俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
13話 猛田、イラつくわぁ……お前はゴキゲンにぶっ飛ばされてりゃいいんだよ……
「超スキルゥウウ!! 煉獄・爆双斬!!!」
背後から、ウザったい声が響いた。
「えぇ……」
振り返ると、猛田が、オーガニク2に、信じられないほど高火力の一撃を叩き込んでいた。
「グァアアアアアア!!」
オーガニク2は、一撃で、あっさりと倒れた。
……はぁ?
超スキルってなに?
もしかして……スキルⅢの上?
『は????』
『猛田が鬼を一撃!?』
『なんだ今の!!』
『超スキル!?』
『スキルⅢが使えるだけでもすげぇのに、その上が覚醒したぁああ!』
『やべぇええええ!』
「ふはははははははぁ!! すげぇ!! すげぇえ力だぁあ! 沸き上がる!! レベルァアアアアアップ!!」
耳障りな声が響く。
……ふざけんなよ、猛田……
お前、なにやってんだよ……
そんな珍事件は俺のシナリオにねぇんだよ……
お前が活躍するとか、誰得だって話だろうが。
空気読めよ、ボケが……
お前はゴキゲンにぶっ飛ばされてりゃいいんだよ……
世界中の田中から元気を集めてやろうか、くそったれが。
あまりに唐突すぎる展開に、その場の空気が凍りついている。
「え、な、なんで……?」
山本コハルが、唖然とした顔で、猛田を見ていた。
他のメンバーもそう。
茫然としていると、
猛田は、
「ジュリア、どけぇえええええ!! 邪魔ぁあああ! 今、ここは俺の俺による俺だけのオンステェエエエエジ!!」
そのまま、猛田は田中シエロンに向かって突撃していく。
「死ねよ、ドラゴン!! 俺の絶技に散れやぁああ! 煉獄・爆双斬!!!」
「グギャァアアアア!!!」
豪快な一撃で、シエロンが倒された。
ドラゴンは耐久高めの種族なのに……
一撃……
し、信じられない……
これ……なんでだ?
猛田のレベルは128だろ……
200を超えている改造モンスターに勝てるわけがない。
……あの『超スキル』ってのは、そんなにすごいのか?
倍近いレベル差をひっくり返せるぐらい……
『猛田くん、強すぎ!』
『え、待って、ジュリア様も猛田くんもどうしたの?』
『昨日はボロ負けしてたのに、なにこれ』
『覚醒した?』
『やっぱ、このクラス、やばすぎ!』
『時空ヶ丘の精鋭はやはり格が違った!!』
『人類の救世主たち!!』
『こいつらを砦が指揮すれば、実質無敵! ダンジョンの謎が明かされる日も近いな』
「はははは! 見たかぁあ! はははは! やっぱ、俺は特別なんだよ……神に選ばれたのは俺だぁあああ! 砦じゃねぇええええ!!」
興奮した様子で、猛田が叫ぶ。
『うざ。調子のんな』
『なんで、ここで砦?』
『実はBLなんじゃない?』
『承認欲求の権化』
『でも、強いのは事実じゃん』
『雑魚どもが、猛田くんに嫉妬している模様、乙です』
『こんなゴミ男に嫉妬するやつなんかいねぇから』
『顔まっかで草』
有頂天になっていた猛田だったが、
ふと、自分がどう見られているか気になったのか、
こほんと咳払いを一つ挟んで、
「あ、えと……興奮してすいません。みなさんの応援のおかげで、あれほどの強敵にも勝てました! 今後も、スパチャ、チャンネル登録、高評価、ハイプでの応援、ぜひぜひ、よろしくです!」
『マジで、すごすぎ! 赤スパどうぞ!』
『こじき野郎』
『誰がお前なんか応援するか、パワハラ野郎。まずはいつもの態度を砦に謝れ』
『強すぎて感動!』
『絶対に、ジュリアなんかより猛田くんの方が上!』
『は? ジュリア様の方が絶対格上でしょ』
『猛田信者、頭沸いてる変な女ばっかり』
『猛田やジュリアより砦の方が上。わかっていないやつはバカ確定』
コメント欄の応酬は、その後もしばらく続いた。
★
――その日の夜。
玉座の間に転移した俺は、玉座に腰かけながら、傍らに控えるロキに尋ねた。
「ロキ……猛田が急に強くなったの、なんでかわかる?」
「――おそらく、『アリア・ギアス』が発動したものと思われます」
「……なにそれ」
