人影が、河原にひとつ。

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初投稿です。


第1話

子供だ。

大小様々な石の転がる河原に、1人ちょこんと座り込んでいる。

 

「君は、積まないの?」

 

『……わたしは、つまなくてもおこられないの。』

 

問い掛ける者のシルエットは、青年と言ったところか。

話しかけられた子供は一瞬だけ青年の方を見て、また川の流れに視線を移した。

耳を澄ますと、数十メートルほど離れた河原から、子供の声が聞こえてくる。

その子たちは多少の差こそあれど、彼の目の前で座る子供と同じような背丈をし、この子供とは違って、誰もがひたすらに石を積んでいた。

 

「…………君は、どうして積まなくても怒られないんだい?」

 

向こうでは、積み続けることに耐えきれず、泣き出してしまった子供が、大人に怒られている。

 

『わかんない。でも、おこられないのも、たのしくないよ。』

 

そう言って、子供は、おもむろに足元に転がる石をひとつ掴んだ。その石を地面の上に置き、慎重に積み上げていく。

 

『…………。』

 

あっという間に、子供の背丈ほどまで石が積み上がった。そして、子供はそれをしばらく見つめていた。

 

『えい。』

 

「あっ……。」

 

石が、音を立てて地面に散らばる。

石の塔を倒したのは、子供だった。しかし、間違って倒したときのような焦りも、驚きの声も、子供からは何ひとつ出てこない。

そして、再び河原に座り込む。ぽつりと、口を開いた。

 

『おとうさんとおかあさんをね、まってるんだ。』

 

『いっかい、きてくれたけど、あのときはつれていってもらえなかったから。』

 

『こんどきてくれたときに、つれていってもらうんだ。』

 

『………………。』

 

『あ、そういえば、おもいだしたよ。』

 

『おにさんにおこられなくなったのは、さいしょにおとうさんとおかあさんがきたとき。』

 

その子供は待っていた。お迎えが来て、一緒に連れて行ってくれるのを。

ただ、それにしてはその語りには期待の感情も、抑揚も、何もこもっていなかった。

 

「…………せめて、向こうで他の子達と一緒の方が……。」

 

『やだ。だって、みんなすぐにいなくなっちゃうんだもん。』

 

青年は、ちらりと子供の集まる方を見る。ひとりの子供の傍に、大人がふたり、駆け寄って抱きついていた。その子供が泣いている。大人も泣いている。

青年が視線を戻したが、座り込む子供は、そちらを見向きもしていなかった。ひたすらに、向こう岸の見えない、広い川を見ている。

子供がまたひとり、河原から居なくなった。

 

『ねぇ、おにさんはしってるの?』

 

子供が尋ねる。

 

「……何を、聞きたいの?」

 

青年は、表情を少し歪めながら返す。

分かっているから。

この子供の求める答えは、自分には出せないと。

 

『どれくらい積んだら、おとうさんとおかあさんはきてくれるのかな。どれくらいいいこにしてたら、おとうさんとおかあさんは、わたしを…………ほめて、くれるのかな。』

 

「………っ。」

 

青年は思わず、子供から顔を逸らした。

子供は相変わらず青年に背を向けているというのに、親からの愛を求める、切実なまなざしに見つめられているように思えたから。

 

『しってるの?それとも……しらない、の?』

 

今にも泣き出してしまいそうな、震えた声。

最初に耐えられなくなったのは、青年の方だった。

 

「………………ごめん。」

 

その言葉だけを残して、くるりと踵を返した。「仲間が呼んでいるんだ、このままここにいたら、叱責されてしまう。」視界の端に映った、年配の鬼がこちらに手を振る姿を心の中で、言い訳にして。

 

『ま、まって!』

 

青年は既に歩き出している。

 

『おいてかないで、わたしのこと、たたいたり、なぐったりしても、わたし、なかないから!』

 

引き留めようと、子供は立ち上がって青年の袖を掴もうとするも、足に枷でも嵌められているかのようにその場で転んでしまう。

 

『いかないで、いかないで……。』

 

その姿が見えなくなり、嗚咽が聞こえなくなるまで青年は振り返らなかった。

 

 

もうどこにも居場所の無い子供は今日も待っている。

お迎えが来ることを。

また、自分の居場所が出来ることを。

 




お目汚し失礼しました。

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