半数ほどの不満は残ってしまったが、じゃんけんという公正公平な運にしか左右されない決め方のおかげもあって課題2も難なくクリアすることができた。
1つ目の課題よりも易しい課題であったため、次の課題はなんなのかとどこか前向きな反応をするクラスメイトが増えた中、星之宮先生の声のトーンが1段階下がる。
「(うわ、面倒な課題……)じゃあこれから3つ目の課題に移るよ」
チェンジオブペースの緩急のように、易しい課題と面倒な課題を交互に織り交ぜてくる方式なのか、ここまでの楽な課題からは流れが変わる可能性が出てきた。
【課題③ 毎月クラスポイントに応じて支給されるプライベートポイントが0になる代わりにクラス内のランダムな生徒3名にプロテクトポイントを与える。
あるいは支給されるプライベートポイントが半分になり任意の1名にプロテクトポイントを与える。
そのどちらも希望しない場合、次回筆記試験の成績下位5名のプライベートポイントが0になる。
※どの選択肢が選ばれても、プライベートポイント没収期間は半年間続く】
長いな。
しかし思った通り、これまでの課題とは赴きがかなり異なっている。
クラスにとって大きなメリットとデメリットを内包したものが出題された。
最初の選択肢では失うプライベートポイントも大きくなる分、見返りも大きくなる。
その反面、2000万ポイントの価値のあるプロテクトポイントがランダムな生徒に与えられてしまうというのは一之瀬さんや神崎としては見過ごせないのではないだろうか。
プロテクトポイントは退学者を出したくはないというこのクラスの理念を貫くためには必要不可欠になるシステムだ。
だが、付与される生徒の気質や能力によっては3年間不必要のまま終わる生徒もいるだろう。
そういった生徒に付与されてしまえば、豚に真珠、猫に小判ということわざを使ってしまうことになる。
プロテクトポイントは持ってりゃ嬉しいただのコレクションじゃあない。
2番目の選択肢も振り込まれるプライベートポイントが半分になると書かれているが、クラスポイントの少ないクラスならともかく半年も没収されるのはかなりの痛手だ。
その割には付与されるのは1人だけ。
任意の生徒を選べるのは重要ではあるが、リスクとリターンは見合っていないように感じる。
最後の選択肢は、極力プライベートポイントの損失を抑えることができ、クラスメイトのほとんどはこの選択肢を選ぶ意向のようだ。
5人とは言えデメリットを負うことになるが、残りの35人が獲得するポイントから均等に割り振ってやれば大きな苦にはならないだろう。
色々と考えはしたが、まずは投票をする以外に道はない。
「投票の前に選択肢2、つまり特定の生徒に付与する選択肢で満場一致になった場合のケースを話しておきます。この選択肢2で満場一致になった場合は、課題3クリアとはならず引き続き1名を決定する次の選択肢に移行します。例題のことは覚えているよね?」
インターバルの間に立候補か推薦などの形で1人を選んで、その生徒に賛成するか反対するかを決めることになる。
満場一致になれば試験はクリアになるが、反対で満場一致になればこの課題中に限りその生徒は選択肢から外される。
そして、残った39人でまた立候補か推薦かをして1名を選択して、再び投票して賛成で満場一致するまで課題を続けていく。
終わりがあるからマシではあるが、面倒なことには変わりない。
これらの点を踏まえた点で1回目の投票を終えると、ランダムな3名に付与は2票、1名を選び付与は13票、付与なしは25票という結果だった。
その結果に筆記試験下位5位に名を連ねているメンバーは不服しそうにしつつも、一之瀬さんの意見を待つ。
「プロテクトポイントはあって困らないけど、私たちのクラスなら退学を救済するためにポイントを貯めてるし、それに特別試験の内容によってはプロテクトポイントが機能しないっていう試験もあるから必ずしもいいものじゃないって感じがするんだよね」
「それはそうだけど……でも半年間ポイントが貰えないのは……」
「それも心配ないよ。毎月振り込まれなくなる5人分のプライベートポイントはクラスのみんなで捻出して均等に配分したら問題はないんじゃないかな?」
一之瀬さんの考えにクラス一同は「おぉ……」と感嘆の声を出すが、今日の一之瀬さんはキレキレだな。
リーダーとしての素質はないと卑下していたがそんなことはないんじゃないだろうか。
「一之瀬の意見はわかったが、しかし本当にプロテクトポイントは必要ないのか? お前の言うようなケースもあれば逆に2000万ポイントでの救済が認められないケースもあるかもしれないぞ」
