かしを受けた様子を見せる。
ちっ、仕方ないな。
『僕はスイーツメインだが、北海道ならみんなが沖縄よりも楽しむことができる可能性が高いと僕は思うぞ』
「……本当にそうか?」
沖縄派である柴田が疑念の目を向けてくるが、僕はそれにニヤリと笑う。
『修学旅行が仮に2泊3日と仮定した時、北海道ならスキーは確実にあるだろう。次に札幌市を観光、あとは学習のために農業や酪農といったところだろうな』
「まぁ無難だね。それで私たちが楽しめるってのはどういうこと?」
『この中にスキー経験者が何人いるか知らないがほとんど未経験だろう。出来ないことが出来る楽しさを知れるというのもあるが、出来る人間からスキーを教えてもらえる。その相手が自分の気になる相手なら……』
悪いが沖縄派にはクラス内に片想いの相手がいるからな。
それを利用させてもらうぞ。
僕が含みを持たせて言うと、渡辺や安藤さん、一之瀬さんたちはピクっと肩を震わせる。
(網倉ってスキーできるのか? いや、俺が出来れば教えてやれるし、仮に網倉ができるなら一緒に滑ればいいし……)
(柴田くんって運動神経いいし、スキーも上手いはず……私はしたことないからもしかしたら……)
(スキーか……滑ったことないから分かんないけど……楠雄くんに教えて貰えるならあり、かも……)
(帆波ちゃんから徹底指導……!? 斉木くんは勝手に滑るだろうし……勝ったなガハハ)
これで6人ほどは釣れたな。
あとの14人はどうするかだが、説得するよりも簡単な方法があるのを忘れていたな。
「公正公平にじゃんけんで? まぁ……負けても北海道派が文句言わないならいいんじゃないかな」
「俺も異論はないぜ。覚悟しやがれ楠雄!」
小橋さんが余裕げに言うと柴田が僕の前に出てくる。
1VS1でいいのかとも思うが、これで決まるなら楽なものだ。
じゃあな沖縄派。
「さ、3回勝負だよな!?」
『ああ、構わないぞ』
僕のいない時期にまた行くといい。
それに何故か変な予知も見えたしな。
季節外れの台風で飛ばない飛行機。
飛んでも海で一之瀬さんがナンパされてそれを止めに行かされる僕。
ハブVSマングースを見せてもらえるかと思えばビデオだったり……なんだったんだろうなあの予知は。
まぁとりあえず、北海道行きは決まりだな。
経緯は異なるが北海道を選んだのはうちだけではなく、葛城や堀北さん、龍園のクラスも同じだった。
沖縄派は他の3クラスが沖縄を選んでいることを願っているが、叶わない願いだ。
第2回目の投票で北海道に40票が集まり、2つ目の課題も難なくクリアすることができた。
クラスメイトの意中の相手を把握していたり、じゃんけんで無双したり超能力を悪用してませんか……?▶︎なんのことかさっぱり
ちなみに沖縄に行くとまた一之瀬さんに制御装置抜かれて1年時の無人島試験の時と同じ目に遭うことになっていました。
くーちゃんテレポートでどこでも行けるけど強いて言うなら北海道な気がすると思ってでっかいどうにしました
理由は予知のせい2割スイーツ目当て8割
あと北海道ならゴキブリいないらしいからそれも加えよう
ちなみに修学旅行は書き始めた段階だと元Aから橋本坂柳、元Bからくーちゃん一之瀬、元Cから龍園椎名、元Dから高円寺櫛田という『僕何か悪いことしたか?』ってなる構成にしようとしてましたが、まぁどうなるかは進んでみなきゃわからん(原作だと綾小路の班に龍園と櫛田いるしね)
明日明後日は投稿ないかもです