俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。   作:閃幽零

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17話 猛田くんのこと嫌いなんですよ。

 

 17話 猛田くんのこと嫌いなんですよ。

 

 俺の名前は砦トウシ。

 どこにでもいる一般人だ。

 

 ……猛田がボコられた翌日、

 玉座の間で、俺はスマホ片手に、ニュース番組のアーカイブを流し見していた。

 

 『特集:謎の美女集団・傾国部隊、世界を席巻』

 

 スタジオには、個性豊かなコメンテーターが並んでいる。

 その中に、見覚えのある顔があった。

 

 ――綾大路。

 

 どうやら、この手の話題では専門家扱いされているらしい。

 ダンジョン対策協会という肩書きが、こういう時だけ都合よく使われる。

 下に流れるコメントで『アイドル風俗!』などとイジられていた。

 かわいそ。

 自分が、あのイジリをテレビでやられたらと考えると、ゲロ出ちゃいそう。

 

「彼女たちが襲っているのは、あくまで反省の色がない凶悪犯罪者のみ。その点から、彼女たちを正義の使者と呼ぶ声もありますが……しかし――」

 

 『法を介さない私刑は問題なのでは?』系の議論を展開したのち、

 司会が、綾大路に話を振る。

 

「綾大路さん、協会としては、彼女たちの正体について、何かお考えは?」

 

「……私は、個人的に、これは、ダンジョンからの『警告』なのではないかと見ています」

 

「警告、ですか?」

 

「いずれ訪れるかもしれない大規模災害の予兆として、あえてこの名を名乗っているのではないか、と。傾国と警告をかけているのではないか、と」

 

 スタジオの隅、お笑い芸人らしき小太りの男性コメンテーターが、気楽な調子で割り込んだ。

 

「いやー、僕はそういう小難しい話はわかんないんですけど、単純に、あの猛田くんが負けたって聞いて、よっしゃって思いましたね」

 

「時空ヶ丘2年B組のエース、猛田カルマくんのことですね」

 

「エースはジュリア様でしょう! ここ大事なとこなんで、間違えてほしくないですねぇ」

 

「は、はは……すいません」

 

「俺、猛田カルマくんのこと、正直、嫌いなんですよねぇ。なんか、言動の端々からパワハラがにじみ出てるっていうか――」

 

「あ、えっと……すいません、人格否定はその辺で」

 

「俺はただ事実を――」

 

「話を戻しますが」

 

 司会が咳払いを挟む。

 

「仮に彼女たちが、自称の通り『神に近い存在』なのだとすれば……我々人類は、その粛正を、黙って受け入れるべきなのでは、という声も一部にはあります」

 

「ばかばかしいねぇ、ははは」

 

 芸人コメンテーターが、ノリよく茶化した。

 仕事のできる男だ。

 彼は彼の役回りを完璧にこなしている。

 

「もう一つ気になるのですが」

 

 司会が続ける。

 

「彼女たちが繰り返し口にした『この世で最も偉大な王』とは、いったい何者なのでしょう」

 

 そこで、綾大路が、

 

「私としては、あれは、ノストラダムスの予言における恐怖の大王を指しているのではないかと考えています」

 

「ちょちょ、お兄さん、正気ですか? ダメですよ、昼間から酔っぱらっちゃ」

 

 芸人が、ずばっと突っ込む。

 待ってましたと言わんばかりに。

 

 彼は彼の仕事をしただけだが、

 綾大路は、顔を真っ赤にして、

 

「なんだ、その無礼な物言いは!」

 

「え、え?! いや、ガチギレ?! うっそぉ!」

 

 議論が噛み合わないまま、進んでいく。

 誰一人、真実にたどり着かないまま、番組は次のコーナーへと移った。

 

 コーナーは変わっても議題は変わらない。

 ずっと、傾国部隊の話が続く。

 

 いい温度感だ。

 ちょうどいい。

 

 トレンドも、まとめサイトも、

 ――あの美女軍団の正体は何なのか?