「学校側が2000万ポイントで救済できるって提示している以上、それは無いんじゃないかな。退学する生徒が2000万を所持していて使えないってケースでもない限りは(うちのクラスでプロテクトポイントを持ってるのは金庫番の楠雄くんだし)」
一之瀬さんに即座に切り返された神崎はすぐに押し黙るも、そこに柴田がぎこちなく手を挙げた。
「プライベートポイントを均等に配るって言うけど、そっちの方が結局損ってことにならないか? うちは毎月10何万ってポイントがもらえるけどよ5人が0になるだけで50万消えて、それの補填に35人が350000集めて均等にしたら7万だろ? そっからさらに毎月集めてるポイント差し引いたら厳しくねぇか?」
前までは下位5組に名を連ねていた柴田だが、ペア試験以降徐々に成績を伸ばしている。
そのため当人はポイント0の候補にはならないにも関わらず、柴田が自分の意見を口に来る。
それには周囲も、星之宮先生も驚いており目を丸くしていた。
「な、なんだよ……俺変なこと言ったか?」
「いや、シバータにしてはまともなこと言うなぁって……」
小橋さんが全員の意見を代弁すると柴田は(俺いつもまともじゃないってことか……?)と首を傾げる。
そんな中で口を開いたのは姫野さんだった。
「柴田くんの言うことは一理あるよね。50万損するのに、プロテクトポイントはなしなんてさ」
「なら、姫野はどうするべきだと思うんだ?」
神崎が問いかけると姫野さんは頬杖をついて手を机から離して答えた。
「私はポイントを減らすことになるならプロテクトポイントを手に入れておくべきだと思う」
そう言って姫野さんは一之瀬さんを見た。
「一之瀬さんにプロテクトポイントを付与しといた方がいいんじゃないかな?」
「私?」
「(他に誰がいるの)ランダムでも3人の方が魅力的かもしれないけどさ、私とか目立たない生徒に付与されても宝の持ち腐れになるし、それなら退学になったら困る人にちゃんと与えておくべきだと思う」
姫野さんが言い終えると、網倉さんと白波さんも手を挙げた。
「私も姫野ちゃんに賛成。帆波ちゃんにプロテクトポイントを付与しといた方がいいと思ったんだ」
「わ、私も!」
一之瀬さんに近しい女子のほとんどは選択肢2に入れていたようで、安藤さんや小橋さんも頷く。
姫野さんの意見を聞いた神崎も顎に手を添えて「確かに」と賛成の反応を示す。
「斉木と一之瀬にプロテクトポイントがあれば、他クラスからの攻撃も恐るるに足らずにはなるか」
「でも、他の子が狙われたりしたら……」
不安そうな声を出す一之瀬さんに小橋さんが笑った。
「その時は2人が助けてくれるんでしょ? そう信じてるから私は帆波ちゃんに託したいと思うんだ」
姫野さんの勇気ある意見にクラスメイトたちは賛同の意を示す。
一之瀬さんなら自分はプロテクトポイントがあるから退学しなくて済むという驕りや油断もしない。
高い買い物ではあるが、その価値はあるとクラスメイトたちは判断した。
結果、課題③は一之瀬さんにプロテクトポイントを付与という形で終わりを迎える。
これから半年間はプライベートポイントの振込は全員が等しく半額になるものの、不足の事態の備えが出来たと考えれば安いものとみんなは考えているようだ。
再び休憩を挟むことなく、次の課題へと移行する。
【課題④ 2学期期末筆記試験において、以下の選択したルールがクラスに適用される。
選択肢 難易度上昇 ペナルティの増加 報酬の減少】
クラスにとってはデメリットばかりだが、このクラスと坂柳さんと葛城さんのクラスでは難易度の上昇とペナルティの増加はされてもあまり効果はないだろうな。
ペナルティの内容が不明瞭ではあるが、いつもの筆記試験であれば平均点の半分以下が退学対象になるくらいだったが、平均点以下はプライベートポイントを没収などのリスクが増えるのかもしれない。
第1回目の投票結果では難易度上昇に2票、ペナルティの増加に30票、報酬の減少に8票となった。
「今のクラスの学力ならペナルティが多少上がっても問題ないと思うけど、どうかな?」
2学期の期末試験の問題の難易度は読めないものの、変則的なことをしてこなければ真面目に取り組んで70点以上は取れるようになっている。
成績下位のメンツも50点は取れることから、いつも以上に勉強に取り組み、分からないことがあればすぐに成績上位者に聞けばいいと神崎も言う。
「おめぇの出番だぞ楠雄!」
成績最上位は僕だったな。
教えてやるのは構わないが、柴田みたいに点数が伸びなかったら二度とやらんと条件をつけて承諾する。
