俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
15話 アイドルが秘密で働いている最高級風俗。
「君レベルにB級を与えるというのがいかに特別なことかは理解できるだろう?」
「え……ああ、まあ……はい……」
「そのかわり、君には、猛田カルマくんや、暁宮ジュリアくんとのパイプ役になってもらいたい。動画を見る限り、どうやら、君は、二人と仲がいいようだし」
「パイプ……」
なるほど、それが狙いだったのね。
てか、動画見て、俺が猛田と仲いいって思ったの?
目の腐り方が尋常じゃないね。
その絶望的症状だと、もう眼科に行っても遅いね。
「我々は、君たちをサポートしたいと思っている。しかし、若くして力を得たことで、君たちは少々傲慢《ごうまん》になっているところがあり、扱うのに少々苦労している」
傲慢になっているのはお互い様だと思うが……
てか、扱うって……道具みたいに言わないでほしいねぇ。
猛田のことはどう思ってくれてもいいが……ジュリアのことまで道具扱いされちゃうと、本格的にムカついちゃうぜ。
「もちろん、報酬も与えよう」
そう言いながら、綾大路は、俺の足元に札束を放り投げてきた。
すごいな……このオッサンは『本来であれば、この態度が許される立場にある』ってことだもんな。
金だけではなく、そのおっさんは、さらに、一枚のカードを投げ渡してきた。
「それは、秘密の会員権だ。世界各地にある、本当の上級国民しか入れない施設に自由に出入りできるようになる。……アイドルが秘密で働いている最高級風俗などにも、年齢制限を無視して入ることだって可能だ。どうだ、夢のようだろう」
「はは……そうすね」
人が必死こいて、再生数を稼いで世界を救おうとしてんのに、
このオッサンときたら……
ジュリアの爪の垢を煎《せん》じて飲ませてやろうか。
いや、それはご褒美になるか、こいつらの界隈《かいわい》的に。
「我々の期待を裏切らないように」
「……一つだけいいですか?」
「なんだ?」
俺は、そのカードをへし折りながら、
「あなた方はダンジョン配信をなさらないので?」
「……」
俺がカードを折ったのが気に食わなかったのか、なんだか眉間にしわを寄せていらっしゃる。
隣にいる女幹部みたいなのが、
「我々は世界を動かしていなければならない身。危険な場所に身を投じるなど言語道断」
「なるほど。高校生が必死こいて命はってんのに、あんたらは、高いところからゴキゲンに命令してくるだけってことか……」
「我々も命を張っている。戦争では、一兵卒よりも、指揮官や政府高官の方がよっぽど苦しんでいるのだ。そんなこともわからないとは……やはり、まだまだ子供だな」
「ふぅん……まあ、いいや。じゃあ、俺、帰ります」
そこで女幹部が、
「お金は? 拾っていかないの? 子供にはわからないかもしれないけど、それ、結構な大金よ」
「大人にはわからないかもしれませんが……子供って、幼稚なプライドを結構大事にするものなんですよ」
そう言って、俺はこの施設を後にした。
★
協会を後にしたその足で、俺は玉座に戻った。
「ロキ」
「はい、なんでしょう、旦那様」
「確か、モンスターを地上に出すこともできるんだっけ?」
「はい、可能です」
「で、ダンジョンの関係者が映っていさえいれば『ダンジョン配信』としてポイントになるんだよな」
「はい、その通りです。ですので、実のところダンジョン魔王である旦那様がかかわってさえいれば、どんな映像であれダンジョンポイントは獲得できます」
「あ、そうなんだ」
それは助かるな。
いろいろと作戦の幅が広がる。
「……オッケー。じゃあ、あの自称指揮官たちに、命を張ってもらおう。いいエンタメになりそうだ」
そう言いながら、俺は、スマホで動画をチェックする。
ひそかに隠し撮りしてあった、あの場での、協会幹部たちの様子。
「突如あらわれた怪物が、偉そうな幹部たちに襲い掛かる。ある程度、ボコボコにされ、みっともなく命乞いをしているところに、偉大なジュリア様が颯爽と救出……これはバズるねぇ……」
うまいこと編集して、一つの映画みたいにしてやろう。
あのお偉いさん方も、ダンジョンの成長に貢献できて、さぞかし喜んでくれるだろうね。