俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。   作:閃幽零

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サイド 坂田視点。

 

 サイド 坂田視点。

 

 俺の名前は坂田ダイゴ。

 猛田やジュリアと一緒に異世界に飛んだクラスメイトの一人。

 

 うちのクラスには目立っている実力者が3人いる。

 

 前衛ワガママアタッカーの『猛田』。

 超絶美少女でモンクの『ジュリア』。

 

 そして、

 ――盤面《ばんめん》の支配者『砦トウシ』。

 

 俺たちが異世界で無双できたのは、猛田やジュリアの功績も大きいけど、

 なにより、砦がずっと、超人的な指揮官ぶりを発揮してくれたから。

 

 砦は、もともと、異常に自己評価が低いので、

 『自分は何の役にも立てない』などと言っているが、

 あいつがいなかったら、俺らは、

 転移して一週間目に遭遇した魔王軍幹部との闘いで確実に全滅していた。

 

 猛田はマジのバカだから、砦がどれだけ戦力になってくれているか、まったく理解していない。

 猛田は頭いいはずなのに、砦のことになると、異常なぐらいバカになるんだよなぁ……

 普段から、超俺様体質でイカれた言動は多いけど、砦のことになると、特にひどくなる。

 

 ……まあ、確かに、砦のスキルは酷かったけどね。

 『名字が田中になる』って……

 俺も、最初は爆笑してしまった。

 確かに、あのスキルはゴミだった。

 マジで、何の役にも立たなかったもんなぁ……

 

 でも、猛田以外のみんなが理解している。

 もし、砦が俺達と同じく有能なスキルをもっていたら……

 

 ――『確実に砦一人で魔王を倒していただろう』って。

 

「ねぇ、坂田くん」

 

 ヒーラーの山本コハルが話しかけてきた。

 

「砦くんの、あの……『田中玉』? あれって、坂田くんの豪魔弾と同じなのかな? 猛田くんは、そう信じているみたいだけど……」

 

「さぁ、分からない。確かに、見た目は俺の魔法弾っぽいけど……根本から違うものである気がしなくもない。……正直わからないよ、俺は似たような魔法が使えるってだけで、魔法の専門家でもなんでもないから」

 

 たまたまスキルを得たチーター。

 俺たちは全員そう。

 

 ただ、砦だけは違う。

 あいつはスキルの補助なしで、俺達全員を、異世界から無事帰還させた。

 

 信じられない才能だと思う。

 魔王軍幹部がどれだけ強くても『まったく負ける気がしなかった』のは、ずっと、後ろから砦が指揮をしてくれたからだ。

 

 一週間目に遭遇した魔王軍幹部は、攻撃を受けるたびに耐性を変える厄介なギミックモンスターだった。

 猛田は何も考えずに剣を振り、俺たちは通用しない魔法を撃ち続けた。

 砦だけが敵の性質に気づき、全員の攻撃順を組み替えた。

 

 ……砦の指示がなかったら、少なくとも、前衛の猛田は確実に死んでいた。

 

 言っておくけど、俺らだってバカじゃない。

 アレに気づける砦がおかしいんだ。

 

 どう考えても、砦が一番の功労者なのに、砦は『自分には戦う力がないから』と、指揮だけではなく『その他の雑用』も率先して引き受けた。

 

 ……バカじゃないのか、と思った。

 天才すぎると頭おかしくなるのかな?

 

「砦。ちゃんと、ポーション、もってきてんだろうなぁ」

 

「ああ、うん」

 

「お前の役目は、ほぼそれしかねぇんだから、当然だよなぁ。ちなみに、お前の、あのダセェ玉、実際、どんぐらいの威力なんだ? ランクCのモンスターぐらいは殺せんのか?」

 

「……いやぁ……厳しいんじゃないかなぁ……ためしたことないから分からないけど」

 

 あの田中玉って、マジで、どのぐらいの魔法なんだろう。

 砦のスキル『名字が田中になる』はマジでゴミだし、砦自身のレベルも低いから、たぶん、大した威力じゃないとは思うんだけど、動画で見る分には……普通に凄そうに見えるんだよなぁ……

 

「ちっ、マジで、糞の役にもたたねぇゴミだな、てめぇは、反省しろ!」

 

 と、そう叫びながら、猛田が砦を殴ろうとした、

 そこで、ジュリアが、その拳を止めて、

 

「いい加減にしろ。何が気に入らないか知らないが、周りに当たり散らすな」

 

「……うるせぇえ! てめぇも殺すぞ! こっちは寝不足でマジでイラついてるって何回言わせんだ、ブス!」

 

「……あんたの体調不良なんか知るか、と、こちらも何回でも言わせてもらう」

 

 へたに砦をかばったら、こんな風に猛田がうるさい。

 それに、砦自身が、マジで『自分は役立たず』だと認識していた。

 だから、俺たちは、お母さんに背負われている赤子みたいに、砦に、全部の負担を押し付けてしまった。

 

 正直申し訳なく思っている。

 

 ……ちなみに、どうやら、ジュリアは、砦のことがめちゃくちゃ好きらしく、ジュリアだけは猛田に何を言われても、砦を庇い続けていた。

 

 砦は、『ジュリアが異常に優しいから庇ってくれている』と認識しているみたいだけど、正直、そんなことはまったくない。

 

 ジュリアは、砦以外に対してはゴミを見るような目を向ける、ちょっとしたサイコだ。

 

 俺は、たまたま近くにいたジュリアに、

 

「昨日、最後まで、あの鬼に挑んでいた姿、かっこよかったよ」

 

 と声をかけると、ジュリアは、

 

「……うっさい、死ね」

 

 と吐き捨ててきた。

 これが、彼女の基本スタンス。

 

 一応、戦闘になれば、俺たちを助けてくれたりもするけど、それは『戦力が減ったらダルいから』というのが主な理由。

 これに関しては、ツンデレを勘違いしているとかじゃなく、ガチでそう。

 

 と、そこで、砦が、

 

「ジュリア」

 

 彼女を呼んだ。

 

「どうした、トウシ。……ん? 顔色が悪いぞ。どこか痛むのか?」

 

「ありがとう。顔色に関してはただの過労とストレスだから大丈夫なんだけど……それはともかく、猛田には、もう何も言わなくていいよ。あいつには何を言っても無駄だし」

 

「いや、しかしだな――」

 

 ……この分かりやすさで、なぜ砦は気づかないのだろう。

 砦はすごいやつではあるけど、バカなのは間違いない。

 

 

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