こういう言い方をすることで柴田のように自信のある者以外は一之瀬さんや神崎のところに流れていくからな。
(でもなんだかんだ言って面倒みるんだろうなぁ……)
(楠雄はツンデレだから見放したフリしてアフターケアして次に備えさせてくれるタイプだよなぁ)
そう思っていたが一之瀬さんや柴田から暖かい目を向けられてしまう。
僕はそんなに良い奴じゃないぞ。
とりあえずはペナルティの増加という選択肢で満場一致が果たされ、制限時間が5時間のうちのわずか45分ほどで最後の課題へと辿り着いた。
最後の1問が終われば特別試験はクリアとなり、クラスポイントが50与えられることになっている。
そして、最後の課題が発表される。
【課題⑤ クラスメイトが1名退学になる代わりに、クラスポイント100を得る
※賛成が満場一致になった場合、退学になる生徒の投票を行う】
選択肢は賛成と反対の2つのみで、非常にシンプルだ。
1人を退学させれば、クラスポイントが100得られる。
しかし、このクラスにおいてはそんな考えを持つ者はいないようで選択肢をバラけさせると決めていた神崎と一之瀬さん以外は反対へと投票していく。
一瞬ダークサイドに堕ちかけていた白波さんが(斉木くんがいなくなれば帆波ちゃんが……私のものにはならないっ!! くぅっ〜! あの頭スイーツメガネめ!)と八つ当たりを受けていた。
愛は人を狂わせるんだなと両親以外で初めて見たかもしれないなと狂気を感じつつ投票を終える。
60秒の投票タイムは20秒程で終了して、全員の投票が終わる。
【第1回投票結果 賛成2票 反対38票】
「(この1票は……いきなり満場一致にならないように対策してただけ、だよね)満場一致にならなかったため、インターバルに入ります」
星之宮先生がそう言うと、柴田が口を開いた。
「どっひゃー!? おいおい、2人も間違えて賛成に入れちまってるぞ! (流石に冗談だよな?)」
危機感なく、クラスの雰囲気を明るくしようと柴田がクラスメイトたちの方を見ながら言う。
(賛成に2票か。1人は分かっているが、もう1人は誰だ? BクラスやCクラスでクラスポイントが欲しいという時なら俺も賛成したかもしれないが、今のクラスの位置ならそんな必要はない)
神崎もまた少し動揺しているようだったが、誰が票を入れたのかを探る為にクラスメイトの顔を窺う。
「賛成に投票した内の1人は私だよ」
「えっ!? い、一之瀬が!?」
「大丈夫だよ、柴田くん。ここまで黙ってたけど、私が賛成に入れたのは第1回目の投票で満場一致にならないように神崎くんと1番上と1番下の選択肢に投票しようって調整してたからなんだ」
「そ、そっか……心臓飛び出るかと思った……」
それなら先に言っておいてくれよとは柴田は言わなかった。
おそらくがそれを事前に伝えられることで、適当に投票させることを避ける目的もあったと考えついたからだ。
あいつもあいつで考える力がついてきたな。
「じ、じゃあ、あと1人は……?」
そればかりは考えてわかるものではない。
一応、今回の試験で空助が何かしらの手を加えてくるのではないかと危惧してはみたが、僕も含めてクラスメイトの投票は全て選択したものが通っている。
あいつの事だから今は1年生の授業をしていてもトラップを仕掛けているのではと危惧して、あえて賛成に入れてどうなるか試してみたが、わざと入れた2人の2票が反対に投じられているのを見るに特に問題は無さそうだ。
まさか誰も僕が賛成に入れたとは思わないだろうが、このまま黙っていると人狼ゲームが始まってしまう。
『すまん。僕が入れた』
「楠雄が!?」
『いきなり満場一致になっても良かったが、一応は議論はした方がいいんじゃないかと思ってな……まさか一之瀬さんと神崎がそんなことを決めていたなんて知らなかった杞憂だったな』
我ながらスラスラと嘘が出てくるなと感心していると、クラスメイトたちの顔がこちらに向く。
どんな顔をしているかはわからないが、もはや表情筋の動きも骨になってしまって分からず、39人の骸骨が僕を見ていた。
(絶対気づいた上で投票してるな……)
(議論した方がいいと思ったのは本当だと思うけど、私と神崎くんが調整してたことには気づいてたよね……)
おそらくはジトっとした目線を向けられているのであろうことが分かり、僕は素直に手を挙げて降伏のポーズを取る。
『この教室に100ポイントで切り捨てていいクラスメイトなんていないと思っているから安心しろ』
僕がそう言うと一之瀬さんたちが一斉に目を逸らす。
(く、楠雄くんがデレた!?)
