俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
11話 嫉妬するジュリア。
クラスメイトたちがガーディアンの対策方法について話していると、ギャルの対見《ついみ》がニヤニヤしながら、俺に、
「田中玉なら、ガーディアンも倒せるんじゃない?」
「だから、そんな大した威力じゃないって、さっき言ったばかりだろ」
俺は、うんざりしながら答える。
……このイジリ、しばらく続きそうだな。
「ねぇねぇ、あれって魔法なの?」
「魔法じゃ……ないかも……よくわかんない」
「ははっ、なんでわかんないのよ。自分のスキルでしょ」
笑いながら、俺の背中をペシペシしてくる。
彼女は誰に対しても距離が近い。
俺や田中くんみたいな陰キャにも平等に接してくれる。
いわゆる、『オタクにやさしいギャル』という稀有な存在。
「収益化申請がおりないってボヤいていたけど、もうその心配はないんじゃない?」
「ああ……かもね。今も、一応、2万人ぐらいが見てくれているし」
「大金が入ったら、なにかおごってよ」
「……いや、対見は、もう死ぬほど稼いでいるでしょ」
陽キャ全開の美形ギャルである彼女の人気はかなり高い。
稼いでいる額でいえば、ウチのクラスでもトップクラス。
「砦がおごってくれる……ってのが大事なんじゃん」
とか言いながら、ものすごいキラキラした笑顔を見せてくる。
そういうの、やめた方がいいと思うよ。
勘違いするバカを量産するだけだと思うから。
……そんなことを思っていると、背後から強い視線を感じた。
振り返ると、ジュリアが、なぜか不機嫌そうな顔でこっちを見ていた。
「……? どうかした?」
「……いや、なんでもない」
そっぽを向かれてしまった。
なんだろう、体調でも悪いのかな……
「気分でも悪い? ポーションが必要なら――」
「何でもないと言っている!!」
「ぁ……はい」
めっちゃキレられた。
ジュリアはたまに情緒不安定になることがある。
怒らせるようなことはしていないと思うんだけど……
そういえば、前にジュリアが切れた時も、対見と話していた時だったかもしれない……違ったか?
琥珀と話している時だったっけ……?
などと思っていた、その時、
「おい、おまえら、止まれ」
猛田が戦闘態勢で、そういった。
通路の奥。
暗闇の向こうから、何かが近づいてくる気配。
地響きにも似た、重い足音。
「な……なんだ?」
猛田が、そう呟いた瞬間、
闇の中から、赤黒い巨体が姿を現した。
「お、おい……あれ……」
角《つの》の生えた顔、盛り上がった筋肉。
一日たって復活した田中オーガニクくん。
「あの鬼、昨日、田中玉で消し飛んだんじゃねぇのか!?」
「まさか、無限湧きするタイプなのか?!」
「え、まって、うしろ……うしろにいるやつ、なに?!」
オーガニクの背後から、ゆっくりと姿を現したのは、
――全身を漆黒のウロコで覆われた、巨大な竜。
ちなみにあの子の名前は『田中シエロン』さんです。
かわいいでしょ?
(レベルはオーガニクと一緒だけど、やっぱり、鬼より龍の方が強そうに見えるなぁ……)
などと、心の中でのんきな感想をつぶやいていると、
「グルル……」
シエロンの双眸《そうぼう》が、赤くランランと光っている。
オーガニクに勝るとも劣らない、いや、それ以上の、圧倒的なオーラ。
「な、なんだよ、あの龍……SSの鬼と同じぐらいのオーラなんだが……ふざけんじゃねぇよ……」
「たぶん、同じランクの龍だよな」
「SSの怪物を二体同時とか……む、無理……」
「逃げよう」
「ああ」
と、クラスメイトたちが逃亡を決断した時、
後ろから、
「……ぇ」
さらに、もう一体。
『田中オーガニク2』くんが出現する。
見た目も性能もほぼ一緒。
――これで、レベル200が合計3体!!
いやぁ、こいつは大変だ!
この危機的状況をどうにかできるのは、
やっぱり、われらのジュリア様だけだろう!
猛田ぁ!
ケガする準備はできたかぁ?!
今回も、いい感じに視聴者を沸かせてくれたまえ!!