 と、大盛り上がりのまま。

 

 

 ★

 

 

「傾国部隊のあれこれだけで、20億は稼げたな……よきかな、よきかな」

 

 俺は、目の前に浮かぶウィンドウの数字を見て、満足げに頷いた。

 

「ご満足いただけましたでしょうか、愛しの王よ」

 

 傾国部隊のリーダー、クレオパトラが、玉座の前で膝をつく。

 残る四人も、それに続いて、そろって頭を垂れた。

 

「ああ、よく頑張ってくれた。素晴らしい働きだったよ。猛田をボコボコにしたのはダメだけどね、あれはやりすぎだよ。あんなにボコボコにしちゃいけないなぁ。だめだぞー(棒) コラァ(棒) まったくー(大根)」

 

 と、いったん、倫理観を前面に出して、猛烈にしかりつけてから、

 

「……ちなみに、褒美とかほしいなら出すけど、どうする?」

 

「何をおっしゃいます、誉れ高き王よ」

 

 クレオパトラが、顔を上げる。

 

「むしろ、報酬を受け取るべきなのは、世界のために苦心なさっているあなた様のほう。もしよろしければ、我々の体と奉仕を、ご自身へのご褒美として受け取ってはいただけないでしょうか」

 

 なまめかしい笑みを浮かべながらそう言うと、

 傾国部隊の全員が、粛々と礼をする。

 

「……そういう冗談はいいから」

 

「いえ、冗談では……」

 

 そこで、玉座の脇に控えていたロキが、一歩前に出た。

 

「旦那様。この者たちは、旦那様の奴隷です。命令を聞くのが存在意義。褒美を出す必要はございません」

 

「奴隷て……仮に、奴隷だとしても、頑張ったら褒美を出すべきだと思うんだが……」

 

 俺は、なんとなく釈然としない気持ちで、そう返した。

 そこで、クレオパトラが、静かに、しかし確信をもって、

 

「あなた様のような尊き方が、私たちの王になってくださった……ソレ以上の褒美などございません」

 

「……このダンジョンにいるやつ、全員、頭おかしいの、なんでなんだろうなぁ……俺、ダンジョン魔王になる前も、なったあとも、一度として『尊い』判定をもらえるようなことはしていないんだが……」

 

 俺は、誰にともなく、そう呟いた。

 

 そこで、クレオパトラが、

 

「王よ……この世界の正統なる支配者たる愛しの君よ。我々傾国部隊は、とこしえに、あなた様に絶対の忠誠を誓います。この世で最も美しい光。これ以上なき叡智の結晶……我々の永遠の愛を、どうか、受け取ってくださいますよう、お願い申し上げます」

 

「……あ……はい、わかりました」

 

 なんかもう色々とめんどくさくなって、俺は、彼女の言葉を流した。

 

 切り替えるように、俺は、ポイントをチェックする。

 現時点で残っているのは45億ちょっと。

 

 この数日、色々と悩んで、最終的な使い道を決めた。

 残り時間とか、敵の強さとか、もろもろ考えたら、

 やはり、これがベストだろうと思う。

 

「ロキと……ジャンヌダルクと……ゲムゥシャに……10億ずつ使って……レベルを……2000までアップ、と」

 

 ウィンドウを操作するだけで、

 サクサクとロキたちのレベルが上がっていく。

 

(これで、合計30億使ったから……残りは15億ちょっと)

 

 一応、データ上ではレベルが上がっているけど……

 

 そこで俺はロキに、

 

「どう? ポイントでレベル上げたけど……ちゃんと上がってる?」

 

 尋ねると、ロキたちは、一斉に平伏の姿勢をとって、

 

「「「主よ! 偉大なる王よ! 我々に大いなる力を与えてくださったこと、心より感謝を!!」」」

 

「俺が生き延びたいから、お前らを強くしたんだけど……まあ、いいや。いろいろ言っても、どうせ聞かねぇし」

 

 

 ――異世界侵略部隊が来るまで、あと3日。

 

 

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