「コストを力に変えるシステムです」
「えっと……それは、つまり?」
「たとえば、『毎日欠かさず祈りを捧げる』と誓い、それを実行し続けた者は、その対価として『スキルⅢが開眼する』可能性がある……といった具合です」
「あー……なるほど……つまり、猛田の場合は……」
「はい。おそらく、旦那様にかけられた『呪い』という持続的な苦痛――その『代償』が、無自覚のうちにアリア・ギアスへと昇華され、『超スキル覚醒』という力へ変換されたものと推察されます。あの愚者は、眠れぬ苦痛の中、毎夜、旦那様を超えることだけを願い続けたのでしょう……その執念が蓄積し、今回、覚醒へ至ったのかと」
「なるほどね……なんで、呪いに1億もかかるのかとずっと疑問だったけど……アリア・ギアスにできるからか……」
そのシステムいいな……
やりようによっては無限に強くなれる。
もっと詳しく仕組みを解明できれば、
うまく利用して、戦力を大幅に底上げすることができるかも……
「正直、諸刃の剣的な力だから……使い方は考えないといけないけど……」
今回、猛田がアリア・ギアスで強くなったのは想定外。
だけど、
「数字はかなり伸びているな……」
猛田は、なんだかんだ人気がある。
いい意味でも、悪い意味でも。
猛田を死ぬほど嫌っているアンチは多いけど、
そういうアンチは、むしろ、
誰よりも猛田を追いかけている傾向にある。
今回の猛田覚醒を、アンチ連中は、歯噛みしつつも、
『高く上った方が、落ちた時のダメージは大きい』と、
猛田が次に落ちる瞬間を期待して釘付けになっている。
「ジュリアと人気を二分にしているのは腹が立つが……再生数のことを考えると、このまま、猛田には強くなってもらった方がいいか」
ゴミをボコっても、たいして面白くはない……
力におぼれて調子こいているバカをボコボコにした方が視聴者のカタルシスは大きい……
俯瞰《ふかん》で見れば、この展開はむしろラッキーか……
と考えているとロキが、
「人気の度合いでいいますと、二分ではなく、三分かと。ジュリア、猛田……そして、旦那様」
「は? 俺?」
「はい、実際、コメント欄でも――」
「ああ、田中玉をイジってる割合がまだいる感じだね。あと、変に誤解している層。でも――」
「一部のアホは、まだ旦那様のことを弱いと思っているようですが……ちょっとでも賢い者は、旦那様の異常性に気づき始めております。この世で誰が最も王にふさわしいか……誰が真の意味で最強の英雄なのか……すでに――」
「無理にほめなくていいって……もう、ずっと言っているけどさ」
俺は、ロキの慰めをスルーして、本題に入りなおす。
「呪いのアリア・ギアスで勝手に強くなってくれるってのは……正直、ありがたい。将来的には、防衛戦での肉壁にもできるかも……」
「あの程度の愚物に、尊き旦那様の戦列に加わる資格があるとは思えませんが」
「もちろん、今のままだと話にならないけどね。……ただ、戦力はいくらあっても足りないし、『ヘイトを稼げるタンク』ってのは、なんだかんだ貴重だよ」
正直、最近、ロキたちには愛着がわいてきている。
俺はジャンヌダルクをタンクとして創造したけど、
あの子はいい子だから、壁にするのは普通に心苦しい。
けど、猛田なら、どうなろうと知ったこっちゃない、と笑って言える。
それに、猛田の場合、命令しなくても、勝手に敵陣のど真ん中に突っ込んでいってくれる。
「心が痛まない全自動の肉壁……非常に便利な存在。異世界の時以上に、うまいこと活用していかないとね。あと、もちろん、猛田をこのまま調子に乗らせたままだと、きわめて善良で正常なアンチ視聴者様のストレスになってしまうから……」
そこで、俺は新しい『改造モンスター』を作成する。
「田中ワルイーコ……種族はデビルウィザードで、能力は剣スキルに対するデバフ特化。……メッタメタにメタらせてもらいますよ、猛田さん。ちょっと覚醒したぐらいじゃあ、このダンジョンはクリアできないという残酷な事実をその身に刻み込んでさしあげましょう、ほっほっほ」
――異世界侵略軍が来るまで、あと8日。