石の世界で農業チートしてたら比べ物にならん程のチートがワラワラ湧いてきた件 作:史上最強のラーメン
今回から司帝国決戦編です。だいぶ端折りつつ書きましたが、長くなりすぎたので分割しました。できれば2話以内で終わらせたい!
「VS司帝国本土決戦、STONE WARSの開戦だ……!」
冬の終わりを半月後に控えたまだ肌寒い季節のこと。千空は不敵に笑い戦争の始まりを宣言した。
ずっとこちらの動きを監視していたほむらを、閃光弾とネットのコンビで捕らえた後、クロム、ゲン、マグマの実行部隊の3人は携帯と保存食を持って一直線に司帝国へ向かった。
ゲン達が司帝国内に携帯を仕込んでくるまで、石神村に待機している人員は特にやることが無い。
千空もなにか色々と準備をしていたが、特に焦っている様子でもなかったので、良い機会だと思いスイショウは千空に尋ねる。
「で、千空。俺なんにも作戦の内容聞かせされてないんだけど、そろそろ教えてよ」
「あ゛ぁ?だから前に伝えただろうが。スパイやってる大樹と杠に携帯を届けて、隙ができたら連絡取り合って一気に奇跡の洞窟を制圧すんだよ」
千空が口にした作戦は、携帯を作り始めた頃に話していた内容と全く一緒のものだった。
しかし、この数ヶ月千空を見てきたスイショウからすると、違和感しかなかった。この世界で一番と言って良いほどに頭のキレる人間が、他の作戦を用意していない訳がないのだ。
「……千空の作戦がそれだけで終わる筈がないだろ?」
「ククク、そりゃ100億%買い被りすぎっつう話だ。俺は血を見るのも苦手な現代の学生だぞ。戦いの作戦なんて上手く立てられる訳がねぇだろ?」
「その作戦だけだと不測の事態に対応できない。もし本当に作戦がそれだけなら、俺は長として村人達に戦えと命令することはできないな」
あんなに大きな電話では、頻繁に連絡を取り合うことは不可能だ。
司と氷月が不在の時を狙って攻撃を仕掛けたとしても、例えば、どちらかが忘れ物で急に戻ってきた場合などの不測の事態に対応し辛いのだ。
「なぁ千空、本当にそれだけなのか?なにか妙案があるんだろ?正直に話してくれ」
千空のことは信頼しているし信用もしているが、ここは引いてはいけない時だ。千空の科学知識におんぶに抱っこの状態とはいえ、この戦争には村の命運がかかっているのだ。少なくとも長である自分は、本命の作戦を知っておかねばならない。
スイショウは千空から一切目を逸らさずに問い詰める。すると、千空は観念したように息を吐いてから、口を開いた。
「……普段はただのシスコンのガキだが、この村のトップ張ってるテメー相手にこれ以上シラを切んのも筋が通らねぇか。それがどんなに胸糞悪ぃ内容の作戦であれな」
「おーい、シスコンのガキは余計だぞ」
「事実だろうが。仕方ねぇ、テメーには作戦の概要を伝えてやる」
千空は作戦の概要を話してくれた。その内容をまとめると、
作戦には、最近石神村の創始者様の墓から発見されたレコードを使う。レコードには、村の創始者様である千空の父親の声と、3700年前の世界的歌手のリリアンという人の歌が録音されており、リリアンの名声を利用させて貰うのだとか。
手順としては、まず大樹と杠がこっそりと司帝国の人間を携帯の元に連れてくる。
携帯越しにゲンが声帯模写でリリアンの声を真似て、リリアンの生存とアメリカが復興していると偽る。疑う者には、レコードに録音された歌を聞かせる。
司帝国の人間は、大半が長いモノに巻かれているだけなので、アメリカが復興していると知れば寝返る。
敵の大半が寝返れば連絡も取りやすくなるなり、そして数の暴力で一気に制圧できる。
このような感じらしい。当然リリアンの生存もアメリカの復興も嘘であるため、偽の希望を見せた千空やゲンは戦後恨まれることになる。そんな作戦の片棒を担がせないために、村の人間には秘密にしていたようだ。
「なるほどなぁ……だから秘密にしてたのか」
「あぁ。村の連中には黙っておけよ。地獄に落ちんのは俺達3人だけでいい」
