俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。   作:閃幽零

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サイド 猛田視点2

 

 サイド 猛田視点2

 

 傾国部隊が暴れているという東原刑務所に、俺は単身で乗り込んだ。

 もちろん、配信もする。

 いうまでもなく、配信するのは『叩き潰すところまで』だ。

 そのあとのことはプライベートだから秘匿《ひとく》させてもらう。

 俺はAV監督じゃねぇ。

 

 現場はすでに、完全制圧されていた。

 崩れた鉄扉、へし折れた鉄格子。

 コンクリートの床には、亀裂が蜘蛛の巣のように走っている。

 

 その中央で、五つの人影が、まるで女王のように悠然とたたずんでいる。

 

 ……薄暗い刑務所を華やかに照らす鮮やかな、

 濃紺《のうこん》のロングヘア、

 燃えるような緋色《ひいろ》のツインテール、

 月光を思わせる銀髪のサイドテール、

 艶《つや》やかな臙脂《えんじ》色のミディアムボブ、

 そして妖しく揺れる藤色のセミロングが、

 ――非常灯の明かりの下で、それぞれ異なる輝きを放っていた。

 

 クレオパトラ、ヨーキヒ、カグヤ、ダッキ、フジコで……傾国部隊か。

 シャレてんじゃねぇか、くく。

 

 近づくだけで、肌がぴりぴりと痺れた。

 空気そのものが、重い。

 まるで、見えない水圧の中に立たされているような感覚。

 

 生で見ると、マジで、半端じゃねぇ。

 これを好きにできるのか……やべぇな、下半身をおさえられねぇ。

 

「ん? もしかして、お前ら、俺を待っていたのか?」

 

 俺の質問に、

 リーダー格の、褐色《かっしょく》の肌に濃紺《のうこん》の髪をなびかせた女、クレオパトラが笑い、

 

「ああ。面白いゴミがこちらに向かっていると聞いたのでな。壊してやろうと思って待っていた」

 

「いいアンサーだぜ。教えてやるよ、女神様……人類の高みってやつを」

 

 俺は、剣を抜きながら、

 

「ちなみに、お前らの正体は? まさか、マジで女神ってわけじゃないだろ? 俺は一度、本物の女神にあったことがあるが……雰囲気が全然違うぜ」

 

「我々は……『この世で最も尊き王』のしもべ」

 

「王のしもべだぁ? はは……なるほど、つまり、俺の下僕ってことか。この世界の王は、実質、この俺だからなぁ」

 

 俺がそう言うと、五人は、一瞬、ぽかんとした顔をした。

 その後、それぞれ、心底からうんざりしたような声を漏らした。

 

「このバカ男、薬でもやってんじゃねぇか、きもちわりぃ」

「自分の脳内だけが世界の全てらしいですわね。なんておぞましいゴキブリなのでしょう」

「これの相手、シラフじゃきついぜ。酒飲んじゃ……さすがにダメだよなぁ……仕事中だしなぁ……」

「…………これ、殺しちゃダメってマジ? きっつ」

「確かにぃ、これは、ひどいわねぇ」

 

 五人は、値踏みするように、俺を見つめている。

 目の奥から、多くの感情が読み取れる。

 軽蔑や吐き気……

 

 くく、おもしれぇ。

 その方が調教しがいがある。

 ヨダレを垂らしながら股をひらく女に価値はねぇ。

 

 何度か協会やパトロンから女を紹介されたが、どれも抱く気になれなかった。

 俺は王だから、半端な女じゃ勃《た》ちもしねぇ。

 最低でもジュリアか琥珀ぐらいのレベルじゃねぇと、話にならねぇんだ。

 

「……情熱的な瞳だな。俺に見惚れてんのか? 気持ちはわかるぜ、俺はカッケェからなぁ」

 

 そこで、クレオパトラが、ようやく、こちらへ一歩を踏み出す。

 たったそれだけの動作で、足元のコンクリートが、みしり、と軋んだ。

 

「尊き王から、殺し以外は許されているからな……徹底的につぶしてやるぞ、ゴミ虫」

 

「いいねぇ! そのツラを、とことんゆがませてやらぁ!!」

 

 その言葉を合図に、俺は、地を蹴った。

 

「超スキル!! 煉獄・爆双斬!!!」

 

 SSのモンスターすら一撃で沈めた、俺の最強の一撃。

 こいつらの強さなら死にはしないだろう……

 しかし、大ダメージは確実……

 

 と、確信していたのだが……

 

「――ッ」

 

 振り抜いた剣は、女の片手に、あっさりと止められていた。

 

「……は?」

 

 女は腕にまったく力を入れていないように見える。

 それなのに、俺の全力の一撃は、そこから一ミリも進まない。

 刃を握った女の指先から、逆に、俺の剣にビキビキと亀裂が入っていくのが見えた。

 

「な……なんだ、どうなって……なんかの魔法か?」

 

「くく。単純に力の差が大きんだよ、ざぁこ、ざぁこ」

 

「ふざけんな……俺は世界最強……俺より上は存在しねぇ」

 

「その程度の力しか持たないくせに、はしゃぐな、虫ケラ」

 

 次の瞬間、女の膝が、俺の腹にめり込んだ。

 

「がはっ――」

 

 視界が、白く弾ける。

 内臓が、丸ごとひっくり返ったような感覚。

 息が、吸えない。

 吐けない。

 

 ただ、痛みだけが、体の輪郭を塗りつぶしていく。

 ありえねぇ……

 この俺が……こんな……

 

「ほらっ、いいものやるよ。ヨダレ垂らして喜びな」

 

 そう言いながら、女は、俺の顔面を思いっきりぶん殴った。

 俺の体は、そのまま壁を突き破り、瓦礫の中に叩きつけられた。

 

「が……はっ……」

 

 全身に激痛が走る。

 意識が遠のく……

 

 配信のコメント欄が、目まぐるしく色を変えていく。

 

『SSを一撃で倒した超スキルが……通じてない……』

『え……片手で止められてなかった?』

『うそでしょ』

『この美女たち、猛田より強いの? マ?』

 

 

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