俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
2話 田中玉。
「な……なんだ……これ……」
空間が、震えていた。
どこからか集まってきた光が、俺の目の前で一点に収束していく。
最初は蛍の光ほどの輝きだったのに、
どんどん膨れ上がり、
やがて俺の頭ほどの大きさの『まばゆいエネルギーの塊』になった。
「これが……『田中玉』? ……ふ、ふざけた名前だけど……」
俺は、その玉を睨みつけるように見つめてから、ゆっくりと視線を上げた。
玉座に座る魔王――ついさっき俺を一撃で瀕死にした、あの化け物を。
「120万人以上のエネルギーの結晶……これ……耐えられないよなぁああ! いっけぇええ!!」
命じた瞬間、田中玉が弾丸のように射出された。
空気が裂ける音がした。
速すぎて残像すら生まれず、
ただ光の尾だけが一直線に魔王へと伸びていった。
「――ッ!?」
魔王の顔に、初めて焦りの色が浮かぶ。
防御の構えを取る暇すらなかった。
田中玉は魔王の胴体に着弾し、その瞬間、
――俺の視界が真っ白に染まった。
轟音というより、もはや『音の壁』だった。
魔王の周囲の地面が、放射状にえぐれて吹き飛ぶ。
玉座も、背後の柱も、粉々に砕けて消し飛んだ。
「ぐ……ぉおお……ぉおお!!」
断末魔が響いた後、
「ぁ……が……っ」
ばたりと倒れて、
――静寂が戻った。
俺はしばらく、その光景を呆然と眺めていた。
自分の手が、まだ震えている。
「……マジか……死んだ?」
と、つぶやいた時。
どこからともなく、無機質な自動音声が響き渡る。
『――ダンジョン魔王の撃破を確認。討伐者、田中トウシ。ダンジョン魔王の特性により、魔王ロキは一度だけ即時自動復活します』
倒れた魔王の肉体が緑の光に包まれて修復されていく。
「――え、復活?!」
俺は反射的に身構えた……が、
彼女は、厳かな態度で、俺の足元に跪いた。
「……?」
「ご挨拶が遅れました。私はロキ。私を倒したあなた様こそ、正統なるこの世界の支配者。敗者たる私は、あなたの伴侶となり、この身も心もすべてを捧げましょう」
「……ぇえ……」
そこで、また自動音声が聞こえた。
『ダンジョン魔王を倒した者は、先代魔王の権能・支配区域を継承し、婚姻を結ぶことになる』
「……いや、べつにそんなことは望んでないんだけど……てか、強制婚姻ってエグくない?」
《伴侶の姓を、新魔王の姓へ変更します》
《個体名:田中ロキが登録されました》
「これより私はあなた様の妻……田中ロキ。永遠によろしくお願いもうしあげます」
深々と頭を下げる田中ロキさん。
「え、俺、結婚した? うそだろ……なに、この状況……こわっ」
こうして俺は、強制的に、『ダンジョン魔王』の座につかされた。
「旦那様」
田中ロキが、淡々と、
「ダンジョン魔王になると、ダンジョンポイントを使ってボーナスを得ることができます」
「すごい勢いで話が先に進む……え、なに? ダンジョンポイント?」
「このダンジョンでの出来事を配信した映像の総再生数が、ダンジョンポイントになります。旦那様のクラスメイトの方々だけでなく、世界中の配信者や切り抜き師が、このダンジョンを題材に活動しておりますので……現在、91億ポイントほどたまっております」
「切り抜きもアリなんだ……しかし、多いなぁ……みんな、そんなにダンジョン配信好きなんだ……まあ、かくいう俺も、家で結構見てたわけだが……」
「現在の旦那様が解放できる項目は少ないですが、侵略者を倒し、ダンジョン魔王としての格をあげることで増えていきます。現在のリストがこちらです」
田中ロキが指を鳴らすと、目の前にリストが浮かんだ。
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・改造モンスターを創造する。
《1000万ポイント》
・好きなダンジョン配信者を強化する。
《1億ポイント》
・好きなダンジョン配信者に呪いを与える。
《1億ポイント》
・配下のレベルをあげる。
《5億ポイント》
・従順なNPCを創造する。
《50億ポイント》
・ダンジョンを拡張する。
《500億ポイント》
・固有スキル『名字を田中にする』を強化する。
《1000億ポイント》
・固有スキル『名字を田中にする』の真の力を解放する。
《9999兆ポイント》
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「改造モンスター……か……」
あまりにも一気に色々と起こりすぎて、混乱している……
けど、好奇心には勝てなかった。
「試してみるか……とりあえず、鬼でも創ってみようかな……」
と、考えたが、その前に、
「あのさ、ロキ……この『好きな配信者にかけられる呪い』って、どんな感じ? 死ぬ感じ?」
「呪いの種類はランダムで決まりまして、『お腹を下しやすくなる』などの低級な呪いを複数付与するものとなっております」
「へぇ……なるほど……ふぅん。そんな下らないことに、1億も使えないな。うん、うん」
俺は数秒だけ悩んだ末に、
「あ、手がすべったぁー(棒)」
なんてことだ……猛田に呪いをかけてしまった!
そんなつもりはまったくなかったのに!
くそぉ……
しまったぁ……っ!!
申し訳ない!!