「別に地獄に落ちるほどのことでも無いと思うけどなぁ……でも分かった、絶対に秘密にする。にしてもさ、ゲン優秀すぎない?この作戦もゲンの立案なんでしょ?よくそんな有能をコーラ一本で仲間にできたな」
「ククク、確かにな。コスパが良いどころの話じゃねぇ、もはや錬金術だなありゃ」
口は回るし腹芸も出来る、その上マジックの達人。地道作業も文句を言いつつもしっかりと完遂してくれる。3700年前の人間はチートばかりか?と思う程にゲンは優秀だった。
そんな男がコーラ一本で獅子王司を裏切って、こちらサイドに付いてくれたのは軽く奇跡だ。
「ゲンといえば千空、敵を寝返らせて司を一気に叩くって作戦ならさ、俺も一つアイデアがあるんだけど」
「年齢詐称野郎様久々の悪知恵ってか?いいぜ、聞いてやろうじゃねえか」
「うん。とは言っても、この前ゲンが話してたことを少し改良しただけなんだけど。作戦実行にあたって千空に作って欲しいものがあって」
「ゲン達が戻ってくるまで急ぎでやる事はねぇからな、作ってやるよ。なにがご所望だ?」
「バーベキューコンロ作れる?」
「あ゛ぁ?なんでそんなもん……あ゛〜、そういうことか!ククク、下手すると俺らの作戦よりも100億倍性格悪いんじゃねぇか?」
以前、ゲンが口にした食べ物で内乱を誘発するという作戦。却下されたが、スイショウ的にはアリだと思った。
内乱のような地獄を引き起こすつもりはないが、実際食べ物で誘惑するというのは、戦意の低下や降伏を促せたりと非常に有効だろう。
「いやいや、慈善行為さ。原始的な生活を送っている司帝国の方々に、豊かさを追い求める心を思い出して欲しいっていうね」
「建前はいい。本音を言いやがれ、本音を」
「獅子王司のカリスマ政治にヒビを入れる……!飽食の時代を生きた人間にも炭火で肉を焼く香りは途轍もない誘惑だろう?どちらにつくか心揺れる奴は絶対に現れる!仮に離反させられなくても、迷わせた時点でコハク達が制圧しやすくなる。得しかないんだよこの作戦は!」
司帝国は、獅子王司の圧倒的な武力とカリスマにより成り立っている。しかし当然、石化から復活しても行く当てが無いからという理由で従っている人間もいるだろう。
加えて、司の石像破壊に疑問を抱いている人間も絶対にいる。司の理想は、『既得権益を生む科学文明の否定と、純粋な若者だけが生きる理想郷を作ること』らしく、司の理想通りの世界を作るならば、いずれ彼らの両親も殺されてしまうのだ。
獅子王司がそのような理想を掲げていない清廉潔白な統治者ならば、切り崩すのは容易では無かったが、つけ入る隙は幾らでもあった。人間は豊かさを忘れられない生き物なのだ。豊かな現代文明に慣れ親しんできた人間達を美食一つで分断することなど容易い。
「もし司のカリスマ性が想像以上に強力で、『科学王国の美味そうなメシは全部支配して奪ってやんぜ!』っつう蛮族ばっかだったらどうすんだ?」
「ないな!もう少し時間が経っていたら分からなかったが、人死にと無縁の世界に生きていた人間がそんな急に、殺して奪うなんて思考になれるわけがない。司や氷月が異常なんだよ。あと戦闘が片付いたら普通にみんなでBBQしたい」
「おい最後サラッと言いやがったな。私欲溢れまくってんぞ」
なんだかんだ言いつつも、千空は設計図を書き上げてくれた。カセキを連れてきて作業に移る。当然スイショウも手伝いをした。
「あ、網の高さ調整できるようにしてくれない?」
「ほっほ〜、相変わらずお主は注文が多いの〜」
「要らねーだろ。火加減なんざ炭を積む高さで調整できんだ。今回は最低限でいい」
すぐにバーベキューコンロは完成した。想像していたよりは小さいが、司帝国まで持ち運ぶならこのくらいのサイズが丁度いいだろう。
「他に必要なもんはねぇか?」
「追加で音爆弾も作って」
「おう、いいぞ」
「あともっと頑丈なネットも」
「あぁ」
「閃光弾も」
「おう」
「サングラ───」
「注文多いなテメー!!もっと事前に言っときやがれ!」
なんやかんや言いつつも、千空は要望した全ての物を作ってくれた。
そして翌日、クロムとマグマは戻らず、ゲンが1人で帰還した。
〜〜〜
