俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。   作:閃幽零

29 / 31
サイド 田中アシュラ視点2

 

 サイド 田中アシュラ視点2

 

 ゲムゥシャ殿下はため息交じりに、吾輩に、

 

「大変だな、あんた」

 

「ご理解いただけましたこと、ありがたく思います」

 

 そのまま、殿下は階段を上がり、玉座の間へと向かわれた。

 

 その背中を無視して、

 傾国部隊の5人は、ぺちゃくちゃと、

 また、性根の腐ったおしゃべりをはじめる。

 

 クレオパトラが、下卑《げび》た目で吾輩を見て、

 

「アシュラ、お前、あれだろ。ゲムゥシャを見て勃《た》ってんだろ。目ぇ見りゃわかんだからな、このむっつりドスケベが」

 

 なぜ、こんなにも薄汚い言葉が次から次へと出てくるのか……不思議でならない……

 こいつらも、高貴で高潔な王の配下だというのに……

 

 吾輩は、空になったカグヤのグラスに酒を注ぎ足しながら、遠い目で天井の人工星空を見上げた。

 

 と、そのとき。

 

 肌がぴりっと痺れるような、とてつもなく強い……輝かしいオーラを感じた。

 ゲムゥシャ殿下も、なかなかの覇気を放っていたが、比較すると雲泥の差……

 空気の密度そのものが、変わったような気さえする。

 

 この気配は……間違いなく……

 

 

 

「あ、全員そろっているね。ちょうどよかった」

 

 

 

 偉大なる王。

 この世界の正統なる支配者。

 叡智《えいち》の神――砦トウシ陛下。

 

 吾輩は、すぐさま平伏のポーズをとろうとした……

 が、そんな吾輩より先に、

 傾国部隊の5人が、陛下の足元で、完璧な完全平伏の姿勢をとっていた。

 

 ……この終わっている5人が、唯一、心底からひざまずく相手……

 それが、砦トウシ陛下である。

 

 先ほどまでの酒瓶も暴言も、まるで何事もなかったかのように、完璧な姿勢で床に伏す彼女たち……

 半歩遅れて、吾輩も平伏する。

 

 絶対の忠誠を態度で示す我々に、王は、

 

「これから君たち傾国部隊には、地上に出て、色々とやってほしいんだけど、大丈夫?」

 

 その問いに、リーダーの田中クレオパトラが、顔を上げることなく答える。

 

「確認など必要ございません、愛《いと》しの君《きみ》よ。あなた様からの命令だけがわたくしどもの全て。いかなる命令であろうと、完全なる結果でもって応えてみせましょう。それが……それだけが、我々の、あなた様に対する愛の証」

 

「……愛ねぇ。そんなたいそうな感情を向けられても困るけど……命令を聞いてもらえるのはありがたいよ。君らの美貌と力があれば、だいぶ劇的にバズれると思うんだよね」

 

 そう言いながら、王は手にもっている紙の束をテーブルの上に置いた。

 束の厚みだけで、吾輩は、これから五人が担う仕事の重さを察する。

 

「これから指定する各所の刑務所で暴れてきてほしい。殺人や強姦の罪を犯しておきながら、まったく反省していない凶悪犯罪者のリストを渡すから、片っ端からボッコボコにしてきて。ただし殺さないで。……いうまでもなく、普通に反省している受刑者に手出しは厳禁。いけそう?」

 

「愛しき王のためならば、我々にできぬことなどございません」

 

 クレオパトラが即答すると、他の四人も、こくこくと無言で頷く。

 

「じゃあ、よろしく」

 

 そう言って、玉座の間に帰っていく王の背中を、

 傾国部隊の5人は、最後の最後までしっかりと見送ってから、

 

「やっべぇ、イケメンすぎんだろ。オーラ、バグってる」

「気品、半端ないんですけどっ。やっばい……むしゃぶりつきたい」

「声聞くだけで、どんな酒より酔えるわ。あの人はやべぇ、毎秒抱いてほしい」

「…………あぁ、あの手で殺してほしい……」

「惚《ほう》けてる場合じゃないわぁ、みんなぁ。命令を確実に遂行しないとぉ」

 

 フジコの言葉で、全員、ギラっと目を光らせる。

 命令遂行のためなら何でもするという気概が見られる。

 

 彼女たちは性根が腐っているが、

 その実力は本物なので、

 王の命令を確実に遂行できるだろう。

 

 吾輩は、五人が慌ただしく武装を整えはじめるのを、少し離れた場所から眺めていた。

 ――先ほどまでの、あの下品な空気は、もうどこにもない。

 あるのは、王の期待に応えるという一点だけに向けられた、恐ろしいほど純粋な殺気だった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。