「うーん...」
「どうなさったんですか?」
とある芸術家と助手の二人。
大して名のある者たちではなかったが、一部の者たちからはそこそこ好評で
食いぶちがなくなることはない程度には名のある二人。
そんな二人は次の作品をどんなものにしようかと頭をひねっていた。
お題こそ共有しているものの、抽象的で曖昧なそのお題は二人の頭を悩ませている。
「どんなものが良いと思う?」
「そうですね...」
「では『愛』ではどうでしょう?結構お題に沿ったものが生まれると思います」
愛、それは人生を分ける分岐点とも言える概念であり
また、様々な理由で形を変え、長い人生をどんなものであれ狂気に染め上げる要素
だと言える。
「うーん...だがしかし」
芸術家は首を傾げた。
何故なら、あまりにも既出の話題であることだ。
狂った道筋をどんな狂気で染められているのかを表現したほうが良いと考えたからだ。
それに芸術家は人妻好きで奥さんは寝取って手に入れたクズ野郎だったのだ。
自分を話題にしたほうが余程奇抜な作品になるだろうという謎の自信がある。
「これは違いますか?」
「うむ、これは今回の話題には沿わないな」
二人は再び首を傾げ、助手が口を開く。
「そうですね...では愛に近しいですが」
「『癖』なんてどうでしょう?欲求に直結するものですし、色々あると思います」
癖、この場合であれば性癖の話になるだろうか。
それはパートナーを見つける理由でもあり、相手との相性を確かめる共通点でもある。
それだけではない、友愛にだってこの概念が共通であれば心から信頼しあえる可能性は高いだろう。
「うーん...だがしかし」
芸術家は首を傾げた。
何故なら、そもそもそんなものを芸術として描いたところで出展出来ないだろうと思ったのだ。
なんだオイ?ネオアームサイクロンジェットアームストロング砲とか作ればいいですか?
完成度高めるぞオイ。
それに芸術家は女性のう〇こに興奮する誰にも言えない性癖持ちだったのだ。
自分を話題にしたほうが余程奇抜な作品になるだろうという謎の自信がある。
「これは違いますか?」
「うむ、これは今回の話題には沿わないな」
二人は再び首を傾げ、助手が口を開く。
「ならばこれでどうでしょう!先の二つとは違うものですが」
「『記憶』です!生きている中で必ずあるものであり、道そのものであり...!」
記憶、どんな人生にもかならずあるもの。
それは人の形である。性格も、常識も、能力だってこれに起因するものが多いだろう。
「中々いいじゃないか」
「ありがとうございます」
「今回はこれでいこう、しかしどう造ろうか...」
芸術家は首を傾げた。
普遍的で抽象的な『記憶』を表現するのは大変だ。
誰にだって違う人生があるし、人間は代わりはいるとはいうが
同時に全く同じものが存在しない理由に記憶があるくらいには
余りにも表現するには形が様々だ。現に、造ろうと思っても筆が進まない。
「どうするべきか...記憶を表現するのは不可能だな...」
芸術家は幾晩も悩んだ、どんなに悩んでも結論が出ない。
だがそのひらめきは急に訪れる。何でもない日頃の買い物をしていた時に
芸術は完成し、急いで表現した。
翌日、助手を工房に呼んで出来た作品を見せた。
助手は首を傾げた。とても精巧に作られているソレは...
「...どこにでもいる普通の人じゃないですか」
何の歪さも、何の取り柄もない、何処にでもいるであろうごくごく普通の人間。
今回のお題において様々なものが持ち寄られる中、芸術家のこの作品は
余りにも綺麗で普通過ぎると思ったのだ。
そんな助手の様子をみて芸術家は短く笑った。
「それでいいんだよ」
「どういうことですか?」
「普通の人でいいんだ、どこにでもいる普通の。誰でもない、何処にでもいる『人』でいい」
「何故ならば今回のお題は」