司帝国内の千空の墓に携帯を隠すことに成功したクロム達だったが、羽京という聴覚の非常に優れた敵に見つかってしまったらしい。マグマとクロムが協力して、作戦の要であるゲンを逃してくれたおかげで、無事、携帯を用いた司帝国分断作戦を始めることができた。
その結果、科学王国は大樹と杠の監視役である、ニッキーという人物をなんとかこちら側に引き込むことに成功する。これで大樹達を監視する者がいなくなったため、作戦を進めやすくなった。
「クロムが捕まっちゃったんだよ!?」
ゲンが戻ってから数時間後に、1人で帰還したマグマが息を切らしながら報告をした。クロムが囮になってマグマを逃したのだという。
「科学グッズ全部持って全軍出撃だ!今からソッコーで自動車を作んぞ……!」
クロム救出のため、また、沢山の荷物を運搬するために蒸気機関の自動車を作ると千空は言い出した。
早速、村のマンパワーを総動員し自動車製作に当たる。
「まぁ実際大丈夫でしょ。クロムはルリ姉をおいて死んだりなんか絶対にしないし、仮に死んでも、ヤベー!とか叫びながら蘇ってきそうだしな!」
「あ゛ぁ〜、実際司軍にしてみりゃ、クロムなんざただのヒョロガリの雑魚村人だ。人質としてご丁寧に幽閉されてるだろうよ。余計な口叩きさえしなけりゃ安全だ」
「クロムだぞ?余計な口を叩かなければ安全?クロムだぞ?」
コハクの言葉を聞いて、全員の背に冷たい汗が流れる。嫌な信頼がクロムにはあったので、科学王国は作業スピードを上げた。
そして数日後、この原始の世界に蒸気機関の自動車が誕生した。その名もスチームゴリラ号。
「千空、キッチンカーは作らないのか?」
「ねーよ。どこに需要あんだそんなもん」
車に手早く荷物を詰め込み、隠居を村に残して科学王国は進軍を開始した。
そして1日ほどかけて、司帝国付近の崖に到着する。
「ここをキャンプ地とする!」
「生産設備は下だ。大量の木で少しでも煙を誤魔化す!」
崖下にて、スイショウと千空主導で野営の準備をする。
すると突然、望遠鏡で周囲を警戒していた筈のコハクが、血相をかいてスイショウの元へやって来た。
「大変だスイショウ!スイカが1人で偵察に行ってしまった!」
「は?」
その報告を受けて、スイショウは間抜けな声を出すと共に、心臓が跳ね上がった。 そこからしばらく、嫌な想像をしつつ落ち着かない時間を過ごしていると、スイカが草むらからひょっこりと帰ってきた。
「すごい警備だったんだよ」
「でかしたぞスイカ!!」
結果としてスイカは特に怪我も無く、無事にクロムの居場所を特定して帰還した。スイカの勇敢な行動を村人達は絶賛していたが、スイショウの内心は酷く複雑だった。
「スイカ、無事で良かった……!次からは絶対に1人で動かないでくれ。敵に捕まったりでもしたらどうするんだ!」
「ごめんなんだよ……でも、スイショウはいつもそうやってスイカを子供扱いするんだよ。スイカだって、みんなのお役に立ちたいんだよ!」
理解している。スイカは、いつでも人のお役に立ちたいと願う優しい子だということを。そして、周囲の人間と自分を比較してしまいがちな子だということも。
彼女が危険も顧みずに単独行動をしてしまった原因は、間違いなくスイショウ自身にもある。あるのだが……
「スイカの気持ちは分かるけどな、心配なんだよ!せめて一言言ってから偵察に行ってくれ!」
「でも村のみんなは褒めてくれたんだよ!」
「確かにそうだけど、俺の気持ちも考えてくれ!」
スイカの隠密能力は有用で、これからも彼女の力に頼らざるを得ない場面は多いだろう。それでも、心配している者の身にもなって欲しいのだ。
「スイカはスイショウみたいに頭が良くないから、こんな風にしかお役に立てないんだよ!スイカだってスイショウに負けないくらいお役に立ちたいんだよ!家族なんだよ!?」
「お役に立っても立たなくても、俺達は対等な家族だろ!ただそこに居てくれるだけで良いんだよ!分かってくれよ!!」
スイショウとスイカは、数年ぶりとなる喧嘩を始めてしまった。
「あ゛ぁ〜、チビ共が喧嘩してやがるが、これは止めた方がいいやつか?」
「いや、放っておけ。家族なのだ。喧嘩の一つや二つくらいして当然だろう」