(やば! クール男のデレ! えっ!? カメラ回ってるわよね! 今の保存してみんなの携帯に送りたいわ!!)
1番教師が荒ぶっているがクラスメイトの反応は概ね似たようなものだった。
100ポイントじゃ安いだろ。
まぁ1000ポイントとかになるとやり過ぎではあるし、下位クラスほど切り得になってしまうしな。
全クラス共通の課題となれば公平性を保つための最低限のラインだったのだろう。
こうして最後の課題も無事に満場一致となり、特別試験は1時間を待たずに終了となった。
校内に残ることは許されないものの自由時間が得られた。
ただし試験時間の5時間が経過するまでは寮の自室にいなければならないが。
「ちなみにこのクラスが1番最初に終わったから他クラスを邪魔しないようにね〜。先生達がこれから誘導するから静かに席を立ってね」
星之宮先生にそう促され、試験が終わった喜びを抑えながら生徒たちは席を立ち、教室から出ていく。
他のクラスの様子を見てみるが、やはり修学旅行の行き先と最後の課題以外はすんなり終わっているようだ。
過程は違えど、どのクラスも最後の課題に突入しているが、Bクラスは退学者なしの結論に至り、Cクラスは高円寺が100ポイントを放棄する代わりに1万プライベートを要求し反対で可決し、Dクラスも多少は揉めたようだが最終的には退学者なしの結末になったようだ。
終わってみれば呆気なかった。
誰もがそんな結論を下すような満場一致特別試験は終わりを告げた。
勢いで書いたからガバがあったら許してネ
これで5巻は終わり!
空助介入しないんか?ってしてみろよ、これで関係ない生徒になんかあったらくーちゃんが告げ口して魔魔降臨するぞ
みんな空助が試験に介入してくるのを望んでるみたいですが、あいつはルールの補強とかはしても中身そのものを弄ることはしなさそう
くーちゃんとの決着はくーちゃんに難癖つけられないように自分の用意した舞台でつけたいだろうしね
それはそれとして普段の生活での嫌がらせはすると思います
他クラスの結果は概ね原作通りです
退学者出して100ポイント手に入れるべきではとも思いますが、ここで1人切ってるようでは斉木楠雄には勝てないとリーダー陣は思ったのでクラスの意見を聞いてから、反対に持っていってます。
高円寺は原作通り1万円のお小遣いもらうためにごねました。
原作だと一之瀬のプロテクト剥がれてて、他のプロテクト持ちいないという話でしたが、今作はくーちゃんに付与されてて一之瀬が丸裸なので付与しとくかーってことで付与。
くーちゃんは剥がされることないけど、一之瀬はわかんないからね。
佐倉も退学してないので文化祭がつよつよメンバーになってますが、一之瀬たちはどうするのか。
では長くなるのが目に見えてる6巻でお会いしましょう
シーユー
空助がくーちゃんの誕生日をおもらしして、お世話になったからという理由でくーちゃんに誕生日を押し付ける回をどこに入れるか悩んで結局入れれてない話もここに置いておくぜ!
概要をいえば、寮とかの前でメインメンバーがほぼいるところに空助が来る▶︎「遅くなったけど誕生日祝い」と言ってコーヒーゼリーの詰め合わせを渡してくる
一同「誕生日!?」
空助「あれ知らなかったの?楠雄先月誕生日だったんだよ。僕はバタバタしてたし、教師になるサプライズしたかったから遅らせてたんだけど……みんな楠雄と仲良いと思ったら知らなかったんだ」
楠雄『僕が教えてないからな』
ってな感じでみんなが急いで誕生日プレゼント買い集めたり作ったりする
一之瀬、櫛田、椎名、坂柳、橋本、綾小路、高円寺、龍園あたりは確定でくれる。
神崎、柴田、小橋、網倉とかはクラスでって形でくれそう。