千空が頭を掻き、コハクが温かい目を向ける中、2人の言い争いは続いた。
その後しばらくの間2人は口を利かなかったが、お互い少し熱が冷めた頃に、どちらからともなく素直に謝ることができた。スイショウはキツく言い過ぎたこと、スイカは勝手に行動したこと。お互いに反省し仲直りをするのだった。
たまにはこの様に、気持ちを吐き出すことも大事なのかもしれない。但し、2度とやりたくは無いが。
〜〜〜
カーボンの盾を開発し、更に、自動車を一発限りの砲弾を搭載する戦車へと改造するなど、科学王国は着々と戦闘への準備を進めていた。
毎度の様に全員で役割分担をし、地道な作業を繰り返していると驚くべき事態が発生した。
「帰ってきたぜぇぇぇ!!」
「クローーーム!!!よく帰ってきたな!!!」
司帝国に捕まっていたクロムが、まさかの自力で脱獄をし、科学王国の野営地へと帰還を果たしたのだ。
「ハッ、あまり心配していない様な言い草だったがスイショウ、キミが一番嬉しそうじゃないか」
「おうおう、俺のことヤベーくらい大好きかよ!もっと普段から俺に甘えてもいいんだぜ?テメーは弟みてぇなもんなんだからよ!」
「あぁ、大好きだが?」
「お、おう。流石にそこまで真っ直ぐに言われると照れるぜ」
「ちなみに兄とは思ってない。いいとこ近所の同い年のガキンチョ。一緒にうんこつつく様な仲の」
「やっぱコイツ可愛くねぇ!」
帰ってきたクロムに大量の水と食料を与え、食べ終わるや否や、早速作業に従事させた。
「いきなりスパルタ過ぎねぇか?」
「ルリ姉を心配させた罰だ!精一杯働けい!」
スイショウが容赦なくクロムをこき使う横で、ゲンは内通者を増やす心理戦の準備を。千空たちは科学クラフトを進めている。
そんな中で、千空が巨大なビンに大量の硫黄と炭を入れていた。その光景を見たスイショウは、ある提案をする。
「なぁ千空、その火薬の素なんだけど、一つのビンに纏めるのは危険じゃないか?ただでさえガタガタ揺れる車だ。割れる心配があるし、分散させといた方が安心だろ?」
「確かにな。他の薬品も分散させとくか」
「あとついでに、俺にも火薬の調合の仕方教えて。もし千空が怪我して動けなくなった場合に誰かが代わりにできた方がいいでしょ?」
「おう、なら俺にも教えろよ千空!」
「ククク。スイショウテメー、アホほど慎重だな。だが確かに、俺がブッ刺された場合に備えて代わりをやれる奴は用意しといた方がいいわな」
千空は不敵に笑うと、スイショウとクロムの前に、中身の入ったいくつかのビンを並べた。
「調合の方法と、ついでに完成した火薬をどうやって爆弾にすんのかも教えとく。俺が動けなくなったときのために覚えておきやがれ!メンタリスト、テメーもだ!」
「えぇ、俺も!?爆弾なんて物騒なもの、あんまり扱いたくないんだけどな〜」
大勢の人命がかかっているのだ。あらゆる場合を想定して、この位は準備しておいて当然と言うもの。
その後、これ以上司の石像破壊に加担したくないという羽京と、『この戦で誰も犠牲者を出さない』という約束の下、協力関係を得ることに成功する。
元々無血開城が目的だったが、絶対に犠牲者を出さない戦いをする必要が出てきた。そのためには大砲で威嚇射撃をし、敵をパニック状態にした上で反撃を許さないほどの速攻を仕掛ける必要がある。
そして、ついにその時が来た。
大樹と杠が科学王国に合流し、その数時間後、内通者から、『司と氷月が奇跡の洞窟から離れた』との連絡があった。
息を潜め、こっそりと奇跡の洞窟の側に移動する。警備をしている敵は、約15名。
「みんな腹を括れ!この20秒で全人類の命運が決まるのだ……!!」
コハクの喝と共に、科学王国は総攻撃を開始した。鼓膜を揺らす大砲の爆音が響き渡ると同時に、戦闘員が一斉に飛び出す。
スイショウは戦闘を仲間に任せて、ゴーザンと共にBBQの準備をはじめるのだった。
いつも感想、評価、お気に入りに登録、誤字報告などありがとうございます!
料理シーンはかなり長いですが、今後も描写してもよろしいでしょうか?
-
YES
-
NO